入れ替わり勇者と魔王は、世界の秩序を乱すか

さか様

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助け舟

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翌朝。

結界を張った小部屋に、三人は再び集まっていた。

沈黙が、重い。

魔王の身体をしたリュカは、視線を彷徨わせながら、そっと腕を抱いた。

(……俺の体から、石鹸の香りがする)

喉が鳴る。

(まさか……風呂に……?)

恐る恐る、魔王の身体――自分の身体を見下ろす。

(……乳首……)

一気に顔が熱くなる。

(ピンクなのは……コンプレックスなのに……)

誰にも言ったことがない。
誰にも見せたことがない。鎧の中に隠していた。

(……きっと、ラムザには……)

そう思った瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。

目が潤む。

一方。

勇者の身体をしたラムザは、その様子を見て眉をひそめた。

(……泣きそうだな)

そして、真剣に考え込む。

(我のイチモツの大きさと見た目で、怖がらせてしまったか……?人間には刺激が強すぎたか、)

完全に方向が違う結論に辿り着いていた。

耐えきれず、魔術師が口を開く。

「え、あの……何です?
なんで泣いてるんです?」

二人が同時に魔術師を見た。
お前のせいだと視線が刺さる。

魔術師は一瞬言葉に詰まり、気まずそうに視線を逸らした。

「あ、いや……陛下、多分それ、違います」

「何がだ」

「勇者の……その……乳首が…ピンクで……」

リュカの頭が、完全にフリーズした。
ラムザは一瞬固まり、すぐに言った。

(俺の思考が読まれ…?!)

「あ、魔術師よ。我の思考を読むな」

次の瞬間、思い出したように続ける。

「あ、いや……たしかに、ピンクで可愛らしかった」

沈黙。

リュカの顔が、真っ赤になる。

「言うなァァァ!!!」

叫び声と同時に、完全に泣いた。

魔術師は頭を抱えた。

「あー……これは……」

(想像以上に地獄だ)

ラムザは慌てて一歩前に出る。

「ま、待て。傷つけるつもりはなかった。可愛いんだから自信を持て!」

「見たって言った!!励ますな!」

「不可抗力だ!」

「不可抗力で乳首の色を記憶するな!!」

部屋の空気は、完全に崩壊していた。

魔術師は深いため息をつく。

(世界の秩序より先に、この二人の理性が崩れるな……)

こうして。

再集合は、状況確認ではなく、互いの“見てはいけないものを見てしまった”報告会となってしまった。

勇者と魔王は、ますます相手の体を直視できなくなる。

入れ替わり生活は、まだ始まったばかりだつた。
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