とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
110 / 564

第109話 親密度アップ作戦

しおりを挟む
「なるほど、偶然ルーク様と会ったから積極的に攻めたけど、何も出来なかった所だったと」

 ウィルの言葉にジュリルが勢いよく首を縦に振る。

「まぁそれは分かったけど、ルーク様凄くこっち見てるけどどうするの?」

 マートルの言葉にウィルもジュリルも一瞬振り返るも、直ぐに背を向けてこそこそ話を始める。

「どうしようウィル、マートル。私嫌われたかもしれないわ」
「いやさすがに大丈夫だと思うけど、まずはいつも通りのジュリルになれ。そして普通に接すれば問題ない」
「そうね。今のジュリルはおどおどしてて変ね。それが無くなれば大丈夫よ」

 するとジュリルは何度か深呼吸して、自分を落ち着かせた。
 それからルークの方を振り返り、近付いて行く。

「ル、ルーク様。先程は急に隣に座ってしまい、申し訳ありません」
「そんな事で謝るなよ、ジュリル。俺は怒ってないし、俺の方こそ急におでこを触って悪かったよ。いつものジュリルじゃない感じがしたから、熱でもあるのかと思って心配してたんだ」
「(私を心配してくれての行動でしたの……それを私は、何て勘違いを!)」

 何故かジュリルが急に悶える様な表情をしだす。

「見た所、体調不良とかではなさそうで安心したよ。それに、待ち合わせしてた友人とも会えたんだろ?」
「はい」
「それは良かった」

 ルークは優しい笑顔で答えると、今までほとんどルークの笑顔など見た事なかったジュリルはその顔に、雷に打たれたような衝撃でその場で硬直してしまう。
 急に動かなくなったジュリルが心配になり、手を振って確認するルーク。
 それを遠くから見ていたウィルとマートルも異変に気付き、近づいて来る。

「おいジュリル。大丈夫か?」

 ウィルはジュリルに近付き、肩に片手を乗せて軽くジュリルの体を揺らしながら声を掛けた。

「君たちは、えっと……」
「初めまして、ルーク様。私はジュリルの友人で、マートルと言います。そっちが、ウィルと言います」
「ジュリルの友人か、会うのは初めてだな。一応俺も名乗るが、ルークだ。よろしく。出来れば、第二王子とかそう言うのは関係なく一学友として接してもらいたい」
「分かりました。ですが、お名前を呼ぶときだけは今まで通りとさせて下さい」
「あからさまな態度でなければ、今まで通り君たちの自由にしてもらっていい」

 その後に、ウィルが遅れて挨拶をし始めた。
 ジュリルも我に返って、ルークにバレない様に背を向けて軽く両手で頬を叩いていた。

「(今日はやけにジュリルの行動が変だな。誰かに何か言われたのかな? それより、ルーク様の印象が聞いていたものと全く印象が違うな。もっと冷たい感じだと思っていたが、話す感じも物腰が少し柔らかいし距離感も普通だ。そう言う人を演じていると言う可能性はゼロではないが、それをしている感じではないな)」

 マートルは、ルークと直接話した印象と今まで聞いていた噂とを頭の中で照らし合わせ、ルークが本当はどう言う人なのかを見極めていた。
 するとウィルが、思った事を口に出していた。

「ルーク様は、どうしてこちらに居るのですか? 誰かと待ち合わせですか?」
「あぁ、そうなんだ。トウマとクリスを誘ってご飯でも食べようと思っていたんだが、俺が遅刻してしまって……ここに来たら2人共居ないんだ」
「なるほど。ルーク様と言えど、約束の時間に遅刻をするのはダメですね。でも、その2人がここに居ないという事は、その2人も遅刻しているのでは?」

 そこに完全復活したジュリルが会話に参加する。

「クリスの性格からして、遅刻はないと思うわ。まぁ、自称親友の方は分かりませんが」
「ジュリルはあのクリスとか言う男を過大評価し過ぎでは? ああいう男こそ、意外と時間など守れないものなんだぞ」

