とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第71話 第2学年を徹底的に潰したい

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 学院内のとある一室に、各寮長と副寮長が集まっていた。
 だが、そんな中で唯一オービン寮の寮長だけがまだ到着していなかった。

「おい、ミカロス。これはどう言う事だ? 俺たちを呼び出しておいて、何でその当人がいないんだ?」
「全くその通りだ。ただ、ダイモンと同意見なのが納得いかないが」

 エメルは、自分の手袋をいじりながらそう呟くと、ダイモンは立ち上がり声を荒げるが、副寮長のワイズに止められ鎮められる。

「僕としては、時間が経つにつれ調子が良くなるからいいけどね~」
「それは君だけだよ、イルダ」
「あれ? そうなの?」

 イルダの答えにマルロスは、小さくため息をついた。
 それぞれ色んな反応をする皆を見て、ミカロスが謝罪の言葉を述べて頭を下げた。

「お前が謝る事じゃねぇよ。と言うか、ミカロスはオービンと一緒に来てたんじゃねぇのか?」
「さっきまでは一緒だったんだが、ここに来る前に一度トイレに行くという事で俺だけ先に来たんだ。全くどこに行ったんだ?」
「オービンの時間にルーズな所は全く治らないね」
「確かにマルロスの言う通りだね。僕も結構寝過ごしたりするけど、オービンの方が遅刻とか多いよね」
「いやいや、君の方が遅刻は多いよ」

 すると突然エメルが、口をはさんで来た。

「おいイルダ。前にも言ったよな、覚えてるのか?」
「ん? 何の事? 僕全然覚えてないんだけど」
「それだよ、それ。その僕っていう言葉だよ」

 突然のエメルに指を指されて言われた事に、イルダは首を傾げた。

「だからこの中で唯一、僕とお前の一人称が被ってる事だよ。こんだけいて、何でここだけ被るんだ。それが嫌だから前に変える様に言ったろ」
「いや、僕は気にしてないよ。ここの皆が変わってるだけでしょ。てか、オービンとミカロスも一緒じゃん」
「そこはいいんだよ、僕と被ってないし。重要なのは、僕と被ってるってとこなんだ」
「何でそんな変な所にこだわるんだよ、エメル。別に誰も気にしてないよ」
「僕が気にしてるんだ。しかも、お前とは寮長という役割も被ってるから余計だよ」
「はー、そう言うもんなのマルロス?」
「自分に振らないで下さい」

 そう言ってマルロスは顔を背けた。
 そこからは何故か、エメルがイルダの一人称を変えるようにと言い続ける口論が続いた。

「おい、変なスイッチが入ってんぞお前んとこの寮長。止めろよ、スニーク」
「……」
「俺様の事を無視かよ!?」
「……」
「おい、スニーク! 無視するな!」

 するとスニークはダイモンの方を見て、ポケットから紙を取り出しペンで文字を書きだしてダイモンに見せた。
 そこに書かれていたのは、「当方に話し掛けるな」だった。
 それを見たダイモンは再び頭に来て、立ち上がって声を荒げようとするが、寸前でワイズに止められる。
 だが、先程とは違いダイモンの代わりにワイズが口を開いた。

「スニーク、もう少し寮長への言い方と言うものがあるだろ。お前も、自身の寮長に同じような事を言われたらどう思う」
「……」
「我輩も強くは言わないが、相手の事も少し考えた言葉使いをしてくれ」
「……ふん」

 スニークはワイズにそう言われると、視線を前に戻してしまった。
 その反応にダイモンが耐え切れず、ワイズの静止を振り切りスニークに怒鳴り声を上げた。
 徐々にこの空間が、混沌としだしミカロスは頭を抱えた。

「(おいオービン、早く来てくれ。このままじゃ、話し合いすら出来なくなるぞ)」

 そんな事をミカロスが思い始めた時だった、扉が突然開きオービンが入って来た。

「いや~ごめんごめん。部屋間違えちゃった……やっぱり、怒ってる?」
「やっと来たか、オービン」

 オービンの到着に、ミカロスは小さく安堵の息をついた。
 すると先程まで言い合っていたいた、寮長や副寮長たちが急に黙り込んだ。
 そしてその中で、先に口を開いたのはダイモンだった。

「そりゃ、この空気を見れば分かるだろ。遅ぇんだよ、お前はいつも来るのがよ」
「本当に申し訳ない。俺が呼び出しておいて、一番最後に到着するのはあり得ないよな。本当に申し訳ない」

 オービンはその場で頭を深く下げ、謝罪するとミカロスも同じように謝罪をした。

「もういい、オービン。その頭を上げろ。ダイモンも、そこまでされると思ってなくて、焦ってるぞ」
「ば、ばか! そ、そんなわけないだろ。適当な事言うな、エメル」
「で、何でわざわざ学院に帰って来た日に、招集をしたんだ?」

 そう言われるとオービンは、ミカロスの横にある椅子に座り、招集した訳を話した。

「今日集まってもらったわけを単刀直入に言うと、もうすぐ開催される学年対抗戦もといい大運動会についてだ」
「大運動会についてだ?」
「珍しいな、オービンがイベント事で僕たちを呼び出すなんて」
「まぁ僕は、寝れる時間があれば何でもいいよ~」
「俺は、今年の大運動会では、下の代である第2学年を徹底的に潰したいんだよ」

