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第20話 アドリブどんでん返し劇
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遂にメインコンテストが開始され、徐々に選ばれた男子・女子の生徒たちがステージへと出て行く。
いくつかのアピールタイムが終わり、そろそろ終盤に近付いて来ていた。
だが、未だにトウマの姿はなく、私は完全にこれは逃げたと決めつけていた。
私はすぐに、この後どうするかを頭をフル回転させ考えていると、ルークが近付いて来た。
「何をそんなに自分を追いつめたよな顔で考え込んでだよ、クリス」
「うっさい。今俺は、何をどう選択するべきかを考えてんだ。お前の暇つぶしに付き合ってる暇はない」
私はかなり切羽詰まっていたので、ルークの問いかけもきつく言い返していた。
その事に関してはルークは何も言ってこなかったが、トウマの姿が見えなく何故いないか問いかけられた。
私は少し怒った口調で、逃げたんだよと言って、また自分はどうするべきか考えていた。
ルークは私の答えを聞いて、直ぐにその答えを否定して来た。
「何言っての、現にトウマはここに来てないし、来る気配も全くない。これは完全に怖気づいて逃げたとしか思えないでしょ」
「それは絶対にない。あいつは、そんな奴じゃないし、自分から言い出したことに対して、無責任な事は絶対にしない奴だ。トウマはそう言う奴だ」
私は、自分の口調が女性に戻っていることに気付かず、ルーク相手に話していた。
そんな私にルークは、真剣な表情でトウマが私が思っている奴でないと言い切り、あいつは絶対に来る、例えどんな状態であってもと言い残し、戻って行った。
私は、その言葉には少し気迫もあり説得感があったのと同時に、ルークがトウマの事をそんな風に言うとは思ってなくて、驚いていた。
すると、メインコンテストの方にて最後のアピールタイムが始まりだした。
「っ! 嘘でしょ、もうすぐ出番!? ルークはああ言うけど、その本人が来なければ意味ないんだよ!」
私は混乱しながら、頭を両手でくしゃくしゃとしていると、遠くから誰かがやって来るのか見えた。
「トウマ?」
そう私が声にだして、走って近付いて来た人物は思いもよらない人物だった。
「いたいた。探したよ、クリス。って、この格好で会うのは初めてかな?」
「…っ!? え! まさか貴方、レオン?」
「覚えててくれたんだ、僕の事。嬉しいよ、クリス。そうだ、君の親友トウマ君から伝言を頼まれていたんだ」
「ちょ、ちょっと待って! どうしてレオンがここにいるのかもそうだけど、何でトウマからの伝言!? 話が見えてこないんだけど?」
私は突然のレオンとの再会に、驚き更にそこにトウマが絡んで来たので、余計に理解出来ず頭が混乱していた。
するとレオンが、簡単に経緯だけ教えてくれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遡ること、10分前。
トウマが用具倉庫に閉じ込めれた後、突然その扉が自身の頭の上を吹き飛んで行った時。
「はひほと!? (何事!?)」
驚くトウマの目線の先には、制服を着たレオンが立っていた。
レオンは倉庫内でトウマを見つけ、ゆっくりと駆け寄ってきてロープやテープを取った。
「大丈夫かい? 怪我とかしてないかい?」
「あ、あぁ。俺は大丈夫だ。それより、お前は誰だ? うちの制服着ているが、見た事ない顔だな」
「ごめん。自己紹介してなかったね。俺はレオン。少し前に、この学院に転入して来た第2学年生だ」
「これはご丁寧に。ん? って事は、同じ学年か。また、新しい奴が入ってたのか、それは知らなかったわ。あっ、俺はトウマ、オービン寮生だよろしく」
