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第2話 転入直前に正体がバレる!?
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「納得いかない」
私は頬を膨らまさせて、お母様を見つめる。
そのまま仮に転入するとしても、何故男として行かなければいけないのか。
それに今通っている、クレイス魔法学院はどうなるのか。
どうして私が第二王子の鼻を折るような事をしなければいけないのか。
親同士が仲が良くても、当人同士には関係ない事だとしっかり伝えると、お母様は紅茶を一口飲んだ。
「そう、残念ね。貴方が憧れている、あの月の魔女も通っていた学院だから、このチャンスはどんなものだろうと受けると思っていたのだけど」
「えっ」
すると、お母様は私の前に出した書類を掴みマリアへと渡す。
「マリア、その書類は燃やしていいわ。アリスはやらないみたいだし、学院の方には私から連絡しておくわ」
そう言ってお母様が立ち上がろうとした瞬間、私は声を掛けた。
「お母様、先程おっしゃったことは本当ですか? その、月の魔女が通っていた学院と言うのは」
「えぇ、本当よ。学院長から聞いた話だから、間違っていないわ」
月の魔女とは、25年前に王都で一躍有名となった学生で、子供なら一度は童話で聞かされる話に出てくる存在だ。
私はその話を聞いてから、その人のように可憐で気高い魔女になりたいと目指している。
周囲には子供の童話に出てくる存在になる夢など、叶うわけないと馬鹿にされるようになってから、話す事はなかった。
だが、家族には叶える為には、彼女に負けないくらいに全ての事に打ち込まないとだめよ、と言われ彼女の事を調べたり、マリアに魔法を習ったりした。
そして、魔法学院も彼女が通っていたとされる場所を独学で導き、学べる内容からクレイス魔法学院の試験に合格して現在通っている。
もし仮に王都メルト魔法学院に月の魔女が通っていたと、証言する場所に通えるチャンスがあるなら、掴まない訳にはいかない。
だが、その証言が正しいか分からないまま飛びついて良いよのかが問題。
「さすがに証拠もなく、月の魔女が通っていたなってんて言っても貴方は信じないと思ったら写真を持って来たわ」
お母様が取り出した写真には、月の魔女の風貌と同じ人物の後ろ姿が学友と共に映っていた。
そして、王都メルト魔法学院の紋章が制服と学内の目立つ場所にあった事から、私は間違いなく本当だと信じた。
「お母様、私先程の話受けさせて頂きますわ!」
「そう、ではマリア先程の書類の説明をアリスにしてあげなさい」
その後、書類にサインをしてから、今後自分の立ち振る舞いや名前が違うことを知る。
そして、私が今まで通っていたクレイス魔法学院はそのまま在籍となり、代わりにマリアが私となって通うことになった。
マリアは変装魔法も得意で、基本的に誰にも見破れないほど高度なものから、お母様から指示を受けていた。
この時の私は、1つ大きな勘違いをしていた。
それは、王都内の魔法学院は基本的に自宅からの通学が多く、王都メルト魔法学院も王都から自宅が近いことから、てっきり通い通学だと思いこみ、男装も問題ないと考えていた。
だが、王都メルト魔法学院は全生徒寮生活であり、男子として転入する為、見知らぬ男子たちと寝食を共にすることなど思ってもいなかったのだ。
それが発覚したのは、書類にサインした夜の事だった。
次の日から私はマリアの指導の元、男子の仕草を体に身に付け始めた。
王都メルト魔法学院に転入する事を自分で決めてしまった以上、周囲にばれずに寮生活をする為に必要な事から始めたのだ。
私が転入してやる事は1つ。
話でしか聞けていない、第二王子の伸びた鼻を折ること。
残念ながら、私は第二王子とお会いした事はない。
幼い時に何度か会っているらしいが、ほとんど記憶が私にはない。
それと転入したら、女子ではなく男子としてなので絶対に女子であることがばれてはいけない状況である。
もしばれた際には、どんな事があるかは分からないし、教えてもらえていない。
お母様からも、絶対にバレないようにしなさいときつく言われている。
その表情から、もしかしたら家の今後に関わる事かもしれないと思い、私は自分の要望に負けて転入同意した事を少し後悔した。
だが、憧れの月の魔女が通った学院で、性別を偽ったとしても学べると考えただけで気持ちが高ぶった。
それからあっという間に、転入時期の春になる。
「思っていたより胸も苦しくないな。髪もショートカットにしたし、パッと見は令嬢とは思われないよな」
「えぇ、完璧ですクリス坊ちゃま。初めは不安でしたが、意外とすぐに男性が板につきまして安心しております」
「マリア、それ褒めてるの?」
「もちろんでございます。クリス坊ちゃまの教えの吸収能力は、昔から段違いでしたので」
マリアにはそう言われるが、内心は女子なのにこうも男子が板について良い物かと疑問を持っていた。
が、これも使命を果たし、月の魔女が通っていた学院で学ぶ為であると自分に言い聞かせた。
その後、お母様とお父様に挨拶をしマリアと共に馬車にて、王都メルト魔法学院へとやって来た。
そして今は、王都メルト魔法学院の正門近くに馬車を止めマリアの帰りを待っている途中で、私は馬車を出て王都メルト魔法学院の正門前に立つ。
「ここが月の魔女が通っていた学院。そして、私が男子として通う学院か」
これから新しく始まる学院生活に不安もありつつも、期待に胸を弾ませていた。
「なぁなぁ、これから俺とお茶でもいかねぇか」
「!?」
突然、私の肩に腕を回して誰かが声を掛けて来た。
ゆっくりと顔を向けると、顔が整った白髪の男子がいた。
私が動揺し固まっているとその男子が、私の顔を見ぬまま話続けた。
「こんなとこより、いいとこ……って、男!!」
その男子は私の顔と服装を見て、飛び跳ねるように一気に距離を取った。
そして、軽く吐くような動作をすると声を掛けて来た時とは、全く違った態度を取った。
「まじかよ、何で男なんかに声かけてんだよ俺。確かいい女の匂いがして、近付いたんだがな~……まさか、鈍った!? いや、そんなはずは……」
白髪の男子は、その場で何か落胆しているとすぐに顔を上げ、走って学院へと入って行った。
「な、何だったんだ今の……というか、いきなり肩に手を回すとか何なんだよ! てか、私女だし。男じゃねから。……いや今のは、ばれてなかったと言うことで良かったのでは?」
その場で独り言を呟いていると、周囲からの目線に気付き適当な言い訳をしながら、一旦馬車へと戻った。
数分後、まだ帰らないマリアが気になり、再び正門前に向かった。
そこで私は、先程の出来事を発端に急に不安に襲われ始め、正門前で無気力に立ち尽くしてしまう。
「あ~不安だ。不安要素しかない……」
そこへマリアが荷物を持ち、近付いて来て声を掛けられる。
「おじょ……いえ、クリスお坊ちゃま。入学手続きが完了しましたので、こちらへ」
「マリア~」
マリアへ倒れるように抱き着き、子犬の様に助けを求める。
だが、マリアは私を普通に引き離し乗って来た馬車へと入る。
私はその場で駄々をこねようかと思ったが、家の立場や周囲の目線を気にし渋々マリアの後に付いて行き、馬車へと入る。
「では、クリス坊ちゃま改めて学院の」
「ちょっとマリア、少しは私の愚痴も聞いてよ」
「……はぁ~。分かりました、クリス坊ちゃま。このマリアへ、どのような愚痴をおっしゃって下さい」
「もーう、とりあえず今は坊ちゃまは止めてよ! 私女の子なの! 男装しているけど、令嬢なの! さっき急に学院の男子に、声を掛けられて女子と間違えれそうになるし~」
「アリスお嬢様。その話は本当ですか? まぁ、無事であると言うことは、ばれなかったと言うことでしょうね。その男装が問題ないと言うことが証明されましたね」
「何で少し嬉しそうなの! まぁ、私も同じ様な反応したけども……やっぱりここに来て、急に不安なの! これから見知らぬ男子と寮生活したら、さっきみたいな急な腕回しやは、裸を見たりもあるじゃん。今考えると私、耐えられないかも」
すると、マリアはそれがどうしました? という表情で見つめられ、私はマリアの両肩を掴んで助けを求めた。
「お嬢様。もうそれは、慣れて頂くしかありません。ただでさえ、クレイス魔法学院は女子が大半でしたので、お気持ちも分かりますが。相手はお嬢様の事は男として接してきますので、お嬢様がボロを出さない限りバレる事はないと思いますよ……たぶんですが」
最後にボソッとマリアが何かを呟いたが、それを追求するよりもマリアの言葉を鵜呑みにして、どう慣れて行くべきか考え込む。
「では、お嬢様。改めてましてここからの立場や振る舞いについて、再確認致しましょうか。まず、お嬢様はこれからどうの様な立場ですか?」
「わた……いや、俺はクリス・フォークロス。フォークロス家に養子として引き取られ、侯爵の地位を頂き、転入して来た」
「はい。完璧ですね。では、学院で注意する事とやるべき事は?」
「自分を偽って転入する為、正体もしくは性別がバレないようにする。やるべき事は、この学院に通う第二王子に接触し、実力で勝って鼻を折ること」
「上出来です、クリス坊ちゃま」
その後、学院でのルールや生活など簡単にマリアと確認し終えると、馬車が止まる。
馬車から降りるとそこに、見るからに気品のある女性が立っていた。
「お待ちしておりました。私、ここの学院長である、マイナ・メルトと申します」
すぐさま私は、メルト学院長に頭を下げ挨拶をする。
「私は、クリス坊ちゃまの傍付メイドのマリアと申します。これから、クリス坊ちゃまの事をよろしくお願いします。我が主、フォークロス様に変わって申し上げます」
「こちらこそ、お話は伺っております。これより先は、学院の者のみ入れる場所となりますので、私が案内いたします」
「よろしくお願い致します。では、クリス坊ちゃま、良き学院生活をお過ごし下さい。お荷物の方は、許可を頂きましたので寮へお運びしておきます」
「あぁ、ありがとう。荷物の方は頼んだ」
私の言葉を聞き終わると、マリアは一礼して馬車へと乗り、寮へと向かって行った。
「では、参りましょうかクリスさん」
「はい」
まぁ、色々と不安要素はあるけども、私がボロを出さなければひとまず問題ない事だし、マリアに言われた通り月の魔女が通っていた学院生活を謳歌しよう。
と、そのころの私は思っていたが、この後直ぐに前途多難な学院生活が始まるとは、思ってもいなかった。
私は頬を膨らまさせて、お母様を見つめる。
そのまま仮に転入するとしても、何故男として行かなければいけないのか。
それに今通っている、クレイス魔法学院はどうなるのか。
どうして私が第二王子の鼻を折るような事をしなければいけないのか。
親同士が仲が良くても、当人同士には関係ない事だとしっかり伝えると、お母様は紅茶を一口飲んだ。
「そう、残念ね。貴方が憧れている、あの月の魔女も通っていた学院だから、このチャンスはどんなものだろうと受けると思っていたのだけど」
「えっ」
すると、お母様は私の前に出した書類を掴みマリアへと渡す。
「マリア、その書類は燃やしていいわ。アリスはやらないみたいだし、学院の方には私から連絡しておくわ」
そう言ってお母様が立ち上がろうとした瞬間、私は声を掛けた。
「お母様、先程おっしゃったことは本当ですか? その、月の魔女が通っていた学院と言うのは」
「えぇ、本当よ。学院長から聞いた話だから、間違っていないわ」
月の魔女とは、25年前に王都で一躍有名となった学生で、子供なら一度は童話で聞かされる話に出てくる存在だ。
私はその話を聞いてから、その人のように可憐で気高い魔女になりたいと目指している。
周囲には子供の童話に出てくる存在になる夢など、叶うわけないと馬鹿にされるようになってから、話す事はなかった。
だが、家族には叶える為には、彼女に負けないくらいに全ての事に打ち込まないとだめよ、と言われ彼女の事を調べたり、マリアに魔法を習ったりした。
そして、魔法学院も彼女が通っていたとされる場所を独学で導き、学べる内容からクレイス魔法学院の試験に合格して現在通っている。
もし仮に王都メルト魔法学院に月の魔女が通っていたと、証言する場所に通えるチャンスがあるなら、掴まない訳にはいかない。
だが、その証言が正しいか分からないまま飛びついて良いよのかが問題。
「さすがに証拠もなく、月の魔女が通っていたなってんて言っても貴方は信じないと思ったら写真を持って来たわ」
お母様が取り出した写真には、月の魔女の風貌と同じ人物の後ろ姿が学友と共に映っていた。
そして、王都メルト魔法学院の紋章が制服と学内の目立つ場所にあった事から、私は間違いなく本当だと信じた。
「お母様、私先程の話受けさせて頂きますわ!」
「そう、ではマリア先程の書類の説明をアリスにしてあげなさい」
その後、書類にサインをしてから、今後自分の立ち振る舞いや名前が違うことを知る。
そして、私が今まで通っていたクレイス魔法学院はそのまま在籍となり、代わりにマリアが私となって通うことになった。
マリアは変装魔法も得意で、基本的に誰にも見破れないほど高度なものから、お母様から指示を受けていた。
この時の私は、1つ大きな勘違いをしていた。
それは、王都内の魔法学院は基本的に自宅からの通学が多く、王都メルト魔法学院も王都から自宅が近いことから、てっきり通い通学だと思いこみ、男装も問題ないと考えていた。
だが、王都メルト魔法学院は全生徒寮生活であり、男子として転入する為、見知らぬ男子たちと寝食を共にすることなど思ってもいなかったのだ。
それが発覚したのは、書類にサインした夜の事だった。
次の日から私はマリアの指導の元、男子の仕草を体に身に付け始めた。
王都メルト魔法学院に転入する事を自分で決めてしまった以上、周囲にばれずに寮生活をする為に必要な事から始めたのだ。
私が転入してやる事は1つ。
話でしか聞けていない、第二王子の伸びた鼻を折ること。
残念ながら、私は第二王子とお会いした事はない。
幼い時に何度か会っているらしいが、ほとんど記憶が私にはない。
それと転入したら、女子ではなく男子としてなので絶対に女子であることがばれてはいけない状況である。
もしばれた際には、どんな事があるかは分からないし、教えてもらえていない。
お母様からも、絶対にバレないようにしなさいときつく言われている。
その表情から、もしかしたら家の今後に関わる事かもしれないと思い、私は自分の要望に負けて転入同意した事を少し後悔した。
だが、憧れの月の魔女が通った学院で、性別を偽ったとしても学べると考えただけで気持ちが高ぶった。
それからあっという間に、転入時期の春になる。
「思っていたより胸も苦しくないな。髪もショートカットにしたし、パッと見は令嬢とは思われないよな」
「えぇ、完璧ですクリス坊ちゃま。初めは不安でしたが、意外とすぐに男性が板につきまして安心しております」
「マリア、それ褒めてるの?」
「もちろんでございます。クリス坊ちゃまの教えの吸収能力は、昔から段違いでしたので」
マリアにはそう言われるが、内心は女子なのにこうも男子が板について良い物かと疑問を持っていた。
が、これも使命を果たし、月の魔女が通っていた学院で学ぶ為であると自分に言い聞かせた。
その後、お母様とお父様に挨拶をしマリアと共に馬車にて、王都メルト魔法学院へとやって来た。
そして今は、王都メルト魔法学院の正門近くに馬車を止めマリアの帰りを待っている途中で、私は馬車を出て王都メルト魔法学院の正門前に立つ。
「ここが月の魔女が通っていた学院。そして、私が男子として通う学院か」
これから新しく始まる学院生活に不安もありつつも、期待に胸を弾ませていた。
「なぁなぁ、これから俺とお茶でもいかねぇか」
「!?」
突然、私の肩に腕を回して誰かが声を掛けて来た。
ゆっくりと顔を向けると、顔が整った白髪の男子がいた。
私が動揺し固まっているとその男子が、私の顔を見ぬまま話続けた。
「こんなとこより、いいとこ……って、男!!」
その男子は私の顔と服装を見て、飛び跳ねるように一気に距離を取った。
そして、軽く吐くような動作をすると声を掛けて来た時とは、全く違った態度を取った。
「まじかよ、何で男なんかに声かけてんだよ俺。確かいい女の匂いがして、近付いたんだがな~……まさか、鈍った!? いや、そんなはずは……」
白髪の男子は、その場で何か落胆しているとすぐに顔を上げ、走って学院へと入って行った。
「な、何だったんだ今の……というか、いきなり肩に手を回すとか何なんだよ! てか、私女だし。男じゃねから。……いや今のは、ばれてなかったと言うことで良かったのでは?」
その場で独り言を呟いていると、周囲からの目線に気付き適当な言い訳をしながら、一旦馬車へと戻った。
数分後、まだ帰らないマリアが気になり、再び正門前に向かった。
そこで私は、先程の出来事を発端に急に不安に襲われ始め、正門前で無気力に立ち尽くしてしまう。
「あ~不安だ。不安要素しかない……」
そこへマリアが荷物を持ち、近付いて来て声を掛けられる。
「おじょ……いえ、クリスお坊ちゃま。入学手続きが完了しましたので、こちらへ」
「マリア~」
マリアへ倒れるように抱き着き、子犬の様に助けを求める。
だが、マリアは私を普通に引き離し乗って来た馬車へと入る。
私はその場で駄々をこねようかと思ったが、家の立場や周囲の目線を気にし渋々マリアの後に付いて行き、馬車へと入る。
「では、クリス坊ちゃま改めて学院の」
「ちょっとマリア、少しは私の愚痴も聞いてよ」
「……はぁ~。分かりました、クリス坊ちゃま。このマリアへ、どのような愚痴をおっしゃって下さい」
「もーう、とりあえず今は坊ちゃまは止めてよ! 私女の子なの! 男装しているけど、令嬢なの! さっき急に学院の男子に、声を掛けられて女子と間違えれそうになるし~」
「アリスお嬢様。その話は本当ですか? まぁ、無事であると言うことは、ばれなかったと言うことでしょうね。その男装が問題ないと言うことが証明されましたね」
「何で少し嬉しそうなの! まぁ、私も同じ様な反応したけども……やっぱりここに来て、急に不安なの! これから見知らぬ男子と寮生活したら、さっきみたいな急な腕回しやは、裸を見たりもあるじゃん。今考えると私、耐えられないかも」
すると、マリアはそれがどうしました? という表情で見つめられ、私はマリアの両肩を掴んで助けを求めた。
「お嬢様。もうそれは、慣れて頂くしかありません。ただでさえ、クレイス魔法学院は女子が大半でしたので、お気持ちも分かりますが。相手はお嬢様の事は男として接してきますので、お嬢様がボロを出さない限りバレる事はないと思いますよ……たぶんですが」
最後にボソッとマリアが何かを呟いたが、それを追求するよりもマリアの言葉を鵜呑みにして、どう慣れて行くべきか考え込む。
「では、お嬢様。改めてましてここからの立場や振る舞いについて、再確認致しましょうか。まず、お嬢様はこれからどうの様な立場ですか?」
「わた……いや、俺はクリス・フォークロス。フォークロス家に養子として引き取られ、侯爵の地位を頂き、転入して来た」
「はい。完璧ですね。では、学院で注意する事とやるべき事は?」
「自分を偽って転入する為、正体もしくは性別がバレないようにする。やるべき事は、この学院に通う第二王子に接触し、実力で勝って鼻を折ること」
「上出来です、クリス坊ちゃま」
その後、学院でのルールや生活など簡単にマリアと確認し終えると、馬車が止まる。
馬車から降りるとそこに、見るからに気品のある女性が立っていた。
「お待ちしておりました。私、ここの学院長である、マイナ・メルトと申します」
すぐさま私は、メルト学院長に頭を下げ挨拶をする。
「私は、クリス坊ちゃまの傍付メイドのマリアと申します。これから、クリス坊ちゃまの事をよろしくお願いします。我が主、フォークロス様に変わって申し上げます」
「こちらこそ、お話は伺っております。これより先は、学院の者のみ入れる場所となりますので、私が案内いたします」
「よろしくお願い致します。では、クリス坊ちゃま、良き学院生活をお過ごし下さい。お荷物の方は、許可を頂きましたので寮へお運びしておきます」
「あぁ、ありがとう。荷物の方は頼んだ」
私の言葉を聞き終わると、マリアは一礼して馬車へと乗り、寮へと向かって行った。
「では、参りましょうかクリスさん」
「はい」
まぁ、色々と不安要素はあるけども、私がボロを出さなければひとまず問題ない事だし、マリアに言われた通り月の魔女が通っていた学院生活を謳歌しよう。
と、そのころの私は思っていたが、この後直ぐに前途多難な学院生活が始まるとは、思ってもいなかった。
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