新卒社畜、SS級ランカー御用達の娼館で肉体労働します。〜毎日俺を買う勇者たちが絶倫すぎる〜

さか様

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その日は、割と穏やかに始まった。

夕方の娼館ルーンは、忙しいが稼ぎ時だ。
指名表はそこそこ埋まっていて、スタッフも慣れた足取りで行き来している。

つまり――
まぁこれが、普通の日。

受付の前に立っていたのは、A級ランカーだった。

もちろん別に珍しいわけではない。
ここはSS級御用達の店、みたいな噂はあるが実際はA級もB級も、普通に来る。

今回のランカーも、変に怯えてはいなかった。

「明星、昴……さん、で合ってますか」

少し緊張した声。
装備は整ってるけど、ガルドほどの圧はない。

「あ、はい」

たまたま部屋を出ていた俺は軽く頭を下げる。
最近は名乗る前に名前を呼ばれることも増えたけど、こういうやり取りは久しぶりだ。

(あー……これこれ、“普通の指名”)

新鮮。

A級ランカーは、受付に金貨を置いた。
金貨10枚、(最近知ったけど)相場通り。
1袋は30枚なので、エステバンはどれだけ金をおいていったんだ。

「噂を聞いて…一度、お願いできればと」

わ、ちゃんとしてる。
礼儀もある。声も落ち着いてる。

……何も問題はない。
そのはずだった、が。

「昴」

低い声。

振り向いた瞬間、空気が一段、重くなった。

ガルドだった。

鎧は外しているが、肩や腕には新しい傷。
討伐帰りなのが一目で分かる。

息も、まだ完全には整っていない。

……あ、これ。まさか。

「優先を使う」

有無を言わせない声音。

そして、金貨一袋が、どん、と置かれた。

重たい音。そう、金貨30枚の重み。
受付の空気が、一瞬だけ静まる。

A級ランカーが、ぱちぱちと瞬きをする。

「……優先?」

あー、知らなかったか。ですよね。
リーネが、事務的に頷く。

「規定通りに。優先、適用する…
その金貨10枚は次使うといい」

A級ランカーは一瞬だけ考えてから、静かに一歩引いた。

「あ……そう、ですか…失礼しました」

恨み言も、文句もない。
ただ、納得した顔。

(……飲み込みが早いな、この人)

ちょっとだけ申し訳なくなる、俺。

「すみません……」

思わず口にすると、A級ランカーは首を振った。

「いえ!仕組みなら、仕方ないです」

本当に、普通の人だった。

その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐く。

……で。

「どうだ、」

ガルドが、ほんのり誇らしげに言った。

「……どうだ、じゃないです」

思わず返す。

「貯金の話、どこ行きました?この一袋は?」

「討伐を増やした」

即答。

「…エステバンの、真似だ。
優先を使うというやつをやりたくて、」

……あー、なるほどなるほど。

本人は至って真剣だ。

(ガルドなりの、リベンジ……?)

そこに。

「昴……」

弱々しい声。

振り向くと、廊下の端に、アルベルトがいた。
完全に間に合ってない。

「……遅かった、ですね」

肩が、がくっと落ちる。

「昨日、スライムにお金を溶かしてしまい…」

「それは自業自得です」

アルベルトは、しょんぼり頭を垂れ、スライムも心なしかしゅるんと縮んでいた。

(あー……)

そうだ。
実は俺には、最近覚えたことがある。

俺は一歩近づいて、アルベルトの手を取った。

ぎゅ

軽く握って、営業スマイルより少し柔らかい笑顔。

「また、今度ですね」

アルベルトの顔が、ぱっと明るくなる。

「……本当ですか?」

「ええ」

「……!」

一気に元気。ほら、どうだ。

「では次は、絶対に間に合わせます!」

ガルドが、ちらっとこちらを見る。

「……」

なにか言いたそうだが、言わない。

「それにしても昴、接客が上手くなりましたよね」

アルベルトがにこにこしながら言う。

「覚えました」

「成長ですね!」

リーネが、遠くからため息をついた。

「また始まった……」

俺は内心で思う。

(……でも、俺、いつからこんな…)

A級ランカーが普通に来て、SS級が金で殴り込みして、ダメな方の手を握ってメンタル回復させてる。

(喜んでほしいとはいえ、立場、変わりすぎでは?)