レオンはトウマに手を貸して立ち上がらせつつ、挨拶を済ませた。
何故レオンがここにいるかと言うと、クリスを尋ねに寮に行ったがいないと言われ、会うなら女装した奴が出て行ったから、そいつを追えば会えると寮の人に言われて、つけていたら連れていかれていたので、助けに来たのだった。
そこでトウマは、クリスを待たせている事を思い出し、用具倉庫から走り出した。
いきなり飛び出て行ったトウマにレオンは驚いてたが、すぐさま後を追いかけて一瞬でトウマに追いついていた。
「ってえ!! お前、足早いな。そうだ、お前に1つ頼みごとをしてもいいか?」
「あぁいいよ。困っている時は、助け合わなきゃ」
「いきなり会ったばかりなのに、頼みごとをしてすまない。今この先でコンテストがやっているんだが、そこの舞台裏にいるクリスに伝言を頼む」
「クリスって、クリス・フォークロスだったりする?」
レオンからクリスの名前が返って来て、トウマは一瞬驚くがそうだと答える。
その時クリスの知り合いなら話が速いと思い、直ぐに伝言を言って今すぐに伝えて来てくれとレオンに頼む。
するとレオンは、任されたと一言発すると物凄い速さで、クリスがいるコンテスト会場へと向かって行った。
その後ろ姿は直ぐに見えなくなり、トウマは速過ぎだろとボソッと呟いて、頑張って後を追うのだった。
そしてクリスの元に、レオンが現れたのだった。
「なるほど、そんな事があったのか…」
「ひとまず彼からの伝言は伝えたが、内容から察するに彼は出番までには間に合わなさそうだね」
レオンは、会場の盛り上がりと現状をすぐさま理解していた。
私もレオンの言う通り、トウマがまだここに到着していないので、出番までには間に合わないと理解していた。
何とか時間を延ばすかと考えはしたが、そんな前座の時間を延ばす意味はないし、出ないとなればまた問題だと考えていた。
その時点で、私に残された選択肢は、1人で乗り切ることのみだった。
だが、そんな覚悟が出来るわけなく、無意識に手が震えていた。
すると追い打ちをかけるように、司会者から最後のアピールタイムが終了した合図が聞こえ、出場者たちが舞台裏に帰って来ていた。
そして遂にコンテストスタッフから、準備お願いしますと言われ誘導される。
しかし私は、頭が真っ白になってしまい、動くことができなくなっていた。
そんな私を見て、何かを察したのレオンが急に手を握って来た。
「大丈夫。僕も一緒に出てあげるから、心配しないで」
「えっ! レオン!? 何を」
するとレオンが、私の手を握ったままステージへと出て行った。
私もレオンにつられてステージへと出てしまい、完全にパニック状態だった。
「おっと、まだお呼びしていませんでしたが、やる気十分ということでしょうか? それでは、結果発表までの時間を、毎年恒例の男子寮の出し物でお楽しみください!」
咄嗟に、司会者が私たちの事を見てうまく切り返してくれ、そのまま司会者は入れ替わる様に舞台裏へと消えて行った。
そして遂に、想定外の状況で地獄イベントが始まってしまった。
だが、準備したものもトウマがいなければ成り立たないので、紹介されはしたがただ立っている事しか出来なかった。
その異変に、観客たちも気付きざわざわしだす。
何とかしなければ、何かをしなければと私の頭の中では分かっているが、体が全く動かずにいた。
するとレオンが、耳打ちして来た。
「僕が流れを作るから、君はアドリブで返して。大丈夫、時期に彼も来る。それまでは、僕たちで乗り切るんだ」
「レオン、俺たちが何をやるか知ってるのか?」
私の問いかけにレオンは、笑顔で答えると突然声を張り上げた。
「あぁ~! どうして、君はそんな姿をしているんだ! 男という姿で、自分の本当の姿を隠し、何をしているんだ!」
