入れ替わり勇者と魔王は、世界の秩序を乱すか

さか様

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クリーンヒット

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魔王城の大広間は、異様な熱気に包まれていた。

酒池肉林パーティー――その名の通り、音楽は騒がしく、酒は溢れ、装いは極端に軽い。
肌の露出が多く、距離感は近く、視界に入る情報量がとにかく多い。

魔王の体をしたリュカは、会場である魔王城のパーティールームで完全に挙動不審になっていた。

(……刺激が、強すぎる)

視線を上げようとしても、上げた先がアウト。
左右もアウト。

(酒池肉林、どこを見てもアウトだ…!)

あらかじめラムザに教えられた通り、姿勢を正し、呼吸を整えようとする。
だが、身体は正直で、立派すぎるイチモツが更に立派にそそり立っていた。

内心は完全にパニックだった。

(落ち着け……落ち着け……)

そう思いながらもじもじしていると、余興のジャグリングが始まった。

棍棒を何本も投げてはキャッチしているその時、パフォーマーと目が合う。

(魔王の…イチモツでかっ…)

パフォーマーの意識がそそり立つイチモツに釘付けになったその時――

ガッ

「……っ!!」

鈍く、嫌な音。

手元が狂って飛んできた棍棒が魔王の股間にクリーンヒットした。

(……あ、終わった…殺される)

パーティー会場が騒然とする。

当の魔王は、あまりの衝撃と痛みに声が出ない。
視界が一瞬、白くなる。

「陛下?!」

周囲の魔族たちが、一斉にこちらを見る。
リュカは必死に直立し、震える声を抑えた。

「……だ、大丈夫だ」

全然大丈夫じゃない。
折れたかもしれない。

(よりによって……よりによってこの場で……!)

姿勢を崩すわけにもいかず、
かといって座ることもできない。

(あ、動けない……)

数秒が、永遠のように長い。

「……ほ、本日の催しは、ここまでだ」

絞り出した一声。

ざわめきは起きたが、魔王の命令に逆らう者はいない。

音楽が止まり、人が引いていく。

広間に静けさが戻った頃、
リュカはようやく壁に手をついた。

「……魔王も股間の痛みを感じるのか…」

―――――

後日、秘密の部屋。

三人は、気まずさ全開の空気の中で向かい合っていた。

沈黙を破ったのは、勇者の身体をしたラムザだった。

「……おい、我の体なんだが?」

低く、真剣な声。
リュカが、びくっと肩を震わせる。

「先日の件で、我のイチモツに問題はないか」

「も、問題って……痛かったけど、普通だよ…でかいけど…」

ラムザは、言葉を選ぶ様子もなく続けた。

「もし、万一だが…“使えなくなって”しまったら、リュカ、お前を抱けない」

空気が、凍りつく。

「だっ……!?」

魔王の身体をしたリュカが、真っ赤になる。

「俺を抱くだと?!」

「ああ、最終的にはな!愛に気付いたのだ」

真顔。

「…我は真剣だ」

「真剣に言うなぁぁぁ!!」

リュカは頭を抱えて、その場でわぁぁぁっと叫んだ。

「なんでそんな話になるんだよ!!」

魔術師は、ゆっくりと額に手を当てた。

「……あのですね?」

二人を見る。

「今の会話の感じだと、入れ替わりが解けた後に即ベッドインですよ?!」

ラムザは少し考えてから、静かに言う。

「……ふむ、悪くないな」

「はぁ?!」

リュカは完全に崩れ落ちた。

(どうしてこうなる……)

魔術師は深くため息をつく。

(私は薬を作ればいいのか作らねばいいのか……)

絶対にバレてはいけない入れ替わり生活は続いていく。
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