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第二十二話 長引く。
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明くる日。
早速芙美に連絡を入れてみた。
明日太から明日香に戻っていないか、その確認のためだ。
連絡の結果は――戻っていない、とのこと。
今日は、明日香は休みとするしかないだろう。
学校へ行き、明日香の空席を一瞥して小さなため息を俺は漏らした。
「いつまで長引くかねえ」
「このまま戻らなくなったらどうしましょう」
「お前はいいよな、明日太といられる時間が増えるから」
「っ……! そ、その……まあ、それは置いといて」
「置いといて?」
「……置いといて」
「そういえば明日太は?」
「わたしの家でごろごろしてもらってるわ、時間を潰すなら最適な場所でしょ?」
「確かに」
俺は席に着き、芙美は俺の机へ腰かける。
いつもはコンビニのパンを頬張っている芙美だが今日はそうしていないとなると、朝食は明日太と一緒に食べたのだろう。
容易にその光景が想像できる。
「でも明日太って一人でいるのは我慢できなそうな気がするんだよな」
「どうかしら」
「学校に来やしないだろうな」
「……分からないわね」
明日太のことだから特に考えずに学校へやってきそうな気がする。
といっても堂々とはやってこないとは思うけど。
「朝はどうだった?」
「昨日と変わらず元気だったわよ」
「そうか」
「明日香に呼び掛けてみたけど、それも昨日と変わらずってとこ」
「どうしたもんかな」
本当に、どうしたものか。
俺達に何かできるわけではない。
これといった解決方法も見いだせないために、考えあぐねるばかりだ。
そうして明日香が欠席しての授業が始まった。
嵐山達のグループは明日香が欠席とあっていつもよりもどこか静かな感じがした。
きっと明日香がいないからその分、話の盛り上がりが欠けているのだろう。
聞き上手の明日香がいればいつもの雰囲気になっていたであろうに。
昼休みには周子さんが俺達の教室へとやってきた。
風紀委員が一体どうしたのかと周囲がざわつく中、俺と芙美はそそくさと周子さんについていくとする。
「驚かせちゃったわね」
「いえいえ」
「昼ご飯、一緒にどうかと思って」
「いいですよ、ご一緒しましょう」
先ず向かうは購買へ。
俺は弁当だが芙美がパンを買うためだ。
「芙美、貴方……昼食は質素なのね」
「両親が多忙なので弁当を作ってもらえないんです」
「そう……」
芙美の昼飯も手に入れたことだし、今日は天気が良いので中庭のベンチに座って飯を食べるとする。
それにしても女子二人に挟まれて昼食をとる日が来るとは思いもよらなかったな。
左手側にいるのは女子とカウントしていいのか微妙なところだけど。まあ、生物学上は女子ではあるからカウントしてやろう芙美よ。
「明日香のほうは、どうなってるかしら」
「まだ戻ってはいませんでした」
「そう……。どうすれば明日香は出てくるのかしらね……」
「ん~……どうすればいいんですかね」
作戦会議をするとして。
なんとも答えを見い出しづらい問題だ。
「普段ならわたしの家に泊まって一日経てば機嫌は直るんだけど……」
「肉体が切り替わるようになって、新手の引きこもり方を覚えたのがまずかったか……」
「眠ってるなら王子様のキスで目覚めるものなんだけどね」
「眠ってるならな」
明日太曰く、当の本人は起きているという。
起きてはいるが、応答はなし。居留守状態。
「周子さんが謝っても出てこなかったしなあ……」
「わたしの謝り方が駄目だったのかしら、かくなるうえは、土下座を……」
「そ、そこまでしなくてもいいんじゃないですかねっ」
「そ、そうですよ……!」
逆に明日香を困らせてしまうかもしれない。
土下座だけは阻止しておこう。
「伊橋先生にも相談しておかなくちゃね……」
「伊橋先生なら引きこもった人格を呼び出すことができるかもしれませんね」
「ただ、先生は多忙で予約を取らないといけないからすぐに会えるというわけにはいかないのよね」
「では予約しましょうっ」
「ええ、今日中に予約の電話をしておくわ」
先生が相談に乗ってくれれば百人力――少なくとも俺達がこうして作戦会議をするよりも有意義であろうよ。
「とりあえず今日も、芙美の家に行っていいかしら」
「勿論、いいですよ」
「芙美は、昨日明日香を呼び出すために何かしてみた?」
「えっ、あー……い、一応は、呼び掛けたりしてみましたけど、応答なしでした」
目的を忘れて明日太とゲームでもして楽しんでいたのではなかろうか。
そんな感じがするぞ俺は。
「……やっぱり、わたしが叩いたせいで……」
「そう落ち込まないで、明日香がどうやったら出てくるかを考えましょう」
「……そうね」
「といっても方法が全然浮かばないわけですけどね」
溜息をつく。
三人とも、同時に。
どうしたら明日香を呼び出せるのやら。
空を仰ぐも雲一つない晴天は何も教えてやくれない。
仕方がないので弁当をぱくぱくと食べるとする。
結局答えは出ないまま、昼休みを終えてしまった。
といっても、だ。簡単に答えが出るような問題ではない。
俺達が昼休みいっぱいを使って答えを導き出せるのならばもうそんな問題などとうに解決している。
これこそ難問というものだな。
ちなみに本日のゲーム部はお休み。
俺と芙美の二人だけではただオセロなりなんなりして終わりだし、何より周子さんが芙美の家に行くというので予定を周子さんに合わせなくてはならない。
折角なので俺もついていくとする。
「やあ、おかえり」
「ただいまぁ」
明日太を見るなり蕩ける芙美。
やれやれ、困った奴だぜ。
「明日太、元気にしてた?」
「ああ、元気というか暇だったよ姉さん」
「明日香は……」
「起きてるけど応答なし」
「そう……」
中に入り、芙美の部屋へ。
明日太は家庭用ゲーム機で遊んでいたようだ。俺も一日中ゲームをして過ごしてみたいものだね。
「昼は何を食べたんだ?」
「昨日のカレーの残り」
「ああ、そうか」
そういえば残っていたな。
折角芙美の家に泊まってるんだからもっと贅沢しちゃってもいいのに。
「じゃあ早速……」
周子さんは明日太の手を引いてソファへと座らせ、隣に座ってはじっとその目を見つめて、
「明日香」
静かに呼びかけた。
「どう、元気にしてた? 貴方に会えなくて寂しいわ、よかったら出てきてちょうだい」
「……」
「……」
「……駄目、応答なし」
がくっと項垂れる周子さん。
一日経てば明日香の気も治まるかと思ったが、そうはいかないらしい。
「まぁまぁ、とりあえずゲームでも……しようか?」
「……そうね」
昨日と同じく大乱闘! を行うことに。
しかし周子さんの動きは昨日よりも悪く、今日は昨日よりも多く画面外へ飛ばされていた。
心ここにあらずといった様子。
今日は何度か呼び掛けての繰り返しだったが結局明日香は出てこないために、また今日も芙美の家に泊めさせることになった。
晩御飯は一緒にはいただかず、俺達は帰路に着く。
昨日と同様、周子さんとは途中まで何気ない世間話をする中、やはり今日はどこか違う感じがした。
「周子さん、大丈夫ですか?」
「え、あ、うん……」
大丈夫、とは言わない。
言えないのかもしれない。
「少し考えてたの」
「考えてた?」
「あの子が……このままずっと心の奥底に引きこもったままになったとしたらって」
「……」
そうはならないと、この場で断言はできない、決して。
そうなる可能性も、なきにしもあらずなのだ。
「もしもそうなったら、妹を失うようで怖くて……」
「なんとか、引っ張り出せるよう頑張りましょう……!」
握り拳を作って周子さんを鼓舞する。
周りの俺達が落ち込んでいては元も子もない。
「わたしではきっと駄目。京一くん、どうかあの子をお願い……」
「俺なんかが明日香を呼び出せますかね……」
「あの子、あまり学校のことは話さないんだけど、わたしにはよく貴方のことを話してたの」
「えっ、俺のことを?」
「そう。あの子、意外と貴方のこと、気に入ってるのよ」
「そうだったんだ……」
なんだか嬉しいな。
「信用してるわ、京一くん」
「し、信用されると、困りますなあ……」
あ、頬が熱い。
顔が赤くなってるかも。
顔逸らしておこう。
明日香が俺のことを気に入ってくれているのか……。
