新卒社畜、SS級ランカー御用達の娼館で肉体労働します。〜毎日俺を買う勇者たちが絶倫すぎる〜

さか様

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その日、ガルドはいなかった。

競り負けたとか、討伐だとか、理由はどれかわからない。

部屋に残っているのは、結果だけだ。

いつもなら、どこかに引っかかるあの重たい気配が、今日はない。

代わりに、そこにいるのはアルベルトだけ。

「……今日は、僕ですね」

確認するみたいな声。
勝った、というより、順番が回ってきた、みたいな言い方だった。

「はい」

そう答えた自分の声が、思ったより落ち着いていて、少し驚く。
胸の奥が、わずかに緩んでいる。

アルベルトは扉を閉める前に、一度だけ外を振り返った。
誰もいないことを確かめてから、静かに鍵をかける。

「……大丈夫ですよ」

その一言で、肩の力が抜けるのが分かってしまう。
距離を詰める前に、視線が絡む。

「昴の顔、…疲れてますね」

あ、やっぱ近い。
逃げ場を作らない距離。顔が良すぎるのにちょっと慣れてきた。

疲れについては否定しようとして、やめた。

いくら社畜でも、連日連戦はキツイ。

額を指の腹で、ゆっくりとなぞられる。
いきなりボディー、もといフェイスタッチが始まった。

「ここ、しわ寄ります。考えすぎると」

眉にかかる指。

「目もすぐ、潤みますよね」

……そんなところまで、見てたのか。

「え、」

声が掠れた瞬間、短いキスで口を塞がれる。
確認みたいな、軽いもの。

「唇、かわいいですね。力、抜くと、こうなるんだ」

指でなぞられるたび、体が反応してしまうのが分かる。

それが、まぁとにかく恥ずかしい。

「……あ」

自分の声が、少し高い。

アルベルトは逃がさないが、追い詰めもしない。

「いいですよ。今日は、頑張らなくて」

背中に回された腕がやっぱり勇者なんだなって思った。

「昴は、一生懸命なところが、いちばん……守りたいって、思わせます」

胸の奥が、きゅっと縮む。
いや、そうじゃない。何?なんで今日こんなに饒舌なのこの人。一杯やってから来た感じ?

