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第一章
5.特務捜査研究所
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山麓近くの、木々の目立つ中にその建物は、厳重な設備の基に建てられている。
建物を取り囲むフェンスは五メートルほど。金網もフェンスの上を張り巡らせているために飛び越えるのは困難だ。
正面入り口の受付に警察手帳を見せる。
いつもの事ながら、受付の彼は常に腰の銃に手を掛けながら対応している。警戒心が高いのは良い事ではあるが、疲れやしないのだろうか。
「後ろのは――」
「連絡は入っています、どうぞ」
奥にいる警備員に手で合図を送ると、入り口のゲートが開かれる。
遠目から見えていた四階建ての白を基調としたどこか清潔感のある研究所が顕となる。
駐車場に停車し、後部座席を見ると自分の腕を枕にして眠っている伊部さんはどこか寝心地が悪そうに眉間にはしわが寄っていた。
起きてすぐに暴れたりしないだろうか。
そんな不安もあるがとりあえず研究所の施設内に入ってしまえば逃げ出されても確保は出来る。
木崎君はさっと席を下りて後部座席の扉を開け、彼女を優しく揺する。
「伊部さん、起きてください」
「ん……」
「つきましたよ」
「あ……てん、天国?」
「いずれ誰もが到着するでしょうが、そこへ行くにはまだ早いでしょう」
そんな返しは、苦笑いを浮かべて。
今を生きる上で、天国については意識しないほうがいいのだが、時にジョークのやりとりとして天国が使われる事は多くなった。
気だるそうに体を起こす彼女に続いて車を降りる。
特務捜査研究所を仰ぎ、伊部さんは特にリアクションは取らなかったものの早速煙草に火をつけようとしていた。
「施設内は一部を除いて禁煙だ」
すぐに取り上げて、箱に戻させた。
不満そうに表情を歪め、冷気を嫌って両手はポケットへと突っ込まれていた。
「何よ、ここ」
「研究所さ、かの有名な天国関連の」
「へえ……。一般人が入って、いいの?
「構わないよ。隠しているわけじゃあないからね」
名称に特務がついているとはいえ、この研究所は科学捜査研究所とほぼ変わりはない。
極秘の研究を行っているわけでも、機密事項を扱っているわけでもない。
ただ、天国交信装置には関連するために研究所の警備が厳重なだけだ。
何より世間から本当に隠したい情報を扱っている施設は、そもそもがいかにもこのような見てくれからして研究所だと言わんばかりの建物は構えない。
ある意味ここは天国関連について探ろうとしている連中がいた場合の囮みたいなものだ。
もし攻撃を受けても地下には避難施設があり、情報は漏れないよう徹底されている。
研究所へ入り、一室へと案内する。
先ずは彼女に書類を書いてもらう。
交番では落ち着かせるのが優先されたので身元の確認はとってはいない。ここでしっかりとまとめてもらおう。
「身分を証明するものは何か持っているかい?」
「あ、あるよ……」
やや震えた手で、財布から運転免許証を取り出した。
それを受け取り、彼女が書類に書く内容と違いが無いかを照らし合わせていく。
その間、木崎君には彼女のアリバイについて調べてもらっている。
街の防犯カメラが細工されているとあって、防犯カメラでの確認はほぼ不可能――であれば、彼女の周辺での目撃証言などからじっくり詰めていく。
彼女は相談所を開いている小さなビルでそのまま生活をしているらしい、事件が発生したと思われる時間と彼女が生活している付近の防犯カメラや証言を集めれば、今回の事件現場にはいないのは証明されるだろう。
証明されたらされたで、尚更彼女が霊能力者であり、今回一命を取りとめた人物の生霊と話をして集団自殺を知った――それまでもが証明されてしまうのだが……どう、考えるべきか。
「ご両親は?」
「どっちも死んだ。親父が末期癌で安楽死、お袋は後追い自殺」
「そうか、いや、すまなかった……」
「べ、別にいい……気にしてない。どうせ天国にいるんだし、悲しみも、薄い」
後追い自殺は爆発的に増えた
五十代以上の夫婦間では特に多いと聞く。
天国で共に暮らせると分かっているからこそ、残された片方は躊躇せずに死を選ぶ。
俺の両親もいつか、片方が亡くなったら後追い自殺をするかもしれない。今の世の中では、十分に有りうる話だ。
「さ、さあ、書いたよ……」
「どうも」
また貧乏揺すりが始まっていた。
煙草を吸わせるべきか。
いや、その前に……だ。
「失礼」
さっと彼女が隅に置いていた煙草の箱を手に取った。
「あっ、な、何するのさ!」
中身を確認する。
「……やっぱり」
先ほど煙草を箱に戻させた時にちらりと見えていた。
明らかに煙草でないものが、混じっている。その一本を手に取り、彼女に見せ付けるように目の前に出した。
「これは、危険ドラッグ入りの煙草だろう?」
「ち、違う……」
目を逸らすも彼女の様子を見れば明白だ。
交番で暴れていたのも危険ドラッグの症状が出ていたからだろう。今は禁断症状に入っているはずだ。
職務質問をした際にうまく持ち物を隠したのか、暴れたおかげで有耶無耶になったのかは定かではないが、どちらであれ箱に入れて堂々と持ち歩くその度胸には恐れ入る。
「嘘をついても無駄だ。安物の粗悪品で、効果にムラがある。依存度はそれほど高くないにせよ、危険には変わりない」
「あ、あんた、ドラッグに詳しいの……?」
「捜査段階でよく見るんだ、こういうのは」
集団自殺の現場では天国教団による自殺薬での自殺が主だが、中にはドラッグで散々楽しんだ後に乱交パーティーからの殺人パーティーなんていう連中もいる。
要は天国教団を装う連中が人を集めて好き勝手やっているのだ。
彼女の持っているこのドラッグも時々現場に落ちていた。
天国交信装置による騒乱で法整理が追いついていないのをいい事に日本では危険ドラッグが広まりつつある。
反社会的勢力の稼ぎにもなっていると思われ、マル暴や麻取はここ数年常に神経質だ。
「どこで手に入れた?」
「い、言ったら、見逃して、くれる?」
「もうやらないと約束するならな。煙草ならいくらでも吸わせてやる」
それは俺達の仕事ではないし優先すべきは天国関連だ。
とはいえここでのやり取りは報告はさせてもらうがね。
「え、えっと……街に行った時に、いつも、ほら、六ビル付近の……」
「ああ、あそこね」
今朝その近くを通りかかった。
六ビルとは平輪市都心中心部にある六つの高層ビルを指す。
別名を――自殺ビル。
ヤクの売人は自殺願望者によく目をつけている、どうせ死ぬならヤクをやってみないか、そう言い寄ってくるのだ。
「六ビル付近、ね。時間帯は?」
「夕方、場所はいつも、違うけど、SNSの、捨て垢が電柱とか、自販機に小さく書いてて、それを見て、場所と取引時間が決まるの」
「捨て垢ね……そういう手法を取っているのか」
「そ、それで、タクシーがやってきて、取引できる……」
営業中のタクシーの利用をすれば警察は営業を妨害してまで職質や調査はできない。タクシーの偽装か、タクシー運転手と組んでいるのか、どちらにせよ後の事は然るべき担当に任せるとしよう。
「まさか今日した話は、ドラッグで幻覚を見ていたからじゃあないだろうな」
「ラ、ラリってなんかない……」
「そうであれば嬉しいよ」
幻覚であったとしてもだ、現場の詳細を知る術ではないのは明白だ。
詳細を更に聞き、メモを取る。
ほどよいところでコーヒーを淹れて、軽く休憩を挟んだ。
そろそろ昼時、研究所には食堂があるので昼食はそこで摂るとして、その前に彼女が事件に関与していないかが明確にならない限りここからは動けない。
「しかしよく危険ドラッグに手を出せるな。免許もなくまともに薬物を扱っていない素人が作るものだぞ。死んだらどうするんだ」
「死んだら、天国に行く、ただそれだけじゃない」
「……それを言われると、何も言えんが」
