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第壱部-Ⅲ:ぼくのきれいな人たち
24.藤夜 親友が変態だった
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「ーーー何してんですか、殿下。」
「うるさい、日向が起きる。後にしろ。」
「いやいやいやいや、寝てる子どもに何してんだお前は!」
日向王子の部屋から一向に帰らない紫鷹を迎えにきたら、親友のやばい姿を見てしまった。
紫鷹の膝の上で、日向王子はぐったりと動かない。
それをいいことに、この阿保皇子は、何をしているんだ。
「なぜ脱がせる、」
「いやだって、飯食ったら、いつも汚れるんだよ。もうぐっちゃぐちゃ。」
「さっさと着替えさせればいいだろう、」
「こんな機会じゃないと、確認できないだろ」
「なに、を、」
「体。傷が治ったかとか、肉が増えたかとか、」
「小栗に任せておけよ、」
「いやだ、俺がちゃんと知りたい」
「匂いを嗅ぐのは」
「なんかこいつ、いい匂いするぞ。前は気づかなかった。」
「やめろ、」
「魔力も独特だし、関係あるんだろうか、」
「おい、何で口づけがいる」
「ああ、なんか我慢できなかった」
すぱーーーんと、音がした。
俺ではない。
どこからともなく現れた水蛟が、変態皇子の後頭部に平手打ちをかました。正しい判断だと思う。
無言の唯理音が、卑猥皇子から日向王子を奪い取る。よい笑顔だ、だが怖い。
青空が痴漢野郎を羽交い絞めにしている。たぶん首が締まっている。いいぞ、もっとやれ。
宇継が淫猥糞男の足を捕まえ、部屋から引きずり出した。素晴らしい連携だな。
続いて、俺も襟をつかまれて、宇継に部屋から放り出される。
俺は、決して猥褻馬鹿と同類ではない。誤解しないでほしい。
「やわらかかった、」
すぱーーーーんと、卑陋猿の後頭部が鳴る。流石、晴海。流れるように打って、消えていく。
「お前…、思春期か?」
「かもしれない、」
「俺、友達やめていい?」
「日向が泣いてた」
「ああ、そう」
「俺に抱かれたまま、寝た」
「………」
久しぶりに会ったら、変化が大きすぎて、理性がぶっ飛んだわけか。
お前の執着すごいな。
「満足したか?」
「したよ、もっと欲しいけど。まあ、我慢する」
「じゃあ、さっさと戻れ」
「はいはい」
すっきりした顔してんな。
あんなに疲れていたのに。
三日前、離宮に入りこもうとした賊を、草の者が捕らえた。
なかなか口を割らなかったが、最終的に尼嶺(にれ)の刺客だと吐いた。
標的は、日向王子。
目的は、まあやはり、尼嶺が帝国に反する口実が欲しかったらしい。
予想の範疇のできごとだった。
だが、この馬鹿皇子は、日向王子への暴言を見過ごせなかった。
董子殿下から、日向王子の調査書を受け取り、読んだんだろ。それこそ隅々まで、一言一句漏らさず。
彼が尼嶺でどんな立場で、どんな扱いを受けていたかは知っているだろうに。
賊が日向王子に向けた、およそ人に対するものとは思えない言葉に、紫鷹は激昂した。
目的を忘れて、感情のままに殴りかかった紫鷹を俺も止めなかった。
二人揃って未熟だったわけだ。
賊を死なせずに済んだのは、優秀な騎士や草のおかげだ。
ーーーつくづく、俺たちは子どもなのだと思い知らされた数日だった。
事後処理のほとんどは、董子殿下や晴海、草の連中が片づけた。
俺たちは、言われるがままに大人たちの間で右往左往し、腹を立てるばかりだった。
今頃、尼嶺で貴人が数名捕縛されているだろう。組織も一つ解体させられる。
同時に根底にある反意の根を和らげるための長大な計画を菫子様が明らかにし、動き出している。
俺たちが目の前の賊しか見えず、大きな目的さえ簡単に見失う小さな存在なのだと、打ちのめされた。
ようやく離宮に帰れたが、まだ全部片付いたわけではない。
しばらくはまた己の未熟さを思い知り、嘆く日々が続くのだろう。
しかし、腹の立つ横顔だ。
「何でお前だけ回復してんだよ」
「日向、俺がいなくて寂しかったんだって。さびしい、ってあいつの口から初めて聞いた。そういうの、わかるようになったんだな。」
「……気色悪い、」
「お前も癒されに行けば?数時間くらい、今の俺なら作ってやれるぞ。ああ、日向はダメだからな、触ったら殺す。雀にしとけ。婚約者だろう、」
「お前の頭はそればかりだな。稽古につき合ってくれれば済むんだが、」
「脳筋だな、相変わらず。」
ふは、っと紫鷹は笑う。
目の下にひどい隈ができているのに、幸福そうだな。
まあ、よかったな。変態皇子。
