とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
99 / 564

第98話 道は作るが案内はしない

しおりを挟む
 大運動会の閉会式は何事もなく終了した後、私は疲れ果ててしまっていたので、その日は直ぐに就寝してしまった。
 次の日は1日休息日となり、皆は体を休める為基本的には寮で過ごしていた。
 私も同じ様に寮でゆっくりしていたが、その中でトウマは何か険しい表情をしていた。
 またルークは全く姿を現さず、同室のシンに聞くと部屋で気力をなくしたような状態だと聞いた。

 周囲の皆は、昨日の戦いで疲れただけだろと誰も心配していなかったが、私は少しだけルークが顔を出さないのが心配になっていた。
 それは、兄であるオービンの言葉が頭に引っかかていたからだった。
 う~ん……顔でも見に行くか? いやいや、別にそこまでする必要はないよね。
 そんな関係でもないし、なんか行ったら行ったで馬鹿にされそうだからな……てか、何でそんな事考えてるんだ私。
 そのまま私は、気にしすぎだなと思い、皆と同じように疲れているだけだと決めつけた。
 そして私が、食堂兼リビングから自室へ戻ろとした時に、トウマが反対方向へ歩いて行くのを見かけて気になり声を掛けた。

「トウマ、行くのか?」
「クリス。あぁ、ちょっとな……」

 それだけ言うと、トウマは寮の玄関へと向かって行った。
 私は何か用があるのだろうと思い、そのまま自室へと足を向けたが、先程のトウマのどこか沈んだ表情が気になっていた。
 昨日も閉会式には出ず、寮にも皆より遅く帰って来てたし、とても元気がない表情をしていたのは知っていたが、トウマも疲れたのだと流していた。
 だが、1日立ってもそれが回復するわけでもなく、逆に思い詰める様な気がして足が止まった。

 あ~あんまり良くない事だけど、何かあのまま放って置く訳にはいかない気がする。
 そう思い私は、急いでトウマの後を追い、気付かれない様に後を付けて行こうとしたが、既にトウマの姿を見失っていたのでその日はおとなしく自室でゆっくり休んだ。
 次の日からは、通常の授業が開始になり寮の皆が来ていると思ったが、ルークだけは体調不良で欠席であった。
 トウマはと言うと、昨日とは真逆な態度で私や皆と接していた。
 その時点で私は、昨日のアレは何だったんだと思い、直接トウマに問いかけた。

「え? 昨日? あ~いや~何て言うか、負けたのが意外ときてさ、1人になりたかったんだよね」
「……本当に?」
「おいクリス。何疑ってるんだよ。別に何もないぞ」

 私はトウマの言う事が本当なら、切り替わりようが急すぎて変だと思っていた。
 昨日の表情から、仮に嘘ではなかったとしても感情のふり幅が大きすぎると感じていた。
 言うならば、昨日が0で今日が100と言う感じだ。
 そのまま私はじっとトウマを見ていると、トウマは私から逃げる様にリーガとライラックの元へと行ってしまう。

「怪しい……絶対何か隠している」

 その日の授業終了後、再びトウマの後を付けるもそのまま寮へと戻って来ていた。
 そのままトウマから目を離さずに見ていたが、怪しい行動をする事無く夕飯の時間になっていた。
 もうしかして本当に、何もない? 私の勘違い?
 少し自分の勘を疑ったが、とりあえずもう少し監視し続ける事にした。
 だがその日は、結局怪しい所がないまま終わってしまう。

 更に次の日、私は作戦を変えてトウマをずっと監視するのを止めた。
 その日は、シンリに手伝ってもらい私ではなくシンリにトウマが変な行動をしたら教えて欲しいとお願いをした。
 さすがにただで私のわがままには付き合って貰えないので、ポイントを多少渡すと言う条件で交渉を行い、引き受けてくれた。
 するとその日の授業終わり、私は久しぶりに大図書館へと向かおうとするとシンリが声を掛けて来た。

「いたいた、クリス。頼まれてた件で動きがあったよ」
「本当! で、ターゲットは?」

 シンリから私はトウマが周囲をきょろきょろと確認して、医務室へと入って行くのを見かけたと教えてくれた。

「医務室か……うん、分かった。ありがとうシンリ」
「こんなんでいいの?」
「あぁ、十分だ。でも、これは誰にも言うなよ」
「オッケーオッケー」

 そうシンリに言って、私はトウマがいるであろう医務室へと向かった。
 医務室前に着くと、トウマの声が聞こえて来て、シンリの情報通りここに居ると確信した。
 誰かと話している? ん~タツミ先生……じゃ、なさそうだな。
 ルークか? いや、にしてはトウマの口調が丁寧だよな。
 誰だ? トウマがああいう態度を取る相手って?
 私は扉の前で耳を立てて中の声を聞きつつ、中にいる人が誰か考えていると、真後ろから突然肩に手を置かれ私は変な声が出てしまう。

「ひぃぇっ!」
「何してるんだ、お前は?」
「タ、タツミ先生……」

 私がゆっくりと振り返ると、そこには笑顔だが目元がピクピクしているタツミ先生がいた。
 そのまま私はタツミ先生に押される様にして、医務室へと入れられ、そこでトウマと目が合うと互いに「あっ」と言う声が漏れてしまう。

「トウマ。やっぱりお前か。俺の許可なく、ここに来るなって言ったよな」
「え、いや、その……」
「お前のおまけで、こいつが扉の前で話を聞いてたんだぞ。面倒事を増やすな」
「えっと、俺は、その……」

