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すべてのはじまり③
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かわいらしい王女はお付きらしい黒髪の少女に話しかけては、楽しそうに笑っている。なんだかそこだけ淡い光に包まれているような気がした。
(……クレメンティ―ナ)
リカルドに教えられた名前が心にしっかり刻み込まれ、ロレンツォは思わず目をしばたたく。こんなことは生まれて初めてだった。
庭園には王女を取り巻く女官たちの他に、貴族の子弟らしい十数人の少年が集まっていた。
みなロレンツォより身体が大きく、少し年上に見える。リカルドは十四歳だから、たぶんそれくらいなのだろう。
「さてと、そろそろ始まるころだな。おいで、ロレンツォ」
ふいにリカルドが歩きだしたので、ロレンツォも慌てて後に続いた。
「少し遠いから、もっとよく見えるところに行くぞ」
「あ、はい」
大国の宰相の息子であるにもかかわらず、リカルドは大らかな性格で、気取ったところがない。
王子とはいえ属国から来たロレンツォにも自分を呼び捨てにさせ、弟のようにかわいがってくれていた。
「よし。ここがいい」
彼が足を止めた場所は、白い花に彩られたジャスミンの木のそばだ。
先ほどより王女との距離がずっと近くなり、なぜだかロレンツォの鼓動が少し速まった。
「おもしろい催しって何ですか?」
クレメンティ―ナに視線を奪われたまま、ロレンツォはとこかうわの空で問いかける。
「今日、この中からクレメンティ―ナ様付きの従者が決まるんだ」
「……従者?」
「そう。王女様が先月で十二歳になられたから、同じ年ごろの貴族の男子が集められたのさ。誰が選ばれるか見ものだぞ」
ロレンツォは首をかしげた。
王女に付き従うのは侍女の役目だし、身の回りの世話は大勢の女官がしてくれるはずだ。
どうしてわざわざ従者を選ぶのだろう? それに選ばれた者はいったい何をするのだろう?
「リカルドは参加しないのですか?」
「あいにく私は騎士団への入隊が決まっているから、従者になることはできない。それに」
リカルドは声を低めて、「婚約者もいるから」と頬を染めた。
「えっ、婚約者?」
「あ、おいこら! 静かに!」
慌てふためいたリカルドに口を塞がれ、ロレンツォは苦しくて手足をバタつかせる。
「ん、んん~っ!」
すると気配を感じたのか、まず黒髪の少女が、続いてクレメンティ―ナもこちらの方を見た。
「まあ、リカルドじゃないの」
二人が驚いた様子で足早に近づいてきて、ロレンツォはようやくリカルドから解放された。
「リカルド!」
ごく親しい間柄なのか、クレメンティ―ナは腕組みをして、自分よりずっと背が高いリカルドをにらんでいる。
「こんなところでいったい何しているの? それに小さな子をいじめるなんて、あなたらしくなくてよ。かわいそうに、この子ったら口もきけないで固まっているじゃないの」
「ク、クレメンティ―ナ様! いや、私は決していじめていたわけではなく――」
ロレンツォはいじめられてなどいないし、凍りついたように動けなくなったのも、もちろんリカルドのせいではない。
しかしそう伝えたくても声が出なかった。それどころか、どういうわけか呼吸さえうまくできない。
(……クレメンティ―ナ)
リカルドに教えられた名前が心にしっかり刻み込まれ、ロレンツォは思わず目をしばたたく。こんなことは生まれて初めてだった。
庭園には王女を取り巻く女官たちの他に、貴族の子弟らしい十数人の少年が集まっていた。
みなロレンツォより身体が大きく、少し年上に見える。リカルドは十四歳だから、たぶんそれくらいなのだろう。
「さてと、そろそろ始まるころだな。おいで、ロレンツォ」
ふいにリカルドが歩きだしたので、ロレンツォも慌てて後に続いた。
「少し遠いから、もっとよく見えるところに行くぞ」
「あ、はい」
大国の宰相の息子であるにもかかわらず、リカルドは大らかな性格で、気取ったところがない。
王子とはいえ属国から来たロレンツォにも自分を呼び捨てにさせ、弟のようにかわいがってくれていた。
「よし。ここがいい」
彼が足を止めた場所は、白い花に彩られたジャスミンの木のそばだ。
先ほどより王女との距離がずっと近くなり、なぜだかロレンツォの鼓動が少し速まった。
「おもしろい催しって何ですか?」
クレメンティ―ナに視線を奪われたまま、ロレンツォはとこかうわの空で問いかける。
「今日、この中からクレメンティ―ナ様付きの従者が決まるんだ」
「……従者?」
「そう。王女様が先月で十二歳になられたから、同じ年ごろの貴族の男子が集められたのさ。誰が選ばれるか見ものだぞ」
ロレンツォは首をかしげた。
王女に付き従うのは侍女の役目だし、身の回りの世話は大勢の女官がしてくれるはずだ。
どうしてわざわざ従者を選ぶのだろう? それに選ばれた者はいったい何をするのだろう?
「リカルドは参加しないのですか?」
「あいにく私は騎士団への入隊が決まっているから、従者になることはできない。それに」
リカルドは声を低めて、「婚約者もいるから」と頬を染めた。
「えっ、婚約者?」
「あ、おいこら! 静かに!」
慌てふためいたリカルドに口を塞がれ、ロレンツォは苦しくて手足をバタつかせる。
「ん、んん~っ!」
すると気配を感じたのか、まず黒髪の少女が、続いてクレメンティ―ナもこちらの方を見た。
「まあ、リカルドじゃないの」
二人が驚いた様子で足早に近づいてきて、ロレンツォはようやくリカルドから解放された。
「リカルド!」
ごく親しい間柄なのか、クレメンティ―ナは腕組みをして、自分よりずっと背が高いリカルドをにらんでいる。
「こんなところでいったい何しているの? それに小さな子をいじめるなんて、あなたらしくなくてよ。かわいそうに、この子ったら口もきけないで固まっているじゃないの」
「ク、クレメンティ―ナ様! いや、私は決していじめていたわけではなく――」
ロレンツォはいじめられてなどいないし、凍りついたように動けなくなったのも、もちろんリカルドのせいではない。
しかしそう伝えたくても声が出なかった。それどころか、どういうわけか呼吸さえうまくできない。
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