ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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13話 失くした記憶  

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 2人の真っ青な顔を見ているうちに落ち着いた。
あわててもしかたがない。俺は椅子に寄りかかり、目をつぶって記憶をサーチした。

 1歳・・・2歳・・・3歳・・・このころまでは家族仲がいいな。
4歳・・・5歳?このころから家族を憎んでいる?
6歳・・・7・・・8・・・9・・・10・・・10歳で完璧に家族を憎んでいる。
 
 王子は兄に較べて、全てにできの悪い自分にいらだち、兄に対する嫉妬で性格がねじまがる。
両親も兄だけを可愛がり、王子には見向きもしない。
婚約者のフィーゲル侯爵令嬢はそれでも王子を慕ってくれるが、政略結婚だとして、邪険にしている。
そして15歳の時、子爵家のパーティにもぐりこみ、偶然会った男爵令嬢に惹かれ・・・

 いや、この記憶は全く正しくないじゃないか。
知らない方がましって、こういうことを言うんだな。
つくよみ神はこのことを知って、記憶を魂に写すのではなく、映像記録として提供したんだな。
それでも影響されることはある。

 たとえば知人のAさんがいる。その人が万引きしたと囁かれる。そんな馬鹿なと思うだろう。
だが10回言われたら、もしやと思わないだろうか。20回では。30回では。
家族や親友ならともかく、人間は揺れやすく、影響も受けやすい。
俺だって、この映像はうそだと思っていても、1%は本物だと思う心が残るかもしれない。
やっかいなことだ・・・・・

「ジル様・・・ジル様・・・」

「ん?呼んだか?」

「えぇ、先ほどから30分も経っております」

「そうか、悪いな。
そうだ、ゴードンは紙を持っているか?」

「はい、束で持っております」

きょとんとした顔でゴードンが言う。こいつは童顔なのでそういうしぐさをしても許せる。

「自分史を書いてもらう」

 2人ともうんざりした顔をするなよ。俺だってやりたくない。

「どうも記憶の抜けだけでなく、改ざんも行われているようだ」

 そして動揺する2人。

「そ、それは・・・どこで、それに気が付かれましたか」

「そうだなー、たとえば両陛下と王太子の俺に対する今までの態度はどうだった。忌憚無く言ってくれ」

「「・・・・・」」

「早く話せ。これからはそんな遠慮をしている余裕はなくなるぞ」

「・・・あまりよくないかと」

 う~ん、こういう時は日本が恋しくなるぜ。王政というのはやっかいだ。
下のものは上のものに言いたいことがいえない。

「具体的には」

オリバーが意を決したように話し出す。

「王太子殿下が優秀で、ジル様はなにをしてもかなわず、うつうつとしておられたような。
そして、殿下はジル様を疎んじていられたと。両陛下も同じ態度を取られていたと記憶しています。

それがあの男爵令嬢と仲良くなるきっかけだったと。
彼女はジル様のなさることを何でも褒め称えていましたから」

「それ、うそな」

 俺は言い放つ。ここは多少あやふやでも断言しよう。今後のために。

 

 そして、いまさら気づいて、愕然とする。今まで不思議に思わなかったことのほうががおかしい。
俺の中身は王子とは全然違う、それなのにこいつらは俺が王子でないとは欠片も思っていない。

 俺もこいつらが本人であることを疑っていない。その根拠は自身の記憶だ。
その記憶は正しい?どこから来た記憶なんだ?

 混乱して俺は頭を抱えた。

「・・・ジル様・・・ジル様、どうされたのですか」

「あぁ、大丈夫だ。
とりあえず記憶のある、物心が付いたころに遡って、その時に記憶のある人物の印象を書いていって欲しい。
そうだな、幼児のころはおおざっぱに、5歳過ぎぐらいからは月ごとに、ずらずらと書き付けて欲しい。
まず、それを始めて欲しい」
 
