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第二章
013 骸は神に祈りを捧げる。
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「――我らが神よ。どうか私をお導きください」
窓から差し込む光に照らされたアルヴ像の前に両膝をついて祈る少女がいた。
その顔は髑髏の刺青を刻んでおり、昨日に島津と対峙した人物だ。
「私は死人も同然です。主の導きにより私は生を受ける事ができます。アルヴ様の子――エメリフィア様の受けた苦痛を私にもお与えください」
彼女は銀の輪のネックレスを口に当て数秒ほど瞑想する。
それを終えると鞭を手に取り、自らの背中へと叩きつけ始めた。
音の響きからして、加減は一切されていない。
しかも上着は脱いで裸体を晒しているために痛みが直に伝わっているであろう。
体中も刺青で覆われており、背中の刺青は古傷で所々がかすれている。何度も何度もこのように鞭を叩きつけた結果であろう。
表情ほほとんど歪める事無く、叩く事数十回。
鞭には彼女の血が付着し、その血を使い自らの額に円を描く。
アルヴ教は円で始まる。それは手で円を作り祈りとして、の事であるが狂信に近い彼女の信仰心はその血で円を作ってしまっている。
アルヴの子、エメリフィアは民のために行動し様々な拷問を受けながらも耐え抜き、民を導いたとされている。
アルヴ教にはエメリフィア派がいる。
エメリフィア派とてアルヴを信仰するのは変わりないが、方針が大きく違う。彼の受けた数々の拷問を、自ら受けて彼の痛みを知る事で彼に近づけるという信仰方針だ。
過激さ故に敬遠されがちではあるが、中には心から信仰をしている者だと尊敬する者もいる。
「……昨日は、失敗したようだね」
「はい、トゥト様……」
いつの間にか、光の届かぬ後方入り口にて。
暗闇の中には黒ローブを来た人物が立っていた。声は男、それも綺麗な声だ。聞いているだけで、惑わされるほどに。
「何か問題が生じたのかな? スカル」
「それが……」
スカル――それが彼女の名だ。
その髑髏の刺青が、もはや彼女の自己紹介みたいなものでもある。
男はスカルのローブを取って肩にかけてやる。
スカルは感謝を込めて祈りを彼へと送り、座ったまま彼のほうへと体を向き直した。
「ふ、不死者と思しき人物と遭遇しました……」
「不死者……。ほう、それは興味深い」
「私の思い違いか、見間違いかもしれませんのでまだなんとも言えませんが……。連れの子供も言い伝えにあったアルヴ様の使い、不死者と言っており、私の部下が更に銃弾を浴びせるも殺すには至りませんでした」
ふむ、と彼は顎に手を当てた。
光に照らされるそのきめ細かで滑らかな白い肌、銀の髪、妖艶な唇は果たしてこの男は本当に男なのかと疑ってしまいたくなる。
「死亡したと思いきや、傷は治っており……まさに不死者としか言いようがありません……。私は、アルヴ様の使いと対峙したのでしょうか……」
「どうだろうね。まだ分からないが、もしかしたらアルヴ様の使いと装った悪魔である可能性もある」
「悪魔、ですか……?」
「ああ、油断は禁物だよ。悪魔が君を惑わそうとしているのだとしたら……」
――君は、試されている。
彼の囁きに、スカルはシマヅの顔を思い浮かべる。
正体を、暴かなくてはならない――。
「銃は?」
「毎日手入れを怠らず、いつでも完璧に使えるようにしております」
「あれは僕達にとって大切な武器だからね。大事にしないと。人の作りし罪は我々が背負い、その罪を償うために我々は祈り続けなければならない」
「はい。罪は我が一部とし、罪人には罪なるもので罰しなければ、なりません」
「そうだ。王女は罪を犯した。アルヴ教を掻き乱し、敵国の技術にも手を染めている、となれば……分かるね?」
「然るべき報いを……。しかし私が手を出さずとも、巷では天国病と呼ばれる奇跡の力により裁かれる可能性もございますね」
男の口元が、うっすらと歪んだ。
