新卒社畜、SS級ランカー御用達の娼館で肉体労働します。〜毎日俺を買う勇者たちが絶倫すぎる〜

さか様

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翌日。

……三日連続なの?

目が覚めた瞬間、その事実が脳内に表示されて、
自分で自分に若干引いた。お尻大丈夫?

体は正直、重い。筋肉の奥に疲労が沈んでいる感じ。
なのに、不思議と調子は悪くない。
むしろ、変に冴えている。

昨日までの余韻が、まだ体の奥に、うっすら残っているせいだと思いたい。

ベッドから起き上がろうとして、
その前に気づいた。

……うるさい。

廊下が、明らかにうるさい。

低い声と、落ち着いた声。
質の違う二つが、真正面からぶつかっている。

言い争い、だ。

……え?

この時間帯。
ここ。
仕事部屋の前。

嫌な条件が、全部揃っている。

声が近すぎる。

間違いなく、俺の部屋の前。
胸の奥に、嫌な予感がずるっと広がる。

ドア越しに、はっきり聞こえる。

「俺が先に見つけた」

ガルドの声だ。

疲れが残っているはずなのに、やけに張りがあって、妙に機嫌が良さそうな響き。

「それに、次の日の調子が明らかに良かった。
反応もいい。具合もいい……昴は名器だ」

……名器?

一瞬、思考が停止する。

あ、俺のことか。照れるんだが。
いや違う、名器の前に名前出てたわ今。

混乱のツッコミが、頭の中で遅れて炸裂する。

続いて、少し高めで、理性的な声。

「それは独占理由になりません。
こちらは昨日はスライムだけでした。なら、僕が“直接”確かめる権利はあります」

アルベルト。
スライム王子。

理屈は整ってるけど。

「えっちしたいに決まってますけど?!」

……言い方。

急に素が出た。理性どこ行った。
スライム王子はえっちしたい、ラノベかよ。

何この会話。
内容もそうだけど、廊下でやる話じゃない。

というか。

「……仲裁する人は?」

思わず、小さく呟いていた。

リーネは?
いつもなら、こういう空気になる前に、どこからか現れて止めるポジションでは?

……いない。

完全に不在。
廊下の空気が、目に見える勢いで悪くなる。

ガルドが、低く言う。

「お前は設計だ、俺は実地だ」

アルベルトが、間髪入れず返す。
え?建物の話ししてる?土木試験始まる?

「設計を無視する実地は事故です。
昴は適応が早い。だからこそ、慎重に」

……昴。

また俺だ。
第三者視点で論じるな。

ここで、俺はやらかした。

廊下で揉めてるの、よくない。
とりあえず、場所を変えよう。

――そう思ってしまった。

ドアを開けた。

「……あの」

声を出した瞬間、完全に理解した。

あ、修羅場の真ん中に立った。
二人が、同時に振り向く。

ガルドは腕を組んだまま。
アルベルトは、涼しい顔。

そして、二人の視線が、完全に一致する。

俺を見る目。

——所有物を見る目だ。
背中が、ぞわっと粟立つ。

「…廊下で揉めるの、よくないと思います」

口が勝手に動く。
社畜的仲裁、発動。面倒ごとは回避。

「……部屋、入ります?」

言ってから、しまったと思った。

沈黙。

次の瞬間。

「入る」
「失礼します」

声が、被った。

二人が、同時に一歩踏み込んでくる。
部屋が、一気に狭くなる。距離が近い。空気が濃い。

ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。

ガルドが、俺を見る。

「……無理なら言え」

短いけど、本気の声。
アルベルトも、同じように言う。

「一応、拒否権はあります」

……え?

さっきまで廊下で、理論と実地で殴り合ってた人たちと、同一人物?

急に、優しい。
頭が、追いつかない。

「……えっと」

俺の声が弱い。

視線が、二つ。圧が、二倍。

「え?」

ゆっくり、理解が追いつく。

え?
あれ、これ、複数人プレイってことかな?
誘っちゃった感じ?

聞いてない。
知らん。
マニュアルにもない。
やっぱり俺、社畜の星に生まれてる?

ガルドが、短く言う。

「順番は、譲らん」

即断。揺るがない。

アルベルトが、即答する。

「合理的に決めましょう」

合理的って何。
くじ?
評価シート?
業務優先度?Tier表でもあるの?

