透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

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第七章 魔法学園ヴァルフェミオン

240 いざ、神竜のもとへ!

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 地下に響き渡る爆発音。それと同時に放たれる叫び声、いや――悲鳴と言ったほうがいいだろうか。
 まさに阿鼻叫喚という言葉が相応しい。
 そしてそれを作り出しているのは、二人の少年少女と魔物たちであった。

「ここに来るまで、かなりやっつけたよな?」
「ん。いい加減負けを認めてほしい」

 マキトたちは現在、フォレオの背から降りて歩きながら進んでいる。そして周りには破壊した魔導ゴーレムの残骸が、あちこちに積み重なっていた。
 それだけラティたちが、激しく暴れ回ったことを示している。
 魔導ゴーレムの出現数は確実に減ってきており、もはや変身したラティやフォレオの前に敵なし、と言わんばかりな状態を作り出していた。

「ラティたちも全然疲れてなさそうだし」
「きっと魔力スポットから流れてきている魔力のおかげ。こうしてゆっくり歩いているのも、いい休憩になってる」
「なるほどねぇ」

 おもむろにマキトが視線を動かすと、ご機嫌よろしく動き回っているラティとフォレオの姿が目に飛び込んでくる。
 むしろまだまだ暴れたりないと言わんばかりであった。

「さっきのデカブツも、なんかあっという間に倒しちゃってたもんなぁ」
「ラティたちが全力全開で戦ったからこそ。それだけ強くなった証拠でもある」
「へへっ、そりゃ嬉しいぜ♪」

 マキトの足元で、リウも嬉しそうな声を上げた。

「なんたってさっきの戦いは、このオレが決めたんだもんなっ♪」
「そうだな。あの光線みたいな魔法を跳ね返した時は、結構驚いちまったよ」
「よせよ照れるじゃねーか」

 リウがマキトの足元に顔を擦り付ける。一種の照れ隠しであった。

「オレの実力は確かだぜ。いざというときは遠慮なく戦えるんだからな!」
「あぁ。ちゃんと期待してるよ」
「おうさっ! 戦える時が楽しみだぜ!」

 今すぐにでも暴れたくて仕方がないのは、リウも同じようだとマキトは思った。するとここでロップルが、何か気づいたような反応を示す。

「キュウキュウッ! キュキュキュ、キューッ!」
『あ、やっぱりろっぷるもかんじたー?』
「キュウッ!」

 フォレオの言葉にロップルが強く頷く。マキトには何のことかは分からないが、少なくともこのあたりで、何かがあるのだろうということは察した。

「どうしたんだ?」
『あのね、このちかくであったかいまりょくをつよくかんじるの!』
「あったかい魔力を感じる……」

 ノーラが小声で、フォレオの言葉をリピートする。そして顔を上げ、ハッと目を見開いた。

「――魔力スポットが近くなってきた?」
『たぶんそれー』

 間延びした声は、なんとも緊張感を削げ落とさせてくる。しかしそれを気にする者はいない。フォレオの場合はいつものことであるが、それ以上に新たに判明しそうな事実に興味が湧いていた。

「今更だけど、いかにもって感じがするよな」
「ん。そこできっと何かがある。ちょうど見える光景もいい証拠」

 ノーラが視線を向けた先――つまり前方には、魔導ゴーレムの大群が、再びわらわらと出現し、マキトたちに向かって進んできていた。

『――みて! おくにとびらがあるよー!』

 フォレオの声に皆が前方を注目する。確かに大群の奥には大きな扉があり、これまでの扉とは明らかに違う装飾が施されていた。

『あのおくから、すっごいまりょくをかんじるよー!』
「ってことはゴールか?」
「ん。その可能性は極めて高い。違っていたとしても絶対に何かがある」
「とにかく行ってみようぜ。オレたちは進むしかねーんだろ?」
「あぁ。そのとおりだ」

 魔物たちのやる気に笑みを浮かべながら、マキトは扉のほうを見る。その先に何が待ち構えているのか、妙にワクワクしていた。
 考えている余裕はない。そして進む道も、一つしかなかった。

「ラティ、ロップル! もうひと暴れしてくれ! ここを突破するぞ!」
「りょーかいなのですっ!」
『おーっ♪』

 待ってましたと言わんばかりに返事しつつ、ラティとロップルが勢いよく飛び出していく。
 迫り来る魔導ゴーレムの大群が残骸と化したのは、その数分後であった。


 ◇ ◇ ◇


「――よっと」

 ノーラが手を触れ、そこに魔力を少し流しただけで、扉は簡単に開いた。

「仕組み自体は同じなのか」
「とりあえず入れそうでなによりなのです」
「だな。さーて、奥には何が……って、確かめるまでもないか」

 その様子をチラリと見た瞬間、マキトは口元は笑みを浮かべながらも、目は完全に笑っていない表情を作り出していた。
 途轍もなく広い部屋のような空間の中央に『それ』はいた。
 魔法陣のような床に囚われ、光る鎖のようなもので雁字搦めにされている。聞こえてくる唸り声は、とても苦しそうであった。

