3 / 23
第三話 恐れ多い。
しおりを挟む
それから暫しの時間が過ぎて昼休み。
午前中の授業は眠気が瞼を下へ下へと引っ張って中々にしんどかったがなんとか乗り越えた。えらいぞ俺。
昼休みは昼食を教室で食べる者もいれば食堂へ行く者、中庭や屋上へ行く者とそれぞれだ。
屋上はベンチが四つあるのみで競争率が激しく、席が空いていない場合が多い。
中庭の場合はベンチの競争率はそれほど高くないので、俺は広場を選ぶとした。
今日のような天気のいい日は中庭で食べるのもまた気持ちがいい。
いくつかの木々が生えており、中央にはきちんと管理された芝生のスペースがあり、そこに座って昼食をとる生徒もいた。
俺はベンチに座り、オレンジジュースを持って芙美を待つ。
「――席の確保、ごくろう」
「おう。ほら、ジュース」
「どうも」
芙美が現れた、その後ろには明日香さんもいる。
ベンチは三人が座るには十分なスペースがある。俺は左側へと位置をずらすと芙美は俺の右隣に座り、明日香さんは芙美の隣へと座った。
「珍しいね、京一くんがお昼誘ってくるのは」
「ん、まあね」
「わざわざわたしを通さないで直接誘えばいいのに」
「クラスではカースト下位の俺がカースト上位の明日香さんを直接誘うなんて恐れ多くて」
「ふふっ、恐れ多いって。気軽に誘ってくれていいんだよ」
明日香さんはそう言って膝の上に弁当を乗せて広げる。
玉子焼きやら鮭やらが綺麗に収まった弁当で美味しそうだった。うちも負けちゃあいないがね。見てよこの唐揚げ、美味そうだろう? 手作りじゃなくて冷凍ものだけど。
芙美はいつもコンビニのサンドイッチやおにぎりにパンといったもののローテーションで、今日はサンドイッチの日。
もう少し健康的な食事をしたらいいのに。
それでいて肌のツヤはいいので一応は食事管理はそれなりにしっかりしているのであろう。
「いい天気だねえ」
明日香さんは空を仰いで卵焼きをぱくり。
「そうね」
「二人はクラスにもう慣れた?」
明日香さんが話を振ってくれる。
俺と芙美だけなら大抵がゲームの話になるがこういった世間話をするのはいつ以来だろうか。
「ぼちぼちってとこね。京一は相変わらずぼっち」
「ぼっちってわけじゃあないんだけど。それなりに話し相手はいるさ」
「そうなの?」
「そうだよ」
でも一番の話し相手は芙美かもしれない。
男子生徒のほうは、まあ一人くらいってとこ。
辛うじてボッチは免れているわけさ。どうだい。
……胸を張って言えることでもないので、胸の内に収めておく。
「二人とも仲いいね」
「そう見える?」
「ただの腐れ縁、こいつは喋るたんぱく質」
「そういうこいつは胸のそこそこでかいたんぱく質」
「セクハラやめろ」
「ごめんなさい」
御覧の通り、仲は良い。
「二人ってさ、付き合ってるの?」
「いや、全然」
「そう、全然」
「そうなんだ」
芙美と顔を見合わせてみた。
お互いに自分達は異性として見れるかと視線を交差させて顔を横に振った。
やっぱりそうだよな、俺達ってただのゲーム仲間。
って彼女の世間話に付き合っていないでそろそろこちらも目的の話に移りたい。
「……あのさ、明日香さん、聞いていい?」
「ん? いいよ? どうしたの?」
「明日香さんって、明日太っていう弟さんいる?」
すると明日香さんは、箸を止めた。
何か知っているような反応だ。
「……芙美、何か話した?」
「わたしは何も」
「そう……」
一旦箸を置き、彼女は再び空を仰いだ。
小さな深呼吸をして。
「ふたりとも放課後、時間ある?」
「あるよ」
「わたしも」
「じゃあ放課後、ちょっと付き合って」
