新卒社畜、SS級ランカー御用達の娼館で肉体労働します。〜毎日俺を買う勇者たちが絶倫すぎる〜

さか様

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有給明けのリーネは、想像どおりの顔をしていた。

腕を組んで、ため息ひとつ。
呆れ七割、面白がり三割。

「……大変だったようで、」

「大変でしたよ!!」

思わず声が大きくなる。

「シフト共有してくださいよ!
入ったばっかの新人に現場を任せるなって話です!」

言ってから、はっとする。
あ、これ、普通に職場へのクレームだ。
あれ?俺、会社に意見してるの?

リーネは肩をすくめた。

「有給は権利なので。
それに、今日は軽く休んだら歓迎会がある」

……歓迎会?

「あるんですか、そんなの」

「ある。うちは横のつながり大事にしてる、」

へぇ。ブラックだけど、そこはホワイトなんだ。

夕方。
仕事部屋とは別の広間に、長いテーブル。
料理と酒が並んで、すでにざわざわしている。

「新人くんだ!」
「昴でしょ?アケボシ!」
「マンホールの!」

マンホールの?
一人ずつ、紹介される。

背の高い女の人は、元傭兵。
「鉄骨が落ちてきて、気づいたらここだった」と言って、笑う。

無口そうな青年は、鍛冶屋崩れ。
「トラックに轢かれてな。痛かった」と淡々。

え、ちょっと待って。

「……それって、異世界転生ですか?」

場が一瞬、静かになる。

「あー」
「分類すると、そうなる人もいるね」
「私は“落下事故”」
「私は“圧死”」

さらっと言うな。
俺は、自分の記憶を引っ張り出す。

マンホール。
夜道。
ズボッ。

「……俺、マンホールに落ちただけなんです。
…死んでない?もしかして」

みんなが顔を見合わせる。

「たぶん、違うかな」
「マンホール君は“転送”寄りじゃない?」
「珍しいね、元の世界に帰れるかも?」

転送。
ちょっとマンホール君って何?

あ、そうか。死んでない。
だから、帰れる可能性がある。

「帰る?」と誰かが聞く。

帰る。
元の世界に。

労働マシーンに逆戻り。
満員電車。残業。評価シート。
新卒だから意見もできず。

……今も、あまり変わらない?…労働してるけど。

でも、ここで知ってしまったこと、出会ってしまった人たち、身体が覚えてしまった感覚。

簡単には、切れない。

「……悩んでる顔だな」

リーネがグラスを差し出してくる。

向かいの席の元傭兵が言う。

「新人あるある。最初は、みんなそう。
死んで転生しようがここだよ?
働き口。いきなり身体売れってさぁ、屈辱だろ」

酒を一口。
苦くて、あったかい。

広間では、誰かが笑って、誰かが愚痴ってる。
それぞれ事情は悲惨なのに、空気は明るい。

……変な職場。

でも、悪くない。

「とりあえず今日は歓迎会なので。
来るものは拒まないし、去るものも追わない。人手はほしいが」

リーネの言葉に、少し救われる。
俺は、グラスを置いて息を吐いた。

異世界転生、いや、俺の場合は異世界転送?
どのみち社畜。

どれに分類されても、今の俺は、ここにいる。

……もう少しだけ、考えよう。

歓迎会は、完全に軌道に乗っていた。

酒は回り、料理は減り、誰かが誰かの死因を面白おかしく語り、それを肴に笑いが起きる。

この職場、倫理観は緩いが空気は軽い。
……と思っていた。

扉が、開いた。

重たい気配が二つ、どん、と空気に落ちる。
一瞬で、ざわめきが止まった。

「……なぜ宴が?」

ガルドの声は低く、それだけで場を制圧する力がある。

「今日も指名に来ましたが」

アルベルトの声は静かで、逆に逃げ場を塞ぐタイプだ。

スタッフ一同、固まっている。

「え……?」
「今日、当たれる人いる?」
「は?SS級ランカー相手だぞ?」

視線が走る。
即座に、全員が目を逸らす。

「無理無理」
「命が足りない」
「そもそも体が保たん」

……あ。

その視線が、すっと、俺に集まる。

ガルドが迷いなく言う。

「昴。抱かせろ」

アルベルトは一拍置いて、丁寧に。

「昴。抱かせてください」

一同。

「え?」

間。

「え??」

間。

「えええ???」

空気が一気に弾けた。

「マンホール君、SS級だったの?」
「しかも、二人に?」

「ていうか、あの細腰で何を受け止めてるの?」

……細腰。

「スライムプレイやってるって、マジ?!」
「男の穴、伊達じゃないな?!」

どっと笑いが起きる。
俺は、完全に置いていかれた。

「……男の穴?」

頭の中で反芻する。

「……マンホール?」

え?ひどくない?

「ちょ、ちょっと待って?その呼び方、定着してる?」

誰かが肩を叩く。

「安心しろ」
「褒め言葉だ」

おいどこが。安心できるか。

ガルドとアルベルトは、この騒ぎを気にする様子もなく、俺の両脇に立つ。

「時間が惜しい」

ガルドが言う。

「もう下半身が耐えられなくて…」

アルベルトが続ける。

次の瞬間、両腕を取られた。
力強すぎないですか?容赦がない。

ズルッ。

床を引きずられる感覚。

「待って!歓迎会!!俺、主役なんですけど!!」

声は、完全に虚空に消える。

一同が、さらに楽しそうになる。

「頼むぞー!」
「SS級ランカーはお前にしか相手できないからな!」
「マンホール君がんばれ~!」
「適正バッチリじゃーん!」

爆笑。

……あ。

やっぱこの人たち、下品じゃん!!

さっきまで「いい職場かも」とか思った俺の気持ち、返してほしい。

ズルズル。
ズルズル。

完全に引きずられていく、
マンホールこと、俺。

振り返ると、リーネがいた。

額に、はっきり分かる冷や汗。

「……リーネ?」

呼ぶと、一瞬だけ目が合う。
あ、逸したよこの人。

「……」

何も言わない。

その沈黙、一番ダメなやつだろ。

「シフト共有してくださいよ!!
有給明けですよね?!現場丸投げですよね?!」

リーネの肩が、ぴくっと動く。
でも、振り返らない。

そうこうしている間に、廊下の灯りが遠ざかる。

背後で、誰かがまだ言っている。

「いやー、マンホール君、穴どうなってんだろ」
「生きて帰ってこれる?」
「たぶん大丈夫でしょ、適正あるし」

適正って何。

俺は天井を仰いで、深く息を吐いた。

歓迎会。
開始、1時間ほど。

主役、強制退場。

マンホールは今日も元気に、SS級に運ばれていく。

……ほんと、どんな異世界だよ、ここ。




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