でも思い返す――社畜だった頃、“守りたい”なんて言葉を向けられたことはなかった。

評価や数字はあった。
でも、こういう言葉は、なかった。

「……っ」

視界が滲む。

「……あ、れ……」

泣くつもりなんて、なかったのに。
声が、勝手に震える。

アルベルトは、すぐに俺を抱き直して、背中を一定のリズムで撫でる。

「泣いていいですよ。今日は、休む日です」

……指名しててそれ?
俺の涙腺が今日は忙しいらしい。

「……ごめんなさい」

癖みたいに、そう言ってしまう。

「謝らないで」

額に、キスをされる。

「おでこ、丸くて、かわいい」

頬。

「ここも」

鎖骨。

「ん、」

「……こんなにちゃんと、感じやすい」

言葉と一緒に、触れられる。
触れられるたび、体の奥が、むずむずしてくる。

「……あ、」

呼吸が、乱れる。

「まだ、ですか……?」

思わず、口をついて出た。

自分で言って、はっとする。すがるみたいな声。
すると、アルベルトの動きが止まった。

「……昴」

潤んだままの視界で目が合う。

「それ、ずるいですよ」

声が、低い。

「……一応僕、理性と戦ってるんですから」

でも、手は離れない。
むしろ、距離が詰まる。

「……っ」

俺は話を聞いていたつもりだが、無意識にアルベルト服の裾を掴んでいた。

いつからか顎にかかったアルベルトの指が、離れない。

近い。
息が混ざるほど近くて、言葉が要らない距離。

「……昴」

名前を呼ばれるだけで、胸の奥が熱くなる。
さっきまでの“休む日です”は消えていない。

ただ、そのまま別の選択肢に進んだだけ――そんな空気。

「今日は、本当に甘やかすつもりでした」

低い声。落ち着いているのに、逃がさない。

「だから、ここまででやめる予定だったんですよ」

視線が絡む。
外すタイミングを、わざと与えない。

「……でも、昴が、そういう顔をするなら」

言葉が途切れたところで、体の感覚が先に追いつく。
触れられていないのに、反応してしまう自分が、恥ずかしい。

「頑張りましょう?」

それは命令じゃない。
同意を前提にした、静かな合図。

「あ、ぇ…」

アルベルトの手が、ゆっくりと位置を変える。
さっきまでの撫で方とは違う、“決めた”動き。

優しいままの声。

「欲は、別なんです。すみません、」

謝っているのに、離れない。
包む力が、ほんの少し強くなる。

「ちゃんと、最後まで、面倒みますから」

その言い方が、妙に大人で、逃げ場を消す。

俺は息を吸って――
何も言えなかった。

視界の端で、柔らかな影が揺れる。
“今日は使うつもりなかった”はずのものが、静かに存在を主張する。

「……大丈夫。昴は、耐えられる」

(……スライムだ、)

今日の優しさは、ここで終わらないやつだとすぐにわかった。

――

「あ、あっ…出ちゃう、アルベルトさん、でちゃ、」

スライムが前を扱いて、後ろにまで入ったところからもうずっとぐずぐずなのに、アルベルトは全然言うことを聞かない。

俺はベッドの上でさっきから四つん這いなのに、アルベルトはというと。

「待ってください…もうちょっとで…あ、いけそうです、昴っ」

自分の昂ぶりを扱いていた。

なんか高めてる…?
えっと、特殊性癖の方…?
前から思ってたけど、それは俺とスライムどっちに興奮して…いや、なんでもない。

「アルベルトさん、俺…スライムでっ、イキたくな…」

なんか泣きそうになってきた。

「あ、すみません昴っ…ちょ、ちょっと挿れます、」

そう言うとアルベルトはそのまま俺の後ろを貫いた。

スライムのせいで、滑りが良すぎる。
入っちゃいけないところまでスライムとアルベルトの昂ぶりが押し入ってきた。

ぐぽ、

「あっ?!…ぇ…」

(奥すぎ、る…)

そのままアルベルトが腰を動かすたびに、ちゃぷちゃぷと音が鳴る。

「は、は、はっ…」

俺は短く息を吐くことしかできなかったが、アルベルトはそのままラストスパートに入っていた。

「昴、昴っ…すみません、出しますね」

アルベルトは自身の昂ぶりを引き抜き、スライムめがけて精をかけた。

(で、俺はこれをどう受け止めれば…?)

「昴、ありがとうございます」

アルベルト、スライムとえっちしてるじゃん。
え、俺越しにスライムとえっちしてるじゃん。

なんか癪だな。いや、癪なのもおかしいんだけど。

部屋に残ったのは体液まみれの俺と、白濁にまみれたスライムと、やけにつやつやしたアルベルト。

明日リーネに言ってやろう。

俺を指名して金払ってスライムとえっちはおかしくないですか?

――

しばらく、何も言わない時間が流れた。

体はまだ熱を持っているのに、頭のほうが先に冷えてきて、変な静けさが落ちる。

俺はシーツに顔を埋めたまま、ぽつりと言った。

「……アルベルトさん」

「はい」

即答。
声が近い。逃げてない。

「俺のこと、好きですか?」

一瞬、間。

「……それとも」

少しだけ、言いづらそうに続ける。

「スライムですか?」

冗談みたいな言い方だったと思う。
半分はふざけて、半分は本気で。

「……」

小さく息を吸う音。

「……難しい質問ですね」

え、そこ悩む?

俺は思わず顔を上げかけて、やめた。
見たら、たぶん表情で全部わかる。

「スライムは好きです。大切です」

あ、即答なんだ、そこは。

「でも」

そこで、言葉が変わる。

「昴は……」

また、間。

「好き、というよりも放っておけない、が近いです」

……それ、余計にずるくない?

「守りたいとか、無理してるのを見ると、触れたくなるとか」

淡々としているのに、全部刺さる。

沈黙が、肯定になる。
アルベルトは小さく笑った。

「なので…今の答えは――」

少しだけ、声を落として。

「どっちも、です」

……あー。

「欲張りですね」

俺が言うと、

「勇者ですから」

平然と返される。

ずるい。
顔がいい。
言い方が静か。

「……明日、リーネに言いますからね」

「なにをです?」

「俺を指名して、スライムといちゃついてた件」

「……それは、研究目的です」

「苦しいなぁ」

でも、口元が緩む。たぶん、アルベルトも。

シーツの上で、何でもない会話みたいに笑ってるけど、これ、だいぶ深いところまで来てないか?

そんなことを思いながら、俺は目を閉じた。
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