午前中の授業は眠気が瞼を下へ下へと引っ張って中々にしんどかったがなんとか乗り越えた。えらいぞ俺。
昼休みは昼食を教室で食べる者もいれば食堂へ行く者、中庭や屋上へ行く者とそれぞれだ。
屋上はベンチが四つあるのみで競争率が激しく、席が空いていない場合が多い。
中庭の場合はベンチの競争率はそれほど高くないので、俺は広場を選ぶとした。
今日のような天気のいい日は中庭で食べるのもまた気持ちがいい。
いくつかの木々が生えており、中央にはきちんと管理された芝生のスペースがあり、そこに座って昼食をとる生徒もいた。
俺はベンチに座り、オレンジジュースを持って芙美を待つ。
「――席の確保、ごくろう」
「おう。ほら、ジュース」
「どうも」
芙美が現れた、その後ろには明日香さんもいる。
ベンチは三人が座るには十分なスペースがある。俺は左側へと位置をずらすと芙美は俺の右隣に座り、明日香さんは芙美の隣へと座った。
「珍しいね、京一くんがお昼誘ってくるのは」
「ん、まあね」
「わざわざわたしを通さないで直接誘えばいいのに」
「クラスではカースト下位の俺がカースト上位の明日香さんを直接誘うなんて恐れ多くて」
「ふふっ、恐れ多いって。気軽に誘ってくれていいんだよ」
明日香さんはそう言って膝の上に弁当を乗せて広げる。
玉子焼きやら鮭やらが綺麗に収まった弁当で美味しそうだった。うちも負けちゃあいないがね。見てよこの唐揚げ、美味そうだろう? 手作りじゃなくて冷凍ものだけど。
芙美はいつもコンビニのサンドイッチやおにぎりにパンといったもののローテーションで、今日はサンドイッチの日。
もう少し健康的な食事をしたらいいのに。
それでいて肌のツヤはいいので一応は食事管理はそれなりにしっかりしているのであろう。
「いい天気だねえ」
明日香さんは空を仰いで卵焼きをぱくり。
「そうね」
「二人はクラスにもう慣れた?」
明日香さんが話を振ってくれる。
俺と芙美だけなら大抵がゲームの話になるがこういった世間話をするのはいつ以来だろうか。
「ぼちぼちってとこね。京一は相変わらずぼっち」
「ぼっちってわけじゃあないんだけど。それなりに話し相手はいるさ」
「そうなの?」
「そうだよ」
でも一番の話し相手は芙美かもしれない。
男子生徒のほうは、まあ一人くらいってとこ。
辛うじてボッチは免れているわけさ。どうだい。
……胸を張って言えることでもないので、胸の内に収めておく。
「二人とも仲いいね」
「そう見える?」
「ただの腐れ縁、こいつは喋るたんぱく質」
「そういうこいつは胸のそこそこでかいたんぱく質」
「セクハラやめろ」
「ごめんなさい」
御覧の通り、仲は良い。
「二人ってさ、付き合ってるの?」
「いや、全然」
「そう、全然」
「そうなんだ」
芙美と顔を見合わせてみた。
お互いに自分達は異性として見れるかと視線を交差させて顔を横に振った。
やっぱりそうだよな、俺達ってただのゲーム仲間。
って彼女の世間話に付き合っていないでそろそろこちらも目的の話に移りたい。
「……あのさ、明日香さん、聞いていい?」
「ん? いいよ? どうしたの?」
「明日香さんって、明日太っていう弟さんいる?」
すると明日香さんは、箸を止めた。
何か知っているような反応だ。
「……芙美、何か話した?」
「わたしは何も」
「そう……」
一旦箸を置き、彼女は再び空を仰いだ。
小さな深呼吸をして。
「ふたりとも放課後、時間ある?」
「あるよ」
「わたしも」
「じゃあ放課後、ちょっと付き合って」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる