19 / 29
19
しおりを挟む
じっとしているだけなのにじわりじわりと肌が汗ばむ。日差しが強くなって来て少し動くだけで汗が流れるくらいだ。こんな日は日陰でたまに吹く風を楽しみたいところだけど今はそうはいかない。目の前にはじっとこちらを警戒している獣がいて今その獣と睨み合っているのだ。
6歳になり、森に行かなければ町の周辺だけなら一人で出歩いてもいいと許可が下り、俺は今まさに町の外でこの状況に至った。相手は少し体が大きくて角が生えたウサギ。角は薬の材料にもなるし、毛皮はとても触り心地がいいので割と人気がある。そして肉も食べられる。ものすごくおいしいというわけではないが、一般的によく出回っている肉なのだ。
「…っ エアカッター!」
相手が動き出す前に魔法を使用。これは風の初級魔法だ。以前俺が5歳になったときに貰った魔法書がきっかけでイメージさえすれば色んな魔法に応用が聞くことに気がついた。後で知ったのだがあれは誕生の祝いの品でもあったらしい。正確な誕生日はわからないけど冬生まれなことだけはわかっていたのでくれたみたい。で、俺がイメージだけで覚えられる魔法は中級まで。上級の仕組みは魔法書を見たことが無いので全くわからない。だけどそのおかげかそれ以外な色々試していたら出来るようになったんだ。だから初級魔法もあっという間に使えるようになった。
「あっ」
ちょっと考え事をしていたせいか魔法の軌道が若干ずれ、首を落とすつもりが落ちたのは角だけだった。角を刈り取られ一度のけぞったウサギはその痛みに怒りますます走る速度を上げ俺へと向かってくる。
「クロッ」
『ほいよ!』
クロに声をかけると俺の肩から飛び立ちウサギとの間に飛び込んだ。それに驚いたウサギが足を止める。
「今度こそ!」
再び魔法を発動し今度は見事首が転がり落ちる。遅れてウサギの体もぱたりとその場に倒れる。
『威力はあるのにな~ 精度がなぁ~』
「わかってるよ…」
クロにだめだしされ頬を膨らませながらも俺はウサギを収納へとしまう。血抜きとかするべきなんだろうけど流石に俺は解体は出来ないので、丸っとギルドに投げている。
「鈍器なら得意なんだけどな~」
『今は魔法の練習なんだろう?』
「それもわかってる。折角使えるようになったんだし、もっとちゃんと使えるようになりたいし」
『じゃあふんばれ』
武器を振り回す動きをしていた俺は頬を膨らませつつも次の獲物を探すのだった。鈍器が得意なのは森に住んでた頃、その辺にある枝などで殴り倒していたから。今はちゃんと剣の稽古もつけてもらっている。やはり鈍器だと確実とは言えないからね。流石に頭を粉砕したら生きていないと思うけど…そこまでの力は俺にはない。
ウサギを依頼の規定数の5匹狩ると俺はギルドへと向かった。
「おかえりなさいシオンくん」
「うん、ただいま~」
カウンターで討伐の証拠としてウサギを見せ、その足で解体場へ。そこで解体を頼み肉だけ回収で他は買い取りをしてもらうことに。受け取りは明日の朝になるので預り札を貰い家へと帰った。
「帰って来たな」
「おつかれ~シオン」
「怪我はなさそうだね」
どうやら今日は3人とも仕事はお休みのようだ。まあ昨夜何も言ってなかったのでそんな気はしていたがちょっとだらけすぎなんじゃないか? 共有スペースが妙に散らかっている…何かの残骸とか…書類っぽい物とか…食べかすとか…使った食器もそのままだな。
「せめて食器ぐらい台所に片付けてよ」
文句を言いながら食器を重ねていると落ちていた書類が目に留まった。
「…にゅうがくしけんについて?」
「あ、それっ そうそうシオンに渡そうと思ってたやつだ」
「入学試験か…ってこれ5日後じゃないか!?」
「そうだったか? まあここから3日で王都には着くし大丈夫だろう」
全然大丈夫じゃない!! 試験が5日後で受け付けは4日後までって書いてある。はっきり言ってかなりぎりぎりだ。
「え、ちょっと見せてくれ…うわ~これぎりぎりじゃないか。クラックがシオンに渡すっていうから僕見てなかったんだよね…」
横からロザリも覗き込み声をあげた。
「ええー…すぐに支度して出発しないと間に合わないんじゃない?」
「依頼受けてなかったし丁度いいな」
「「「よくない!」」」
あわただしくみんな動き出した。3日間の旅の準備だからね。俺も慌てて冒険者ギルドへと戻り肉も受け取ることが出来なくなったので買い取りに変えてもらって、お金はギルドで保管してもらうことに。それにしても学園が夏から始まるだなんて知らなかったんだけど。こういった大事なことはちゃんと教えて欲しいものだよね。
『あいつらバカだな~』
「そう言うこと言わないの」
『お前だって思ってんだろう?』
俺は何も言えず視線を逸らす。
「そんなことはどうでもいいよそれよりも準備を進めないと」
『けっ』
俺は町を走り回って食材を買い集めた。どうせなら干し肉だけじゃない方がいいからね。あの3人は放置しておくと多分ろくな食べ物を用意しないし。あーそうだ帰ったらパンケーキもたくさん焼いておこうか。
