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第98話 道は作るが案内はしない
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大運動会の閉会式は何事もなく終了した後、私は疲れ果ててしまっていたので、その日は直ぐに就寝してしまった。
次の日は1日休息日となり、皆は体を休める為基本的には寮で過ごしていた。
私も同じ様に寮でゆっくりしていたが、その中でトウマは何か険しい表情をしていた。
またルークは全く姿を現さず、同室のシンに聞くと部屋で気力をなくしたような状態だと聞いた。
周囲の皆は、昨日の戦いで疲れただけだろと誰も心配していなかったが、私は少しだけルークが顔を出さないのが心配になっていた。
それは、兄であるオービンの言葉が頭に引っかかていたからだった。
う~ん……顔でも見に行くか? いやいや、別にそこまでする必要はないよね。
そんな関係でもないし、なんか行ったら行ったで馬鹿にされそうだからな……てか、何でそんな事考えてるんだ私。
そのまま私は、気にしすぎだなと思い、皆と同じように疲れているだけだと決めつけた。
そして私が、食堂兼リビングから自室へ戻ろとした時に、トウマが反対方向へ歩いて行くのを見かけて気になり声を掛けた。
「トウマ、行くのか?」
「クリス。あぁ、ちょっとな……」
それだけ言うと、トウマは寮の玄関へと向かって行った。
私は何か用があるのだろうと思い、そのまま自室へと足を向けたが、先程のトウマのどこか沈んだ表情が気になっていた。
昨日も閉会式には出ず、寮にも皆より遅く帰って来てたし、とても元気がない表情をしていたのは知っていたが、トウマも疲れたのだと流していた。
だが、1日立ってもそれが回復するわけでもなく、逆に思い詰める様な気がして足が止まった。
あ~あんまり良くない事だけど、何かあのまま放って置く訳にはいかない気がする。
そう思い私は、急いでトウマの後を追い、気付かれない様に後を付けて行こうとしたが、既にトウマの姿を見失っていたのでその日はおとなしく自室でゆっくり休んだ。
次の日からは、通常の授業が開始になり寮の皆が来ていると思ったが、ルークだけは体調不良で欠席であった。
トウマはと言うと、昨日とは真逆な態度で私や皆と接していた。
その時点で私は、昨日のアレは何だったんだと思い、直接トウマに問いかけた。
「え? 昨日? あ~いや~何て言うか、負けたのが意外ときてさ、1人になりたかったんだよね」
「……本当に?」
「おいクリス。何疑ってるんだよ。別に何もないぞ」
私はトウマの言う事が本当なら、切り替わりようが急すぎて変だと思っていた。
昨日の表情から、仮に嘘ではなかったとしても感情のふり幅が大きすぎると感じていた。
言うならば、昨日が0で今日が100と言う感じだ。
そのまま私はじっとトウマを見ていると、トウマは私から逃げる様にリーガとライラックの元へと行ってしまう。
「怪しい……絶対何か隠している」
その日の授業終了後、再びトウマの後を付けるもそのまま寮へと戻って来ていた。
そのままトウマから目を離さずに見ていたが、怪しい行動をする事無く夕飯の時間になっていた。
もうしかして本当に、何もない? 私の勘違い?
少し自分の勘を疑ったが、とりあえずもう少し監視し続ける事にした。
だがその日は、結局怪しい所がないまま終わってしまう。
更に次の日、私は作戦を変えてトウマをずっと監視するのを止めた。
その日は、シンリに手伝ってもらい私ではなくシンリにトウマが変な行動をしたら教えて欲しいとお願いをした。
さすがにただで私のわがままには付き合って貰えないので、ポイントを多少渡すと言う条件で交渉を行い、引き受けてくれた。
するとその日の授業終わり、私は久しぶりに大図書館へと向かおうとするとシンリが声を掛けて来た。
「いたいた、クリス。頼まれてた件で動きがあったよ」
「本当! で、ターゲットは?」
シンリから私はトウマが周囲をきょろきょろと確認して、医務室へと入って行くのを見かけたと教えてくれた。
「医務室か……うん、分かった。ありがとうシンリ」
「こんなんでいいの?」
「あぁ、十分だ。でも、これは誰にも言うなよ」
「オッケーオッケー」
そうシンリに言って、私はトウマがいるであろう医務室へと向かった。
医務室前に着くと、トウマの声が聞こえて来て、シンリの情報通りここに居ると確信した。
誰かと話している? ん~タツミ先生……じゃ、なさそうだな。
ルークか? いや、にしてはトウマの口調が丁寧だよな。
誰だ? トウマがああいう態度を取る相手って?
