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未来
ハロウィン(1)(本編:愛を刻んで「ハロウィン」の陸ハルSide)
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秋の夜、アウレア初のハロウィンパーティは熱気に包まれていた。
オレンジの照明が揺れ、シャンデリアはかすかに紫を帯び、音楽と笑い声が会場を満たす。
受付で配られたカボチャのリストバンドが、普段のオフィスを一夜限りの非日常へと変えていた。
アキはグラスを片手にあちこち飛び回り、誰彼構わず声をかけては大笑いしている。
ユキはそんな兄を穏やかに制しながらも、時折控えめに会話の輪へ加わっていた。
蓮は黒猫姿の優真をちらちら見ながら、気付けば喧騒に紛れてふたりどこかへ行ってしまっていた。
(あらあら、蓮と優真はラブラブね)
そんなハルはというと、ナース服姿のままアウレアの社長、神崎やスタッフに囲まれて談笑していた。
「いやぁ、ハルちゃんは器用だねぇ!衣装も全部手作りだなんて」
「ふふ、暇を見つけてですけど。料理や裁縫は昔から好きでやってるんですよ」
軽やかな声とともに交わされる笑顔は、モデルとして人前に立つ華やかさに満ちていた。
その姿を、陸はグラスを傾けながら黙って見つめる。
(……やっぱり、綺麗だな)
人を惹きつける輝きは、きっとモデルとして生きてきた証そのもの。
けれども、過去に抱えてきた痛みや孤独を思うと、その笑顔が少し痛ましくも見えてしまう。
「?…陸?」
ふと気づいたように、ハルが視線を向けてきた。
人混みの中で目が合った瞬間、柔らかな笑みを浮かべる。
それは、誰にでも向ける華やかさとは違い、ただひとり、陸に向けられた心安らぐ微笑みだった。
(……こんな顔、他の誰にも見せてない。愛おしい、)
胸が熱くなり、気づけば口からこぼれていた。
「ハル、きれいだ」
陸にしては珍しく抑えきれなかった感情の吐露。
ハルは一瞬目を瞬かせ、そして頬を染めた。
「……ふふ、ありがと」
小さく肩を寄せて、彼の耳もとで囁く。
「陸は、疲れてない? 人が多いと、落ち着かないでしょう」
「平気だ」
陸は短く答えた。
その声にはハルを安心させたい気持ちが滲んでいたのだった。
――
パーティの熱気が冷める気配のない中、姿を消していた蓮と優真が戻ってきた。
整えたはずの蓮の髪はわずかに乱れ、優真は首元の鈴を直しながら顔を赤らめている。
漂う余韻は、どう見ても「事後」だった。
「……おかえり。って、またかよ!」
真っ先に声を上げたのはアキ。指を差して爆笑する。
「なにその顔!絶対なんかしてただろ!つかお前ら、既視感ハンパねぇんだけど!」
「ふふ、あー、分かった
前にあったじゃない。夏祭りの帰り道」
ユキが口元を押さえて笑う。
アキがそれだ、と手を打ち、えっろ!!と叫べば優真は慌ててアキの口を塞ごうとする。
しかしそれよりも先に蓮が優真の体に腕を回し自分の方へ引き寄せた。
「……見んな。減る」
真顔でさらりと発せられた一言。
場が一瞬静まり返り、次の瞬間アキが腹を抱えて爆笑した。
「出たよまたそれ!!なにその彼氏ムーブ!お前らマジなんなんだよ!」
「ふふ……でも、羨ましいくらい愛されてる」
ユキも頬を緩める。
「……思ったとおりね」
グラスを揺らしながら、ハルが微笑んだ。
(やっぱりそうなるわよねぇ…)
陸は耳を赤くして視線を逸らしたが、隣のハルの横顔はどこかいたずらっぽく楽しげで、何を考えているのやらさっぱりだった。
そんな陸をちらっと見たハルは、そっと自分の指を陸の手に絡ませる。
不意の仕草に陸がわずかに目を見開くが、何も言わずにぎゅっと握り返した。
人に見せる華やかさと、陸にしか見せない顔。
その両方を抱えるハルの温もりが、陸の手の中に確かに宿っていた。
「なんか考えてるだろう、ハル」