それなら、いや、うーん、これは、一つ思い浮かんだもののちょっと呼び起こすには大胆な作戦だな。
やめておこう。
早速芙美に連絡を入れてみた。
明日太から明日香に戻っていないか、その確認のためだ。
連絡の結果は――戻っていない、とのこと。
今日は、明日香は休みとするしかないだろう。
学校へ行き、明日香の空席を一瞥して小さなため息を俺は漏らした。
「いつまで長引くかねえ」
「このまま戻らなくなったらどうしましょう」
「お前はいいよな、明日太といられる時間が増えるから」
「っ……! そ、その……まあ、それは置いといて」
「置いといて?」
「……置いといて」
「そういえば明日太は?」
「わたしの家でごろごろしてもらってるわ、時間を潰すなら最適な場所でしょ?」
「確かに」
俺は席に着き、芙美は俺の机へ腰かける。
いつもはコンビニのパンを頬張っている芙美だが今日はそうしていないとなると、朝食は明日太と一緒に食べたのだろう。
容易にその光景が想像できる。
「でも明日太って一人でいるのは我慢できなそうな気がするんだよな」
「どうかしら」
「学校に来やしないだろうな」
「……分からないわね」
明日太のことだから特に考えずに学校へやってきそうな気がする。
といっても堂々とはやってこないとは思うけど。
「朝はどうだった?」
「昨日と変わらず元気だったわよ」
「そうか」
「明日香に呼び掛けてみたけど、それも昨日と変わらずってとこ」
「どうしたもんかな」
本当に、どうしたものか。
俺達に何かできるわけではない。
これといった解決方法も見いだせないために、考えあぐねるばかりだ。
そうして明日香が欠席しての授業が始まった。
嵐山達のグループは明日香が欠席とあっていつもよりもどこか静かな感じがした。
きっと明日香がいないからその分、話の盛り上がりが欠けているのだろう。
聞き上手の明日香がいればいつもの雰囲気になっていたであろうに。
昼休みには周子さんが俺達の教室へとやってきた。
風紀委員が一体どうしたのかと周囲がざわつく中、俺と芙美はそそくさと周子さんについていくとする。
「驚かせちゃったわね」
「いえいえ」
「昼ご飯、一緒にどうかと思って」
「いいですよ、ご一緒しましょう」
先ず向かうは購買へ。
俺は弁当だが芙美がパンを買うためだ。
「芙美、貴方……昼食は質素なのね」
「両親が多忙なので弁当を作ってもらえないんです」
「そう……」
芙美の昼飯も手に入れたことだし、今日は天気が良いので中庭のベンチに座って飯を食べるとする。
それにしても女子二人に挟まれて昼食をとる日が来るとは思いもよらなかったな。
左手側にいるのは女子とカウントしていいのか微妙なところだけど。まあ、生物学上は女子ではあるからカウントしてやろう芙美よ。
「明日香のほうは、どうなってるかしら」
「まだ戻ってはいませんでした」
「そう……。どうすれば明日香は出てくるのかしらね……」
「ん~……どうすればいいんですかね」
作戦会議をするとして。
なんとも答えを見い出しづらい問題だ。
「普段ならわたしの家に泊まって一日経てば機嫌は直るんだけど……」
「肉体が切り替わるようになって、新手の引きこもり方を覚えたのがまずかったか……」
「眠ってるなら王子様のキスで目覚めるものなんだけどね」
「眠ってるならな」
明日太曰く、当の本人は起きているという。
起きてはいるが、応答はなし。居留守状態。
「周子さんが謝っても出てこなかったしなあ……」
「わたしの謝り方が駄目だったのかしら、かくなるうえは、土下座を……」
「そ、そこまでしなくてもいいんじゃないですかねっ」
「そ、そうですよ……!」
逆に明日香を困らせてしまうかもしれない。
土下座だけは阻止しておこう。
「伊橋先生にも相談しておかなくちゃね……」
「伊橋先生なら引きこもった人格を呼び出すことができるかもしれませんね」
「ただ、先生は多忙で予約を取らないといけないからすぐに会えるというわけにはいかないのよね」
「では予約しましょうっ」
「ええ、今日中に予約の電話をしておくわ」
先生が相談に乗ってくれれば百人力――少なくとも俺達がこうして作戦会議をするよりも有意義であろうよ。
