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責任
夜の残り香 (本編:愛を刻んで「宴会②」のその後)
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飲み会の後散らかった蓮の部屋で、残ったのは陸とハル2人だった。
ハルとユキは夜の街へ消え、家主の蓮と優真は今日は隣の部屋で寝ると部屋を出た。
――
「……はぁ、ほんと賑やかだったな」
陸がソファにどかっと座り、こめかみを抑える。
初めての飲み会。日本酒を程々に空け、主に蓮のモデル仲間のドタバタに巻き込まれて気疲れしていた。
そんな陸を、テーブルに突っ伏したハルは横目で眺める。
汗ばんだグラスを片手でくるくる回しながら、カラカラと氷が回るのを愉しんでふっと口角を上げる。
「ねぇ、陸」
「……なんだ」
「さっきお酒勧めたときにも思ったのだけれど、無駄のない筋肉よね。とても男らしくて、素敵だわ」
「…、またハルはさっきからそうやって!」
思わず前かがみになる。
からかいと分かっていても、耳まで真っ赤になった。
「……ふふ。ほんとに顔に出ちゃうのね」
「……っ、そういうの、やめてくれよ」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、いつの間にか目の前に立ちはだかっていたハルに胸を押された。
ソファに再び押し戻され、すぐに腰に跨られる。
「なっ……おいっ!」
(何を…)
「ねぇ、こうするとますます大きいわね、分厚い胸板…」
目の前のきれいな黒髪から覗く白い肌。
すっと細められた瞳の奥は読めなかった。
しかしこのまはまではまずい、陸の直感は警鐘を鳴らした。
「ハ、ハル!また酔ったのか?降りてくれ!俺はそんなつもり……」
反論はハルからの突然のキスに飲み込まれた。
「ん……っ、ふ、ぅ……」
甘くて小ぶりな舌が口内に入り込み、陸は硬直する。
必死に肩を押そうとするが、歯列をなぞられ力が抜ける。
あろうことか逆に背中を抱き寄せられてしまった。
「ふふ……嫌じゃなさそう。アキも言ってたでしょ?私今日機嫌悪いのよ。だから付き合って」
ハルはぺろ、と唇を舐め微笑む。
「……はぁ、……ハル、」
「なぁに?」
陸の低く通った声で呼ばれるとお腹の奥がきゅ、とした。例え望まない言葉だとしても。
「……最悪だな」
口ではそう言いながらも、陸の腰は逃げられない。
ハルはわかっていた。
案の定スラックスの越しに当たる陸自身は、じわりと膨らんでいる。
「……ほら、勃ってる」
「ッ……!うるさい!」
羞恥に顔を逸らした陸の顎を掴み、再び唇を塞ぐ。
ちゅ、ちゅぷ……ぬちゅ……
「……っ、はぁ……」
響く互いの唾液の音。
「……しぶといわね……でも、ほら」
カチリ、とベルトが外され、スラックスの前が開かれた。
下着を下げられると、熱を帯びた陸の怒張がはねて飛び出す。
「……っ!」
陸が反射的に前を閉じようとするが、もう遅い。
ハルの手が先端に触れていた。
「かたい……ん、思ったより大きいわね…」
しゃくり上げるように口で扱かれ、陸の呼吸が乱れていく。
「やめ、ろ…っ」
「ほら、力抜きなさいよ。……ね、感じてる顔も悪くないわ」
「……っ…く、…っあ、」
陸の腰が浮き、喉から押し殺した声が漏れる。
普段は真面目に整った顔が、じわじわと熱に濡れて崩れていく。
「……かわいい」
「かわ……っ、?!ばかを言うな……っ」
ハルはワンピースをたくし上げ、下着をずらした。
期待でとろとろと先走りがこぼれ震えるそこには、陸が見たことのない黒いベルトが巻かれていた。鍵穴部分の金属が怪しく光る。
「は……?!なに――」
「ふふ、これ?…貞操帯って見たことあるかしら?これは私には必要ないから…」
自身の性器を指差す。
戒めのようなベルトを目にした陸は思わず目を逸らす。
「痛くは、ないのか…?」
体だけとはいえ、同じモノを持っているが故に窮屈そうに張り詰めたそれはひどく痛々しく見えた。
「ふふ、心配には及ばないわ…これを見られてスポンサーに呆れられたの。勃たないって。」
あなたは違うみたいでよかったわ、と伝えるハルの濡れた入口が、陸の熱に触れる。
「なっ…」
(スポンサーが勃たない、ハルは一体…?)