 各寮長が各々の意見を口にした後、オービンが放った言葉に各寮長と副寮長の目つきが変わった。

「ほぉ~面白い事いうじゃねぇか、オービン。俺様は乗るぜその案」
「ダイモン、お前は決断が早すぎるんだよ。それでも寮長か。まぁ、僕としても最近の下の代の気の緩みには、目を見張る所があるけども、どうしてそんな事を急に言い出すんだオービン」
「最もな意見だ、エメル。俺が、これを決めたのは最近の出来事が決定打だが、考えていたのは第2学年で前寮長から寮長を託された時だ」

 そして、オービンは自身の考えを全て語り始めた。
 この学院を卒業した先には、必ず困難な壁が立ち塞がると考えており、生徒である時は教員や先輩や親しい仲間たちの力を借りて乗り越えられる。
 しかし、卒業してしまってはその支援の手も借りれない機会が多く、その困難な壁を越えられず諦めてしまう人がいる。
 確かに力を借りても難しい時もあるが、何もしないで諦める事はして欲しくないと、オービンは言う。

 あの時は仲間がいたから、情熱を持っていたからとか諦める理由を作るのは簡単だけど、そんな物を考える前に1歩でもいいので立ち向かう意思を、下の代またその下の代へと伝えたいと言い切る。
 それを聞き、寮長たちからは共感されつつも、所詮はそれがなくても誰もが生きていけるや、自分たちがそれを大運動会で伝えられる訳がないと少し反対気味であった。

「そうだな、皆が言う事も最もだ。だが、俺はもう一方で第3学年として下の代の奴らに、最も強烈な印象を残してやりたいんだ。皆は今までの第3学年だった先輩たちから、思い出や優しさ以外に何か思えている物はあるか?」
「……そう言われると、あんまり覚えてないな。というか俺様、自由気ままにしてたし、興味がなかったな」
「僕も自分で勝手に勉強とかしてたから、関わりがほとんどないね。前寮長と少し話した位かな」
「ん~寝てることが多かったから、あんまりどう言う人か覚えてないな」
「皆俺が思ってたより、先輩との絡みが少ないな……つまり、皆がそうだったように下の代には対して凄い奴だと思われてないって事だ。どんだけ強かろうが、知識があろうが、力を持っていようが、所詮それは第3学年だからという印象で終わってるんだよ」

 その言葉に、エメルとイルダは何かピンと来たようだが、ダイモンだけは首を傾けていた。

「ん~、つまり?」
「だから、お前のその武術とかは所詮第3学年になれば、身に付くもんだと下には思われているって事だ」
「何!? そんなわけあるか! 適当に過ごしてる奴に、俺様の武術が身に付く訳ないし、そもそも身に付けられるもんじゃねぇよ!」

 エメルは、小さくため息をついて「そう言う事だ、脳筋が」とボソッと呟いた。

「それでどうだろうか、俺のわがままに付き合ってくれるか?」
「俺様は最初からやるって言ってたが、そんな風に思われるのは絶対ぇに嫌だから、付き合うに決まってるだろ! 俺様の凄さ、目に焼き付けさせてやるぞ!」
「ダイモンは置いといて、何かオービンに良い様に使われる感じはするが、僕もそう思われるは嫌だから付き合うよ。それに、オービンが初めて言ったわがままだし、初めて位は付き合ってやるよ」
「僕もいつも寝てるだけの、置物寮長って印象変えるチャンスだしやるよ。後輩たちに、僕の凄さを見せつけてやればいいんでしょ」
「皆ありがとう。とりあえず今日はこれでお開きにしよう。細かい事は、学院が始まって早々に話そう。後、くれぐれも今日の事は内密にね。友達とかにも言うなよ」

 そうして寮長と副寮長たちは、オービンとミカロスを残して出て行った。
 2人だけになると、オービンが机に思いっきりうつ伏せになり、疲れた声を出した。

「何とか他の寮長の賛同も取れたな、オービン。少しお前にしては強引な感じはしたが、彼らも舐めて見られるのが嫌いで良かったな」
「そうだな。あれで反応なかったら、どうしようかと思ったよ。でもまぁ、これで俺がやりたい困難な相手に立ち向かう構造は出来た。だけど、ここからが大変だ、どう下の代を焚き付けるかだ」
「意外とそれは何とかなるんじゃないか? それより、今回のわがままはあいつの為か?」

 するとオービンは、起き上がり椅子の背もたれに寄りかかる。

「う~ん、それもあるけど、さっき言った印象も、困難に立ち向かう意思を持ってもらうも本当さ。ここでの経験を、この先心のどこかに置いてあれば、俺の願いは叶うからさ」
「ふっ」
「何でそこで笑うんだよ、ミカ」

 オービンは鼻で笑うミカロスに、軽くツッコミを入れるとミカロスは「すまん」と軽く謝った。

「いや、流石次代の王様だなって思ってよ」
「そんなんじゃねぇよ。これは、俺のわがままでやる事で自己満足の為だ。と言うか、そんな事言うならミカ、お前は今も右側に居るから将来は俺の右腕だぞ」
「何を今さら言ってんだ、俺は元からそのつもりだぞオービン。いや、第一王子オービン・クリバンス」
「それは嫌がらせか、ミカ。後フルネームで呼ぶな、気恥ずかしい」

 そう言ってオービンは立ち上がり、ミカと共に部屋を出て寮へと戻っていた。
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