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平民の立場と契約
ルー視点②
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今日も私はいつものように薬草を採取してそれをジエルい届けてから店を出している。すっかりこの生活にも慣れたけれども、初めてこの町へ来た時ほどお金はないので結構生活はぎりぎりだ。そういえばリョータさんをジエルに会わせてからジエルの様子が少しおかしい気がする。もしかしなくてももしかするのかも…だけど今はまだはっきりとはしていないかな。もしわかったのなら流石にちゃんとジエルも教えてくれるはず。そのために私達はここへ来たのだからね。
「どうだいルー売れ行きは」
「リョータさんっ はい、コップはすぐ売れましたよ~ おかげでこちらも稼がせて貰いました!」
丁度リョータさんのことを考えていたので少し驚いて声が大きくなってしまった。ちょっと恥ずかしい。
「じゃあ今日もお願いしていいかな?」
「もちろんですよ。あ、コップは1つでお願いしますね」
「ほいほい、じゃあコップと…これってどうなのかな?」
リョータさんが取り出したものを見て私はさらに驚いた。話に聞いたことがある食器の一つなのは間違いなさそう?
「ツヤツヤです…これは?」
「陶器で出来たカップだね」
「焼き物なんですか? 貴族の人とかが使うカップにそんなのがあると聞いた事がありますが…え? リョータさんは貴族様なのですか?」
貴族というのがどんな人たちなのか話だけは聞いて知っている。もちろんすべての人がそうだとは思っていないけど、極力かかわりたくはない。現にそれがきっかけとなり私達の目的も先へと進むことが出来るらしいのだけど、喜んでかかわる行動はしたくはないのだ。
話をしているとどうやらリョータさんは貴族ではないらしい。よかったとほっとする。
「あげようか?」
「ふえ? だ、だめですよ…こんな高そうな物…あれ? 前もこんなやりとりしましたよね」
余分なことを考えながらぼんやりとリョータさんと会話を続けていると、以前似たような会話をしていたことを思い出して、また私は驚く。するとリョータさんが笑い出し、私も釣られて笑ってしまった。
「おい、そこのお前。なぜこんな物を持っている?」
「あっ」
しまった…会話に夢中になっていて周りを気にしていなかった。突然話しかけてきた人に手に持っていたカップを奪われてしまい、慌ててその方向へと視線を向ける。
「なぜだと聞いている。ほう…そっちはガラスか」
「あ…えっと…」
この人貴族だ! 見た目が話に聞いていた貴族そのもので私はどうしていいのかわからず言葉に詰まってしまう。無駄についた贅肉、妙に高級な衣装、そして偉そうな態度…まちがいない。
「そ、それは預かりもので…」
「ふーん? どうせ盗品かなにかなんだろう? この店は盗品を扱うのか?」
「そんな…っ」
「私が然るべき場所へと直々に返してやるからありがたく思え」
「あ…っ」
問答無用という態度でその男はカップとコップを持って行ってしまった。私は何も言えなくてただその背中を眺めていた。
「ルー…」
背後からリョータさんの声がして私はびくりと肩を震わせた。リョータさんは心配そうな顔をしてこちらを見ていた。悔しくて悲しくて、何もすることが出来なかった自分が許せなくて涙が出てきた。商人という立場は本当にもどかしいものだと思う。ここで貴族に逆らってしまうと店が出せなくなり、生活に困ることになる。冒険者活動をすればいいのだけど、長いことジエルの傍を離れることは出来ない。もどかしい…
リョータさんが手伝ってくれて店を片付けると私を家へと送ってくれた。その帰り道耳に入ってきた言葉があった。王都で勇者のお披露目があるという情報だった。さっきまで落ち込んでいた気持ちが消えた瞬間だった。勇者…それは───
「どうだいルー売れ行きは」
「リョータさんっ はい、コップはすぐ売れましたよ~ おかげでこちらも稼がせて貰いました!」
丁度リョータさんのことを考えていたので少し驚いて声が大きくなってしまった。ちょっと恥ずかしい。
「じゃあ今日もお願いしていいかな?」
「もちろんですよ。あ、コップは1つでお願いしますね」
「ほいほい、じゃあコップと…これってどうなのかな?」
リョータさんが取り出したものを見て私はさらに驚いた。話に聞いたことがある食器の一つなのは間違いなさそう?
「ツヤツヤです…これは?」
「陶器で出来たカップだね」
「焼き物なんですか? 貴族の人とかが使うカップにそんなのがあると聞いた事がありますが…え? リョータさんは貴族様なのですか?」
貴族というのがどんな人たちなのか話だけは聞いて知っている。もちろんすべての人がそうだとは思っていないけど、極力かかわりたくはない。現にそれがきっかけとなり私達の目的も先へと進むことが出来るらしいのだけど、喜んでかかわる行動はしたくはないのだ。
話をしているとどうやらリョータさんは貴族ではないらしい。よかったとほっとする。
「あげようか?」
「ふえ? だ、だめですよ…こんな高そうな物…あれ? 前もこんなやりとりしましたよね」
余分なことを考えながらぼんやりとリョータさんと会話を続けていると、以前似たような会話をしていたことを思い出して、また私は驚く。するとリョータさんが笑い出し、私も釣られて笑ってしまった。
「おい、そこのお前。なぜこんな物を持っている?」
「あっ」
しまった…会話に夢中になっていて周りを気にしていなかった。突然話しかけてきた人に手に持っていたカップを奪われてしまい、慌ててその方向へと視線を向ける。
「なぜだと聞いている。ほう…そっちはガラスか」
「あ…えっと…」
この人貴族だ! 見た目が話に聞いていた貴族そのもので私はどうしていいのかわからず言葉に詰まってしまう。無駄についた贅肉、妙に高級な衣装、そして偉そうな態度…まちがいない。
「そ、それは預かりもので…」
「ふーん? どうせ盗品かなにかなんだろう? この店は盗品を扱うのか?」
「そんな…っ」
「私が然るべき場所へと直々に返してやるからありがたく思え」
「あ…っ」
問答無用という態度でその男はカップとコップを持って行ってしまった。私は何も言えなくてただその背中を眺めていた。
「ルー…」
背後からリョータさんの声がして私はびくりと肩を震わせた。リョータさんは心配そうな顔をしてこちらを見ていた。悔しくて悲しくて、何もすることが出来なかった自分が許せなくて涙が出てきた。商人という立場は本当にもどかしいものだと思う。ここで貴族に逆らってしまうと店が出せなくなり、生活に困ることになる。冒険者活動をすればいいのだけど、長いことジエルの傍を離れることは出来ない。もどかしい…
リョータさんが手伝ってくれて店を片付けると私を家へと送ってくれた。その帰り道耳に入ってきた言葉があった。王都で勇者のお披露目があるという情報だった。さっきまで落ち込んでいた気持ちが消えた瞬間だった。勇者…それは───
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