ちゅく、ぐぷぷ…
ゆっくり沈んでいく感覚に、陸の呼吸が止まる。
「っ……は……く……」
「ふ……っ、あぁ……やっぱり大きい……」
きゅぅ、と吸い込まれるような感触。
陸は信じられないといった様子で左手で顔を覆った。
「……っ、ぬ、け…最悪だ……俺……こんなの……」
望んでいない、そう続けたかったが自然と情けない声が出てしまう、それは屈辱にも似ている。
今までどんな勝負も負けたことがなかった。
抗えない欲に体が動かない。それは己と向き合い闘い続けてきた陸にとって初めてのことだった。
「ん、ふ……最悪でも、気持ちいいでしょ?」
ぐちゅ、ぐちゅ……
濡れた音が部屋に満ちる。
ソファが軋み、押し付け合う体温に、真面目と揶揄された陸の理性はあっけなく崩れていった。
「……っ、あぁ……」
そのままソファの背もたれに、たくましい背中を預ける。
ハルの中の奥まで、張り詰めた自身の昂ぶりがのみ込まれている現実にただ必死で息を吐くしかない。
「ん……ふふ……こんなに大きいの、奥まで……っ、すごっ…ぁ、ぁ、」
ハルが自ら腰を揺らすたび、ぐちゅ、くちゅ、と水音がいやらしく響いた。
「やめ、……やめろ……俺は、こんなの……っ」
「嘘。……ほら、気持ちよさそう」
指で頬を撫でられた瞬間、陸は顔を背けた。
ふー、ふー、と息を吐く。
けれどハルの身体は、陸の気持ちはお構いなしで陸の雄々しい昂ぶりをぎゅうっと締め付け、熱を絡め取ろうとする。
「……っ……ああっ、くそっ!」
陸から絞り出されるじわじわ追い詰められるような悪態混じりの快感の声。
それを聞いて、ハルは目を細めて笑った。
「かわいい……こんな顔するのね、余裕ないでしょ?」
「……っ、うるさい!」
なおもギシギシとソファが揺れる。
陸の両手はいつしか、触れたら壊れてしまいそうなハルの細腰を力強く掴んでいた。
必死に堪えるように奥歯を噛み締めるが、我慢が効かず翻弄される。
不本意ながらもバラバラなリズムで腰を突き上げるしかなかった。
「んっ……っふ……そう、もっと……突いて、いいわ…」
「~~っ……っく……」
「ね、奥……あたってる……すごい……できるじゃないっ…ん、」
段々と整っていく陸のリズムにハルが震える声を漏らしながら身を委ねる。
余裕そうな口ぶりに反して、乱れた黒髪が頬や首筋に張り付き、勝ち気だった表情がじりじりと切なさに追い詰められていた。
その顔を見た瞬間、陸の視界が白く弾けそうになる。
「…ぐ、」
「……中……出したいでしょ?」
待っていたかのようにハルに耳元で囁かれ、陸は呼吸を止めた。
ハルは陸の胸に手をつき、積極的に腰を振る。
「出して……いいのよ」
気持ちよさそうな表情なのに、何故か諦めたような笑顔を浮かべている理由が陸にはわからない。
「……っ……!!??」
出してしまえたら。
一瞬、ぐらりと陸の理性が崩れそうになる。
しかし無理矢理本能で踏みとどまった。
(……だめだ。……っ、これ以上は……っ)
ハルを強く抱き寄せ、次の瞬間腰を引き抜く。
ぐちゅっ、と濡れた音と共に熱が抜け、ハルが小さく悲鳴を上げた。
「きゃっ……あ……」
どうして、というようなハルの視線が陸に絡む。
それを振り払うかのように、陸は深くハルの唇を奪った――
「っ……ん……っ!」
(キス…?!)
びゅっ、びゅるるっ……ぱたたっ
汗で艶かしく光るハルの腹に陸の欲望が散る。
「……っ、はぁ……はぁ……」
肩で息をする陸。
切れ長の形のいい瞳がハルを睨みつける。
「……ふふ。どこまでも真面目なのね」
中に出されることが叶わず、腹にかかった陸の精液を指先で撫でながらハルは笑う。
「……っ……黙れ、自分を粗末にするな」
「……何よ今更。でもやっぱりそういうところ可愛いわ…」
ハルは言うなり、ちゅ、と唇を寄せる。
(仕方ないじゃない…こうするしか知らないのよ…)
ほんの少しの拒絶のあと、いつしか陸の手は無意識にハルの腰を抱き寄せていた。
そうしてポツリと口を開く。
「……責任、とるから」
「え?」
ハルは信じられないといった顔をする。
「……情けないが初めてだったんだ。した以上、責任を取る。そうしないと俺の気が済まない」
(なぜだろう、ハルを放っておけない)
真剣な声。
ハルは見開いた目をぱちくりさせ、しかしそれを隠すかのようにすぐ艶やかに笑った。
「ヘンな人、」
初めてを戴いちゃったのね、と囁き、また唇が重なる。
(俺としたことが、こんなことをされて気持ちいいと感じてしまうなんて…)
(もしかして陸は私を大切にしてくれるの?)
口には出さないが互いにじわじわと罪悪感が芽生えた。
それは夜の残り香となって漂った。
――
部屋はというと、全く片付いていない。
ハルが口を付けていた汗ばんだグラスの氷がカラリ、と落ちる音がした。
ソファに沈んだ陸は、額に手を当てて長く息を吐いた。
(なんてことを、)
「……ねぇ陸。さっきの、“責任取る”って、本気?
あなた中に出したわけでも、私がこれで妊娠したわけでもないじゃない」
そう尋ねるハルの少し乾いた声。
「何度も言わせるな、本気だ」
短い返事とごまかさない真っ直ぐな陸の瞳に射抜かれる。
陸に跨ったままのハルは、その覚悟を決めた精悍な表情をひとしきり眺めると指先で陸の喉仏をなぞった。
(あぁ、どこもかしこも妬けちゃうくらい男の子ね…)
「律儀ね…。そういう人、嫌いじゃない」
「っ…からかうな」
言葉と同時に手が動く。
陸はハルの細い手首を取って引き寄せ、口付けた。
唇が触れた瞬間、喉奥で2人の呼吸がぶつかる。
最初は躊躇いがちに、次第に深く。
舌先が恐る恐る形を探り、やがて迷いがほどけていった。
ギ、とソファが小さく沈む。
陸はハルを押し倒すでも、勢いで覆いかぶさるでもなく、ハルの背中をゆっくりと優しくさすった。
自分を大切にしてほしい、そう言われている気がした。
「……陸」
呼ばれて顔を上げると、ハルが微笑んだ。
先程までの勝ち誇った表情ではなく、あどけない1人のハルの微笑み。
陸はこの人を手放したくない、と強く思った。
――
「水、飲めるか」
陸が立ち上がり、キッチンから水の入ったコップを2つ持ってきた。
そしてハルの髪に落ちた汗を指先で梳き、ポケットから取り出したハンカチでそっと首元を拭う。
壊れ物に触れるようなアフターケアに、ハルは素直に目を伏せた。
「…責任って言葉、陸のためにあるみたいね…」
「優しくされるのに、慣れていないのか?」
一拍の沈黙。
「……ありがとう」
ハルは水と一緒に溢れる気持ちを飲み込み、言った。
「部屋、明日片付ければ蓮さんも何も言わないだろう。…今日はここで一緒に休め」
(ずるいわ、陸…)
陸はもう一度だけ唇を重ねた。
今度は短く、印を押すように。
ハルは目を閉じながら、初めて “計算が通用しない” ということがこれだけ自分を脆くするのだと感じた。
――この夜は、どこにも溢れず、二人だけの秘密のまま終わった。
――
朝
陸がソファの上で目覚めるとハルの姿はなかった。
見渡すとすっかり綺麗に片付いた部屋。
(…ハル…無事帰れただろうか、)
ガチャ
ドアが開き蓮が顔を出す。
「お、片付いてんね~。ありがと、陸」
お前寝てたの?体デカいから痛くないか?と蓮が笑いながら机の上の煙草を手に取る。
「はい、…すみません。寝てたみたいで…お気遣いありがとうございます。蓮さん。」
(夢では…ないよな?)
