とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第99話 崩れゆく日常

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「おいルーク! さっさと出て来い! いつまで、部屋の中に籠ってるつもりだ!」
「トウマ落ち着けよ!」
「帰って来て急に何してんだよ! 何か変な物でも食ったのかよ!」

 暴れてルークの部屋の前で大声を上げるトウマを、リーガとライラックが抑えつけていた。
 周囲の皆も今までに見た事のないトウマに、動揺しておりざわついていた。

「誰か、先輩を呼んで来てくれ!」
「トウマ! マジでどうしたんだよ!」
「うるせぇ! 離せ、リーガ! ライラック!」

 抑えられてもトウマは暴れて、ルークの部屋の扉を蹴ろうとしたりしていた。

「ルーク! 聞こえてるんだろ!」
「何の騒ぎだ?」

 そこへたまたま寮内にいた、第3学年副寮長であるミカロスがやって来た。

「何をしてるんだ」
「副寮長、トウマの奴が急にルークの部屋に向かって怒鳴りだして、来てみたらドアを蹴破ろうとしていたんです!」
「ひとまず、トウマを完全に抑えつけて別の場所へ運べ。そこで一度落ち着かせてから、話を聞く」

 ミカロスの指示の下、リーガとライラックの他にもケビンと何故かピースが向かわせられて、完全にトウマは動きを封じられ食堂兼リビングへと運ばれて行った。
 その後は、ミカロスが集まった生徒たちにこの場から離れる様に促すと、その言葉に従い生徒たちは立ち去って行くが、私はその場に残った。

「ん? 君は確か、クリスだったか? そう言えば、トウマとは同室だったな。何か知っていたりするか?」
「……いえ、どうしてあんな事をしたのかは、分かりません」

 私は一瞬先程まで話していたオービンの事を思い出し、もしかしたらと思った事を言いかけたが、私の口から話すべき事じゃないと思いとどまり知らないふりをした。
 ミカロスは「そうか」とだけ言うと、トウマが運ばれた食堂兼リビングへと向かって行った。
 私もトウマの元へと向かおうとしたが、ルークの部屋の前に足が向いていた。
 そう言えば、今日もルーク休みだったよね。
 ここ最近、ずっと顔見てないし、本当に大丈夫なのか?
 私はルークの部屋の扉をノックしようとした所で、その手を止めノックせずに下ろした。
 もし今会ったら、オービン先輩の事を言ってしまいそうだ……あの事は誰にも漏らさないと約束をしたから、話す訳にはいかない。
 そして私は、その場から立ち去りトウマが連れて行かれた所へと向かった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 あの後トウマはと言うと、ミカロスから事情聴取をされルークが大運動会以降ずっと部屋に閉じ籠もってウジウジしていると思ったら、腹が立ってやったと答えた。
 その答えに、ミカロスはため息をつき、鬱憤を晴らす為だけに直感的に動くんじゃないと厳重注意をされて一件は終わった。
 それから2日程は、周囲の皆がトウマがまた変な事をしないか監視していたが、特に何事も起こさず静かに過ごしていた。
 一方ルークはと言うと、授業が再開になってからまだ一度も出席しておらず、寮内でも見かける事はなかった。
 寮内も今までにない事に気まずい雰囲気になりつつあり、私もトウマとの会話が減り、自然に寮に居る時間が少なくなっていた。

 そして、大運動会から一週間が経過した。
 私はいつも通り、授業が終わると寮に戻るのではなく大図書館に来ていた。
 そこでとりあえず、気になった本を片っ端から取り読んでいたが、あまり頭に入ってはいなかった。
 はぁ~ダメだ……全然集中できない。
 寮も日に日になんか居づらい雰囲気だし、トウマの口数も減るし、ルークは引き籠ったままで、皆も今じゃ騒がなくなるしと、大運動会が終わってから今まで積み上げていた何かが、徐々に崩れて行く感じだ。
 私は本をめくっていた手が止まり、椅子の背もたれに寄りかかりため息をついた。
 これから、どうなっちゃうんだろう私たち……

