とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
86 / 564

第85話 大運動会⑤~偵察と第9競技出場者~

しおりを挟む
 第6競技『綱引き』は、まさに言葉通りの競技で綱を引きあう競技だ。
 だが、人と人でやるのではなく、ゴーレムと綱引きをそれぞれで行うのである。
 分担は各チームごとだが、3つの役割がありゴーレムを強化・守護する者、相手のゴーレムを弱体化・攻撃する者、そしてゴーレムと綱引きをする者の3つだ。
 勝敗の付き方は、先にゴーレムを白線よりこちらに引き込む、または相手ゴーレムを行動不能にするかの2つのみで、相手選手への直接攻撃は禁止されている。

 競技結果を言うと、私たち第2学年がこの大運動会で初めて1位を取った。
 その勝利をもたらしたのは、ニックとガウェン、そして次期寮長候補たちの右腕と呼ばれる生徒スザク、リーフのお陰であった。
 ちなみに右腕と呼ばれる生徒は、第一期期末試験全寮最終成績では10位に入っている人たちであり、私はそう言えばそんな名前があったなとうっすら思い出していた。
 私は全く交流がないので、話はしなかったが10位以内に入った実力は確かにあったと競技を見て実感した。

 第6競技でやっと1位を取った事と、初めて第3学年に勝った事で皆は盛り上がり、このまま良い雰囲気で次の競技も勝って行くぞと掛け声をだし指揮を盛り立てた。
 だが、第7競技『玉入れ』第8競技『棒倒し』では第3学年に負けてしまい、どちらも2位と言う結果であった。
 その結果が累計ポイントに反映され、第8競技終了時点でのポイントが表示された。


 大運動会ポイント累計
  第3学年 275点
  第2学年 205点
  第1学年 55点


 その結果を見た私たち第2学年は、改めて第3学年の強さを実感していた。
 ただ単に、1年上の学年と言うだけでなく、各々の長所を活かした戦略や技術の高さも本気でぶつかった事で分かり、一番は仲間として互いに支え合っている点が自分たちに足りないものだと実感していた。
 確かに、数週間であるが寮を越えて、初めて互いに協力し協調を行いある程度は第3学年の様に戦えていたが、やはりそれは付け焼刃でしかなく、連携ミスや息の合わなさが実際には出ていた。

「さすがは先輩たちだな。改めて先輩の凄さを肌で感じたぜ」
「俺も先輩たちの見る目が変わったぞ」

 トウマとダンデが次の競技準備の間、表示されたポイントを見ながら呟いていると、トウマが振り返り近くにいた私とロムロス、そしてスバンに対して胸を張りながら口を開いた。

「だが、まだ負けてはない! 次の『騎馬戦』と最後の『代表戦』で勝てば俺たちの勝利だ!」
「確かにトウマの言う通り、ポイント的にはそうだけど、残っている先輩や持っている力を考えると、そう簡単じゃなさそうだけど」
「おいおい、クリス。そんな弱気でどうすんだ! お前は『代表戦』に出るんだから、勝つ気でいないと」
「別に負けるつもりはないけど、どこまで通じるか考えないと、無駄に突っ込んで終わりじゃ俺的にも……」
「そこは、ロムロスの出番でしょうが。な、ロム……って、お前どうして客席の方を見てるんだよ」

 トウマの言葉に、私もロムロスの方を見るとトウマの言う通り、客席をきょろきょろを見回していた。
 私は、誰か探しているのかと問いかけるとロムロスは私の方に視線を向けて答えてくれた。

「いや、今年の大運動会は去年より、来ている他の学院生の集団人数が多いなと思って」
「他の学院生?」
「それは私も気になったわ。例年なら2、3人だけど、今年は5、6人って所かしら。学院が公式に招待してるとは言え、多いわね」

 私は他の学院生が何を指している所から分からず、首を傾げて聞いているとダンデが会話に入って来た。

「どうせ、来月の学院対抗戦に向けた偵察だろ。目的は第3学年の寮長たちじゃないのか? 直前に、どの程度の力を持っているか堂々と見れる場所だし、今年は本気でやり合うって伝わってるから余計だろ」
「学院対抗戦?」
「クリスは知らないのか」

 また知らない単語を聞き、それを口に出すとロムロスが簡単に説明してくれた。
 学院対抗戦とは、クリバンス王国内にある魔法学院の代表者同士が勝負する、大運動会の学院対抗版的なものだと教えてくれた。
 ただし、大運動会の様な競技はなく『代表戦』的な力を勝負を行い、年に一度魔法学院のトップを決めると言うものだ。
 ちなみに王都メルト魔法学院が、王国内魔法学院でトップ3に入っているのは毎年学院対抗戦で上位入賞している為でもある。
 だが、ここ数年1位を取った事はなく、去年は3位であったとダンデが口にした。
 去年の1位は、シリウス魔法学院と言う学院であり王国内魔法学院も1位である絶対王者であると教えてくれた。
 そこで私は絶対王者の学院の名前を聞いて、思い出す。

「そう言えば、お兄ちゃんはシリウス魔法学院だった様な……」
「マジかよ! クリスって兄貴居たのか。ちなみに有名な人だったりするのか?」
「有名かは分からないけど、一応首席で卒業したって言ってたな」
「「主席!?」」