口を開こうとして、何も出ない。

二人とも、俺の返事を待っている。

……あ。

ここで、ようやく気づく。

これ、選ぶ立場、俺?
廊下で止めなかった判断、完全にミスだ。

心臓が、どくんと鳴る。

どうする、俺。
頭の中で、社畜会議がフル稼働する。

・現場判断
・責任所在不明
・上司不在
・拒否権あり(実質不明)

詰んでない?
視線の圧に、喉が鳴る。

……ほんとに、どうするんだろう俺。

――

……よし。

俺は一度、深く息を吸って、ゆっくり吐いた。
肺の奥まで空気を入れないと、言葉が揺れそうだった。

判断会議、終了。

「……まとめて処理します」

自分の声が、思ったより落ち着いていて、それが逆に怖い。

二人が、同時に俺を見る。

ガルドが、わずかに眉を上げた。
近い。
体温が分かる距離。
鎧の金属と、汗と、人の匂いが混じる。

「複数……だと?」

低い声。
息が、ほんのり熱を帯びている。

アルベルトは一拍も置かずに言った。

「同意が最優先です、が…」

落ち着いた声。
でも、その視線は逃げない。
俺の反応を、細かく拾っている目。

「上等です」

口に出してから、内心で自分にツッコむ。
上等って何。
どこで覚えた、その台詞。

でも、続けてしまった。

「マルチタスクなら……やってましたので。常に」

社畜の星、ここに極まれり。

一瞬、静かになる。

二人の呼吸音だけが、やけに近い。
重なっているわけじゃないのに、空気が逃げ場を失った感じがする。

それから二人がうなずいて、空気が変わった。

さっきまでの張り合いが、明確な“役割分担”に切り替わる感覚。
現場判断、怖いよ。

「無理はさせない」

ガルドの声が、さらに近づく。
低くて、確信があって、逃げ道を塞ぐ距離。

「ガルドが暴走したら僕が止めますから、」

アルベルトの声は少し後ろ。
一歩引いているのに、主導権がある。
冷静なのに、確実に熱が混じる。

止める。

この状況でその言葉が出るの、
正直、ちょっと安心した。

……その直後だった。

じん、と。

皮膚の内側から、
甘く、切ない感覚が広がる。

あれ?

触れられてないはずなのに、体が先に反応する。

――スライム。

遅れて、ようやく気づく。

あ、これ、参戦してる。

許されるの?
今、第三勢力いない?

判断しようとした瞬間、
その“甘しびれ”が、思考を一段、鈍らせる。

「ひ、ぁっ…それ、だめ…」

ずるくない?

痺れさせて、気持ちよくして、判断力を削ってから——

ガルドの気配が、さらに濃くなる。

「……力、抜け」

低い声が、近い。
熱が、距離を詰めてくる。

アルベルトは、反対側から。

「今は、委ねて。昴の反応を、追います」

追うって何を。
俺の反応?気持良すぎるんだけど?

部屋の空気が、じっとりと湿る。
二つの呼吸が、少しずつ近づく。

これ、完全に作戦勝ちじゃない?

頭のどこかで、そうツッコんでるのに、体は正直だ。

「あ…、ん…」

息と一緒に、声が落ちる。
自分の声が、思ったより柔らかくて、
自分で自分に驚く。いや、なんか慣れてきたかも。数日の出来事が濃すぎる。

汗が、背中を伝う。
誰の体温か、もう分からない。

しびれが、熱に上書きされる。
スライムが完全に仕事してる。

「……これ、反則……」

心の中だけのつもりが、声になっていたらしい。

アルベルトが、短く笑う。

「反則ではありません。これも合意の範囲です」

範囲、広すぎない?
ガルドが、低く息を吐く。

「……耐えてるな、強い」

強い、じゃない。なんか快感が拾えてしまってる。
それが一番、怖い。

その先は、記憶が、ふっと途切れた。

――

翌朝。

光で目が覚めた。
天井が、ちゃんと天井だ。

……生きてる。

体を動かす。違和感は、ある。壊れてはいない。

俺は、心の中で、手紙を書く。

拝啓、俺。

スライム、参戦してましたよね?

あれ、許されるの?
合法?

しびれさせて、気持ちよくして、判断力落としてから一気に来るの、完全に作戦勝ちじゃない?

お尻は、無事ですか?
女の子に、なってませんか?

……たぶん、セーフ。

でも、なんか、出ちゃいけないものまで出てた気がする。
男って潮吹けるの?あ、待って言わないで。

思い出したけどおとなしい学生時代と新卒にして社畜極めてたから童貞だった。女の子はそうだって知識はある。

ベッドの端に座って、深く息を吐く。

……三日連続やってけてる。

それが一番、怖いわ。


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