ガルドは満足そうに腕を組み、アルベルトは次の算段を始めている。

……まあいいか。

今日は、そういう日。
俺は小さく肩をすくめた。

「では、部屋行きましょう」

仕事だ。相も変わらず。

――なんか、日常がずれてきてる気がするけど。

それを自覚しながら、俺は歩き出した。

――

ガルドと部屋に入った。

扉が閉まった瞬間、外のざわめきがすっと遠のいた。

「……無茶、したんですか?
金貨一袋なんて。討伐、相当詰めたでしょう?」

椅子に腰掛けたガルドに、俺はたまらず訊いた。
ガルドは一瞬だけ眉を上げ、それから当然のように言った。

「無茶ではない」

即答。

「昴を指名するためだ。足りないなら、稼げばいい」

……ああ、もう。
胸の奥が、変なふうにきゅっと縮む。

「そんなに……俺を?」

思わず聞いてしまった声は、我ながら情けないくらい小さい。

ガルドは椅子から立ち上がって一歩近づき、俺の髪に触れた。
指先が、慎重なくらいゆっくり動く。

「当たり前だ。
専属にする話、俺はまだ諦めていない」

低い声。言葉の重さが、ずるい。

(……プロポーズみたい、)

そう思った瞬間、顔に熱が集まるのが自分でも分かった。

「な、何考えてるんですか……」

視線を逸らすと、ガルドは小さく息を吐いた。

「……衣装、脱がせていいか」

質問には答えず確認を取るところが、心臓に悪い。

「……どうぞ」

声が、少しだけ震えた。

紐が解かれ、するりと布が落ちる。
考え抜かれた構造の衣装は、抵抗する暇もなく、あっさりと形を失った。

そして俺はベッドに座らされる。

キスは、いつもよりゆっくりだった。
唇に、額に、首筋に。

触れるたびに、「大丈夫か」と確かめるみたいな間がある。

(……今日は、ぶつかってこないんだ)

焦れったくて、くすぐったくて。
でも、不思議と嫌じゃない。

鎖骨、胸、腹へと、視線と唇が下りていく。

そして――
つま先に、軽く触れる感触。

「……っ」

思わず息を呑む。

「……こういうのは、嫌か?」

ガルドの声は、真剣だった。

「いえ……」

首を振る。

「……なんか、ドキドキはします」

それを聞いて、ガルドはわずかに口元を緩めた。

そのまま、押し倒される。

でも、いつものような勢いはなくて。
体重を預け合うだけの、静かな距離。

キスは深くなって、距離はゼロで、ガルドの手は確実に「その先」を求める位置にあった。

息がかかるだけで、背中がぞわっとする。

(始まる、)

そう思った瞬間だった。

――ずし。

胸に、重み。

「……?」

呼吸が、ゆっくりになる。
耳元で、低い吐息が一つ。

「……すぅ……」

……え?

「……ガルドさん?」

返事はない。

代わりに聞こえるのは、完全にリラックスしきった寝息。

(……寝た?)

いや、ちょっと待って。
今の流れで?
ここまで来て?

胸の上に乗ったまま、腕はしっかり回されていて、逃げ場はない。

そしてこの人、体温だけはやたら高い。

俺の心臓はドキドキ鳴ってるのに、ガルドは世界一安心した顔で爆睡している。

「……金貨一袋の覚悟、どこ行ったんですか……」

小声で文句を言っても、もちろん起きない。

むしろ、腕に力が入って、ぎゅっと抱き寄せられた。

(……ああ、もう)

キュンキュンとムズムズと一緒に俺は取り残されたまま。
どうしようもなくて、そっと息を吐いた。

「……次は、ちゃんと最後まで起きててくださいよ」

返事はない。

でも、その寝顔が、あまりにも無防備で。

……仕方ないな、と思ってしまう自分が、一番問題だった。

そのまま、俺も目を閉じる。

……って、そんな綺麗に終わると思う?

