336 / 356
御神木防衛戦
319. 御神木様の記憶
しおりを挟む
最初に見えてきたのは真っ暗な場所にいた御神木様が何かに気がついて顔をあげたところだった。両手を眺めあたりを見まわした後立ち上がる。ふわりと御神木様が浮いたように見えたがどうやら足元の景色が変化したようだった。次の瞬間御神木様は御神木の傍へと立っていた。
「守りが…」
守りというのは巫女との契約で半径2kほどに発生する聖域のことだろうか。この反応を見るとその聖域が無くなってしまったのだろう。つまり巫女が巫女でなくなる状況になったということ。例えば…巫女が死んでいなくなるとか。
次に見えてきたのは聖域が無くなって周辺が荒れ始めている状態だった。御神木様は真っ黒な場所ではなく御神木の傍でその様子を眺めている。すぐ目の前には見知らぬ人が数人…あたりの地面をスキルを使ったり魔法を使ったりしながら掘り返していた。
「こんなでっかいものを運ぶことになるとはね~」
「仕方がないよ、王族にも見栄というものがあるんだろうさ」
「ほら、話ばかりしていないで手を動かせ~」
「へーい」
どうやら御神木様を掘り出しここからどこかへと移動させようとしている。話からすると御神木様を移動するように命令したのは王族らしい。御神木様は声が届かないことがわかっているのか無言でただ涙を流していた。
場面が切り替わる。
御神木様の目の前で祈る女性…これはルリアーナさんだ。ということはこの御神木様はエルフの里にいる御神木様になる。
「どうかされましたか?」
御神木様の視線があらぬ方を向いていたのに気がついたルリアーナさんが声をかけた。目を細め遠くを見つめる御神木様はゆっくりと視線をルリアーナさんへと戻しつぶやいた。
「森にやってきた若者の保護を」
「森に…ですか?」
疑問に感じながらもルリアーナさんはその場を立つ。
少しするとルリアーナさんに連れられて一人の男性が…ってたけだ。今のたけよりも少し大人びた感じの。たけは一人ではなくもう一人一緒に連れてこられていた。10歳? いや8歳かなそのくらいの女の子でその顔はどう見ても雪乃の顔で…
御神木様の前に連れてこられた2人は説明を受けた。それは世界が繋がってしまったためにその地点にいたたけと雪乃がこの世界へと来てしまったという話だ。自力で帰るのは構わないが御神木様が帰すことは出来ないそうで、そのお詫びとしてこの世界で生きていくための力を2人は貰う。たけはこの世界で生きていくための強さを、雪乃はこの世界で生きていくための知識を望む。
何度か御神木様とたけと雪乃が会話をするのが通り過ぎると。そのうちたけしかいなくなった。御神木様の記憶なのでこのあたりははっきりとしていない。それでも時間は過ぎていく…姿がほとんど変わらないルリアーナさんと年を取っていくたけ、どうやら2人は魔方陣の研究をしていたようだ。
ある日遠くで魔方陣を使用しているのを御神木様は眺めていた。御神木様の顔が歪む…
「あれは失敗作…」
膝をついているたけに寄り添うルリアーナさんと魔方陣を奪って去っていく人達。
次に場面が変わると御神木様の前でルリアーナさんが泣いていた。
「泣いても何も変わりませんよ? それよりも彼を助けたいと思わないのですか」
「助ける…助けたいですっ」
「ならば子供たちの成長を待ち、救世主となるものをここへ」
「救世主ですか?」
「彼をここに連れてきてこれまでのことを話せばよいのです。必ず手を貸してもらえます…そうですね、子供たちが20を超えたあたりで人族の住む町へと向かわせれば…彼はそこに現れます」
これが俺のことか。話を聞いたルリアーナさんが困惑した顔をしていた。その傍らにはまだ歩き始めたばかりの幼い女の子が2人。ルーとジエルだな。
また場面が変わった。
さびれた場所に建つ御神木が枯れ始めていた。その御神木に背を預けて座る御神木様。その視線の先でちらほらと人が通過する。その中の一人が御神木の元へとやってくる。御神木様の幹に触れ何かぶつぶつと言葉をだす。
「…だめか。御神木だというから何か力を秘めているかと思ったのに」
顔をあげるとそれはとても見覚えのある人…雪乃だ。姿を見なくなってから何をしていたんだ? そのまま雪乃は去っていき、御神木様は何もしゃべらない。
場面が暗くなる。御神木様の前には床に座り込んでいる俺が…これはあれか。俺が召喚されたときのやつだ。ここまで記憶を眺めたところで見えていたものが薄れていく。どうやら複製が完了するまでの間見せられていたものだったのだろう。見えている景色は作戦をやっていた場所、目の前には御神木様がいて横から俺の顔を覗き込む響子がいた。