「なっ!?」
突然のレオンの言葉に、会場がざわつく。
私は劇という事を忘れ、すぐにレオンへと言い返した。
「何を言ってるんだ、レオン!」
「何って君の事だよ、クリス王子」
そこで私は、レオンが劇として役を演じていたと理解した。
するとレオンも、片目でウインクしてきて返しを待っていた。
私は小さく深呼吸して、トウマが来るまでアドリブ演技をすることを覚悟する。
「馬鹿なことを言わないでくれ。僕の本当の姿? ここにいる僕こそが、本当の姿以外の何者でもない」
私たちがステージで演技をしていると、次第に観客たちにも伝わりはじめ、今年は意外と面白い出し物するなと観客たちの視線を集めていた。
「そうか、なら全て言ってあげよう。君が何故、そこまで真の姿を隠し、こんな所にいるのかを」
「全く君の話は聞いていられない」
「僕が、はったりを言っているとお思いで? クリス王女」
「っ!?」
私と同じ反応を観客たちがする。
「貴方の本当の姿は、王女。つまり、女性だ。そんな貴方が男装してまで、ここにいる理由はただ1つ」
私はレオンの次の言葉に唾を飲み込んだ。
「そう、トウマ姫。いや、女装して紛れ込んでいるトウマ王子に会う為だったのでしょう!」
「えっ…」
まさかの答えに、私は一瞬ためらってしまい、言葉が出なかった。
観客たちも劇の世界観に呑まれて、驚いていた。
そしてそこへ、運がいいのか悪いのか分からないが、トウマがステージ裏から息を切らして現れた。
「はぁ…はぁ…すまねぇ、クリス。遅くなっ……って、どういう状況?」
トウマは、目の前で演技する私とレオンを見て、首を傾げていた。
するとレオンはすぐさま、トウマへと演技を振った。
「何と言うタイミング。僕が、クリス王子を王女と見破った所に、トウマ姫改め、トウマ王子が現れるとは何という偶然。いや、運命か」
レオンの言葉に簡単な現状説明があったことで、トウマも何となく理解した顔になった。
トウマはすぐさま私の元へと駆け寄り、耳打ちした。
「状況は何となく理解した。もうこうなったら、アドリブで乗り切るしかない。俺に合わせてくれ」
私はトウマの言葉に頷くと、トウマはレオンに向かって人差し指を向けた。
「全く、貴方が何を言っているか分からないわ! 私はトウマ姫。彼はクリス王子。それ以外の何者でもないわ。それじゃ、これで失礼するわ」
そこからは、レオンの役がトウマの役の弟だとか、私の役の正式な婚約者だとか、トウマの役は本当は拾い子だとか、どんどんと設定が盛られていった。
そして最後には、何故か眠りについてしまったトウマの役を賭けて、私の役とレオンの役が一騎打ちをするシーンになり、私が勝つ所までやって来た。
その時点で、私はもうどうにでもなれと開き直っていた。
「この僕が負けるとは、女子だと思って甘く見ていた僕のミスだ…トウマ兄さんは、君のものだ…」
レオンがそう言いながらふらふらと歩き、ステージ裏へと消えて行った。
それ見届けた私は、ここで締める展開だ! と思い、すぐさま眠った設定のトウマへと駆け寄った。
そこで私は何を思ったのか、最後だから大胆に終わってやろうと考えて、トウマをお姫様抱っこした。
突然のことに、トウマは目を覚まし目を丸くしていた。
また会場からも、歓声や驚きの声が上がる。
「ちょ、ちょ、ちょっとクリス!?」
小声ながら、トウマの戸惑いの声がしたが、その時の私には聞こえていなかった。
私はトウマをお姫様抱っこしたまま、ステージの最前まで行った。
「さぁ、トウマ姫、戦いは終わった。また平和な日常に帰り、僕との楽しい日々を過ごしましょう」
その時私は、完全にクリス王子という役になり切ってトウマの額に口づけをした。
「なっ…」