「また居るのね、クリス」
「え?」

 そう声を掛けて来たのは、ジュリルであった。
 ジュリルはそのまま私の隣に座った。

「何を毎日そんなにため息をついているのですか? 本もほとんど読んでいないようですし」
「あっ、いや……ちょっと色々あってさ……」

 私の元気のない言葉に、ジュリルは呆れたようにため息をついた。

「全く、何があったか知りませんが、どうして貴方まで沈んでいるのですの? 最近のオービン寮の皆様は、だいたいそんな雰囲気を出していて、こっちも迷惑ですの」
「そう言われてもな」
「それにルーク様のお姿も全くお見えになりませんし、どうかされたのかしら」
「さぁ、俺にも分からないな」
「……何を悩んでますの?」
「いや、悩んでいると言うより、分からないんだよ。今後どうしていいか」

 私はジュリルに、自然と思っていた事を口にしていた。
 それを聞いたジュリルは、「何だ、そんな事でしたの」と口にした。
 ジュリルの言葉に、私は驚きすぐさまジュリルの方を向き言い返そうとしたが、オービンの言葉やルークとの事を話す訳にはいかなかったので口を慎んだ。

「解決は簡単ですわ。クリスの思うがままに進むことですわ」
「え?」
「聞く分には、そんな答えは他人だからとか、そんな悩みにぶつかった事がないから言えるんだと思うかもしれませんが、貴方なら分かるはずです。ただ思い詰めて考えているだけでは、何も解決しないという事を」
「それは……そうだけども……」
「その感じだと何か言えない事情がある様ですが、それでも立ち止まっていては何も変わりませんし、誰かが解決してくれるわけでもないわ。結局は自分がいつどう動きだすかですわよ。ちなみに、実体験からの助言ですわ」
「ジュリル……でも、もし誰かに何もしない様に言われていたらどうする?」
「そんなの知りませんわ。私だったら、無視します」
「えぇ!?」

 まさかの答えに、私は大きな声が出てしまう。

「だってそれは、相手の事情でしょう。私の人生を決めるのは、私ですわ。その相手ではないので、従う義理はありませんし、本当にそれが正しいかどうかを決めるのも私です。ですから、私は相手の言葉をただ鵜呑みにはしませんの」
「っ」
「ですから、クリス。貴方が思うままに行動するのが、私は一番の解決策だと思いますわ。と言っても、結局どうするか決めるのは貴方ですから、自由に言わせてもらいましたわ」

 ジュリルは笑顔でそう言い終わると、立ち上がり「考えの邪魔になりそうですので、帰りますわ」と言い残し、大図書館を立ち去って行った。
 私はまた1人になり、ジュリルの言葉やオービンやルークの事を自分なりにどうするべきかを色々と考えた結果、私は一つの結論を出し寮へと戻る事にした。
 その頃寮では、トウマが部屋に戻るシンの後を付けていた。
 そして、シンが部屋の扉を開け締めようとした所を、手で掴み強引に部屋の中へと入ったのだった。

「ト、トウマ!? 何してるの? 勝手に部屋に入って来られちゃ……」
「悪いな、シン。でも、どうしても俺はルークと話がしたいんだ」

 そう言うと、ずかずかと部屋の中へと入って行きルークの名を呼ぶ。
 すると、ベッドで寝ていたのかルークがむくりと起き上がった。

「……トウマ?」
「よう、ルーク。いつまでそうやって、塞ぎ込んでるつもりだ?」

 ルークは、トウマに言葉を返さず再び背を向けて横になろうとする。

「逃げんじゃねぇよ! 兄貴に負けたぐらいで、そんなにへこむんならさっさとここを辞めちまえよ!」
 その言葉にはさすがにルークも動きを止め、再びトウマの方を睨みつけた。
「もういっぺん言ってみろ」
「おいおいルーク、寝すぎて耳も悪くなったのかよ?」
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