「とりあえず今日も、芙美の家に行っていいかしら」
「勿論、いいですよ」
「芙美は、昨日明日香を呼び出すために何かしてみた?」
「えっ、あー……い、一応は、呼び掛けたりしてみましたけど、応答なしでした」
目的を忘れて明日太とゲームでもして楽しんでいたのではなかろうか。
そんな感じがするぞ俺は。
「……やっぱり、わたしが叩いたせいで……」
「そう落ち込まないで、明日香がどうやったら出てくるかを考えましょう」
「……そうね」
「といっても方法が全然浮かばないわけですけどね」
溜息をつく。
三人とも、同時に。
どうしたら明日香を呼び出せるのやら。
空を仰ぐも雲一つない晴天は何も教えてやくれない。
仕方がないので弁当をぱくぱくと食べるとする。
結局答えは出ないまま、昼休みを終えてしまった。
といっても、だ。簡単に答えが出るような問題ではない。
俺達が昼休みいっぱいを使って答えを導き出せるのならばもうそんな問題などとうに解決している。
これこそ難問というものだな。
ちなみに本日のゲーム部はお休み。
俺と芙美の二人だけではただオセロなりなんなりして終わりだし、何より周子さんが芙美の家に行くというので予定を周子さんに合わせなくてはならない。
折角なので俺もついていくとする。
「やあ、おかえり」
「ただいまぁ」
明日太を見るなり蕩ける芙美。
やれやれ、困った奴だぜ。
「明日太、元気にしてた?」
「ああ、元気というか暇だったよ姉さん」
「明日香は……」
「起きてるけど応答なし」
「そう……」
中に入り、芙美の部屋へ。
明日太は家庭用ゲーム機で遊んでいたようだ。俺も一日中ゲームをして過ごしてみたいものだね。
「昼は何を食べたんだ?」
「昨日のカレーの残り」
「ああ、そうか」
そういえば残っていたな。
折角芙美の家に泊まってるんだからもっと贅沢しちゃってもいいのに。
「じゃあ早速……」
周子さんは明日太の手を引いてソファへと座らせ、隣に座ってはじっとその目を見つめて、
「明日香」
静かに呼びかけた。
「どう、元気にしてた? 貴方に会えなくて寂しいわ、よかったら出てきてちょうだい」
「……」
「……」
「……駄目、応答なし」
がくっと項垂れる周子さん。
一日経てば明日香の気も治まるかと思ったが、そうはいかないらしい。
「まぁまぁ、とりあえずゲームでも……しようか?」
「……そうね」
昨日と同じく大乱闘! を行うことに。
しかし周子さんの動きは昨日よりも悪く、今日は昨日よりも多く画面外へ飛ばされていた。
心ここにあらずといった様子。
今日は何度か呼び掛けての繰り返しだったが結局明日香は出てこないために、また今日も芙美の家に泊めさせることになった。
晩御飯は一緒にはいただかず、俺達は帰路に着く。
昨日と同様、周子さんとは途中まで何気ない世間話をする中、やはり今日はどこか違う感じがした。
「周子さん、大丈夫ですか?」
「え、あ、うん……」
大丈夫、とは言わない。
言えないのかもしれない。
「少し考えてたの」
「考えてた?」
「あの子が……このままずっと心の奥底に引きこもったままになったとしたらって」
「……」
そうはならないと、この場で断言はできない、決して。
そうなる可能性も、なきにしもあらずなのだ。
「もしもそうなったら、妹を失うようで怖くて……」
「なんとか、引っ張り出せるよう頑張りましょう……!」
握り拳を作って周子さんを鼓舞する。
周りの俺達が落ち込んでいては元も子もない。
「わたしではきっと駄目。京一くん、どうかあの子をお願い……」
「俺なんかが明日香を呼び出せますかね……」
「あの子、あまり学校のことは話さないんだけど、わたしにはよく貴方のことを話してたの」
「えっ、俺のことを?」
「そう。あの子、意外と貴方のこと、気に入ってるのよ」
「そうだったんだ……」
なんだか嬉しいな。
「信用してるわ、京一くん」
「し、信用されると、困りますなあ……」
あ、頬が熱い。
顔が赤くなってるかも。
顔逸らしておこう。
明日香が俺のことを気に入ってくれているのか……。
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