私は扉の前で耳を立てて中の声を聞きつつ、中にいる人が誰か考えていると、真後ろから突然肩に手を置かれ私は変な声が出てしまう。
「ひぃぇっ!」
「何してるんだ、お前は?」
「タ、タツミ先生……」
私がゆっくりと振り返ると、そこには笑顔だが目元がピクピクしているタツミ先生がいた。
そのまま私はタツミ先生に押される様にして、医務室へと入れられ、そこでトウマと目が合うと互いに「あっ」と言う声が漏れてしまう。
「トウマ。やっぱりお前か。俺の許可なく、ここに来るなって言ったよな」
「え、いや、その……」
「お前のおまけで、こいつが扉の前で話を聞いてたんだぞ。面倒事を増やすな」
「えっと、俺は、その……」
私はトウマの方を見ると、トウマの前にはベッドらしきものが見えたが、周りはカーテンで囲われていて誰が居るのか分からずにいた。
するとそこから聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「もしかして、クリス君かい?」
「この声って確か、オービン先輩」
するとオービンが、私にベッドの方へ来る様に呼ばれたので近付いて覗き込むと、そこには口元に機器の様なものを付け、周囲には何かを計測する機器がたくさんあり私は驚いてしまう。
そんな私を見たトウマが先走って説明しようとすると、タツミ先生が止めに入る。
「な、何がどうなってるんですか、これ」
「君には俺の口から話すよ。タツミ先生、少しぐらいなら起き上がっても」
「ダメだ。話すにしてもそのままだ。俺としてはこれ以上、秘密を話して欲しくないがな」
「そう言わないで、頼みます」
オービンの言葉にタツミ先生はため息をついて、「自分の状態を忘れるなよ」と言って仕事机へと戻った。
トウマは自分もここに残っていていいかとオービンに問いかけると、オービンは申し訳なさそうな顔をして答えた。
「来てくれたのにすまないがトウマ、クリスと2人だけにしてくれるか」
「……分かりました」
「トウマ。心配してくれてありがとう。でも、後はあいつ次第だから無理に急かさないでやってくれ」
「……」
オービンがそう声を掛けるも、トウマは何も言い返さずに医務室を出て行った。
私は何の話をしていたか気になる以前に、どうしてオービンがこんな状態なのが理解出来ずに混乱していた。
その後、オービンに呼ばれるまま近くの椅子に座ると軽い雑談から始まり、オービンは私が話を聞ける様な状態になってから本題に入ってくれた。
そしてオービンの抱える病の事、大運動会後の事、今後の事、これからのルークに対しての考えの全てを私は知った。
「……本当にオービン先輩は、それでいいんですか?」
「あぁ。俺がやれることは全てやったつもりだ。後は、あいつ自身が決める事だ」
「でも、それじゃ!」
「あははは。君はトウマと同じ反応をしてくれるんだね。本当にいい友を持ったな、ルーク」
「えっ?」
するとオービンは、私の方をじっと見て来た。
「前にも言ったかもしれないけど、ルークの事よろしく頼むよ……君」
オービンは最後の所を、口パクでアリスと言って来て優しい笑顔を私に向けて来た。
そんな風に言われてしまった私は、嫌だとも言えないが、分かりましたととも言えずにただ黙っていた。
その後私は立ち上がり、オービンに一礼して医務室を出て行った。
「……お前って、意外と性格悪いな」
「バレました? 俺って意外と、わがままなタイプなんですよ。しかも、押し付けるタイプの」
「なら、釘を刺すんじゃねぇよ。このままじゃ本当に、潰れるぞあいつ」
「……それなら、そこまでの奴だったって事ですよ。道は作りましたが、案内をしてはダメなんです。あいつ自身が決めて進まないと、何の意味もないんですよ」
その言葉を最後に、タツミ先生はオービンに言い返す事はなく自分の仕事に戻った。
オービンもそのまま瞳を閉じた。
そして私は、色んな感情が頭の中を駆け巡りパンク寸前の状態であった。
あ~頭が痛い……情報も多いし、感情がぐちゃぐちゃだ。
私は頭を抱えて寮へと帰ると、何やら騒がしい声が聞こえその方に向かうと、第2学年の寮部屋付近に人が集まっていた。
騒ぎ声からすると、喧嘩の様に聞こえたがよく見えず何が起こっているかは分からなかった。
するとそこにシンリが人込みから出て来たので、捕まえて話を聞いた。
「シンリ、何があったんだ?」
「クリス! 大変だよ、トウマがルークの部屋に強引に入ろうとしてて!」
「えっ!?」
次の日は1日休息日となり、皆は体を休める為基本的には寮で過ごしていた。
私も同じ様に寮でゆっくりしていたが、その中でトウマは何か険しい表情をしていた。
またルークは全く姿を現さず、同室のシンに聞くと部屋で気力をなくしたような状態だと聞いた。
周囲の皆は、昨日の戦いで疲れただけだろと誰も心配していなかったが、私は少しだけルークが顔を出さないのが心配になっていた。
それは、兄であるオービンの言葉が頭に引っかかていたからだった。
う~ん……顔でも見に行くか? いやいや、別にそこまでする必要はないよね。
そんな関係でもないし、なんか行ったら行ったで馬鹿にされそうだからな……てか、何でそんな事考えてるんだ私。
そのまま私は、気にしすぎだなと思い、皆と同じように疲れているだけだと決めつけた。
そして私が、食堂兼リビングから自室へ戻ろとした時に、トウマが反対方向へ歩いて行くのを見かけて気になり声を掛けた。
「トウマ、行くのか?」
「クリス。あぁ、ちょっとな……」
それだけ言うと、トウマは寮の玄関へと向かって行った。
私は何か用があるのだろうと思い、そのまま自室へと足を向けたが、先程のトウマのどこか沈んだ表情が気になっていた。
昨日も閉会式には出ず、寮にも皆より遅く帰って来てたし、とても元気がない表情をしていたのは知っていたが、トウマも疲れたのだと流していた。
だが、1日立ってもそれが回復するわけでもなく、逆に思い詰める様な気がして足が止まった。
あ~あんまり良くない事だけど、何かあのまま放って置く訳にはいかない気がする。
そう思い私は、急いでトウマの後を追い、気付かれない様に後を付けて行こうとしたが、既にトウマの姿を見失っていたのでその日はおとなしく自室でゆっくり休んだ。
次の日からは、通常の授業が開始になり寮の皆が来ていると思ったが、ルークだけは体調不良で欠席であった。
トウマはと言うと、昨日とは真逆な態度で私や皆と接していた。
その時点で私は、昨日のアレは何だったんだと思い、直接トウマに問いかけた。
「え? 昨日? あ~いや~何て言うか、負けたのが意外ときてさ、1人になりたかったんだよね」
「……本当に?」
「おいクリス。何疑ってるんだよ。別に何もないぞ」
私はトウマの言う事が本当なら、切り替わりようが急すぎて変だと思っていた。
昨日の表情から、仮に嘘ではなかったとしても感情のふり幅が大きすぎると感じていた。
言うならば、昨日が0で今日が100と言う感じだ。
そのまま私はじっとトウマを見ていると、トウマは私から逃げる様にリーガとライラックの元へと行ってしまう。
「怪しい……絶対何か隠している」
その日の授業終了後、再びトウマの後を付けるもそのまま寮へと戻って来ていた。
そのままトウマから目を離さずに見ていたが、怪しい行動をする事無く夕飯の時間になっていた。
もうしかして本当に、何もない? 私の勘違い?
少し自分の勘を疑ったが、とりあえずもう少し監視し続ける事にした。
だがその日は、結局怪しい所がないまま終わってしまう。
更に次の日、私は作戦を変えてトウマをずっと監視するのを止めた。
その日は、シンリに手伝ってもらい私ではなくシンリにトウマが変な行動をしたら教えて欲しいとお願いをした。
さすがにただで私のわがままには付き合って貰えないので、ポイントを多少渡すと言う条件で交渉を行い、引き受けてくれた。
するとその日の授業終わり、私は久しぶりに大図書館へと向かおうとするとシンリが声を掛けて来た。
「いたいた、クリス。頼まれてた件で動きがあったよ」
「本当! で、ターゲットは?」
シンリから私はトウマが周囲をきょろきょろと確認して、医務室へと入って行くのを見かけたと教えてくれた。
「医務室か……うん、分かった。ありがとうシンリ」
「こんなんでいいの?」
「あぁ、十分だ。でも、これは誰にも言うなよ」
「オッケーオッケー」
そうシンリに言って、私はトウマがいるであろう医務室へと向かった。
医務室前に着くと、トウマの声が聞こえて来て、シンリの情報通りここに居ると確信した。
誰かと話している? ん~タツミ先生……じゃ、なさそうだな。
ルークか? いや、にしてはトウマの口調が丁寧だよな。
誰だ? トウマがああいう態度を取る相手って?