「はは、律儀!構わねぇよ。…お、スマホ落ちてる。陸の?」
蓮は短く笑うと、スマホを陸に渡した。
受け取る間際、不敵な笑みが視界に入る。
「じゃ、俺仕事行くわ!あーーー飲みのあとの仕事だる!」
受け取ったスマホの画面を何気なく覗くと、そこにはメッセージが表示されていた。
しかし背を向けて出ていこうとする蓮にはっとして陸は声をかけた。
「蓮さん、鍵は?」
「優真に言っといて~」
ヒラヒラと手を振り、蓮は部屋をあとにした。
優真の部屋へ行くか、と立ち上がる陸。
先程読みかけたメッセージを再び開いた。
そこにはいつの間にか追加された差出人、ハルの文字。
『昨晩はありがとう。また会いましょう、陸』
陸は照れ隠しのように頭を掻いた。
ハルとユキは夜の街へ消え、家主の蓮と優真は今日は隣の部屋で寝ると部屋を出た。
――
「……はぁ、ほんと賑やかだったな」
陸がソファにどかっと座り、こめかみを抑える。
初めての飲み会。日本酒を程々に空け、主に蓮のモデル仲間のドタバタに巻き込まれて気疲れしていた。
そんな陸を、テーブルに突っ伏したハルは横目で眺める。
汗ばんだグラスを片手でくるくる回しながら、カラカラと氷が回るのを愉しんでふっと口角を上げる。
「ねぇ、陸」
「……なんだ」
「さっきお酒勧めたときにも思ったのだけれど、無駄のない筋肉よね。とても男らしくて、素敵だわ」
「…、またハルはさっきからそうやって!」
思わず前かがみになる。
からかいと分かっていても、耳まで真っ赤になった。
「……ふふ。ほんとに顔に出ちゃうのね」
「……っ、そういうの、やめてくれよ」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、いつの間にか目の前に立ちはだかっていたハルに胸を押された。
ソファに再び押し戻され、すぐに腰に跨られる。
「なっ……おいっ!」
(何を…)
「ねぇ、こうするとますます大きいわね、分厚い胸板…」
目の前のきれいな黒髪から覗く白い肌。
すっと細められた瞳の奥は読めなかった。
しかしこのまはまではまずい、陸の直感は警鐘を鳴らした。
「ハ、ハル!また酔ったのか?降りてくれ!俺はそんなつもり……」
反論はハルからの突然のキスに飲み込まれた。
「ん……っ、ふ、ぅ……」
甘くて小ぶりな舌が口内に入り込み、陸は硬直する。
必死に肩を押そうとするが、歯列をなぞられ力が抜ける。
あろうことか逆に背中を抱き寄せられてしまった。
「ふふ……嫌じゃなさそう。アキも言ってたでしょ?私今日機嫌悪いのよ。だから付き合って」
ハルはぺろ、と唇を舐め微笑む。
「……はぁ、……ハル、」
「なぁに?」
陸の低く通った声で呼ばれるとお腹の奥がきゅ、とした。例え望まない言葉だとしても。
「……最悪だな」
口ではそう言いながらも、陸の腰は逃げられない。
ハルはわかっていた。
案の定スラックスの越しに当たる陸自身は、じわりと膨らんでいる。
「……ほら、勃ってる」
「ッ……!うるさい!」
羞恥に顔を逸らした陸の顎を掴み、再び唇を塞ぐ。