 その場に居た皆が驚きの声をだした。
 ロムロムに名前を聞かれたので、名前くらいは大丈夫かと思いつつお兄ちゃんの名前を出すと、全員が驚愕していた。
 その反応を見て、以前寮に来た時の事を思い出していた。
 そう言えば、お兄ちゃんって凄い人だったて言われたな……あれ? そう言えばトウマはあの時、ちょうどいなかったんだっけ?
 私はトウマもロムロスたちと同じ反応をしていたので、寮にお兄ちゃんが来た時にトウマは外出していて居なかった事を思い出した。
 その場で再びお兄ちゃんの事で驚かれたが、暫くするとその熱も収まり話が元に戻っていった。

「何にしろ、他の学院生たちの目を気にすることはねぇって。どうせ、あいつ等だって俺たちの事なんか見ちゃいねぇよ」
「確かに、大体学院対抗戦に選ばれるのって、第3学年の先輩たちだもんな」

 トウマとダンデがそんな事を言うと、ロムロスも見るのを止めて改めてトウマに作戦の確認をしていた。
 そして競技準備が完了すると、出場選手たちは集合場所へと向かって行った。

「もう大運動会も終盤だ。この競技に出て来る人次第で、『代表戦』に出て来る先輩が決まる」
「そうか、言われてみればそうなるのか」

 ロムロスの言葉に、私は納得し空中に表示される競技出場選手一覧を見ていた。
 第1学年から次々に呼ばれていく中、第2学年も終了し最後に第3学年の出場選手が呼ばれ始め最後に呼ばれた選手で会場が盛り上がった。
 呼ばれた名前は、オービン寮副寮長のミカロス先輩であった。

「俺としては、ちょっと意外だったな」
「そう? 私はワイズ先輩が出た時点で、この展開は予想通りだったけども」

 ロムロスとスバンは、『代表戦』出場選手が確定した事で話していたが、私は次の自分の競技でどこかの寮長と当たるのか想像しただけで、少し弱気になっていた。
 ここで、ミカロス先輩が呼ばれたって事は、『代表戦』のメンバーには寮長が全員出て来るってことか……う~ん、ここまで副寮長たちの実力を見た感じ私じゃ歯が立たないのではと思ってるんだよね……何か想像しただけで、辛くなってきたな。
 私は小さくため息をついたが、今はとりえず第9競技に出ているトウマたちを応援する事に意識を向けた。
 一方で、トウマたちは一緒に出場しているリーガ・ライラック・シンリとミカロス先輩が出て来た事について話していた。

「ここで、ミカロス先輩か。厳しくないか?」
「何言ってんだ、相手にとって不足なしだ!」
「なぁ、トウマ。あんな作戦で本当に大丈夫なのか?」
「あ、それは僕も思った。てか、あれが作戦って言えるの?」
「お前ら文句が多いな。これは、ロムロスから貰った作戦だぞ、信じてやれば勝てる! 後は、気合だろ!」
「おぉ! 気合いか。って事は、筋肉だな!」
「いや、何でそうなるんだよリーガ」

 リーガの返しに、冷静にシンリがツッコミを入れると、隣にいたライオン寮の次期寮長候補右腕と言われるプロンスが、筋肉に反応してこちらを向いて来る。
 それに気付き、リーガは言葉を交わすことなく筋肉を動かして謎の会話? を始めていた。
 それを見て、トウマがライラックに小声で訪ねると、リーガとプロンスは筋肉仲間らしくと答えられ、当人同士しか分からない事をしていると返された。
 数分後、競技準備合図が鳴らされトウマたちは騎馬を組むと、シンリから心配からか愚痴が出て来た。

「ねぇ、本当に僕が前なの? こう言う場合リーガか、ライラックじゃない?」
「シンリ、何度も言うがお前が適任なんだよ。なぁ?」
「そうだぞ、シンリ。俺は右ウィングでこの筋肉を魅せ……いや、存分に活かせるからここに居るんだ」
「いや、今魅せつけるって言おうとしなかった!?」
「シンリ自分が辛いからって逃げるなよ。俺は、左ウィングで楽……いや、小回りや戦場を見渡す役割があるんだぞ」
「おいライラック、お前楽だしとか言おうとしなかったか!?」
「もうこれがしっくりくるって練習もしただろ、シンリ。ほら、もうすぐ始まるから前を向け!」

 そう言って、上にいるトウマがシンリの頭を掴み後ろを向いていた顔を勢いよく前に向けた。

「いたぃ! トウマ、急に顔を掴んで前にするな! 痛いだろうが!」
「すまん、すまん。だけど、お前がいつまでも、ツッコミしてるからだぞ。これから俺たちは、ミカロス先輩を倒すんだから気合いれろ!」

 トウマの掛け声で、一気に気が引き締まりシンリたちは大きな声を出すと、周りの騎馬たちもトウマたちに続き気合を入れて声を出した。
 それを見ていた、第3学年も気を引き締めていた。

「あっちはやる気満々みたいだぞ、ミカロス」
「問題ないよ。どんな作戦を立てようが、俺の想定を越えはしない。勝つのは俺たち第3学年だ」

 そう言って、ミカロスは騎馬の上で眼鏡淵を持って軽く位置を直した。
 そして、第9競技『騎馬戦』の競技開始合図が競技場内に鳴り響いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...