「どう見てもこれが『神竜』だよな?」
「ん。間違いないと思う」

 ノーラも顔をしかめながら頷く。

「動けないように無理やり縛り付けられている感じ。早く助けないと」
「――残念だが、そうはさせない!」

 そこに第三者の声が聞こえてきた。マキトたちが驚きながら振り向くと、そこには目を血走らせた白髪の男が、荒ぶる様子で立っている。

「これ以上、私の目論見の邪魔をしてもらっては困るのだよ。わざわざドラゴンがいる魔力スポットまで使い、魔力の実験もしたのだ。こんなところで全てが壊されるワケにはいかん!」
「ドラゴンがいる魔力スポット……まさか、竜の山の……!」
「ほう、やはり知っていたか」

 目を見開くマキトに、白髪の男は不敵な笑みを見せる。

「神竜と普通の竜では種類も違うが、実験の場としては最適でもあった。おかげでいいデータを取ることができたよ」
「実験って……ふざけないでほしいのです! そのせいでドラゴンさんたちが酷い目にあったのですよっ!?」
「たかが竜如きがどうなろうが、私の知った話ではない」

 ラティの訴えは、白髪の男にスルーされてしまう。マキトやノーラも顔をしかめてこそいたが、ある程度の想像もしていたため、激情することはない。
 もっとも怒りを抱いていることも間違いはなかったのだが。

「……しかしここに来て、色々と想定外なことが起きてしまった。もはや立て直す猶予すらない。故に計画を強行することに決めた!」

 そう言いながら白髪の男は、ポケットに忍ばせていた魔法具を取り出す。

「さぁ、神竜よ! 今こそ我がしもべとして、新たに覚醒する時だ!」

 宣言と同時に、カチッと魔法具のスイッチが押される。神竜を縛り付けている光の鎖が動き、無理矢理動かそうとしていた。
 声にすらならない呻き声が、マキトたちの表情を怒りに変える。

「止めろ! 神竜をこれ以上苦しめるな!!」
「そう言われて従う私ではないわ! このウォーレスが神竜を従え、その強大なる力でお前たちを葬ってやる!」

 白髪の男ことウォーレスは、マキトの叫びを一蹴しつつ、その視線を苦しんでいる神竜に向ける。
 もはや結果は見えたも同然だと思い込み、勝利を確信した笑みを浮かべる。
 しかし――

「グオオオォォォ……ガアアアアアァァァァーーーーーッ!!」

 唸り声を出していた神竜が、突如として凄まじい雄たけびを解き放つ。思わずマキトたちは耳を塞ぎつつ、身を硬直させてしまう。
 雄叫びを直に聞いてしまったウォーレスは、鼓膜が破れそうになる。
 それでもなんとか耐えつつ、神竜に呼びかけようとしたその時――神竜の口から光が湧きあがる。

「グルアアアァァーーーッ!」

 怒りとともに光のブレスが解き放たれる。狙われたウォーレスは、身構えてはいたものの慌ててはいなかった。
 スーツの下に特注の魔法防護服を身に付けていたからだ。
 ドラゴンのブレスにも平気で耐えうる強度を誇り、これさえ来ていれば怖いものはないと言えるほど。故に神竜のブレスにも耐えられるはずだと思っていた。
 しかし――ここで誤算が生じていたことに、彼は全く気づいていない。
 神竜のブレスは、その名のとおり『神』を司る特殊なものだ。故に普通のブレスとは違う。
 ウォーレスがそれを知らないまま消える羽目になったのは、果たして幸運と呼ぶべきか不幸と呼ぶべきか。
 直撃を受けた際、恐らく本人はそれに気づくことすらなかっただろう。
 不敵な笑みを浮かべたまま、ウォーレスの体は数秒と経たず、跡形もなく焼き尽くされてしまった。

「げぇ……なんか爺さんがあっという間に消えちゃったし!」

 燃えかす一つ残らないその惨状に、マキトは背筋を震わせる。彼の足元で、リウもドン引きしながらその場所に視線を向けていた。

「つーかよぉ、何言ってんのかよく分かんねぇジーサンだったよな」
「そんなこと言ってる場合じゃないのです!」

 ラティの叫びで、マキトとリウは我に返る。神竜は明らかにマキトたちを次のターゲットに定めていたのだ。

「グアアア――」

 神竜が口を大きく開け、マキトたちに目掛けて光を解き放とうとしている。

「ヤベェ! このままじゃあの爺さんと同じことになるぞ!」

 マキトがそう叫んだ瞬間、神竜の口から光のブレスが解き放たれた。

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