ちゅ、ちゅぷ……ぬちゅ……
「……っ、はぁ……」
響く互いの唾液の音。
「……しぶといわね……でも、ほら」
カチリ、とベルトが外され、スラックスの前が開かれた。
下着を下げられると、熱を帯びた陸の怒張がはねて飛び出す。
「……っ!」
陸が反射的に前を閉じようとするが、もう遅い。
ハルの手が先端に触れていた。
「かたい……ん、思ったより大きいわね…」
しゃくり上げるように口で扱かれ、陸の呼吸が乱れていく。
「やめ、ろ…っ」
「ほら、力抜きなさいよ。……ね、感じてる顔も悪くないわ」
「……っ…く、…っあ、」
陸の腰が浮き、喉から押し殺した声が漏れる。
普段は真面目に整った顔が、じわじわと熱に濡れて崩れていく。
「……かわいい」
「かわ……っ、?!ばかを言うな……っ」
ハルはワンピースをたくし上げ、下着をずらした。
期待でとろとろと先走りがこぼれ震えるそこには、陸が見たことのない黒いベルトが巻かれていた。鍵穴部分の金属が怪しく光る。
「は……?!なに――」
「ふふ、これ?…貞操帯って見たことあるかしら?これは私には必要ないから…」
自身の性器を指差す。
戒めのようなベルトを目にした陸は思わず目を逸らす。
「痛くは、ないのか…?」
体だけとはいえ、同じモノを持っているが故に窮屈そうに張り詰めたそれはひどく痛々しく見えた。
「ふふ、心配には及ばないわ…これを見られてスポンサーに呆れられたの。勃たないって。」
あなたは違うみたいでよかったわ、と伝えるハルの濡れた入口が、陸の熱に触れる。
「なっ…」
(スポンサーが勃たない、ハルは一体…?)
ちゅく、ぐぷぷ…
ゆっくり沈んでいく感覚に、陸の呼吸が止まる。
「っ……は……く……」
「ふ……っ、あぁ……やっぱり大きい……」
きゅぅ、と吸い込まれるような感触。
陸は信じられないといった様子で左手で顔を覆った。
「……っ、ぬ、け…最悪だ……俺……こんなの……」
望んでいない、そう続けたかったが自然と情けない声が出てしまう、それは屈辱にも似ている。
今までどんな勝負も負けたことがなかった。
抗えない欲に体が動かない。それは己と向き合い闘い続けてきた陸にとって初めてのことだった。
「ん、ふ……最悪でも、気持ちいいでしょ?」
ぐちゅ、ぐちゅ……
濡れた音が部屋に満ちる。
ソファが軋み、押し付け合う体温に、真面目と揶揄された陸の理性はあっけなく崩れていった。
「……っ、あぁ……」
そのままソファの背もたれに、たくましい背中を預ける。
ハルの中の奥まで、張り詰めた自身の昂ぶりがのみ込まれている現実にただ必死で息を吐くしかない。
「ん……ふふ……こんなに大きいの、奥まで……っ、すごっ…ぁ、ぁ、」
ハルが自ら腰を揺らすたび、ぐちゅ、くちゅ、と水音がいやらしく響いた。
「やめ、……やめろ……俺は、こんなの……っ」
「嘘。……ほら、気持ちよさそう」
指で頬を撫でられた瞬間、陸は顔を背けた。
ふー、ふー、と息を吐く。
けれどハルの身体は、陸の気持ちはお構いなしで陸の雄々しい昂ぶりをぎゅうっと締め付け、熱を絡め取ろうとする。