私は扉の前で耳を立てて中の声を聞きつつ、中にいる人が誰か考えていると、真後ろから突然肩に手を置かれ私は変な声が出てしまう。
「ひぃぇっ!」
「何してるんだ、お前は?」
「タ、タツミ先生……」
私がゆっくりと振り返ると、そこには笑顔だが目元がピクピクしているタツミ先生がいた。
そのまま私はタツミ先生に押される様にして、医務室へと入れられ、そこでトウマと目が合うと互いに「あっ」と言う声が漏れてしまう。
「トウマ。やっぱりお前か。俺の許可なく、ここに来るなって言ったよな」
「え、いや、その……」
「お前のおまけで、こいつが扉の前で話を聞いてたんだぞ。面倒事を増やすな」
「えっと、俺は、その……」
私はトウマの方を見ると、トウマの前にはベッドらしきものが見えたが、周りはカーテンで囲われていて誰が居るのか分からずにいた。
するとそこから聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「もしかして、クリス君かい?」
「この声って確か、オービン先輩」
するとオービンが、私にベッドの方へ来る様に呼ばれたので近付いて覗き込むと、そこには口元に機器の様なものを付け、周囲には何かを計測する機器がたくさんあり私は驚いてしまう。
そんな私を見たトウマが先走って説明しようとすると、タツミ先生が止めに入る。
「な、何がどうなってるんですか、これ」
「君には俺の口から話すよ。タツミ先生、少しぐらいなら起き上がっても」
「ダメだ。話すにしてもそのままだ。俺としてはこれ以上、秘密を話して欲しくないがな」
「そう言わないで、頼みます」
オービンの言葉にタツミ先生はため息をついて、「自分の状態を忘れるなよ」と言って仕事机へと戻った。
トウマは自分もここに残っていていいかとオービンに問いかけると、オービンは申し訳なさそうな顔をして答えた。
「来てくれたのにすまないがトウマ、クリスと2人だけにしてくれるか」
「……分かりました」
「トウマ。心配してくれてありがとう。でも、後はあいつ次第だから無理に急かさないでやってくれ」
「……」
オービンがそう声を掛けるも、トウマは何も言い返さずに医務室を出て行った。
私は何の話をしていたか気になる以前に、どうしてオービンがこんな状態なのが理解出来ずに混乱していた。
その後、オービンに呼ばれるまま近くの椅子に座ると軽い雑談から始まり、オービンは私が話を聞ける様な状態になってから本題に入ってくれた。
そしてオービンの抱える病の事、大運動会後の事、今後の事、これからのルークに対しての考えの全てを私は知った。
「……本当にオービン先輩は、それでいいんですか?」
「あぁ。俺がやれることは全てやったつもりだ。後は、あいつ自身が決める事だ」
「でも、それじゃ!」
「あははは。君はトウマと同じ反応をしてくれるんだね。本当にいい友を持ったな、ルーク」
「えっ?」
するとオービンは、私の方をじっと見て来た。
「前にも言ったかもしれないけど、ルークの事よろしく頼むよ……君」
オービンは最後の所を、口パクでアリスと言って来て優しい笑顔を私に向けて来た。
そんな風に言われてしまった私は、嫌だとも言えないが、分かりましたととも言えずにただ黙っていた。
その後私は立ち上がり、オービンに一礼して医務室を出て行った。
「……お前って、意外と性格悪いな」
「バレました? 俺って意外と、わがままなタイプなんですよ。しかも、押し付けるタイプの」
「なら、釘を刺すんじゃねぇよ。このままじゃ本当に、潰れるぞあいつ」
「……それなら、そこまでの奴だったって事ですよ。道は作りましたが、案内をしてはダメなんです。あいつ自身が決めて進まないと、何の意味もないんですよ」
その言葉を最後に、タツミ先生はオービンに言い返す事はなく自分の仕事に戻った。
オービンもそのまま瞳を閉じた。
そして私は、色んな感情が頭の中を駆け巡りパンク寸前の状態であった。
あ~頭が痛い……情報も多いし、感情がぐちゃぐちゃだ。
私は頭を抱えて寮へと帰ると、何やら騒がしい声が聞こえその方に向かうと、第2学年の寮部屋付近に人が集まっていた。
騒ぎ声からすると、喧嘩の様に聞こえたがよく見えず何が起こっているかは分からなかった。
するとそこにシンリが人込みから出て来たので、捕まえて話を聞いた。
「シンリ、何があったんだ?」
「クリス! 大変だよ、トウマがルークの部屋に強引に入ろうとしてて!」
「えっ!?」
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