 私はトウマの方を見ると、トウマの前にはベッドらしきものが見えたが、周りはカーテンで囲われていて誰が居るのか分からずにいた。
 するとそこから聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「もしかして、クリス君かい?」
「この声って確か、オービン先輩」

 するとオービンが、私にベッドの方へ来る様に呼ばれたので近付いて覗き込むと、そこには口元に機器の様なものを付け、周囲には何かを計測する機器がたくさんあり私は驚いてしまう。
 そんな私を見たトウマが先走って説明しようとすると、タツミ先生が止めに入る。

「な、何がどうなってるんですか、これ」
「君には俺の口から話すよ。タツミ先生、少しぐらいなら起き上がっても」
「ダメだ。話すにしてもそのままだ。俺としてはこれ以上、秘密を話して欲しくないがな」
「そう言わないで、頼みます」

 オービンの言葉にタツミ先生はため息をついて、「自分の状態を忘れるなよ」と言って仕事机へと戻った。
 トウマは自分もここに残っていていいかとオービンに問いかけると、オービンは申し訳なさそうな顔をして答えた。

「来てくれたのにすまないがトウマ、クリスと2人だけにしてくれるか」
「……分かりました」
「トウマ。心配してくれてありがとう。でも、後はあいつ次第だから無理に急かさないでやってくれ」
「……」

 オービンがそう声を掛けるも、トウマは何も言い返さずに医務室を出て行った。
 私は何の話をしていたか気になる以前に、どうしてオービンがこんな状態なのが理解出来ずに混乱していた。
 その後、オービンに呼ばれるまま近くの椅子に座ると軽い雑談から始まり、オービンは私が話を聞ける様な状態になってから本題に入ってくれた。
 そしてオービンの抱える病の事、大運動会後の事、今後の事、これからのルークに対しての考えの全てを私は知った。

「……本当にオービン先輩は、それでいいんですか?」
「あぁ。俺がやれることは全てやったつもりだ。後は、あいつ自身が決める事だ」
「でも、それじゃ!」
「あははは。君はトウマと同じ反応をしてくれるんだね。本当にいい友を持ったな、ルーク」
「えっ?」

 するとオービンは、私の方をじっと見て来た。

「前にも言ったかもしれないけど、ルークの事よろしく頼むよ……君」

 オービンは最後の所を、口パクでアリスと言って来て優しい笑顔を私に向けて来た。
 そんな風に言われてしまった私は、嫌だとも言えないが、分かりましたととも言えずにただ黙っていた。
 その後私は立ち上がり、オービンに一礼して医務室を出て行った。

「……お前って、意外と性格悪いな」
「バレました? 俺って意外と、わがままなタイプなんですよ。しかも、押し付けるタイプの」
「なら、釘を刺すんじゃねぇよ。このままじゃ本当に、潰れるぞあいつ」
「……それなら、そこまでの奴だったって事ですよ。道は作りましたが、案内をしてはダメなんです。あいつ自身が決めて進まないと、何の意味もないんですよ」

 その言葉を最後に、タツミ先生はオービンに言い返す事はなく自分の仕事に戻った。
 オービンもそのまま瞳を閉じた。
 そして私は、色んな感情が頭の中を駆け巡りパンク寸前の状態であった。

 あ~頭が痛い……情報も多いし、感情がぐちゃぐちゃだ。
 私は頭を抱えて寮へと帰ると、何やら騒がしい声が聞こえその方に向かうと、第2学年の寮部屋付近に人が集まっていた。
 騒ぎ声からすると、喧嘩の様に聞こえたがよく見えず何が起こっているかは分からなかった。
 するとそこにシンリが人込みから出て来たので、捕まえて話を聞いた。

「シンリ、何があったんだ?」
「クリス! 大変だよ、トウマがルークの部屋に強引に入ろうとしてて!」
「えっ!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

悪役令嬢はやめて、侯爵子息になります

立風花
恋愛
第八回 アイリス恋愛ファンタジー大賞 一次選考通過作品に入りました!  完結しました。ありがとうございます  シナリオが進む事のなくなった世界。誰も知らないゲーム後の世界が動き出す。  大崩落、王城陥落。聖女と祈り。シナリオ分岐の真実。 激動する王国で、想い合うノエルとアレックス王子。  大切な人の迷いと大きな決断を迫られる最終章! ーあらすじー  8歳のお誕生日を前に、秘密の場所で小さな出逢いを迎えたキャロル。秘密を約束して別れた直後、頭部に怪我をしてしまう。  巡る記憶は遠い遠い過去。生まれる前の自分。  そして、知る自分がゲームの悪役令嬢であること。  戸惑いの中、最悪の結末を回避するために、今度こそ後悔なく幸せになる道を探しはじめる。  子息になった悪役令嬢の成長と繋がる絆、戸惑う恋。 侯爵子息になって、ゲームのシナリオ通りにはさせません!<序章 侯爵子息になります!編> 子息になったキャロルの前に現れる攻略対象。育つ友情、恋に揺れる気持<二章 大切な人!社交デビュー編> 学園入学でゲームの世界へ。ヒロイン登場。シナリオの変化。絆は波乱を迎える「転」章<三章 恋する学園編> ※複数投稿サイト、またはブログに同じ作品を掲載しております

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

処理中です...