プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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6年生 1学期 4月

強者の気配

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 私、大波友里おおなみゆうりは、大ちゃんと一緒に、岩手県に来ている。
 やはは! 二人っきりでお泊り旅行!

「師匠、さあ、こまめに水分補給を! この私が、く、口移しでっ!」

 ……じゃないんだなー、これが。
 美土里みどりさんも一緒なんだよー。

「ちょ! っていうか、ドサクサに紛れて何してるのさー?!」

「……ちっ、邪魔が入ったか」

 〝ちっ〟じゃないよー。まったく、油断もスキも無い。

「師匠、その脇道わきみちを上です」

「おいー、スゴい登り坂だなー!」

 ここ、岩手県の東御前町ひがしみさきまちには、遥か昔、地球を守るために戦った〝蘇毬そまりの戦士〟が、ちからを失ったガジェットと一緒に埋葬されている。
 その〝蘇毬そまりの戦士〟の一族の代表って、美土里みどりさんの実家なんだって。
 だから〝長老直々じきじきの命令〟で、ガイド兼、顔つなぎ役に、付いて来たんだよ。だけど……

「師匠! 私が後ろから押してあげます! えーい!」

「うおお?! お尻を押すなよなー! 危ない! 危ないって!」

 ……これじゃ、ただのセクハラおばさんだよ。





 >>>





「ひぃふぅ。やっと到着したのか?」

 やー! 大きな門! すっごく立派なお屋敷だよ!
 玄関には〝蘇毬そまり〟という表札が掛かっている。

「ねえねえ! 美土里みどりさんの実家って、すっご……あ、あれ?」

 美土里みどりさんは、門を素通りして、スタスタと歩いて行く。

「やー? ここじゃ無かったのかな?」

「いや。俺の記憶じゃ、間違いなくこの家だぜ」

 大ちゃんは、周囲の風景と地図を見比べている。
 ええ? どういう事?!

「ちょっとちょっと美土里みどりさん! どこ行くのん?」

 私に呼び止められて、面倒臭そうに振り返った美土里みどりさんは、さも当たり前のように言い放った。

「何言ってるんだ? 〝戦士の墓〟に決まってるだろ?」

 そっか! 私が、戦士のお墓からガジェットを取り出すんだった! それじゃ、レッツゴー!

「って〝レッツゴー!〟じゃないよ! 〝戦士の子孫〟に挨拶しなきゃ!」

「あっはっは! 何を言っている戦士ユーリ!」

 やー?

「そんな事をして、何の意味があるんだ?」

 やああっ?!

「死人に気を使っても無意味だ。今日の用事は、穴を掘って、埋まっている〝お宝〟を手に入れるだけだろう?」

 うわうわ、出たよ! マッドなサイエンティストっぽい発言!
 こうなったら止まんないんだよー、この人。
 ……でも、放っとけないし、一応、苦言をていしてみよう。

美土里みどりさん! お墓を勝手に掘り起こしたら、怒られちゃうから!」

 いま私が言った事って、当たり前すぎるよね。
 〝科学者脳〟の人はこれだから、もー!

「は? 馬鹿なのか? 怒られる前に、立ち去ればいいではないか」 

 〝科学者脳〟と言うか、墓荒らしだコレ!
 どうしよう、やっぱりまらないパターンだよ!

「いやいや、ダメだぜー! 美土里みどりさん!」 

 やー! 良かった。さすが大ちゃん!
 そうだよ、ガツンと言ってやって! 

だまって墓をあばくなら夜だろー! こんな日の高いうちから、大っぴらに掘ったら、絶対バレるぜー!」

 こっちも似たようなモンだったー!

「何を言ってるのさ二人とも! 手順はちゃんと踏まなきゃでしょ?! 長老も言ってたじゃんか!」 

「ははは! なんてなー! もちろん冗談だぜ?。美土里みどりさんだって、まさかそんな盗掘とうくつまがいな事、するわけないだろー?」

 やー? そ、そうだよね。いくら何でも、大ちゃんがそんな事するワケないか。

「え? あ、ああ! そ、そうそうそう! も、も、もちろんですよ! 何言ってんですか、やだなー師匠!」 

 美土里みどりさんは、絶対に盗掘とうくつするつもりだったよ。間違いない。 

「な、なぜそんな目で私を見るんだ戦士ユーリ? と、とにかく、まずは挨拶からだ。礼儀正しくな!」

 いそいそと門をくぐって、美土里みどりさんは玄関の呼び鈴を鳴らした。
 大ちゃんと私も、その後ろで身だしなみを整えつつ待つ。

「はい、どちら様でしょう?」

 という声が、インターホンから聞こえると同時に、美土里みどりさんが〝スパーン!〟と豪快に引き戸を開け放つ。 

「ただいまあああ!!」

「えええええええ?!」

「おおおおおおい!!」

 ドコが礼儀正しくなんだよー?!