「守りが…」
守りというのは巫女との契約で半径2kほどに発生する聖域のことだろうか。この反応を見るとその聖域が無くなってしまったのだろう。つまり巫女が巫女でなくなる状況になったということ。例えば…巫女が死んでいなくなるとか。
次に見えてきたのは聖域が無くなって周辺が荒れ始めている状態だった。御神木様は真っ黒な場所ではなく御神木の傍でその様子を眺めている。すぐ目の前には見知らぬ人が数人…あたりの地面をスキルを使ったり魔法を使ったりしながら掘り返していた。
「こんなでっかいものを運ぶことになるとはね~」
「仕方がないよ、王族にも見栄というものがあるんだろうさ」
「ほら、話ばかりしていないで手を動かせ~」
「へーい」
どうやら御神木様を掘り出しここからどこかへと移動させようとしている。話からすると御神木様を移動するように命令したのは王族らしい。御神木様は声が届かないことがわかっているのか無言でただ涙を流していた。
場面が切り替わる。
御神木様の目の前で祈る女性…これはルリアーナさんだ。ということはこの御神木様はエルフの里にいる御神木様になる。
「どうかされましたか?」
御神木様の視線があらぬ方を向いていたのに気がついたルリアーナさんが声をかけた。目を細め遠くを見つめる御神木様はゆっくりと視線をルリアーナさんへと戻しつぶやいた。
「森にやってきた若者の保護を」
「森に…ですか?」
疑問に感じながらもルリアーナさんはその場を立つ。
少しするとルリアーナさんに連れられて一人の男性が…ってたけだ。今のたけよりも少し大人びた感じの。たけは一人ではなくもう一人一緒に連れてこられていた。10歳? いや8歳かなそのくらいの女の子でその顔はどう見ても雪乃の顔で…
御神木様の前に連れてこられた2人は説明を受けた。それは世界が繋がってしまったためにその地点にいたたけと雪乃がこの世界へと来てしまったという話だ。自力で帰るのは構わないが御神木様が帰すことは出来ないそうで、そのお詫びとしてこの世界で生きていくための力を2人は貰う。たけはこの世界で生きていくための強さを、雪乃はこの世界で生きていくための知識を望む。
何度か御神木様とたけと雪乃が会話をするのが通り過ぎると。そのうちたけしかいなくなった。御神木様の記憶なのでこのあたりははっきりとしていない。それでも時間は過ぎていく…姿がほとんど変わらないルリアーナさんと年を取っていくたけ、どうやら2人は魔方陣の研究をしていたようだ。
ある日遠くで魔方陣を使用しているのを御神木様は眺めていた。御神木様の顔が歪む…
「あれは失敗作…」
膝をついているたけに寄り添うルリアーナさんと魔方陣を奪って去っていく人達。
次に場面が変わると御神木様の前でルリアーナさんが泣いていた。
「泣いても何も変わりませんよ? それよりも彼を助けたいと思わないのですか」
「助ける…助けたいですっ」
「ならば子供たちの成長を待ち、救世主となるものをここへ」
「救世主ですか?」
「彼をここに連れてきてこれまでのことを話せばよいのです。必ず手を貸してもらえます…そうですね、子供たちが20を超えたあたりで人族の住む町へと向かわせれば…彼はそこに現れます」
これが俺のことか。話を聞いたルリアーナさんが困惑した顔をしていた。その傍らにはまだ歩き始めたばかりの幼い女の子が2人。ルーとジエルだな。
また場面が変わった。
さびれた場所に建つ御神木が枯れ始めていた。その御神木に背を預けて座る御神木様。その視線の先でちらほらと人が通過する。その中の一人が御神木の元へとやってくる。御神木様の幹に触れ何かぶつぶつと言葉をだす。
「…だめか。御神木だというから何か力を秘めているかと思ったのに」
顔をあげるとそれはとても見覚えのある人…雪乃だ。姿を見なくなってから何をしていたんだ? そのまま雪乃は去っていき、御神木様は何もしゃべらない。
場面が暗くなる。御神木様の前には床に座り込んでいる俺が…これはあれか。俺が召喚されたときのやつだ。ここまで記憶を眺めたところで見えていたものが薄れていく。どうやら複製が完了するまでの間見せられていたものだったのだろう。見えている景色は作戦をやっていた場所、目の前には御神木様がいて横から俺の顔を覗き込む響子がいた。
3
あなたにおすすめの小説
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる