透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

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第七章 魔法学園ヴァルフェミオン

234 大暴れするマキトたち

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 魔法陣の組み込まれた扉、そして立ちはだかる魔導ゴーレム。
 いずれもヴァルフェミオンの研究者たちが、長年かけて研究し続け、常に最新の状態を更新している。
 それらは簡単に打ち破ることはできないと言われていた。
 故に、研究者たちは信じられなかった。
 自分たちの努力の結晶たちが、いとも簡単に打ち破られるなど――

「んしょっ、と」

 通路を塞ぐ大きな扉に、ノーラがピタッと手を触れる。扉は瞬く間に動き出し、先への道が開かれる。

「はああああぁぁぁーーーーっ!!」

 変身したラティの魔弾が、待ち構えている魔導ゴーレムを次々と破壊する。更に獣姿となっているフォレオの魔弾も、追撃を忘れない。
 もはや相手に攻撃する隙すら与えておらず、爆発音と砕け散る音が絶えず進行方向から響き渡る。段々とリズムに乗って発生しているようにすら思え、マキトはなんとなくいい気分を味わっていた。

「ラティ、フォレオ! 念のために聞くけど大丈夫か?」
「もういっちょー、っと! えっ、何か言いましたか、マスター?」
「……大丈夫かって聞いてんだよ」

 思わずマキトの口からため息が出る。ラティはとても楽しそうな表情で、全く無理をしている様子はなく、もはや聞くまでもないような気がしていた。
 それでも確認ぐらいはしないと――と思っていると、ラティが笑顔で振り向きながらブイサインをしてきた。

「調子ならすこぶる快調なのですっ♪ まだまだぶっ放せるのですよぉーっ!」
『ぼくもいけるよー! だからますたーたちは、あんしんしてぼくのせなかでのんびりしててね♪』

 フォレオも口調からして、本当に調子が良さそうであった。
 もう一時間くらいぶっ通しだというのに、ガス欠どころかみるみる調子が乗ってきているように見えてならない。
 その要因は、マキトもなんとなく見えていた。

「うーん、これも魔力スポットの影響か?」
「ん。多分それ」

 ノーラがコクリと頷く。ちなみに今、彼女がいる位置はマキトの前――すなわち彼に抱きかかえられるような形でフォレオの背に乗っていた。
 妙に機嫌の良さげな表情を浮かべているのも、まんざら無関係ではないだろう。

「向こうから流れてきているだけじゃない。ここらへん一帯が魔力に満ちている。ラティたちにとって、常に魔力が回復されている状態」
「……それであんなに元気なのか」
「でもやり過ぎは禁物。だから適度に休憩を取りながら進んでる」
「確かにな。限界超えてぶっ倒れたら、シャレにならないし」

 改めてマキトは、暴れているラティを見つめる。

「こうして戦っていなければ、気づかなかったかもだな」
「ん。最初の何時間かは進むだけだったから、魔力の消費も殆どなかった。それに扉を開けるだけなら、ノーラでも簡単にできるし」

 言われてみればとマキトは思い返す。最初は広い通路全体を塞ぐ扉がいくつも立ち塞がっていたが、それを全てノーラがいとも簡単に開けていた。
 本当に手を少し触れただけで、である。
 その際に淡い光が解き放たれていたことから、魔力が関係していることぐらいはマキトにも分かる。しかしノーラが手を触れたときと、ラティたち魔物が手を触れたときとでは、明らかに反応が違っていたことも確かだった。
 その違いについては、未だ推測の域を出ていない。

「あの扉、魔力の種類によって開けやすさが変わってるって感じかな?」
「多分。ノーラが見る限り、あの扉自体が魔力の塊だから、フツーの魔力を流したところで開けるのは相当大変だと思う」
「ノーラが楽勝で開けられるのは、やっぱりカミサマの魔力だからってこと?」
「ん。特殊な魔力だから」

 立ち塞がる扉だけではない。現在進行形で迫りくる魔導ゴーレムにも、同じようなことが言えていた。
 もっともゴーレムに対しては、ラティやフォレオだけで十分に事足りている状態であり、今のところ他の出番は一切ない。
 それはすなわち――