トウマの驚く顔を、私はまさしく王子役として優しく微笑みかけた。
そのまま私はトウマをお姫様抱っこしたまま、ステージ裏へと消えて行った。
同時に、ステージ上に途中から当てられた照明をも消され、前座こと地獄イベントが終了した。
いくつかのアピールタイムが終わり、そろそろ終盤に近付いて来ていた。
だが、未だにトウマの姿はなく、私は完全にこれは逃げたと決めつけていた。
私はすぐに、この後どうするかを頭をフル回転させ考えていると、ルークが近付いて来た。
「何をそんなに自分を追いつめたよな顔で考え込んでだよ、クリス」
「うっさい。今俺は、何をどう選択するべきかを考えてんだ。お前の暇つぶしに付き合ってる暇はない」
私はかなり切羽詰まっていたので、ルークの問いかけもきつく言い返していた。
その事に関してはルークは何も言ってこなかったが、トウマの姿が見えなく何故いないか問いかけられた。
私は少し怒った口調で、逃げたんだよと言って、また自分はどうするべきか考えていた。
ルークは私の答えを聞いて、直ぐにその答えを否定して来た。
「何言っての、現にトウマはここに来てないし、来る気配も全くない。これは完全に怖気づいて逃げたとしか思えないでしょ」
「それは絶対にない。あいつは、そんな奴じゃないし、自分から言い出したことに対して、無責任な事は絶対にしない奴だ。トウマはそう言う奴だ」
私は、自分の口調が女性に戻っていることに気付かず、ルーク相手に話していた。
そんな私にルークは、真剣な表情でトウマが私が思っている奴でないと言い切り、あいつは絶対に来る、例えどんな状態であってもと言い残し、戻って行った。
私は、その言葉には少し気迫もあり説得感があったのと同時に、ルークがトウマの事をそんな風に言うとは思ってなくて、驚いていた。
すると、メインコンテストの方にて最後のアピールタイムが始まりだした。
「っ! 嘘でしょ、もうすぐ出番!? ルークはああ言うけど、その本人が来なければ意味ないんだよ!」
私は混乱しながら、頭を両手でくしゃくしゃとしていると、遠くから誰かがやって来るのか見えた。
「トウマ?」
そう私が声にだして、走って近付いて来た人物は思いもよらない人物だった。
「いたいた。探したよ、クリス。って、この格好で会うのは初めてかな?」
「…っ!? え! まさか貴方、レオン?」
「覚えててくれたんだ、僕の事。嬉しいよ、クリス。そうだ、君の親友トウマ君から伝言を頼まれていたんだ」
「ちょ、ちょっと待って! どうしてレオンがここにいるのかもそうだけど、何でトウマからの伝言!? 話が見えてこないんだけど?」
私は突然のレオンとの再会に、驚き更にそこにトウマが絡んで来たので、余計に理解出来ず頭が混乱していた。
するとレオンが、簡単に経緯だけ教えてくれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遡ること、10分前。
トウマが用具倉庫に閉じ込めれた後、突然その扉が自身の頭の上を吹き飛んで行った時。
「はひほと!? (何事!?)」
驚くトウマの目線の先には、制服を着たレオンが立っていた。
レオンは倉庫内でトウマを見つけ、ゆっくりと駆け寄ってきてロープやテープを取った。
「大丈夫かい? 怪我とかしてないかい?」
「あ、あぁ。俺は大丈夫だ。それより、お前は誰だ? うちの制服着ているが、見た事ない顔だな」
「ごめん。自己紹介してなかったね。俺はレオン。少し前に、この学院に転入して来た第2学年生だ」
「これはご丁寧に。ん? って事は、同じ学年か。また、新しい奴が入ってたのか、それは知らなかったわ。あっ、俺はトウマ、オービン寮生だよろしく」
レオンはトウマに手を貸して立ち上がらせつつ、挨拶を済ませた。