たぶん、とても手強い、連携のとれた敵も作ったが。
笑っていられるなら、それもいい。
「うるさい、日向が起きる。後にしろ。」
「いやいやいやいや、寝てる子どもに何してんだお前は!」
日向王子の部屋から一向に帰らない紫鷹を迎えにきたら、親友のやばい姿を見てしまった。
紫鷹の膝の上で、日向王子はぐったりと動かない。
それをいいことに、この阿保皇子は、何をしているんだ。
「なぜ脱がせる、」
「いやだって、飯食ったら、いつも汚れるんだよ。もうぐっちゃぐちゃ。」
「さっさと着替えさせればいいだろう、」
「こんな機会じゃないと、確認できないだろ」
「なに、を、」
「体。傷が治ったかとか、肉が増えたかとか、」
「小栗に任せておけよ、」
「いやだ、俺がちゃんと知りたい」
「匂いを嗅ぐのは」
「なんかこいつ、いい匂いするぞ。前は気づかなかった。」
「やめろ、」
「魔力も独特だし、関係あるんだろうか、」
「おい、何で口づけがいる」
「ああ、なんか我慢できなかった」
すぱーーーんと、音がした。
俺ではない。
どこからともなく現れた水蛟が、変態皇子の後頭部に平手打ちをかました。正しい判断だと思う。
無言の唯理音が、卑猥皇子から日向王子を奪い取る。よい笑顔だ、だが怖い。
青空が痴漢野郎を羽交い絞めにしている。たぶん首が締まっている。いいぞ、もっとやれ。
宇継が淫猥糞男の足を捕まえ、部屋から引きずり出した。素晴らしい連携だな。
続いて、俺も襟をつかまれて、宇継に部屋から放り出される。
俺は、決して猥褻馬鹿と同類ではない。誤解しないでほしい。
「やわらかかった、」
すぱーーーーんと、卑陋猿の後頭部が鳴る。流石、晴海。流れるように打って、消えていく。
「お前…、思春期か?」
「かもしれない、」
「俺、友達やめていい?」
「日向が泣いてた」
「ああ、そう」
「俺に抱かれたまま、寝た」
「………」
久しぶりに会ったら、変化が大きすぎて、理性がぶっ飛んだわけか。
お前の執着すごいな。
「満足したか?」
「したよ、もっと欲しいけど。まあ、我慢する」
「じゃあ、さっさと戻れ」
「はいはい」
すっきりした顔してんな。
あんなに疲れていたのに。
三日前、離宮に入りこもうとした賊を、草の者が捕らえた。
なかなか口を割らなかったが、最終的に尼嶺(にれ)の刺客だと吐いた。
標的は、日向王子。
目的は、まあやはり、尼嶺が帝国に反する口実が欲しかったらしい。
予想の範疇のできごとだった。
だが、この馬鹿皇子は、日向王子への暴言を見過ごせなかった。
董子殿下から、日向王子の調査書を受け取り、読んだんだろ。それこそ隅々まで、一言一句漏らさず。
彼が尼嶺でどんな立場で、どんな扱いを受けていたかは知っているだろうに。
賊が日向王子に向けた、およそ人に対するものとは思えない言葉に、紫鷹は激昂した。
目的を忘れて、感情のままに殴りかかった紫鷹を俺も止めなかった。
二人揃って未熟だったわけだ。
賊を死なせずに済んだのは、優秀な騎士や草のおかげだ。
ーーーつくづく、俺たちは子どもなのだと思い知らされた数日だった。
事後処理のほとんどは、董子殿下や晴海、草の連中が片づけた。
俺たちは、言われるがままに大人たちの間で右往左往し、腹を立てるばかりだった。
今頃、尼嶺で貴人が数名捕縛されているだろう。組織も一つ解体させられる。
同時に根底にある反意の根を和らげるための長大な計画を菫子様が明らかにし、動き出している。
俺たちが目の前の賊しか見えず、大きな目的さえ簡単に見失う小さな存在なのだと、打ちのめされた。
ようやく離宮に帰れたが、まだ全部片付いたわけではない。
しばらくはまた己の未熟さを思い知り、嘆く日々が続くのだろう。
しかし、腹の立つ横顔だ。
「何でお前だけ回復してんだよ」
「日向、俺がいなくて寂しかったんだって。さびしい、ってあいつの口から初めて聞いた。そういうの、わかるようになったんだな。」
「……気色悪い、」
「お前も癒されに行けば?数時間くらい、今の俺なら作ってやれるぞ。ああ、日向はダメだからな、触ったら殺す。雀にしとけ。婚約者だろう、」
「お前の頭はそればかりだな。稽古につき合ってくれれば済むんだが、」
「脳筋だな、相変わらず。」
ふは、っと紫鷹は笑う。
目の下にひどい隈ができているのに、幸福そうだな。
まあ、よかったな。変態皇子。
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笑っていられるなら、それもいい。
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