「……っ……ああっ、くそっ!」
陸から絞り出されるじわじわ追い詰められるような悪態混じりの快感の声。
それを聞いて、ハルは目を細めて笑った。
「かわいい……こんな顔するのね、余裕ないでしょ?」
「……っ、うるさい!」
なおもギシギシとソファが揺れる。
陸の両手はいつしか、触れたら壊れてしまいそうなハルの細腰を力強く掴んでいた。
必死に堪えるように奥歯を噛み締めるが、我慢が効かず翻弄される。
不本意ながらもバラバラなリズムで腰を突き上げるしかなかった。
「んっ……っふ……そう、もっと……突いて、いいわ…」
「~~っ……っく……」
「ね、奥……あたってる……すごい……できるじゃないっ…ん、」
段々と整っていく陸のリズムにハルが震える声を漏らしながら身を委ねる。
余裕そうな口ぶりに反して、乱れた黒髪が頬や首筋に張り付き、勝ち気だった表情がじりじりと切なさに追い詰められていた。
その顔を見た瞬間、陸の視界が白く弾けそうになる。
「…ぐ、」
「……中……出したいでしょ?」
待っていたかのようにハルに耳元で囁かれ、陸は呼吸を止めた。
ハルは陸の胸に手をつき、積極的に腰を振る。
「出して……いいのよ」
気持ちよさそうな表情なのに、何故か諦めたような笑顔を浮かべている理由が陸にはわからない。
「……っ……!!??」
出してしまえたら。
一瞬、ぐらりと陸の理性が崩れそうになる。
しかし無理矢理本能で踏みとどまった。
(……だめだ。……っ、これ以上は……っ)
ハルを強く抱き寄せ、次の瞬間腰を引き抜く。
ぐちゅっ、と濡れた音と共に熱が抜け、ハルが小さく悲鳴を上げた。
「きゃっ……あ……」
どうして、というようなハルの視線が陸に絡む。
それを振り払うかのように、陸は深くハルの唇を奪った――
「っ……ん……っ!」
(キス…?!)
びゅっ、びゅるるっ……ぱたたっ
汗で艶かしく光るハルの腹に陸の欲望が散る。
「……っ、はぁ……はぁ……」
肩で息をする陸。
切れ長の形のいい瞳がハルを睨みつける。
「……ふふ。どこまでも真面目なのね」
中に出されることが叶わず、腹にかかった陸の精液を指先で撫でながらハルは笑う。
「……っ……黙れ、自分を粗末にするな」
「……何よ今更。でもやっぱりそういうところ可愛いわ…」
ハルは言うなり、ちゅ、と唇を寄せる。
(仕方ないじゃない…こうするしか知らないのよ…)
ほんの少しの拒絶のあと、いつしか陸の手は無意識にハルの腰を抱き寄せていた。
そうしてポツリと口を開く。
「……責任、とるから」
「え?」
ハルは信じられないといった顔をする。
「……情けないが初めてだったんだ。した以上、責任を取る。そうしないと俺の気が済まない」
(なぜだろう、ハルを放っておけない)
真剣な声。
ハルは見開いた目をぱちくりさせ、しかしそれを隠すかのようにすぐ艶やかに笑った。
「ヘンな人、」
初めてを戴いちゃったのね、と囁き、また唇が重なる。
(俺としたことが、こんなことをされて気持ちいいと感じてしまうなんて…)
(もしかして陸は私を大切にしてくれるの?)
