【召喚魔法ドンナー】はゴミ魔法かと思ったが意外と使えるっぽい

れのひと

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倉庫

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 日が傾いて空の赤みが闇へと変化していく。俺たちは約束通り5番倉庫の前へとやって来ていた。その場にあるのは4つの息づかい…俺、ユニ父、トーアル、バース…

「そろそろ時間だね」
「ああ…」
「2人はフードを被っておいてね」

 トーアルとバースにはフードを被りついて来てもらうことにしている。ちなみにバースはトーアルの息子に言われて倉庫を借りただけで詳しいことは知らなかった。むしろその息子から露店に並べていた食べ物の名前をちらりと聞いただけだったみたいだ。こっちのことを説明するととても驚いて顔面蒼白になっていたくらい。

「来たか…」
「ユニ!」
「父さんっ それに天使様も!! やっぱり天使様は僕のことを見捨てることはありませんでしたっ だから言ったでしょう? 絶対来てくれるって」
「…ちょっとお前は黙ってろ!」
「きゃふっ」

 うんざりした顔をした男はユニを床へと押さえつけた。これはあれか…ユニにさんざん天使様について聞かされてうんざりしているのか…悪いことをしているのは相手なのに若干かわいそうに思えてくる不思議。

「娘に乱暴をしないでくれっ」
「怪我はさせていないだろう? それにしても一人じゃないのか…まあこっちの方が人数多いからいいけど」

 あれ…今何か耳慣れない言葉が聞こえてきたきたきがするんだが。

 男の周りには5人の男たちが立っている。なんだろう男の護衛? まさか暴力をふるう系の人たちとか?? それにしてもやっぱり予想通りだった。

「うまかったんですかね。俺の店で売っていたものは」
「ああそうだよ悔しいがなってそんなことはどうでもいいんだ。レシピをよこせ! それさえあれば俺は無事に…っ」
「やっぱりそう言うことだったんだね」
「なんだお前は」

 フードを被っていたトーアルがそのフードを取り払う。するとじっとトーアルを見ていた男の顔が変化していき、それと同時に落ち着きが無くなってくる。

「な…な…!?」
「ほら坊ちゃんがそう言ってんださっさとレシピを出せってんだ!!」

 顔色が悪くなっていく男のことが見えていないのか周りにいた男がそう言いながらこっちへと近づいてくる。おっとこれはちょっと想定外だな…流石に力でねじ伏せられるという展開は望んでいない。というか困る。はっきり言って殴り合いの喧嘩とかしたことないし、運動神経だって並み。内心冷や汗だらだらものだ。ほら…早く誰でもいいから何か暴力をやめさせる魔法の言葉を!!

「誰もあげないなんて言ってないだろう?」
「じゃあさっさと出しなっ」

 俺が若干震える言葉で返事を返すと俺の服につかみかかってくる。実はレシピの書き出しはしていない。教えればいいかってくらいに思っていたからだ。なのですぐに渡す物はもっていない。
 何か…何か出来ないのか!? そうだ召喚っ 何かこの男の上に出すだけでいい。何がいい? 軽いけがくらいならいいが大怪我をしなくて、行動の妨害になるもの…

「ド…ドンナー!!」

 俺は男の頭の上に手を向け召喚をした。俺が選んだものそれは…

「いたっ? …って、何が…痛い! ってか冷たっ!?」

 男の頭の上から降り注ぐのは止まることのない氷。ジュースや麺を冷やすために使うものだ。よかった…製氷機そのままが出なくて。この辺はうまく調整すれば案外いい感じに出せるみたいだ。
 氷に驚いた男が俺の服を掴んでいた手を放している。

「く…っ この!」
「わ…」

 逆に男は怒り出し腕を振り上げ俺にその拳をおろした。

「ぐはぁっ!?」

 殴られて体が飛ばされる。思ったよりも力のあるパンチだったみたいだ。まあ殴られたのは俺じゃないけど。

「な…なーー!?」
「森村~~~~っ いきなり何しやがる!!」

 そう保管庫から目の前に取り出した井之頭先輩だ。呼び出してすぐに殴られて飛ばされて状況が見えていないのか俺のせいだと思って怒っている。まあ俺のせいといえばそうなんだけど。そして俺を殴ろうとしてきた男は突然殴った相手が違って混乱していた。

「いい加減にしなさい!!」

 俺が井之頭先輩を収納していると、トーアルが大きな声を出した。

「父さん…」
「自分の力で新しいものを生み出しなさいと言いました。珍しいからと人様のものをこんな形で奪おうなんてとんでもないっ」

 俺を殴ろうとしていた男がこの2人の関係に気がついて驚いた顔をする。

 そう実はトーアルは息子に課題を出していたんだ。自分の力で新しいものを生み出したら、商会を引き継がせてくれると。この男は俺の露店で初めて見るものに驚き、さらに食べてこれを手に入れれば…とレシピを手に入れようとしたんだ。まあ…普通に言えば教えたんだけどもね? 別にこれで金儲けがしたいわけじゃないし。何をするにもお金はいると思うけど、今は最低限必要なだけあればいい。俺にとってここは何も知らない新しい世界だ。ゆっくりと楽しんでいければ問題ないのだ。

「今回は本当に申し訳ありませんでした」

 トーアルが息子の頭を押さえつけながら俺に謝る。

「息子にはきつく言い聞かせますので何卒…何卒お願いします」
「…何を?」
「カイ君…息子を犯罪者にしたくないと言っているんだよ」
「ああ…別にいいですよ俺は。ユニが問題ないなら」
「僕も天使様がいいならいいですっ」
「ありがとうございますっ」

 終始トーアルは謝っているけど息子の方は何やら気に入らないような顔をしているな。

「あーそうだレシピあげますよ」
「えっ いやでも!!」
「自分で作るの面倒なんで作って広めてもらえると嬉しいんだけど?」
「わかりました。それが望みとあればそのようにっ  後日商会の方で伺いますので、よろしくお願いします。ほら、お前は鍛えなおしだ行くぞ!」

 トーアルは息子を引きずるようにして連れて行った。そして残された男達もその後をついていく…護衛かなんかだったんだろうか? そして残された俺たちはバースとちょっとした会話をしてから倉庫を出たのだった。
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