胸の上で、ずっしりとした重み。
動けない。逃げ場もない。

しかも――

「……なんか……」

もぞ、と腰をずらした瞬間、お尻の奥が、妙にむずむずした。

(あ、これ……)

寝てるはずのガルドの手が、無意識に動いた気配。

「…ちょっとなだけなら、」

自分でもよく分からないまま、反射でその手を――お尻に誘導しかけて、はっと我に返る。

(いやいやいや!!俺は何をしてる!?)

その瞬間。

ぐいっ

寝ぼけたガルドが、さらに抱き寄せてくる。

「……すぅ……」

片腕が、ぐっと回って、もう片方の手が――俺の股間を揉みしだく。

もにゅ

…?!

「ひゃぅっ」

もにゅもにゅ

「ぁ…、ん、ちょ、やめ……っ」

抵抗も虚しく俺の声は全部裏返ってしまう。

もにゅもにゅもにゅ

(いやこれ本当に無意識?!なんの夢みてる?!)

「……あーーーー……」

力が抜けて、声が漏れたところで――

ぴたり。

動きが止まる。

ガルドは、相変わらず完全に熟睡中。
何事もなかった顔。

(……なんだったの今の)

胸の鼓動だけが、やたらうるさい。
そして中途半端にされて、つらい。

そっと、そっとその手をどかして、俺は深呼吸をひとつした。

「……寝てるときは、ほんと反則ですから……」

返事はない。

でも、抱きしめる力だけは緩まず、まるで「確保完了」みたいな体勢のままだった。

――

翌朝。

目を覚ました瞬間、俺は自分の異変を悟った。

……まず、熱い。
顔も、耳も、首の後ろまで、全部。

呼吸が浅くて、心臓が無駄にうるさい。

(やば……完全に思い出してる……あ、しかも濡れて…寝てる間に…)

おいおい夢精なんて何年ぶりだ。

隣では、ガルドがゆっくり体を起こした。

「……?」

寝起きの顔で、俺を見る。
くそ、顔が良すぎる。

視線が合った瞬間、俺は反射的に目を逸らした。

(見ないで……今の俺……)

ガルドは眉をひそめる。

「昴、どうした?顔が……赤いが」

「な、なんでもないです!」

声が裏返る。なんなら息も整ってない。
ガルドは少し考え込むようにして、額を押さえた。

「……すまない。
昨日は、疲れが出たらしい」

そう言いながら、何気なく――自分の手を見る。

一瞬、動きが止まった。

「……?」

その指先に、わずかな白濁が光っている。
ガルドは首を傾げ、無意識にその手を鼻先へ。

……すん、

あっ、嗅…

……ぺろ

「あっ!!!!」

舐め…舐めた…。

反射で叫んだ俺の声に、ガルドがぴたりと動きを止める。

数秒。
そして、静かに一言。

「……なるほど」

納得するな。

俺は布団を引き寄せ、顔を完全に埋めた。

「見ないでください……、考えないでください……」

ガルドはしばらく黙っていたが、やがて、低く咳払いをひとつした。

「……記憶は、断片的だが」

あ、これは覚えてないタイプ?
でも理解が早いから意味ない。

「どうやら、俺は……寝ぼけていたようだな」

「……はい、そうですね」

震える声で返す。

ガルドはそれ以上踏み込まず、ただ、いつもより少し距離を詰めて座った。いや、いつも近いが。

「……次は、討伐は程々にする」

低く、確定事項みたいに。

俺は何も返せず、布団の中でさらに縮こまった。

――朝からこれは、心臓に悪い。

絶対、アルベルトに嗅ぎつかれる。
そう確信しながら、俺は深呼吸を繰り返した。

(……寝ぼけ事故、ほんと勘弁してほしい)

でも。

ガルドの耳まで、ほんのり赤かったことは――
見なかったことにした。
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