真面目に生きる、必死に生きる、懸命に生きる、そういった生きる上での意識の低下は深刻だ。
「……貴方は、何のために、生きてる?」
「俺は……」
そんな質問は、このご時勢では禁句に近い。
「正直なところ、惰性で生きている、かな。君は?」
「私? 私は、あはっ、どうして、だろ。別に……何も考えてない、だけかも?」
「考えてない?」
「た、多分……」
ならばそんな後ろめたく目を逸らさないで真っ直ぐにこちらを見てもらいたいものだな。
そうしているうちに木崎君が戻ってきた。
「彼女のアリバイが証明されました。昨日は知人のアパートにいたとの事です。深夜は騒音によって隣人と軽いトラブルも起こしており、彼女は朝方にアパートから出たのを近所の住民が目撃をしておりました」
「そうか。ご苦労様、となれば……事件発生時は現場の近くにすらいなかったのか」
「では本当に、その……生霊? から現場の情報を得たのでしょうか」
「だ、だからそう、言ってるじゃない……」
煙草を吸いたそうにしていたので、危険ドラッグは全て抜いて箱を彼女に返した。
本来、この取調室は禁煙ではあるが取調べの相手が喫煙者の場合は喫煙の許可がなされる。
狭い個室には煙草の匂いがすぐに満ち足り、木崎君は換気扇の紐を引いた。
「生霊からは他に何か聞けるかい?」
「今は、姿を現さないから、聞けない。見かけたら、話を聞けるけど……」
「そうか、どこに行ったかは分かるかな?」
「さあ……。あ、ああ、でも、そう、思い出した。ええっと、名前、名前を聞いたんだった」
「名前はなんと?」
もしも一致すれば、信憑性は大きく増すであろう。
我々ですらまだ自殺者の名前は調べられていない。
天国教団の集団自殺は、被害者は誰もが身分を証明するものを所持していないために捜査に時間が掛かる。
それも奴らの狙いの一つであろう。
「宮内、早苗、って、言ってた……」
妙なものだ。
捜査というのは普通、足で稼いで地道にそして着実に、確かなものを見つけて照らし合わせて一歩ずつ進んでいく。
だが彼女の話を聞き、照らし合わせて確かなものだと認められた場合、それは一歩どころか数歩ずつ進む。
非科学的な捜査方法だがしかし、じっくり話を聞いてみたいと思った。
建物を取り囲むフェンスは五メートルほど。金網もフェンスの上を張り巡らせているために飛び越えるのは困難だ。
正面入り口の受付に警察手帳を見せる。
いつもの事ながら、受付の彼は常に腰の銃に手を掛けながら対応している。警戒心が高いのは良い事ではあるが、疲れやしないのだろうか。
「後ろのは――」
「連絡は入っています、どうぞ」
奥にいる警備員に手で合図を送ると、入り口のゲートが開かれる。
遠目から見えていた四階建ての白を基調としたどこか清潔感のある研究所が顕となる。
駐車場に停車し、後部座席を見ると自分の腕を枕にして眠っている伊部さんはどこか寝心地が悪そうに眉間にはしわが寄っていた。
起きてすぐに暴れたりしないだろうか。
そんな不安もあるがとりあえず研究所の施設内に入ってしまえば逃げ出されても確保は出来る。
木崎君はさっと席を下りて後部座席の扉を開け、彼女を優しく揺する。
「伊部さん、起きてください」
「ん……」
「つきましたよ」
「あ……てん、天国?」
「いずれ誰もが到着するでしょうが、そこへ行くにはまだ早いでしょう」
そんな返しは、苦笑いを浮かべて。
今を生きる上で、天国については意識しないほうがいいのだが、時にジョークのやりとりとして天国が使われる事は多くなった。
気だるそうに体を起こす彼女に続いて車を降りる。
特務捜査研究所を仰ぎ、伊部さんは特にリアクションは取らなかったものの早速煙草に火をつけようとしていた。
「施設内は一部を除いて禁煙だ」
すぐに取り上げて、箱に戻させた。
不満そうに表情を歪め、冷気を嫌って両手はポケットへと突っ込まれていた。
「何よ、ここ」
「研究所さ、かの有名な天国関連の」
「へえ……。一般人が入って、いいの?
「構わないよ。隠しているわけじゃあないからね」
名称に特務がついているとはいえ、この研究所は科学捜査研究所とほぼ変わりはない。
極秘の研究を行っているわけでも、機密事項を扱っているわけでもない。
ただ、天国交信装置には関連するために研究所の警備が厳重なだけだ。
何より世間から本当に隠したい情報を扱っている施設は、そもそもがいかにもこのような見てくれからして研究所だと言わんばかりの建物は構えない。
ある意味ここは天国関連について探ろうとしている連中がいた場合の囮みたいなものだ。
もし攻撃を受けても地下には避難施設があり、情報は漏れないよう徹底されている。
研究所へ入り、一室へと案内する。
先ずは彼女に書類を書いてもらう。
交番では落ち着かせるのが優先されたので身元の確認はとってはいない。ここでしっかりとまとめてもらおう。
「身分を証明するものは何か持っているかい?」
「あ、あるよ……」
やや震えた手で、財布から運転免許証を取り出した。
それを受け取り、彼女が書類に書く内容と違いが無いかを照らし合わせていく。
その間、木崎君には彼女のアリバイについて調べてもらっている。
街の防犯カメラが細工されているとあって、防犯カメラでの確認はほぼ不可能――であれば、彼女の周辺での目撃証言などからじっくり詰めていく。
彼女は相談所を開いている小さなビルでそのまま生活をしているらしい、事件が発生したと思われる時間と彼女が生活している付近の防犯カメラや証言を集めれば、今回の事件現場にはいないのは証明されるだろう。
証明されたらされたで、尚更彼女が霊能力者であり、今回一命を取りとめた人物の生霊と話をして集団自殺を知った――それまでもが証明されてしまうのだが……どう、考えるべきか。
「ご両親は?」
「どっちも死んだ。親父が末期癌で安楽死、お袋は後追い自殺」
「そうか、いや、すまなかった……」
「べ、別にいい……気にしてない。どうせ天国にいるんだし、悲しみも、薄い」
後追い自殺は爆発的に増えた
五十代以上の夫婦間では特に多いと聞く。
天国で共に暮らせると分かっているからこそ、残された片方は躊躇せずに死を選ぶ。
俺の両親もいつか、片方が亡くなったら後追い自殺をするかもしれない。今の世の中では、十分に有りうる話だ。
「さ、さあ、書いたよ……」
「どうも」
また貧乏揺すりが始まっていた。
煙草を吸わせるべきか。
いや、その前に……だ。
「失礼」
さっと彼女が隅に置いていた煙草の箱を手に取った。
「あっ、な、何するのさ!」
中身を確認する。
「……やっぱり」
先ほど煙草を箱に戻させた時にちらりと見えていた。
明らかに煙草でないものが、混じっている。その一本を手に取り、彼女に見せ付けるように目の前に出した。
「これは、危険ドラッグ入りの煙草だろう?」
「ち、違う……」
目を逸らすも彼女の様子を見れば明白だ。
交番で暴れていたのも危険ドラッグの症状が出ていたからだろう。今は禁断症状に入っているはずだ。
職務質問をした際にうまく持ち物を隠したのか、暴れたおかげで有耶無耶になったのかは定かではないが、どちらであれ箱に入れて堂々と持ち歩くその度胸には恐れ入る。
「嘘をついても無駄だ。安物の粗悪品で、効果にムラがある。依存度はそれほど高くないにせよ、危険には変わりない」
「あ、あんた、ドラッグに詳しいの……?」
「捜査段階でよく見るんだ、こういうのは」
集団自殺の現場では天国教団による自殺薬での自殺が主だが、中にはドラッグで散々楽しんだ後に乱交パーティーからの殺人パーティーなんていう連中もいる。
要は天国教団を装う連中が人を集めて好き勝手やっているのだ。
彼女の持っているこのドラッグも時々現場に落ちていた。
天国交信装置による騒乱で法整理が追いついていないのをいい事に日本では危険ドラッグが広まりつつある。
反社会的勢力の稼ぎにもなっていると思われ、マル暴や麻取はここ数年常に神経質だ。
「どこで手に入れた?」
「い、言ったら、見逃して、くれる?」
「もうやらないと約束するならな。煙草ならいくらでも吸わせてやる」
それは俺達の仕事ではないし優先すべきは天国関連だ。
とはいえここでのやり取りは報告はさせてもらうがね。
「え、えっと……街に行った時に、いつも、ほら、六ビル付近の……」
「ああ、あそこね」
今朝その近くを通りかかった。
六ビルとは平輪市都心中心部にある六つの高層ビルを指す。
別名を――自殺ビル。
ヤクの売人は自殺願望者によく目をつけている、どうせ死ぬならヤクをやってみないか、そう言い寄ってくるのだ。
「六ビル付近、ね。時間帯は?」
「夕方、場所はいつも、違うけど、SNSの、捨て垢が電柱とか、自販機に小さく書いてて、それを見て、場所と取引時間が決まるの」
「捨て垢ね……そういう手法を取っているのか」
「そ、それで、タクシーがやってきて、取引できる……」
営業中のタクシーの利用をすれば警察は営業を妨害してまで職質や調査はできない。タクシーの偽装か、タクシー運転手と組んでいるのか、どちらにせよ後の事は然るべき担当に任せるとしよう。
「まさか今日した話は、ドラッグで幻覚を見ていたからじゃあないだろうな」
「ラ、ラリってなんかない……」
「そうであれば嬉しいよ」
幻覚であったとしてもだ、現場の詳細を知る術ではないのは明白だ。
詳細を更に聞き、メモを取る。
ほどよいところでコーヒーを淹れて、軽く休憩を挟んだ。
そろそろ昼時、研究所には食堂があるので昼食はそこで摂るとして、その前に彼女が事件に関与していないかが明確にならない限りここからは動けない。
「しかしよく危険ドラッグに手を出せるな。免許もなくまともに薬物を扱っていない素人が作るものだぞ。死んだらどうするんだ」
「死んだら、天国に行く、ただそれだけじゃない」
「……それを言われると、何も言えんが」
真面目に生きる、必死に生きる、懸命に生きる、そういった生きる上での意識の低下は深刻だ。
「……貴方は、何のために、生きてる?」
「俺は……」
そんな質問は、このご時勢では禁句に近い。
「正直なところ、惰性で生きている、かな。君は?」
「私? 私は、あはっ、どうして、だろ。別に……何も考えてない、だけかも?」
「考えてない?」
「た、多分……」
ならばそんな後ろめたく目を逸らさないで真っ直ぐにこちらを見てもらいたいものだな。
そうしているうちに木崎君が戻ってきた。
「彼女のアリバイが証明されました。昨日は知人のアパートにいたとの事です。深夜は騒音によって隣人と軽いトラブルも起こしており、彼女は朝方にアパートから出たのを近所の住民が目撃をしておりました」
「そうか。ご苦労様、となれば……事件発生時は現場の近くにすらいなかったのか」
「では本当に、その……生霊? から現場の情報を得たのでしょうか」
「だ、だからそう、言ってるじゃない……」
煙草を吸いたそうにしていたので、危険ドラッグは全て抜いて箱を彼女に返した。
本来、この取調室は禁煙ではあるが取調べの相手が喫煙者の場合は喫煙の許可がなされる。
狭い個室には煙草の匂いがすぐに満ち足り、木崎君は換気扇の紐を引いた。
「生霊からは他に何か聞けるかい?」
「今は、姿を現さないから、聞けない。見かけたら、話を聞けるけど……」
「そうか、どこに行ったかは分かるかな?」
「さあ……。あ、ああ、でも、そう、思い出した。ええっと、名前、名前を聞いたんだった」
「名前はなんと?」
もしも一致すれば、信憑性は大きく増すであろう。
我々ですらまだ自殺者の名前は調べられていない。
天国教団の集団自殺は、被害者は誰もが身分を証明するものを所持していないために捜査に時間が掛かる。
それも奴らの狙いの一つであろう。
「宮内、早苗、って、言ってた……」
妙なものだ。
捜査というのは普通、足で稼いで地道にそして着実に、確かなものを見つけて照らし合わせて一歩ずつ進んでいく。
だが彼女の話を聞き、照らし合わせて確かなものだと認められた場合、それは一歩どころか数歩ずつ進む。
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