何故レオンがここにいるかと言うと、クリスを尋ねに寮に行ったがいないと言われ、会うなら女装した奴が出て行ったから、そいつを追えば会えると寮の人に言われて、つけていたら連れていかれていたので、助けに来たのだった。
そこでトウマは、クリスを待たせている事を思い出し、用具倉庫から走り出した。
いきなり飛び出て行ったトウマにレオンは驚いてたが、すぐさま後を追いかけて一瞬でトウマに追いついていた。
「ってえ!! お前、足早いな。そうだ、お前に1つ頼みごとをしてもいいか?」
「あぁいいよ。困っている時は、助け合わなきゃ」
「いきなり会ったばかりなのに、頼みごとをしてすまない。今この先でコンテストがやっているんだが、そこの舞台裏にいるクリスに伝言を頼む」
「クリスって、クリス・フォークロスだったりする?」
レオンからクリスの名前が返って来て、トウマは一瞬驚くがそうだと答える。
その時クリスの知り合いなら話が速いと思い、直ぐに伝言を言って今すぐに伝えて来てくれとレオンに頼む。
するとレオンは、任されたと一言発すると物凄い速さで、クリスがいるコンテスト会場へと向かって行った。
その後ろ姿は直ぐに見えなくなり、トウマは速過ぎだろとボソッと呟いて、頑張って後を追うのだった。
そしてクリスの元に、レオンが現れたのだった。
「なるほど、そんな事があったのか…」
「ひとまず彼からの伝言は伝えたが、内容から察するに彼は出番までには間に合わなさそうだね」
レオンは、会場の盛り上がりと現状をすぐさま理解していた。
私もレオンの言う通り、トウマがまだここに到着していないので、出番までには間に合わないと理解していた。
何とか時間を延ばすかと考えはしたが、そんな前座の時間を延ばす意味はないし、出ないとなればまた問題だと考えていた。
その時点で、私に残された選択肢は、1人で乗り切ることのみだった。
だが、そんな覚悟が出来るわけなく、無意識に手が震えていた。
すると追い打ちをかけるように、司会者から最後のアピールタイムが終了した合図が聞こえ、出場者たちが舞台裏に帰って来ていた。
そして遂にコンテストスタッフから、準備お願いしますと言われ誘導される。
しかし私は、頭が真っ白になってしまい、動くことができなくなっていた。
そんな私を見て、何かを察したのレオンが急に手を握って来た。
「大丈夫。僕も一緒に出てあげるから、心配しないで」
「えっ! レオン!? 何を」
するとレオンが、私の手を握ったままステージへと出て行った。
私もレオンにつられてステージへと出てしまい、完全にパニック状態だった。
「おっと、まだお呼びしていませんでしたが、やる気十分ということでしょうか? それでは、結果発表までの時間を、毎年恒例の男子寮の出し物でお楽しみください!」
咄嗟に、司会者が私たちの事を見てうまく切り返してくれ、そのまま司会者は入れ替わる様に舞台裏へと消えて行った。
そして遂に、想定外の状況で地獄イベントが始まってしまった。
だが、準備したものもトウマがいなければ成り立たないので、紹介されはしたがただ立っている事しか出来なかった。
その異変に、観客たちも気付きざわざわしだす。
何とかしなければ、何かをしなければと私の頭の中では分かっているが、体が全く動かずにいた。
するとレオンが、耳打ちして来た。
「僕が流れを作るから、君はアドリブで返して。大丈夫、時期に彼も来る。それまでは、僕たちで乗り切るんだ」
「レオン、俺たちが何をやるか知ってるのか?」
私の問いかけにレオンは、笑顔で答えると突然声を張り上げた。
「あぁ~! どうして、君はそんな姿をしているんだ! 男という姿で、自分の本当の姿を隠し、何をしているんだ!」
「なっ!?」
突然のレオンの言葉に、会場がざわつく。
私は劇という事を忘れ、すぐにレオンへと言い返した。
