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第1話 令嬢アリス男装での転入を言い渡される
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私の名前は、アリス・フォークロス。
クリバンス王国内のフォークロス領主の娘であり、身分は令嬢だ。
そんな私は今、クリバンス王国内トップ3に入る王都魔法学院の正門前で無気力に立ち尽くしていた。
「あ~不安だ。不安要素しかない……」
そこへ傍付メイドであるマリアが荷物を持ち、近付いて来る。
「おじょ……いえ、お坊ちゃま。入学手続きが完了しましたので、こちらへ」
「マリア~」
マリアへ倒れるように私は抱き着き、子犬の様に助けを求める。
だが、マリアは私を普通に引き離し馬車へと案内する。
私はその場で駄々をこねようかと思ったが、家の立場や周囲の目線を気にし渋々マリアの後に付いて行き馬車へと入る。
「では、クリス坊ちゃま改めて学院の」
「ちょっとマリア、少しは私の愚痴も聞いてよ」
「……はぁ~。分かりました、クリス坊ちゃま。このマリアへ、どのような愚痴でもおっしゃって下さい」
「もーう、とりあえず今は坊ちゃまは止めてよ! 私女の子なの! 男装しているけど令嬢なの! どうして私が~」
今の私の姿は、誰からみてもどこぞの貴族男子に見えている。
しかし、私は令嬢である。
これだけは、声を大にして伝えたい。
では、何故令嬢である私が男装しているのかと言うと、これにはとてもとても深い訳があるのです。
「アリスお嬢様。では、改めてましてここに至る経緯を再確認致しましょうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遡ること1か月前。
クリバンス王国内のフォークロス領の屋敷玄関前。
「ふー、1年振りの実家。懐かし~」
私はクレイス魔法学院での学院生活1年目が終了し、荷物を持って一時帰宅していた。
隣には、いつも通り傍付メイドのマリアが私の大半の荷物を持ってくれている。
幼い時から、私の世話や相手もしてくれ物知りでもあり、お姉さん的存在だ。
「マリア、荷物持ってくれてありがとう。大変だったでしょ、今日は迎えに来てくれてありがとう」
「これが私の仕事ですので、お嬢様にそこまで感謝される様な事はしておりません。それより、リーリア様がお待ちになっております」
「そうだったわね。早くお母様にご挨拶をしないと」
直ぐに屋敷の中へと入り、お母様が待つ部屋へと行くとお父様も一緒におり笑顔で迎えてくれた。
そのまま私は学院生活のことや学んだ事をお話し、この1年間の成果を話し終えるとお母様もお父様もとても褒めて下さった。
それから談笑を暫くした後、お母様が部屋にいたメイドたちに一旦外に出るように指示を出した。
その時私は家族だけで込み入った話をするのかと思い、黙ってメイドたちが部屋から出て行くのを見ていたが、何故かマリアだけ入れ替わる様に部屋に入って来たのだ。
私は机に出された紅茶を飲みながら、何かマリアから言うことがあるのかと考えている時に、ふとマリアがメイドを辞めてしまうのではと思い込み立ち上がって声を掛けた。
「まさか、マリア辞めたりしないよね?」
「辞める? 何をですかお嬢様? まさか、私がこのお屋敷から出ていくとでもお思いになれましたか?」
「え? 違うの?」
「まさか本当にお思いとは……私、がっかりいたしました。これまで、毎日共に過ごしたお嬢様にそんなに信用されていないとは」
「ちちち、違うわよ! 急にマリアだけ入って来て、辞めるなんて言い出しそうな雰囲気だったから! もし辞めるなんて言ったら、何がなんでも私が止めているわ」
「お嬢様……そこまで、私に」
急に恥ずかしくなり、私はマリアから顔を逸らしているとマリアは暫く俯いた後、すぐに顔を上げた。
「依存されていたのですね。リーリア様、少しお嬢様と私の距離を離して頂いた方が」
「そうね。そこまで、うちの娘が貴方に依存してたなんて」
「ちょっと! 何でそうなるのよ! マリアにお母様まで」
「冗談よ、マリア。そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない。マリアも貴方が帰って来て嬉しいのよ」
「んっ! リーリア様」
マリアはお母様の言葉に不意を突かれて驚き、お母様に顔を近付けていた。
「2人とも、アリスが久しぶりに帰って来て嬉しいのは分かるし同じ気持ちだが、リーリア、アリスに話があるんだろ」
「そうだったわ」
お父様の言葉に、お母様とマリアが背筋を正す。
するとマリアから手渡された封筒をお母様が受取り、私の前に置いた。
「お母様、これは何ですか?」
「王都メルト魔法学院の転入手続き書類よ」
「王都メルト魔法学院の転入? えーっと、どういうことですかお母様?」
その場で全く理解が出来ない事が起こり、私の頭の中は混乱していた。
今私はクリバンス王国内でも屈指のお嬢様学院であるクレイス魔法学院に通っているが、そこから何故王国内トップ3に入る学院への転入を進められているのか分からなかったからだ。
一般的に、上位から下位への転入は聞くが、その逆など聞いたことがない。
ましてや、トップ3であり王子も通っていると噂の学院への転入してもついていける気がしていなかった。
「結論から言うわアリス。貴方には、次の春から王都メルト魔法学院に侯爵として転入してもらうわ」
「……え? 侯爵? ん? え?」
お母様からの言葉に、私の思考回路は完全に停止した。
そのまま私はロボットの様に、ゆっくりとお父様の方を見つめて助けを求めた。
「はぁー、リーリア。こういう場合は、段階的に説明してあげなさい。アリスの思考が追い付いていけずに、お人形の様になっているだろ」
「まあ、本当。ごめんなさいねアリス。結論から言った方が理解しやすいかと思って」
すると、マリアが新しく紅茶を入れ一時的に気持ちの整理をする時間を作ってくれた。
「それで、お母様。どういう事か、一からご説明してくれますか?」
「もちろん。そうね、あれは貴方が帰って来る2ヵ月前だったかしら。私が学院に通ってた時の友人たちと久々に会う、交流会があったのよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あら~、お久し振りねマイナ。随分老けたんじゃない?」
「な、何を言うのかしらリーリア。貴方こそ、しわが目立つようになってきてますわ」
マイナと呼ばれた女性は、リーリアより少し身長が小さいながらリーリアに迫りながら言い返していた。
「ぷっ」
「ふふ」
「「あははは」」
「全然昔と変わらないわね、マイナ」
「貴方こそ、今じゃフォークロス領主の妻になったと言うのに、昔の時みたいに言葉遣いが悪いわ」
マイナとリーリアは、互いに笑いながら昔に戻った様に気軽に談笑を続けていた。
「そういえばあんた、今学院長やってるんだってね。まさか、あんたが通っていた学院の学院長になるとわね。人はどうなるか分からないわね」
「そんな事いったら、月の魔女なんて呼ばれてたティアなんて今じゃ、この国の王女よ」
「そうね、あの子が今じゃ王女だもんね」
リーリアが外を眺めながら、ワイングラスを傾け追憶しているような表情を見たマイナが片手で頭を抱える。
「(お酒が入ると思い出して、まだ引きずってるのね……)」
そこへフードで顔を隠した人物が近付いて来て、2人に声を掛ける。
「すいません、ここ一緒にいいかしら」
「えぇ、問題あり――って、ティア!?」
マイナの驚いた声に振り向くリーリア。
そこにいたのは、マイナの口を思いっきり塞ぐティアの姿だった。
周囲の反応をごまかし、正体を隠してお忍びでやって来たティアに話を聞くと、私だけのけ者にされたのがお気に召さずにやって来たと明かした。
「何で、私だけ呼んでくれないの? 確かに学院時代は、一匹狼感が強かったけど後半は2人といること多かったでしょ」
お酒も進み、少し酔った感じでティアが問いかけてくる。
「忙しい王女を誘うのが気が引けたんじゃない? 誘ってもどうせ来れないだろって気を使ったんだよ」
「そんな事ないわ! どんなに忙しくても誘われたこれだけは行くわ。だって、親友もいるんだから」
「ティア」
マイナがティアの言葉に少し目が潤んでいると、リーリアが小言を挟む。
「そんな気も使えるあんたに、彼は惚れたんでしょうね~」
「ん、何貴方。まさか、まだあの時のこと引きづってるんじゃないでしょ~ね」
「引きずってなんてい~ま~せ~ん」
「いいえ、その私につっかかて来る感じは引きずってますね」
「引きずってんてないわよ!」
「引きずってま・す!」
「ふ、2人とも一旦落ち着いて」
ヒートアップするリーリアとティアをマイナが止めに入る。
「(全く、王女に口喧嘩吹っ掛けるなんて知られたらどうなるか……とりあず、話題を変えよう)」
マイナが止めた後も、2人は睨み合っていたがマイナがティアに別の話題を振った。
「そう言えば、2人のご子息ともうちの学院に通ってもらっているけど、話は聞いたりしてる?」
「えぇ、上の子はよく話してくれるのだけど、下の子がね、少しいい話を聞かないのよ」
少し俯くティアにリーリアが話しかける。
「何に、反抗期ってやつ?」
「反抗期って言うか、なんというか、昔の私に似てるって言う感じ?」
「第二王子が? 確か成績は優秀ですし、周囲の人気や信頼もかなりのもので、そんな感じではなかったはずだけど……」
「多分、お兄ちゃんへの対抗心かしらね。兄と比較されることが多くて、兄と同等または、兄より出来るって事を周囲に認めさせたいからか力に少し依存しているような話を聞くのよ」
「お兄ちゃんって、第一王子?」
「そう、第二王子と同じ学院で1つ上の学年。成績優秀で学院内での人気や信頼もあるわ。今じゃ、次期寮長候補になるほどね」
「それでティアは、第二王子の何が心配なのよ。聞く分にはただの反抗期って感じで、同級生でライバルとかいれば解決されそうな問題なさそうだけど」
リーリアの言葉に、少し考えてからティアが口を開く。
「そうならいいんだけど、あの子も力に依存してしまって一匹狼見たいになってしまったら今後、王族として大変にならないか心配しているのよね」
するとリーリアが、何か思い立った様にティアに向かって指を指す。
「なるほど、要するに昔のあんた見たいになる前に、第二王子の鼻を折ればいいんでしょ。昔のあんたもそうやって改心したしね」
「うっ、ちょっと鼻につく言い方だけど、それが一番かもしれないけど同年代であの子を負かせるのはいないと思うわ。そうでしょ、マイナ?」
ティアの問いかけにマイナが頷き、学院での生活などを簡単に話す。
聞き終わるとリーリアが、昔ティアの子供と自分の子供が遊んでいた時の事を伝える。
そこから、とある提案を持ちかける。
ティアもそれなら息子が少しは変わってくれると思いお酒が入ったテンションで賛同するが、マイナだけは冷静に止める。
だが、既に判断力も落ちている2人がマイナの言うことを聞くわけがなかった。
マイナも酔った勢いで言っているだけだと感じ冗談だと思い返事をしてしまう。
後日、王城の一室にて再び3人で集まった際に、その時の話が冗談でなく本気でやろうとしていることを知り驚愕するマイナ。
リーリアやティアは、ここぞとばかりにマイナの弱みや王女としての地位を使ってきて、マイナは逆らうことを諦めた。
渋々従うことを決めたマイナは、1つだけ条件を付け計画に加担するのだった。
こうして、アリスが王都メルト魔法学院に男装して入学することが勝手に決定する。
そして、その学院で行うことはたった1つ。
学院内の試験にてアリスが第二王子の鼻を折って更生させる事だった。
クリバンス王国内のフォークロス領主の娘であり、身分は令嬢だ。
そんな私は今、クリバンス王国内トップ3に入る王都魔法学院の正門前で無気力に立ち尽くしていた。
「あ~不安だ。不安要素しかない……」
そこへ傍付メイドであるマリアが荷物を持ち、近付いて来る。
「おじょ……いえ、お坊ちゃま。入学手続きが完了しましたので、こちらへ」
「マリア~」
マリアへ倒れるように私は抱き着き、子犬の様に助けを求める。
だが、マリアは私を普通に引き離し馬車へと案内する。
私はその場で駄々をこねようかと思ったが、家の立場や周囲の目線を気にし渋々マリアの後に付いて行き馬車へと入る。
「では、クリス坊ちゃま改めて学院の」
「ちょっとマリア、少しは私の愚痴も聞いてよ」
「……はぁ~。分かりました、クリス坊ちゃま。このマリアへ、どのような愚痴でもおっしゃって下さい」
「もーう、とりあえず今は坊ちゃまは止めてよ! 私女の子なの! 男装しているけど令嬢なの! どうして私が~」
今の私の姿は、誰からみてもどこぞの貴族男子に見えている。
しかし、私は令嬢である。
これだけは、声を大にして伝えたい。
では、何故令嬢である私が男装しているのかと言うと、これにはとてもとても深い訳があるのです。
「アリスお嬢様。では、改めてましてここに至る経緯を再確認致しましょうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遡ること1か月前。
クリバンス王国内のフォークロス領の屋敷玄関前。
「ふー、1年振りの実家。懐かし~」
私はクレイス魔法学院での学院生活1年目が終了し、荷物を持って一時帰宅していた。
隣には、いつも通り傍付メイドのマリアが私の大半の荷物を持ってくれている。
幼い時から、私の世話や相手もしてくれ物知りでもあり、お姉さん的存在だ。
「マリア、荷物持ってくれてありがとう。大変だったでしょ、今日は迎えに来てくれてありがとう」
「これが私の仕事ですので、お嬢様にそこまで感謝される様な事はしておりません。それより、リーリア様がお待ちになっております」
「そうだったわね。早くお母様にご挨拶をしないと」
直ぐに屋敷の中へと入り、お母様が待つ部屋へと行くとお父様も一緒におり笑顔で迎えてくれた。
そのまま私は学院生活のことや学んだ事をお話し、この1年間の成果を話し終えるとお母様もお父様もとても褒めて下さった。
それから談笑を暫くした後、お母様が部屋にいたメイドたちに一旦外に出るように指示を出した。
その時私は家族だけで込み入った話をするのかと思い、黙ってメイドたちが部屋から出て行くのを見ていたが、何故かマリアだけ入れ替わる様に部屋に入って来たのだ。
私は机に出された紅茶を飲みながら、何かマリアから言うことがあるのかと考えている時に、ふとマリアがメイドを辞めてしまうのではと思い込み立ち上がって声を掛けた。
「まさか、マリア辞めたりしないよね?」
「辞める? 何をですかお嬢様? まさか、私がこのお屋敷から出ていくとでもお思いになれましたか?」
「え? 違うの?」
「まさか本当にお思いとは……私、がっかりいたしました。これまで、毎日共に過ごしたお嬢様にそんなに信用されていないとは」
「ちちち、違うわよ! 急にマリアだけ入って来て、辞めるなんて言い出しそうな雰囲気だったから! もし辞めるなんて言ったら、何がなんでも私が止めているわ」
「お嬢様……そこまで、私に」
急に恥ずかしくなり、私はマリアから顔を逸らしているとマリアは暫く俯いた後、すぐに顔を上げた。
「依存されていたのですね。リーリア様、少しお嬢様と私の距離を離して頂いた方が」
「そうね。そこまで、うちの娘が貴方に依存してたなんて」
「ちょっと! 何でそうなるのよ! マリアにお母様まで」
「冗談よ、マリア。そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない。マリアも貴方が帰って来て嬉しいのよ」
「んっ! リーリア様」
マリアはお母様の言葉に不意を突かれて驚き、お母様に顔を近付けていた。
「2人とも、アリスが久しぶりに帰って来て嬉しいのは分かるし同じ気持ちだが、リーリア、アリスに話があるんだろ」
「そうだったわ」
お父様の言葉に、お母様とマリアが背筋を正す。
するとマリアから手渡された封筒をお母様が受取り、私の前に置いた。
「お母様、これは何ですか?」
「王都メルト魔法学院の転入手続き書類よ」
「王都メルト魔法学院の転入? えーっと、どういうことですかお母様?」
その場で全く理解が出来ない事が起こり、私の頭の中は混乱していた。
今私はクリバンス王国内でも屈指のお嬢様学院であるクレイス魔法学院に通っているが、そこから何故王国内トップ3に入る学院への転入を進められているのか分からなかったからだ。
一般的に、上位から下位への転入は聞くが、その逆など聞いたことがない。
ましてや、トップ3であり王子も通っていると噂の学院への転入してもついていける気がしていなかった。
「結論から言うわアリス。貴方には、次の春から王都メルト魔法学院に侯爵として転入してもらうわ」
「……え? 侯爵? ん? え?」
お母様からの言葉に、私の思考回路は完全に停止した。
そのまま私はロボットの様に、ゆっくりとお父様の方を見つめて助けを求めた。
「はぁー、リーリア。こういう場合は、段階的に説明してあげなさい。アリスの思考が追い付いていけずに、お人形の様になっているだろ」
「まあ、本当。ごめんなさいねアリス。結論から言った方が理解しやすいかと思って」
すると、マリアが新しく紅茶を入れ一時的に気持ちの整理をする時間を作ってくれた。
「それで、お母様。どういう事か、一からご説明してくれますか?」
「もちろん。そうね、あれは貴方が帰って来る2ヵ月前だったかしら。私が学院に通ってた時の友人たちと久々に会う、交流会があったのよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あら~、お久し振りねマイナ。随分老けたんじゃない?」
「な、何を言うのかしらリーリア。貴方こそ、しわが目立つようになってきてますわ」
マイナと呼ばれた女性は、リーリアより少し身長が小さいながらリーリアに迫りながら言い返していた。
「ぷっ」
「ふふ」
「「あははは」」
「全然昔と変わらないわね、マイナ」
「貴方こそ、今じゃフォークロス領主の妻になったと言うのに、昔の時みたいに言葉遣いが悪いわ」
マイナとリーリアは、互いに笑いながら昔に戻った様に気軽に談笑を続けていた。
「そういえばあんた、今学院長やってるんだってね。まさか、あんたが通っていた学院の学院長になるとわね。人はどうなるか分からないわね」
「そんな事いったら、月の魔女なんて呼ばれてたティアなんて今じゃ、この国の王女よ」
「そうね、あの子が今じゃ王女だもんね」
リーリアが外を眺めながら、ワイングラスを傾け追憶しているような表情を見たマイナが片手で頭を抱える。
「(お酒が入ると思い出して、まだ引きずってるのね……)」
そこへフードで顔を隠した人物が近付いて来て、2人に声を掛ける。
「すいません、ここ一緒にいいかしら」
「えぇ、問題あり――って、ティア!?」
マイナの驚いた声に振り向くリーリア。
そこにいたのは、マイナの口を思いっきり塞ぐティアの姿だった。
周囲の反応をごまかし、正体を隠してお忍びでやって来たティアに話を聞くと、私だけのけ者にされたのがお気に召さずにやって来たと明かした。
「何で、私だけ呼んでくれないの? 確かに学院時代は、一匹狼感が強かったけど後半は2人といること多かったでしょ」
お酒も進み、少し酔った感じでティアが問いかけてくる。
「忙しい王女を誘うのが気が引けたんじゃない? 誘ってもどうせ来れないだろって気を使ったんだよ」
「そんな事ないわ! どんなに忙しくても誘われたこれだけは行くわ。だって、親友もいるんだから」
「ティア」
マイナがティアの言葉に少し目が潤んでいると、リーリアが小言を挟む。
「そんな気も使えるあんたに、彼は惚れたんでしょうね~」
「ん、何貴方。まさか、まだあの時のこと引きづってるんじゃないでしょ~ね」
「引きずってなんてい~ま~せ~ん」
「いいえ、その私につっかかて来る感じは引きずってますね」
「引きずってんてないわよ!」
「引きずってま・す!」
「ふ、2人とも一旦落ち着いて」
ヒートアップするリーリアとティアをマイナが止めに入る。
「(全く、王女に口喧嘩吹っ掛けるなんて知られたらどうなるか……とりあず、話題を変えよう)」
マイナが止めた後も、2人は睨み合っていたがマイナがティアに別の話題を振った。
「そう言えば、2人のご子息ともうちの学院に通ってもらっているけど、話は聞いたりしてる?」
「えぇ、上の子はよく話してくれるのだけど、下の子がね、少しいい話を聞かないのよ」
少し俯くティアにリーリアが話しかける。
「何に、反抗期ってやつ?」
「反抗期って言うか、なんというか、昔の私に似てるって言う感じ?」
「第二王子が? 確か成績は優秀ですし、周囲の人気や信頼もかなりのもので、そんな感じではなかったはずだけど……」
「多分、お兄ちゃんへの対抗心かしらね。兄と比較されることが多くて、兄と同等または、兄より出来るって事を周囲に認めさせたいからか力に少し依存しているような話を聞くのよ」
「お兄ちゃんって、第一王子?」
「そう、第二王子と同じ学院で1つ上の学年。成績優秀で学院内での人気や信頼もあるわ。今じゃ、次期寮長候補になるほどね」
「それでティアは、第二王子の何が心配なのよ。聞く分にはただの反抗期って感じで、同級生でライバルとかいれば解決されそうな問題なさそうだけど」
リーリアの言葉に、少し考えてからティアが口を開く。
「そうならいいんだけど、あの子も力に依存してしまって一匹狼見たいになってしまったら今後、王族として大変にならないか心配しているのよね」
するとリーリアが、何か思い立った様にティアに向かって指を指す。
「なるほど、要するに昔のあんた見たいになる前に、第二王子の鼻を折ればいいんでしょ。昔のあんたもそうやって改心したしね」
「うっ、ちょっと鼻につく言い方だけど、それが一番かもしれないけど同年代であの子を負かせるのはいないと思うわ。そうでしょ、マイナ?」
ティアの問いかけにマイナが頷き、学院での生活などを簡単に話す。
聞き終わるとリーリアが、昔ティアの子供と自分の子供が遊んでいた時の事を伝える。
そこから、とある提案を持ちかける。
ティアもそれなら息子が少しは変わってくれると思いお酒が入ったテンションで賛同するが、マイナだけは冷静に止める。
だが、既に判断力も落ちている2人がマイナの言うことを聞くわけがなかった。
マイナも酔った勢いで言っているだけだと感じ冗談だと思い返事をしてしまう。
後日、王城の一室にて再び3人で集まった際に、その時の話が冗談でなく本気でやろうとしていることを知り驚愕するマイナ。
リーリアやティアは、ここぞとばかりにマイナの弱みや王女としての地位を使ってきて、マイナは逆らうことを諦めた。
渋々従うことを決めたマイナは、1つだけ条件を付け計画に加担するのだった。
こうして、アリスが王都メルト魔法学院に男装して入学することが勝手に決定する。
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小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
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