「そうだね。きっと近いうちに、この国にいる異端者も裁かれるだろう。我々が天啓を得る日も近い――」
窓から差し込む光に照らされたアルヴ像の前に両膝をついて祈る少女がいた。
その顔は髑髏の刺青を刻んでおり、昨日に島津と対峙した人物だ。
「私は死人も同然です。主の導きにより私は生を受ける事ができます。アルヴ様の子――エメリフィア様の受けた苦痛を私にもお与えください」
彼女は銀の輪のネックレスを口に当て数秒ほど瞑想する。
それを終えると鞭を手に取り、自らの背中へと叩きつけ始めた。
音の響きからして、加減は一切されていない。
しかも上着は脱いで裸体を晒しているために痛みが直に伝わっているであろう。
体中も刺青で覆われており、背中の刺青は古傷で所々がかすれている。何度も何度もこのように鞭を叩きつけた結果であろう。
表情ほほとんど歪める事無く、叩く事数十回。
鞭には彼女の血が付着し、その血を使い自らの額に円を描く。
アルヴ教は円で始まる。それは手で円を作り祈りとして、の事であるが狂信に近い彼女の信仰心はその血で円を作ってしまっている。
アルヴの子、エメリフィアは民のために行動し様々な拷問を受けながらも耐え抜き、民を導いたとされている。
アルヴ教にはエメリフィア派がいる。
エメリフィア派とてアルヴを信仰するのは変わりないが、方針が大きく違う。彼の受けた数々の拷問を、自ら受けて彼の痛みを知る事で彼に近づけるという信仰方針だ。
過激さ故に敬遠されがちではあるが、中には心から信仰をしている者だと尊敬する者もいる。
「……昨日は、失敗したようだね」
「はい、トゥト様……」
いつの間にか、光の届かぬ後方入り口にて。
暗闇の中には黒ローブを来た人物が立っていた。声は男、それも綺麗な声だ。聞いているだけで、惑わされるほどに。
「何か問題が生じたのかな? スカル」
「それが……」
スカル――それが彼女の名だ。
その髑髏の刺青が、もはや彼女の自己紹介みたいなものでもある。
男はスカルのローブを取って肩にかけてやる。
スカルは感謝を込めて祈りを彼へと送り、座ったまま彼のほうへと体を向き直した。
「ふ、不死者と思しき人物と遭遇しました……」
「不死者……。ほう、それは興味深い」
「私の思い違いか、見間違いかもしれませんのでまだなんとも言えませんが……。連れの子供も言い伝えにあったアルヴ様の使い、不死者と言っており、私の部下が更に銃弾を浴びせるも殺すには至りませんでした」
ふむ、と彼は顎に手を当てた。
光に照らされるそのきめ細かで滑らかな白い肌、銀の髪、妖艶な唇は果たしてこの男は本当に男なのかと疑ってしまいたくなる。
「死亡したと思いきや、傷は治っており……まさに不死者としか言いようがありません……。私は、アルヴ様の使いと対峙したのでしょうか……」
「どうだろうね。まだ分からないが、もしかしたらアルヴ様の使いと装った悪魔である可能性もある」
「悪魔、ですか……?」
「ああ、油断は禁物だよ。悪魔が君を惑わそうとしているのだとしたら……」
――君は、試されている。
彼の囁きに、スカルはシマヅの顔を思い浮かべる。
正体を、暴かなくてはならない――。
「銃は?」
「毎日手入れを怠らず、いつでも完璧に使えるようにしております」
「あれは僕達にとって大切な武器だからね。大事にしないと。人の作りし罪は我々が背負い、その罪を償うために我々は祈り続けなければならない」
「はい。罪は我が一部とし、罪人には罪なるもので罰しなければ、なりません」
「そうだ。王女は罪を犯した。アルヴ教を掻き乱し、敵国の技術にも手を染めている、となれば……分かるね?」
「然るべき報いを……。しかし私が手を出さずとも、巷では天国病と呼ばれる奇跡の力により裁かれる可能性もございますね」
男の口元が、うっすらと歪んだ。
「そうだね。きっと近いうちに、この国にいる異端者も裁かれるだろう。我々が天啓を得る日も近い――」
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