新卒社畜、SS級ランカー御用達の娼館で肉体労働します。〜毎日俺を買う勇者たちが絶倫すぎる〜

さか様

文字の大きさ
21 / 29

21

しおりを挟む
俺は完全に油断していた。

休日。
指名は、なし。
えっちしないって、ちゃんと約束した日。

だから、屋台通りのベンチに三人並んで座って、手に持ってるものが全部棒状でも、深く考えなかった。

ミルクアイス。
ドラゴンの尻尾の串。
フランクフルト。

……今思えば、どう考えてもフラグだ。

最初に口をつけたのはアイスだった。白くて、すぐ溶けるやつ。

舌先で、ちょっと触る。

「……ぅ」

思ったより冷たくて、反射で息が漏れた。

美味いな。

気にせず、もう一度。
今度は、ゆっくり。

舌でなぞると、すぐ溶けて、
甘さが広がる。

「あ……ふ……」

垂れる。

あ、やば、と思った瞬間、舌が勝手に動いて掬っていた。

――そのとき。

「……」

「……」

左右が、異様に静かだ。

「?」

顔を上げると、ガルドもアルベルトも、完全に黙ってる。

「……なんです?」

聞いても返事がない。

社畜がアイス食べてる光景がそんなに変なのか。

俺は首を傾げて、もう一口。
今度は少し深めに含んで、引き抜く。

「ん……」

舌に絡む感触が心地よくて、無意識に舌で唇をなぞった。

「……昴」

ガルドの声が、やけに低い。

「はい?」

「……その食べ方」

「食べ方?」

アルベルトが、短く息を吐いた。

「……あー…無自覚、こわいですね」

「え、なにがです?」

二人とも同時に黙る。
ここでようやく、俺は違和感を覚えた。

……あれ?

と言いつつアイス完食。

次にドラゴンの尻尾を齧る。
揚げたてで、油がきらきらしてる。

「はむ……」

噛んだ瞬間、じゅっと音がして、熱と油が広がった。

「あっ……熱、……ん……」

思わず口を開けて、息を吐く。
唇に残った油が、また美味い。

拭く前に、もったいないから舌なめずりした。

そのとき、二人の視線がめちゃくちゃ刺さった。

……あ。

「……あー」

小さく声が漏れる。

「もしかして、これ……」

わざと、舌をゆっくり動かす。

「……ダメなやつです?」

空気がぴんと張り、ガルドが視線を逸らした。

「…ちょっとな、」

完全に我慢の声。

アルベルトは苦笑いする。

「分かっててやってるなら、ずるいですよ」

――なるほど。

「……あ、そういうこと…」

確信に変わる。

俺は、次にフランクフルトを手に取った。
太めで、パリッと張ってて、表面がつやつやしている。

「じゃあ、これは?」

わざと、ゆっくり口に入れる。

「はむ……」

次の瞬間。

ぱつん。

皮が弾け、湯気が出て、肉汁が滴る。

「っ……!」

ガルドが、突然、顔をしかめた。

「……痛」

おい、痛むな痛むな。

アルベルトが吹き出しそうになるのを堪えている。

「……それ、ガルドのなんですか?」

俺は思わず笑ってしまった。

「ちょっと!なんで今ので俺が被弾するんですか…変な想像させないでください」

「すまん…」

そのまま、ソーセージをもう一口。
今度は、ゆっくり噛む。

油が、また唇に残る。

「……、ふ……」

わざとじゃない。
でも、さっきから声が勝手に落ちる。
この世界、馴染みのある食べ物は安定して美味いし、食べたことないものも今のところ大抵美味い。

食は本当に大事だから、ありがたい。

「……昴」

アルベルトが、少し近づく。

「それ、煽ってます?」

「……えっと、半分…?」

正直に答えた。
ちょっと意地悪したくなったから。

二人とも言葉を失う中、俺は一応確認する。

「……今日は、えっちしない約束ですよね?」

「……そうだ」
「……約束です」

二人とも頷く。

でも。

段々と距離が詰まっている。

息が近い。
さっきの甘さと油の匂いが、まだ残ってる。

「……じゃあ」

俺は最後に、そう言った。

「“食べ方”くらいは、自由ですね」

沈黙。

ガルドが、低く息を吐く。

「……反則だ」

アルベルトも、小さく笑う。

「ほんとに」

……そのあと、罰が当たったのか。

俺は見事に、トイレ地獄に突入した。

甘いのと油の合わせ技、容赦なし。
完全敗北。腸が、正直すぎる。

戻ってきた俺を見て、アルベルトがにこやかに言う。

「腸内洗浄、終わりました?」

言い方。

「……事故です」

ちょっとムッとして答えると、ガルドが心配そうに眉を寄せた。

「無理はするな」

「大丈夫ですって」

そう言いながら、壁にもたれた瞬間だった。

距離が、急に近い。

アルベルトが一歩。
ガルドが、もう一歩。

「あ」

言う前に、唇に触れられた。

深い。
ゆっくり。
逃げ場を作らないキス。

息が混ざって、さっきの甘さと油の匂いが、また思い出される。

「……っ」

交互にもう一度。

ガルドのは静かで、重い。
アルベルトのは、絡め取るみたい。

気づいたら、逃げられない。

「……ちょっと」

笑おうとしたのに、声が落ちる。

アルベルトが、わざと聞く。

「煽った自覚、あります?」

「……少し」

正直に答えると、ガルドが低く息を吐いた。

「責任、取るつもりはあるか?」

……あ。

ここで、俺は理解した。
さっきまでのは、全部前振りだ。

煽ったつもりだった、意地悪したつもりでいて。
仕組まれてたのか、最初から。
…いや休日になんの話ですか?

一瞬の沈黙。

二人の視線が絡むと、先にアルベルトがくすっと笑った。

「約束を破るかどうか、決めるのは昴ですよ」

ガルドは、真っ直ぐ俺を見る。

「……俺は、待て…、る」

……待てる顔じゃないだろそれは。

「……」

俺は、観念して肩をすくめた。

「……じゃあ、煽った責任…取ります
というか、これ、仕組まれてます?」

答えはないが、二人との距離がゼロになる。

…で、あの、今のところのえっちなしの休みのほうが少ないのは、手当貰えます?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

拝啓、親愛なる王子、魔族に求婚されて元従者は花嫁と相成りそうです

石月煤子
BL
「――迎えにきたぞ、ロザ――」 とある国の王子に仕える従者のロザ。 過保護な余り、単独必須の武者修行へ赴く王子をこっそり尾行し、魔獣が巣食う「暁の森」へとやってきた。 そこでロザは出会う。 ウルヴァスという名の不敵な魔族に。 「俺の花嫁に相応しい」 (は? 今、何て言った?) ■表紙イラスト(フリー素材)はお借りしています■

気絶したと思ったら闇落ち神様にお持ち帰りされていた

ミクリ21 (新)
BL
闇落ち神様に攫われた主人公の話。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

処理中です...