「何を言ってるんだ、レオン!」
「何って君の事だよ、クリス王子」
そこで私は、レオンが劇として役を演じていたと理解した。
するとレオンも、片目でウインクしてきて返しを待っていた。
私は小さく深呼吸して、トウマが来るまでアドリブ演技をすることを覚悟する。
「馬鹿なことを言わないでくれ。僕の本当の姿? ここにいる僕こそが、本当の姿以外の何者でもない」
私たちがステージで演技をしていると、次第に観客たちにも伝わりはじめ、今年は意外と面白い出し物するなと観客たちの視線を集めていた。
「そうか、なら全て言ってあげよう。君が何故、そこまで真の姿を隠し、こんな所にいるのかを」
「全く君の話は聞いていられない」
「僕が、はったりを言っているとお思いで? クリス王女」
「っ!?」
私と同じ反応を観客たちがする。
「貴方の本当の姿は、王女。つまり、女性だ。そんな貴方が男装してまで、ここにいる理由はただ1つ」
私はレオンの次の言葉に唾を飲み込んだ。
「そう、トウマ姫。いや、女装して紛れ込んでいるトウマ王子に会う為だったのでしょう!」
「えっ…」
まさかの答えに、私は一瞬ためらってしまい、言葉が出なかった。
観客たちも劇の世界観に呑まれて、驚いていた。
そしてそこへ、運がいいのか悪いのか分からないが、トウマがステージ裏から息を切らして現れた。
「はぁ…はぁ…すまねぇ、クリス。遅くなっ……って、どういう状況?」
トウマは、目の前で演技する私とレオンを見て、首を傾げていた。
するとレオンはすぐさま、トウマへと演技を振った。
「何と言うタイミング。僕が、クリス王子を王女と見破った所に、トウマ姫改め、トウマ王子が現れるとは何という偶然。いや、運命か」
レオンの言葉に簡単な現状説明があったことで、トウマも何となく理解した顔になった。
トウマはすぐさま私の元へと駆け寄り、耳打ちした。
「状況は何となく理解した。もうこうなったら、アドリブで乗り切るしかない。俺に合わせてくれ」
私はトウマの言葉に頷くと、トウマはレオンに向かって人差し指を向けた。
「全く、貴方が何を言っているか分からないわ! 私はトウマ姫。彼はクリス王子。それ以外の何者でもないわ。それじゃ、これで失礼するわ」
そこからは、レオンの役がトウマの役の弟だとか、私の役の正式な婚約者だとか、トウマの役は本当は拾い子だとか、どんどんと設定が盛られていった。
そして最後には、何故か眠りについてしまったトウマの役を賭けて、私の役とレオンの役が一騎打ちをするシーンになり、私が勝つ所までやって来た。
その時点で、私はもうどうにでもなれと開き直っていた。
「この僕が負けるとは、女子だと思って甘く見ていた僕のミスだ…トウマ兄さんは、君のものだ…」
レオンがそう言いながらふらふらと歩き、ステージ裏へと消えて行った。
それ見届けた私は、ここで締める展開だ! と思い、すぐさま眠った設定のトウマへと駆け寄った。
そこで私は何を思ったのか、最後だから大胆に終わってやろうと考えて、トウマをお姫様抱っこした。
突然のことに、トウマは目を覚まし目を丸くしていた。
また会場からも、歓声や驚きの声が上がる。
「ちょ、ちょ、ちょっとクリス!?」
小声ながら、トウマの戸惑いの声がしたが、その時の私には聞こえていなかった。
私はトウマをお姫様抱っこしたまま、ステージの最前まで行った。
「さぁ、トウマ姫、戦いは終わった。また平和な日常に帰り、僕との楽しい日々を過ごしましょう」
その時私は、完全にクリス王子という役になり切ってトウマの額に口づけをした。
「なっ…」
トウマの驚く顔を、私はまさしく王子役として優しく微笑みかけた。
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