 2人はげんなりとした様子だったが、必要であることも分かっているのだろう、しぶしぶと紙を広げ、ペンをとりだした。
俺はそれを見ながら、ひとまず頭の中を整理する。

 俺の記憶は別にして、彼らは近衛騎士にも王太子にも、要するに外部の人間に不思議がられないほどには本人だ。
神も特になにもいってこない。
たしか普通の人間が薬珠を飲んだら、身体が爆散するんだっけ。
ということはボディーは本人なわけだ。魂もな。
では、どこが問題なんだ。記憶が混乱していることか?それとも偽の記憶を植えつけられていることか?
記憶は人格の一部であるからして、問題のような気がしないでもないが、今回のことで多少の修正は聞く。

  これからすることに、過去の記憶は必要か?必要とも必要でないとも言える。
すくなくとも貴族だというなら、偽者の情報に騙されていたと知ったら、修正をしようとするだろう。
それが大規模だというだけで。

  性格は問題ないし、忠誠心はそこそこあるし、過去の認識の違いは正してやればいいし・・・
もしかして、大丈夫?大丈夫なような気がしてきた。
17歳からだけの記憶を正しいとすれば、なんとかいける?

 そうだな、いかしてみせよう。これからは大事な部下だ。相談にものるし、フォローもしよう。
うん、これ以上突っ込んで考えるのは止めだ。

  次はおれ自身のことだな。
手間ではあるが、どうせ映像記録なんだ、今回大幅修正をかければ、なんとかなるだろう。

  人が変わったようなと言われた2年間と、これから過ごす3年間。その後に会う家族に王宮関係者。男の十代だ。変わって当然、特に問題なし。何かあったら、力技で押し通そう。よし決まりだな。

あとは、側近たちとの関係だか・・・

  そこへ、またもや、ひらひらと落ちてくる手紙。つくよみ神は俺に張り付いているんじゃないのか。
どんどん、あの時の ”君は自由に過ごしてくれ” という言葉から外れていくぞ。
とりあえず読んでみるか。

「今回の件で君が心配することはなにも無い。

君と王子は魂が似ている。もともと育ちが違えばそうなるだろう程には似ていた。
そして、別人かと思われるほど変貌の激しかった2年間がいい目くらましになり、皆は君が元に戻ったと喜ぶことはあれど、王子ではないと思いもしないだろう。

それに今の君は王子の3歳のころの性格に良く似ているよ。
今の君を見たら、王太子は喜んで君に抱きつくだろう。
ちなみに、枕を入れたのは王太子だ。

そして側近たちだが、彼らは魂に偽りを吹き込まれて、自己認識との乖離が起こり弱っていた。

そこで君だ。

薬珠をもって、魂の浄化を行い健全な状態にした君は彼らにとって敬意を持つべき人間となった。

そしてまだ弱っている魂は立ち上がるための支えを欲していた。
そこで、君に忠誠を誓うことで魂の安定を図っている。
まだまだ、彼らは不安定な存在だからね。

あとはこの世界の常識というか、臣下は主君を持って初めて、生活と精神の安定が図れる。
彼らは臣下である自分しか知らないので、それが無い状態を辛く感じる。
だから再び自分に立場を与えてくれた君を大手を広げて迎え入れている状態だな。

もし、違和感を持っても、自分で自分を騙してしまうだろう。
もっとも、先に言ったように魂が似ているので、君に感じているのは、乱暴になったとか、言葉遣いが粗野になったとか、大雑把になったとか、そういうことでそれ以上ではないだろう。


心配しなくてもこの状態は2,3年で終わり、彼らも安定する。
だからといって、彼等が臣下でなくなることもない。
彼らの忠誠心は一生物だ、それがこの世界に生きる人間の性だ。

だから君が心配することは何も無い、誰も欠片も君が王子であることを疑わない。
心行くまで思うように行動したまえ。

なお、この手紙は読み終わると消滅する」


 色々と突っ込みどころと失礼なところはあれど、相変わらずの文章に頬がほころぶ。俺もかなり不安だったようだ。

 手紙が現れたときから見ていただろう彼らから早速質問が来る。

「ジル様、今のは?」

「神からの手紙だ。
今は記憶の混乱で不安定になっているようだが、2,3年で落ち着くので安心するようにだと」

2人の顔が明るくなる。

「おやさしいのですね、つくよみ様は」

「そうですね、先が見えていると安心します」

きらきらと光る粒子を眺めたあと、俺たちはせっせと自分史を紙に書き込んでいくのだった。

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