口には出さないが互いにじわじわと罪悪感が芽生えた。
それは夜の残り香となって漂った。
――
部屋はというと、全く片付いていない。
ハルが口を付けていた汗ばんだグラスの氷がカラリ、と落ちる音がした。
ソファに沈んだ陸は、額に手を当てて長く息を吐いた。
(なんてことを、)
「……ねぇ陸。さっきの、“責任取る”って、本気?
あなた中に出したわけでも、私がこれで妊娠したわけでもないじゃない」
そう尋ねるハルの少し乾いた声。
「何度も言わせるな、本気だ」
短い返事とごまかさない真っ直ぐな陸の瞳に射抜かれる。
陸に跨ったままのハルは、その覚悟を決めた精悍な表情をひとしきり眺めると指先で陸の喉仏をなぞった。
(あぁ、どこもかしこも妬けちゃうくらい男の子ね…)
「律儀ね…。そういう人、嫌いじゃない」
「っ…からかうな」
言葉と同時に手が動く。
陸はハルの細い手首を取って引き寄せ、口付けた。
唇が触れた瞬間、喉奥で2人の呼吸がぶつかる。
最初は躊躇いがちに、次第に深く。
舌先が恐る恐る形を探り、やがて迷いがほどけていった。
ギ、とソファが小さく沈む。
陸はハルを押し倒すでも、勢いで覆いかぶさるでもなく、ハルの背中をゆっくりと優しくさすった。
自分を大切にしてほしい、そう言われている気がした。
「……陸」
呼ばれて顔を上げると、ハルが微笑んだ。
先程までの勝ち誇った表情ではなく、あどけない1人のハルの微笑み。
陸はこの人を手放したくない、と強く思った。
――
「水、飲めるか」
陸が立ち上がり、キッチンから水の入ったコップを2つ持ってきた。
そしてハルの髪に落ちた汗を指先で梳き、ポケットから取り出したハンカチでそっと首元を拭う。
壊れ物に触れるようなアフターケアに、ハルは素直に目を伏せた。
「…責任って言葉、陸のためにあるみたいね…」
「優しくされるのに、慣れていないのか?」
一拍の沈黙。
「……ありがとう」
ハルは水と一緒に溢れる気持ちを飲み込み、言った。
「部屋、明日片付ければ蓮さんも何も言わないだろう。…今日はここで一緒に休め」
(ずるいわ、陸…)
陸はもう一度だけ唇を重ねた。
今度は短く、印を押すように。
ハルは目を閉じながら、初めて “計算が通用しない” ということがこれだけ自分を脆くするのだと感じた。
――この夜は、どこにも溢れず、二人だけの秘密のまま終わった。
――
朝
陸がソファの上で目覚めるとハルの姿はなかった。
見渡すとすっかり綺麗に片付いた部屋。
(…ハル…無事帰れただろうか、)
ガチャ
ドアが開き蓮が顔を出す。
「お、片付いてんね~。ありがと、陸」
お前寝てたの?体デカいから痛くないか?と蓮が笑いながら机の上の煙草を手に取る。
「はい、…すみません。寝てたみたいで…お気遣いありがとうございます。蓮さん。」
(夢では…ないよな?)
「はは、律儀!構わねぇよ。…お、スマホ落ちてる。陸の?」
蓮は短く笑うと、スマホを陸に渡した。
受け取る間際、不敵な笑みが視界に入る。
「じゃ、俺仕事行くわ!あーーー飲みのあとの仕事だる!」
受け取ったスマホの画面を何気なく覗くと、そこにはメッセージが表示されていた。
しかし背を向けて出ていこうとする蓮にはっとして陸は声をかけた。
「蓮さん、鍵は?」
「優真に言っといて~」
ヒラヒラと手を振り、蓮は部屋をあとにした。
優真の部屋へ行くか、と立ち上がる陸。
先程読みかけたメッセージを再び開いた。
そこにはいつの間にか追加された差出人、ハルの文字。
『昨晩はありがとう。また会いましょう、陸』
陸は照れ隠しのように頭を掻いた。
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