ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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12話 大金貨がインフレを起こしている

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 翌日の夕方、俺が訓練でへろへろになって宿で休んでいるところにオリバーとゴードンは帰ってきた。
なんだか冴えない顔色をした2人を俺は部屋に呼び寄せた。

 俺も学習している。2人がいない間に部屋を替えてもらい、今の部屋は8畳ほどの大きさになっている。
小机は端に寄せられ、真ん中にはでんと、ティーテーブルが置かれている。
これもなー、王宮の部屋にあったときは小ぶりで落ち着きがあると思っていたんだが、この宿の部屋では存在感を増し、燦然と輝いている。場所も取るし、回りとの違和感がすごすぎる。

「ジルベスター様、これはなんですか?」

 ほら、早速ゴードンに突っ込まれた。

「いや、さー、兄上が持たしてくれたものだし、せっかくだから使おうと思って設置したんだが、この部屋に似合わなすぎて・・・どうしたもんかな?」

「これはお部屋に置かれていたティーテーブルですね。なんだか懐かしいです」

「まあな、それに、その内みんなが揃えば必要になるとは思っているんだが」

「無駄に金を使うこともないでしょうから、これはこのままでいいでしょう」

 あまりよくなさそうな顔をしてゴードンが許容の言葉を言う。

「疲れただろう、まずは座ってくれ。今、お茶を入れるから」

 俺は小机の上に置いてあった馴染んだ茶器を手にした。
だが、ゴードンは顔色を変えると、立ち上がり、俺の手から茶器を奪った。

「ジルベスター様に入れさせるなど、とんでもない」

 失礼な、俺だって茶ぐらい入れられるぞ。日本茶は毎日入れていた。朝起きぬけに一杯飲んで目を覚ますのが、俺の習慣だった。急須にお茶葉を入れ、上から沸騰するより前のお湯を注げば、そこそこのものは出来た。毎日飲んでいたのだから、問題はないと思う。(家からの差し入れの高級茶葉を使っていたので、会社の安い茶葉で入れたお茶より美味しいのは当然、なんにでも超えられない壁というものはある。女子社員の方ご苦労様。こいつは前世でも所詮はただのお坊ちゃん。ついでにコーヒー党だということも、付け加えておく)

 同じにやれば、きっとうまくいく。紅茶も日本茶もそうそう変わりはないと思うぜ。

「ジルベスター様」

「あぁ、めんどうだから、ここではジルでいい」

「ではジル様、このティーセットはブライトン製の高級品で大金貨5枚はする品です。
茶葉はアーリシャーのファーストフラッシュでこれも産出量が少なく手にいれがたいものです。
はっきり申し上げて、ジル様の腕で美味しく入れられるとは思えません。
疲れているので美味しいお茶をいただきたいのです。ご遠慮ください」

「あ、ああ、わかった」

 ゴードンになにが起こったんだ。昨日、打ちひしがれていた男と同一人物とは思えない。
彼はお茶を入れ終わると、俺の前にカップを置き、自分も席に座ると、お茶を一口飲んだ。
そして、ほっと、ため息をついた。

「それでジル様、私も貴方にお仕えするということでよろしいのでしょうか」

「あぁ、よろしく頼む。
それで、給料と衣食住はお・「必要ありません」・・えっ、だって・・・」

「簡単に申し上げると、王太子殿下がお渡しくださいました」

「兄上が?」

「まず金のことだけ申し上げます。
オリバーと私に各々大金貨30枚が下賜されました。ぎりぎりの生活費のみだがと言われました。
そして、ジル様には300枚です。」

「えっ、ちょっと・・・」

「続けます。オリバーは元々大金貨30枚を持っていたそうですが、父君からの金といわれ、新たに大金貨100枚を渡されました。私は所有する大金貨50枚に加え、父上からの金といって、大金貨200枚をいただきました。
我が家は侯爵家ですから、多分一番多いのでしょう。あとの2人は伯爵家の次男と子爵家の嫡男なので、かなり少なくなると思います。

これらの金も必要とあらば出させていただきますので遠慮なくお申し付けください」

 いっきにゴードンのやつは言い切った。俺にどうせいというんだろう。

「それと大事なことですので、最初に申し上げます。
王太子殿下からのご指示です。3年間は戻らず、民間にまぎれて暮らすようにとのことです」

 ゴードンはポーチから大金貨の入っているだろう袋を取り出すと、俺の前に差し出した。

「私もオリバーも家にあったマジックポーチをそれぞれの父親から殿下に託されたということで手に入れましたので、荷物も分散して持てます。
これで行動の自由が利きますので安心ですね」

 そうか、それはよかった。
ゴードンは安心したようにお茶を飲む。人の大金を預かっていると、気が重いよね。

 のんびりとお茶を飲みながらゴードンはオリバーに視線をやる。あとはお前が話せということだな。

「実はですね、私たちは王宮には入っていないのです。アルトの下賜公園の生垣の横で、座り込んで話をしました」

 兄上、なにをなさっているんですか・・・

「金を最初に渡され、3年間戻らないようにとの指示を出された後に、理由として、それだけ経てば、フィーゲル侯爵令嬢も22歳になる。さすがに婚姻を結んでいるだろうと言われたのです。
そしてこのリストを渡されました。フィーゲル派閥の人間のリストです。
こちらの領地には立ち寄らないようにとのことでした。
できたら王領にいてくれると安心なんだがと続けられました」

 元婚約者の家だろう、何があったのか?

「あとはですね、今護衛についている騎士は演習という名目で動かしているそうです。
多分、最長で残り一ヶ月、それが期限だそうなので、それまでに護衛騎士を最大8名まで選んで置くようにとのことでした。それ以上は、ごまかすのが難しいそうです。
そして宮廷の状況はお前たちが知っているものと変わらないと言われて、慌しく去っていかれました」

 う~ん、俺は行儀悪くテーブルに肘をつき、金貨の袋をながめた。

「ジル様、大金貨など渡されても使いにくいと思われていませんか」
 
 えっ、なんでわかったの?

「それは多分王太子殿下の隠し金・・・下世話な言い方をすれば、へそくりです。
細かい金などないと思います。白金貨を渡されなかっただけよしとしなければならないと思います」

 白金貨ねえ、一千万相当の金を渡されても困る。家を買うわけでもあるまいし、仕方がないか。

「ジル様、お顔にでています」

 ちぇ、お前たち元気になりすぎじゃねえ。

「私たちは元気になったわけではありません。
切羽詰っているだけです」

 また顔色を読まれた・・・

 なんだか2人の表情が暗い。

「あのですね・・・宮廷の情報ですが・・・」

 うん、それが?

「ほぼ記憶にないのです」

「わたしもです。これは魅了を解かれる前からのようで、以前はただ気が付かなかっただけのようです」

「魅了魔法は記憶にも影響するのか?」

 2人は頷いた。
俺は?・・・・・?・・・・・ない、全くない。どうしてだよ。
2人は俺にも記憶が無い事がわかったのだろう、真っ青な顔をしている。俺も多分している。
あまりの状況のまずさに言葉も無い。




 
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