「キュウ~!」
「やることなさ過ぎてヤベェよなぁ、ったくよぉ!」

 他二匹の魔物たちが、暇を持て余す結果にも繋がってしまっていた。
 無論、いざというときのために力を温存する意味もあり、それ自体は最初のほうで説明はされている。
 しかしそれで納得できるかと言われれば、話は別であった。

「なぁ、あるじー! オレにも少しやらせてくれよぉー!」
「キュウッ!」
「って言われてもなぁ……」

 不満を漏らすリウとロップルの気持ちも分からなくはない。しかしマキトは、改めて現在の状況を見渡しながら、困ったように頭を掻く。

「リウもロップルも、相手の攻撃を利用するカウンター向きだからなぁ」
「ん。ラティやフォレオが遠距離射撃したほうが、手っ取り早いのも事実。待つことも大切な戦い」
「そりゃあ、分かってるけどよー!」

 不満を隠そうともしないリウであったが、言っていることは間違っていないと理解しているつもりでもいた。
 それ故に不貞腐れながらも、大人しくノーラの前でフォレオにしがみついている状態は続けており、ロップルも同じくであった。
 ノーラがそんな二匹を優しく撫でる中、マキトは改めて、ラティたちによってなぎ倒されていく魔導ゴーレムを見る。

「あのゴーレムも、ラティとフォレオの魔力が効果抜群だもんなぁ」
「ん。あれも魔力の塊みたいなもの。でも精霊の魔力に弱い」

 ついでに言えば、ノーラの魔力でも特攻効果が出ている。しかし威力的に、ラティやフォレオのほうが圧倒的に強いため、素直に扉を開ける役目に徹することとしたのであった。
 それを表明した際、ラティとフォレオは大いに喜んでいた。
 いっぱい大暴れできることが嬉しいからだ。
 そんなラティたちの姿を見て、ロップルとリウが不満そうにしており、それをマキトとノーラで慰めたのは、ここだけの話である。

「魔力の違いってだけで、ああなるもんなのか?」
「そこはノーラにも分からない。でも結果が示している。こうして楽々切り抜けられているのが全て」
「確かに……分かんないこと気にしてても、しょーがないか」

 そんなマキトの言葉を聞いたノーラは、フッと小さな笑みを零す。

「ん。それでこそマキトらしい」
「なんだよそりゃ」

 即座にツッコミを返すも、言われて不快な気分にはなっていなかった。確かにあれこれ気にするのは自分らしくない――今までも割とそうだったと、マキトは改めて思うのだった。

「それはともかく――」

 ここでノーラが視線をラティたちに戻す。

「ある意味、ここはラティたちにとって、都合のいい訓練場所になっている」
「はは、そりゃ言えてるや」
「オレたちはただヒマしてるだけだけどな」
「キュウキュウッ!」
「はいはい。そう不貞腐れるなって。お前たちの出番もきっとあるから――ん?」

 マキトがリウたちを宥めていたその時、目の前に大きな存在が現れた。
 見た目は魔導ゴーレムなのだが、これまで相手にしてきたのと比べると、その大きさは数倍以上と言える。
 少なくとも、その迫力は段違いであった。

「なーんかすっごいデカいヤツが出てきちまったなぁ」
「ん。これまでの経験上、見掛け倒しの敵が出てくるとも思えない」
「――だったらここはオレたちの出番だぜっ!」

 すかさずリウが気合いを入れつつ、声を上げた。

「オレとロップルも出れば、あんなデカブツなんざ楽勝だぜ!」
「キュウッ!」

 リウに続いてロップルもやる気を見せる。そんな二匹の姿に、マキトは仕方ないなぁと言わんばかりに苦笑した。

「分かった分かった。フォレオ、止まってくれ。俺たちもいったん降りよう」
『りょーかーい!』

 マキトの指示に従い、フォレオはゆっくりと停止する。マキトとノーラがフォレオの背から降りるとともに、ラティもマキトたちの元へ下りてきた。

「ラティ、フォレオ、ロップル、リウ!」

 不敵な笑みを浮かべ、マキトが魔物たちに呼びかける。

「お前たちがこれまで特訓してきた力を、アイツに思いっきり見せてやれ!」

 その掛け声に、四匹の魔物たちが威勢のいい声で応えるのだった。

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