とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
101 / 564

第100話 大喧嘩

しおりを挟む
 私が寮へと戻り、ルークの部屋と向かおうとした時だった。
 その方向から、何かが壊れる大きな音が響いて来たので、急いで音が聞こえた方へ向かうと、そこではルークとトウマが互いに胸ぐらを掴み合いながら大声で怒鳴り合っていた。

「な、何が起きてるの? あっ、シン!」
「クリス! 2人を止めてくれ、もう僕じゃ止められない」
「その前に何があったの?」

 シンにそう聞くと、突然トウマが部屋に入って来て、ルークと話がしたいと言い出したけど喧嘩になりだして、そのまま部屋の扉を壊して廊下に出て来たらしい。
 慌てながらシンが説明してくれたが、その間にも2人は互いを廊下の壁へとぶつあいながら、声を荒げていた。

「いい加減にしろよ、トウマ! 何なんだよ、急に部屋に入って来て、喧嘩でも売りに来たのかよ!」
「あぁそうだよ! てめぇが、いつまでもくよくよしてるから、それが気に入らねぇんだよ!」
「お前に、そんな事関係あんのかよ! 誰にも迷惑かけてねぇだろうが! お前のストレス発散に俺を使うんじゃねぇよ!」
「誰がストレス発散だと!? 今のお前を見てると、発散どころかムカつくだけだ!」
「じゃ! 離してどっか行けよ、トウマ!」
「お前から掴みかかって来たんだろうが! お前が離せば、離してやるよ!」

 全く2人の言い合いは収まる事無く、逆にエスカレートしているように思えた。
 私は直ぐにトウマとルークに近付き、声を掛けるも全くこちらを見てくれもせずに言い争っていた。
 ダメだ……全然聞こえちゃいない。
 今日は確か、ミカロス先輩たちは寮にいないし、誰か呼んで来て止めに入っても収まらない気がする。
 どうすればいいだ。
 私は1人で悩んでいると、トウマがルークを突き放した。

「このままじゃ、埒が明かなね。ルーク、こうなったら魔法で決着つけようぜ」
「お前からそんな事を提案してくれるとはな。いいぞ、その提案に乗ってやる」
「ちょ、ちょっと2人共!」

 そこで私が声を上げると、2人が初めて私の存在を認識してくれた。

「何だクリス。居たのか」
「居たのかじゃないよ、トウマ! それにルークも、何やってるのさ! 何で喧嘩してるんだよ!」
「こいつが先に売って来たんだよ。俺を馬鹿にするような事を散々言って来たんだよ」
「おいおい、俺は今のお前の状態を包み隠さず述べただけだよ。勝手にキレて掴みかかって来たのは、お前だろうが」

 トウマとルークは再び言い合いを始めそうになったので、私は割って入ってひとまず落ち着く様に促す。
 だが、2人は止まる事はなかった。
 私はどうする事も出来ないのかと、考えているとトウマが小さく私に話し掛けて来た。

「悪いなクリス。これは、俺が決めたやり方だ。誰にも邪魔されたくねぇんだ」
「トウマ。それはどう言う」

 そう聞く前に、トウマはルークを連れて寮の訓練場へと向かって行った。
 どう言う事なの、トウマ。
 何を考えているのか、全く分からない……俺が決めたやり方? 邪魔されたくない? もー意味が分からない! 何で喧嘩なんてするのよ!
 私は両手で、頭をワシャワシャとしていると、シンが近寄って来た。

「クリス、大丈夫かい?」
「シン……どうしよう、2人を止めらなかった。誰か先輩を呼んで止めるべき? それとも、寮にいる誰かに手伝ってもらうべきかな?」

 完全にテンパってしまった私は、どうしていいか分からずにシンに助けを求めるが、シンは落ち着いて私に話し掛けて来た。

「ひとまず、僕たちが焦っちゃだめだ。今から先輩たちを呼びに行ったら時間がかかるし、寮内にいる人を頼ろう」

 私は一度深呼吸をして、落ち着きシンの言葉に頷いた。

「それとクリスには言っておこうかと思うけど、トウマはどこかわざとルークを怒らせた感じがあったんだ」
「トウマがわざと?」
「うん。何て言うか、自分に敵意を向かせたかったと言う感じ? 僕には分からないけど、トウマには何か考えがある風にも見えたんだ」
「……」

 シンの言葉を聞いて、私はトウマの行動の意味を考え、ある心当たりに行きつく。
 もしかして、トウマは私と似たような考えなんじゃ……もしそうだとしても、やり方が強引過ぎる気が……
 そう考えた私は、シンに2人の後を追う事を伝えた。

「分かった。それじゃ、僕の方で誰か止めるを手伝ってくれそうな人を探すよ」
「ありがとうシン」
「あんまり無理しないでよ、クリス」

 シンの言葉に私は頷き、急いで2人の後を追った。
 そして寮内の訓練場に辿り着くと、既に2人がゴーレムを使い力をぶつけ合っていた。
 直後ルークが、トウマに対して強力な魔法を使いトウマのゴーレムと吹き飛ばし、その反動でトウマを吹き飛ばされていた。

「うぁぁぁ!!」
「トウマ!」
「はぁ……はぁ……お前なんかが、俺に勝てると思ったのかよ、トウマ!」

 するとトウマは、ゆっくりと起き上がりルークに言い返し始めた。

「今のお前に負けるつもりはねぇんだよ! いつまでも、兄貴に負けた事を引きずってるお前なんかにな!」
「っ! トウマ……お前に、お前なんかに何が分かるってんだ! 俺は今まで兄貴に勝つために力を身に付けて来た、負ける気もなく、勝てると確信していた。だが、実際はあのざまだ。どれだけやろうが、兄貴は俺よりも遥か上にいる」
「たった1度の負けで諦めるのかよ」
「見てて分からなかったのか! 兄貴の圧倒まで力に、俺は全く歯が立たななかった。誰もが兄貴の凄さを改めて知り、俺はさらに出来損ないな面を晒されただけだ……」
「……」
「この気持ちがお前に分かるってのか!? 今まで俺は兄貴と比べられ続け、いらない、出来損ないのレッテルを張られてたんだよ! いつかは俺も認められると思ってやってきたが、そんな日は来なかった。なんせ兄貴は天才で、誰もが認める凄い人だからな。俺がどんなに頑張ろうが、足元にも及ばなかったんだよ」

 私は初めてルークの弱気な言葉を口にした所を見て、今までルークの支えとしていたオービンに勝つというものが、大運動会での勝負で完全に崩れたのだと感じた。
 確かにあの戦いを見て、オービンに勝てると思った者はいないと言える。
 さらにそのオービンと直接対決したルークが、それを一番身をもって実感したからこそ、今の様なルークになってしまったのだと私は思っていた。
 するとトウマがルークに対して口を再び開いた。

「実力の差があるから、もう敵わないからって諦めるのかよ」
「だから、そう言う次元じゃないんだって分かんねえのかよ! 勝てない相手にいつまでも挑めって言うのか!」
「そうだよ!」
「っ」
「お前はオービン先輩の弟で、王様の子供だろうが! そんなちっぽけな事で、躓いてどうするんだよ! それでも、第二王子かよ!」
「……っ、俺を王子と呼ぶな!」
「だったら、オービン先輩にこれからも挑み続けろよ! それを止めたお前は、今まで逃げ続けた王子に戻るんだよ。何かに突き進むお前に、俺は凄いと思ってたんだよ。それが何であれな。王子とかそう言うの抜きでだ……でも、それを止めたお前には何の魅力もない。ただのヘタレで使えないダメで出来損ないのレッテルを張られた王子なだけなんだよ!」

 するとトウマが勢いよくルークへと走り出すと、ルークのゴーレムをトウマがゴーレムが殴り抜いて、真横へと吹き飛ばし、トウマのゴーレムはその上に覆いかぶさる様に飛び込み動きを抑えつけた。
 そしてゴーレムが倒れた所を縫うように走り抜け、トウマはルークの元へと近付く。

「お前がどんなに逃げても、王子である事実からは逃げられねぇんだよ! それが嫌なら、もう一度挑みにいけや!」
「っ!!」

 そのままトウマは、ルークの顔目掛けて拳を振り抜き殴り飛ばした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...