「あれれ? 師匠、どうしました?」

 美土里みどりさんは、心底しんそこ不思議そうに首をかしげる。

「……なあユーリ。ウォルナミスの血筋は、みんなこうなのか?」

 私と美土里みどりさんを交互に見て、大ちゃんが苦笑にがわらいをしている。

「やー、大ちゃん?! 私はここまでヒドくないよ?!」

 とか言ってる内に、奥の方からパタパタと、足音が近付いて来た。
 まあ〝生命感知せいめいかんち〟で、中に人が居る事は分かってたんだけど。

「ああ美土里みどり。お帰りなさい。久しぶりだね」

 かなり〝強そうな気配けはい〟だったから、こんな若い女の人だとは思わなかった。 

帰里江きりえおばちゃん! ただいま!」

 美土里みどりさんの言葉に、女性……帰里江きりえさんの〝強者の気配けはい〟が、グン! と跳ね上がる。
 次の瞬間、美土里みどりさんは帰里江きりえさんにヘッドロックをキメられ、藻掻もがいていた。

「誰が〝おばちゃん〟だってー?」

だだだだだ! お、お姉さまっ! 帰里江きりえお姉さま、た、いたたた、ただいま帰りましたっ!!」

 はやい! この人、かなりの強さだよ!

「話は長老様から聞いてるよ。さあ、上がって上がって!」

帰里江きりえさん、痛い! 痛いよっ!」

 美土里みどりさんの頭をロックしたまま、帰里江きりえさんは、大ちゃんと私を奥の座敷に案内してくれた。

「なあユーリ。あの帰里江きりえさんって、すっごく若くないか? 美土里みどりさん、小学生ぐらいに見えるけど、本当は30歳前後なんだろー?」

 そっか。大ちゃんには、ウォルナミス人の年齢って、分かりにくいかも。

「やー。ウォルナミスの血が混ざってると、見た目と年齢に差があったりするから……」

 でも〝帰里江きりえさんの年齢ばなし〟は、しない方がいいと思う。
 だって、さっきの素早い動きも、放っている気配けはいも、ウォルナミスの血が濃い事の証明なのさー。
 つまり、大ちゃんと私の、この〝ヒソヒソ声〟は、たぶん帰里江きりえさんに聞こえてるよ。

「うふふふ。〝若い〟だなんて、うれしい事を言ってくれるのねえ! ちょっと待ってて、ジュース入れてくるから!」

「痛い痛い痛い! 離して! 助けてー!」

 嬉しそうにそう言うと、帰里江きりえさんは、パタパタと部屋を出て行った。美土里みどりさんをロックした状態で。
 ほらね、やっぱり聞こえてた。

「何かこう、色々とスゴいなー!」

「やー。ホント、スゴいよー」





 >>>





「早速で悪いんだけど〝蘇毬そまりの戦士〟のガジェットを、掘り出させてもらえるかな」

 やっと〝頭〟を開放された美土里みどりさんが、両手でコメカミをでながら言った。
 それを聞いた帰里江きりえさんは、少し困った顔で答える。

「その事なんだけど……実は、里久雄りくおのヤツが、反対していてねぇ……」

「ええ?! それはマズいな。まさかとは思ったけど、長老命令に逆らうなんて」

 美土里みどりさんが、珍しく神妙な顔つきをしている。

「やー? 里久雄りくおさんって?」

 私の問いに、帰里江きりえさんが、申し訳なさそうに答えてくれた。

里久雄りくおは、私の兄で〝蘇毬そまりの戦士〟を、まるで神様か何かのように崇拝しているんだ」

 まあ、そういう人も、少なくないとは思ったんだよー。

「だから今回、長老からの命令にも〝偉大いだいなる戦士の墓をあばくなど許されない〟とか言って、墓の前で座り込みを……」

 やー、頑固な人なんだ。

「……しかも、レプリカ・ガジェットを着込んでねえ」

 ちょ! 武装してるの?!

「おいおいおい! 町中まちなかで堂々と、ってマズくないか?!」

「想像以上に、ガチなヤツだよー!」

 まいったなあ。さすがに〝長老命令〟に、ここまで堂々と反抗する人が居るとは思わなかった。

「相変わらずだなあ里久雄りくおさんは。もう歳なんだから、ちょっとは大人しくすれば良いのに」

 美土里みどりさんも、といった表情で、頭をボリボリいている。
 そのヘッドを、帰里江きりえさんが再びロックした。

「痛たたたたたっ! や、やめっ! 痛い痛い痛いっ!」

「誰が〝歳〟ですってー?」

 やっぱこの人、はやい!

「おおお? 何だ? どうしたんだ?!」

「師匠! き、帰里江きりえおば、あ痛たたた! 帰里江きりえお姉さまと、り、里久雄りくおさんは〝双子ふたご〟の兄妹きょうだいなんです! い、痛たた痛いいいいい!!」

 なるほど。同い年だから〝もう歳〟っていう言葉に反応したんだ。
 ……あれ? という事は!

「もしかして、里久雄りくおさんって、強いの?」

 帰里江きりえさんは、ハッキリ言って強い。
 で、その双子のお兄さんって事は〝ウォルナミスの血〟を、同じぐらいの濃さで受け継いでいるはず。

「強いよ。里久雄りくおは〝戦士候補〟だったからね」

 やっぱり!
 ……戦士候補。つまり、侵略者と戦うために〝戦場ボード〟に立つ、その寸前まで行った人なんだ!

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