6歳になり、森に行かなければ町の周辺だけなら一人で出歩いてもいいと許可が下り、俺は今まさに町の外でこの状況に至った。相手は少し体が大きくて角が生えたウサギ。角は薬の材料にもなるし、毛皮はとても触り心地がいいので割と人気がある。そして肉も食べられる。ものすごくおいしいというわけではないが、一般的によく出回っている肉なのだ。
「…っ エアカッター!」
相手が動き出す前に魔法を使用。これは風の初級魔法だ。以前俺が5歳になったときに貰った魔法書がきっかけでイメージさえすれば色んな魔法に応用が聞くことに気がついた。後で知ったのだがあれは誕生の祝いの品でもあったらしい。正確な誕生日はわからないけど冬生まれなことだけはわかっていたのでくれたみたい。で、俺がイメージだけで覚えられる魔法は中級まで。上級の仕組みは魔法書を見たことが無いので全くわからない。だけどそのおかげかそれ以外な色々試していたら出来るようになったんだ。だから初級魔法もあっという間に使えるようになった。
「あっ」
ちょっと考え事をしていたせいか魔法の軌道が若干ずれ、首を落とすつもりが落ちたのは角だけだった。角を刈り取られ一度のけぞったウサギはその痛みに怒りますます走る速度を上げ俺へと向かってくる。
「クロッ」
『ほいよ!』
クロに声をかけると俺の肩から飛び立ちウサギとの間に飛び込んだ。それに驚いたウサギが足を止める。
「今度こそ!」
再び魔法を発動し今度は見事首が転がり落ちる。遅れてウサギの体もぱたりとその場に倒れる。
『威力はあるのにな~ 精度がなぁ~』
「わかってるよ…」
クロにだめだしされ頬を膨らませながらも俺はウサギを収納へとしまう。血抜きとかするべきなんだろうけど流石に俺は解体は出来ないので、丸っとギルドに投げている。
「鈍器なら得意なんだけどな~」
『今は魔法の練習なんだろう?』
「それもわかってる。折角使えるようになったんだし、もっとちゃんと使えるようになりたいし」
『じゃあふんばれ』
武器を振り回す動きをしていた俺は頬を膨らませつつも次の獲物を探すのだった。鈍器が得意なのは森に住んでた頃、その辺にある枝などで殴り倒していたから。今はちゃんと剣の稽古もつけてもらっている。やはり鈍器だと確実とは言えないからね。流石に頭を粉砕したら生きていないと思うけど…そこまでの力は俺にはない。
ウサギを依頼の規定数の5匹狩ると俺はギルドへと向かった。
「おかえりなさいシオンくん」
「うん、ただいま~」
カウンターで討伐の証拠としてウサギを見せ、その足で解体場へ。そこで解体を頼み肉だけ回収で他は買い取りをしてもらうことに。受け取りは明日の朝になるので預り札を貰い家へと帰った。
「帰って来たな」
「おつかれ~シオン」
「怪我はなさそうだね」
どうやら今日は3人とも仕事はお休みのようだ。まあ昨夜何も言ってなかったのでそんな気はしていたがちょっとだらけすぎなんじゃないか? 共有スペースが妙に散らかっている…何かの残骸とか…書類っぽい物とか…食べかすとか…使った食器もそのままだな。
「せめて食器ぐらい台所に片付けてよ」
文句を言いながら食器を重ねていると落ちていた書類が目に留まった。
「…にゅうがくしけんについて?」
「あ、それっ そうそうシオンに渡そうと思ってたやつだ」
「入学試験か…ってこれ5日後じゃないか!?」
「そうだったか? まあここから3日で王都には着くし大丈夫だろう」
全然大丈夫じゃない!! 試験が5日後で受け付けは4日後までって書いてある。はっきり言ってかなりぎりぎりだ。
「え、ちょっと見せてくれ…うわ~これぎりぎりじゃないか。クラックがシオンに渡すっていうから僕見てなかったんだよね…」
横からロザリも覗き込み声をあげた。
「ええー…すぐに支度して出発しないと間に合わないんじゃない?」
「依頼受けてなかったし丁度いいな」
「「「よくない!」」」
あわただしくみんな動き出した。3日間の旅の準備だからね。俺も慌てて冒険者ギルドへと戻り肉も受け取ることが出来なくなったので買い取りに変えてもらって、お金はギルドで保管してもらうことに。それにしても学園が夏から始まるだなんて知らなかったんだけど。こういった大事なことはちゃんと教えて欲しいものだよね。
『あいつらバカだな~』
「そう言うこと言わないの」
『お前だって思ってんだろう?』
俺は何も言えず視線を逸らす。
「そんなことはどうでもいいよそれよりも準備を進めないと」
『けっ』
俺は町を走り回って食材を買い集めた。どうせなら干し肉だけじゃない方がいいからね。あの3人は放置しておくと多分ろくな食べ物を用意しないし。あーそうだ帰ったらパンケーキもたくさん焼いておこうか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる