とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
13 / 564

第13話 可能性は無限大

しおりを挟む
「お、クリス。まさか、お前が対戦相手とはな、これは少し楽しくなってきたな」
「張り切るルーク様も素敵」
「うわぁ…ルーク…と、あれは」

 ルークの姿に隠れて見えなかったが、銀色の綺麗な長い髪を見て、その人物を思い出した。

「あっ、思い出した。ジュリル・ハイナンスだ……って事は、あいつが二代目月の魔女!?」
「あら、誰かしら私の名前を大声叫ぶ人は。おや、貴方確か数日前に会った…転入生」
「何だクリス、ジュリルと知り合いなのか?」
「知り合いと言うか、一度会った程度かな」

 直後、突然ジュリルが俺に近付いて来て、小声で話し掛けて来た。

「何貴方、ルーク様とご知り合いだったの。それを早く言いなさいよ、全く。ルーク様の前で恥をかく所だったでしょ」

 それだけを言い終えると、再びルークの元へと戻って行った。
 すると次に、モランが小声で話し掛けて来た。

「クリス君、ジュリル…さんと知り合いだったの?」
「どうなんだだろうな、俺にも分からん。てか、何であいつはルークを様付けで呼んでんだ?」
「ジュリルさんは、ルーク王子に一目ぼれしてるの。初等部の頃に会ってから、ずっと一筋なんだよ。でも、ルーク王子には告白とかはしてないみたい」
「ははーん、なるほどね~」

 色々と衝撃だったけど、間近で二代目月の魔女の力を見れるいい機会だ。
 それに、ルークとも再戦できるのも一石二鳥だ。
 ここでガツンと勝って、少しはマウント取らせてもらう。

 にしても、あんなにルークにデレデレしているのが、本当に二代目月の魔女なのか?
 全くそんな風には感じないんだけど。
 私が二代目月の魔女こと、ジュリルに疑念を持っていると、教員の方から位置に付くように言われる。
 直線に500メートルの線が引かれているスタートラインに、私たちとルークたちのペアが位置に付く。

「あれ以来の再戦だね。今日は、俺に勝てるのかな?」
「ムカつくいいかなするな、ルーク。負けても泣くんじゃねぇよ」
「ちょっと、貴方! ルーク様に何と言う暴言を!」
「いいだよ、ジュリル。それより、今日も頼むぞ」
「はい! お任せ下さい!」

 ジュリルはルークの言葉に、犬がご主人様に尻尾を振る様に答える。
 私は何故ルークに、そこまでの忠誠心を持てるのか不思議でしょうがなかった。
 何考えているか分からないし、興味がないと無視するし、変に小さいこと気にしているみたいだし…
 言い出すと、意外といっぱい出てくるので、そこで理由を考えるのは止めた。

「これは、相手が悪いね。まさか、ルーク王子に二代目月の魔女のジュリルさんだし、これは負けても…」
「何言ってるんだ、モラン。気持ちで負けてたら、勝てる勝負も勝てないぞ。相手の名前だけで、弱気になるな」
「で、でも…」
「学生の可能性は無限大だ」
「へぇ?」
「お父様の口癖。俺たちはまだ、自分でも知らない可能性が眠ってるんだよ。それをここで目覚めさせてやろうぜ!」

 私の言葉にモランは、相手の名前で負けそうな雰囲気の表情が変わった。
 力強く頷き、深く深呼吸をした。

「それでは、ルーク・ジュリルペアとクリス・モランペアによる競技を開始します。スタート!」

 教員が大きく片手を振り下げて合図をすると、私たちとルークたちは一斉に魔力を目の前の地面に流した。
 先に地面から土の塊を創り上げたのは、ルークたちであった。
 すると、直ぐにルークとジュリルが同時に魔力の技量を行い初め、造形を開始した。
 そこに至るまで、1分もかからずだった。

 一方私たちは、ルークたちが造形に入った時には、やっと地面から土の塊を創りだしていた。
 モランの魔力は、創造が得意でなく私が補助的に魔力を流して創り上げた。
 直ぐに私も土の塊の造形に入った。
 技量の高い私で、時間を縮めようと両腕で魔力を通すが、その時にはルークたちはほぼ造形が終わりかけていた。

「ルーク様、ここからは私にお任せ下さい。相手に私の力を見せつけてあげますわ!」

 すると、ジュリルに言われるがまま、ルークの腕が止まる。
 ジュリルは、そこから四輪車の乗り物を創り上げ、そこから更に地面から土を取り上げ、補強を行いつつ、造形と推進力の魔力注入を行った。
 私は自身の造形を行いながら、横目でその技術を目にして驚愕した。
 その時ジュリルは、魔力の創造・技量・質量を同時に行っていたのだ。

 本当に3つも同時に使えるか!? マズイ、このままじゃこっちが完成させる前に、あっちがゴールしてしまう。
 少し焦りながら、私はモランの方を見て合図を送る。
 すると、モランは私の補助を止め、両手を握り合わせ息を整え始める。
 それをルークは、腕を組んで横目で見ていた。

 直後、ジュリルが造形を完成させ、注入した魔力を一気に動力へと流し始め、四輪車をゴールへと走り始めた。
 それから3秒後に、荒削りながら私は、二輪車を創りだし、背後には2つのブーストできる筒を付けた。
 その筒に私は、魔法を込めてモランに一度視線を送り、頷くのを確認して唱える。

「エクスプロージョン」

 すると、2つの筒から大きな爆発が発生し、一気に二輪車が走り出し、先に走り出した四輪車を追う。
 だが、今のスピードでは絶対に追いつけないのは明らかだった。
 初めの爆発力のスピードは基本維持出来ないが、そこをうちはモランの魔力制御で爆破の威力を細く長くして、二輪車の加速を行った。

「っ!」

 それを見たルークは、直ぐに腕を前に突き出し、ジュリルの動かす四輪車に魔力を流し回転率を上げた

「ルーク様!?」
「ジュリルはそのまま操作しろ。このまま一気に駆け抜けるんだ」
「は、はい!」

 四輪車は、ゴールまであと200メートル付近で、二輪車は残り400メートル付近だった。
 そこからモランの魔力制御により、加速したことで一気に距離を縮めた。
 その差は100メートルになるが、四輪車のゴールまでも100メートルであった。
 そして先にゴールを駆け抜けたのは、四輪車だった。

 二輪車は、残り50メートル付近で急に原則してしまい、その場に止まっていた。
 理由は、モランの魔力制御が切れてしまい、最初の爆発力が維持できなくなってしまったためだ。

「はぁ…はぁ…ごめん、クリス君…途中で…止まっちゃ…た…」

 息切れし、額から汗を流すモランを見て、私は肩に手を当てて消費した魔力を私の分から受け渡した。

「クリス君…やっぱり、クリス君の言う通りだったよ。私、魔力治療より制御の方が、長けてるみたい」

 笑顔で答えたモランを見て、私も笑顔で答えた。

「うん! やっぱり、モランは制御の方が長けてるよ。今日は、いきなり細かい事をお願いしたけど、あそこまで忠実に出来たのは君の才能だよ!」

 私とモランは、勝負に負けはしたが私はモランの手を握って、褒めちぎっていた。
 そこに教員が近付いて私たちの前で立ち止まった。

「失格」
「「へぇ?」」

 私たちは、思いもしない言葉に驚きの声を上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...