陸は軽く咳払いをして可愛い恋人の胸中を探った。
「え、なんのことかしら?」
ハルは微笑んだまま陸の質問をはぐらかしたのだった。
オレンジの照明が揺れ、シャンデリアはかすかに紫を帯び、音楽と笑い声が会場を満たす。
受付で配られたカボチャのリストバンドが、普段のオフィスを一夜限りの非日常へと変えていた。
アキはグラスを片手にあちこち飛び回り、誰彼構わず声をかけては大笑いしている。
ユキはそんな兄を穏やかに制しながらも、時折控えめに会話の輪へ加わっていた。
蓮は黒猫姿の優真をちらちら見ながら、気付けば喧騒に紛れてふたりどこかへ行ってしまっていた。
(あらあら、蓮と優真はラブラブね)
そんなハルはというと、ナース服姿のままアウレアの社長、神崎やスタッフに囲まれて談笑していた。
「いやぁ、ハルちゃんは器用だねぇ!衣装も全部手作りだなんて」
「ふふ、暇を見つけてですけど。料理や裁縫は昔から好きでやってるんですよ」
軽やかな声とともに交わされる笑顔は、モデルとして人前に立つ華やかさに満ちていた。
その姿を、陸はグラスを傾けながら黙って見つめる。
(……やっぱり、綺麗だな)
人を惹きつける輝きは、きっとモデルとして生きてきた証そのもの。
けれども、過去に抱えてきた痛みや孤独を思うと、その笑顔が少し痛ましくも見えてしまう。
「?…陸?」
ふと気づいたように、ハルが視線を向けてきた。
人混みの中で目が合った瞬間、柔らかな笑みを浮かべる。
それは、誰にでも向ける華やかさとは違い、ただひとり、陸に向けられた心安らぐ微笑みだった。
(……こんな顔、他の誰にも見せてない。愛おしい、)
胸が熱くなり、気づけば口からこぼれていた。
「ハル、きれいだ」
陸にしては珍しく抑えきれなかった感情の吐露。
ハルは一瞬目を瞬かせ、そして頬を染めた。
「……ふふ、ありがと」
小さく肩を寄せて、彼の耳もとで囁く。
「陸は、疲れてない? 人が多いと、落ち着かないでしょう」
「平気だ」
陸は短く答えた。
その声にはハルを安心させたい気持ちが滲んでいたのだった。
――
パーティの熱気が冷める気配のない中、姿を消していた蓮と優真が戻ってきた。
整えたはずの蓮の髪はわずかに乱れ、優真は首元の鈴を直しながら顔を赤らめている。
漂う余韻は、どう見ても「事後」だった。
「……おかえり。って、またかよ!」
真っ先に声を上げたのはアキ。指を差して爆笑する。
「なにその顔!絶対なんかしてただろ!つかお前ら、既視感ハンパねぇんだけど!」
「ふふ、あー、分かった
前にあったじゃない。夏祭りの帰り道」
ユキが口元を押さえて笑う。
アキがそれだ、と手を打ち、えっろ!!と叫べば優真は慌ててアキの口を塞ごうとする。
しかしそれよりも先に蓮が優真の体に腕を回し自分の方へ引き寄せた。
「……見んな。減る」
真顔でさらりと発せられた一言。
場が一瞬静まり返り、次の瞬間アキが腹を抱えて爆笑した。
「出たよまたそれ!!なにその彼氏ムーブ!お前らマジなんなんだよ!」
「ふふ……でも、羨ましいくらい愛されてる」
ユキも頬を緩める。
「……思ったとおりね」
グラスを揺らしながら、ハルが微笑んだ。
(やっぱりそうなるわよねぇ…)
陸は耳を赤くして視線を逸らしたが、隣のハルの横顔はどこかいたずらっぽく楽しげで、何を考えているのやらさっぱりだった。
そんな陸をちらっと見たハルは、そっと自分の指を陸の手に絡ませる。
不意の仕草に陸がわずかに目を見開くが、何も言わずにぎゅっと握り返した。
人に見せる華やかさと、陸にしか見せない顔。
その両方を抱えるハルの温もりが、陸の手の中に確かに宿っていた。
「なんか考えてるだろう、ハル」
陸は軽く咳払いをして可愛い恋人の胸中を探った。
「え、なんのことかしら?」
ハルは微笑んだまま陸の質問をはぐらかしたのだった。
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