 そこからジュリルとウィルの間で、クリスについての軽い言い合いが始まる。
 その光景を見ていたルークは、クリスがジュリルとウィルとも知り合いなのだと初めて知った。

「2人共、そこまでにしなさい。ルーク様の前でみっともないでしょ」

 マートルが言い合う2人の間に入ると、2人は言い合いを止めすぐに謝った。

「(ジュリルは、この2人といる時の方が気を許しているのか、表情が明るいな。俺といる時とはまた違う感じだな)」
「それでルーク様は、これからどうするのですか?」
「そうだな。もう少しここで待つつもりだ。もしかしたら、2人が来るかもしれないからな」

 ジュリルの問いかけにルークが答えると、ウィルが何か思いついたのかマートルに耳打ちをする。
 その内容にマートルは一瞬悩んだが、ジュリルの為にもなるかと思い賛同した。
 するとウィルが、ルークにある提案をする。

「ルーク様。良かったら、私たちと手分けをして、クリスを探しませんか? 待つより、探しに出た方がいいと思うんですよ。もしかしたら、彼かもルーク様の事を探しているかもしれないですし」
「……確かに、あいつらならやってたりするかもしれない……だが、この人混みで探しに行くのは無謀だろ。見つけられる可能性は低いだろ」
「ふふふ。私だって、何の策もなく言い出しませんよ。これです!」

 そう言って取りだしたのは、腕輪型の魔道具であった。
 ウィル曰く、この魔道具は互いに通信で話し合えるものらしい。
 だが、使える範囲は狭く2キロ程度らしく、更には事前に魔力を登録した者どうししか使えない物であった。
 これを使い、2人ずつに分かれてこの周囲を探し見つけたら連絡をとるというものであった。

「どうですか? これなら、見つければ連絡取れますし、そこまで遠くまで探さずに近くを探せますよ」

 ウィルは少し自慢気に語るが、ルークは頷く事はなかった。

「(まずい、このままじゃジュリルとルーク様を2人きりにさせて、親密度アップ作戦が出来ない……こうなったら)」

 するとウィルはマートルの方をチラッと見て、軽く目配せをするがマートルは何の事だが全く分かっていなかった。

「そう言えば、マートル。クリスぽい人見たとかさっき言ってたよね」
「っ!?」
「ほ、本当か?」

 そう言ったウィルは、既にマートルから顔を逸らし明後日の方向へと吹けない口笛を吹いていた。

「(ウ、ウィルあなたね……)」

 マートルはウィルの後頭部を睨みつけると、その視線に気づいたウィルは一瞬だけ震えるが、マートルの方は向かなかった。
 そしてマートルは小さくため息を漏らし、気が向かなかったがウィルの嘘に乗る事にした。

「……確かにぽい人の後ろ姿を見たけど、本人かは分からないわ」
「と言う、目撃証言もあるので、探してみると言うのもありでは?」

 ウィルが最後の一押しと言わんばかりに、ルークへと提案すると渋々ルークは首を縦に振った。
 それからは、ウィルがマートルの見たと言う証言の方をルークとジュリルで探すという事にして、その反対をウィルとマートルが探すという段取りをとった。
 そのままウィルがちゃっちゃっと仕切り、最後にジュリルに通信用の魔道具を渡して、ジュリルの背中を押した。

「状況は作ってあげたんだから、何でもいいから話してルーク様との親密度を上げるんだよ」
「わ、分かった」

 小声でジュリルと話し終えると、ルークとジュリルは2人で歩いて行った。

「……ふぅ~何とか上手くいった」
「上手くいったじゃない。さっきのあの振りは何?」
「ごめん! でも、助かったよマートル。だって、あのジュリルが今日は積極的に攻めてるんだから、手伝いたいじゃない。親衛隊としてもさぁ」
「私は親衛隊なんかではないけど……にしては、かなり強引だったけど?」

 ウィルは少し苦笑いしながらも、「結果良ければ全部大丈夫」と答え、マートルは額に片手を付け軽く首を振りながらため息をついた。

「で、私たちはどうするの?」
「一応、私たちもぐるっと周辺探しに行く?」
「何故疑問形なの」
「あれ? お姉ちゃん?」

 2人の背後からそう呼びかけれ振り返ると、そこにはトウマ・シルマ・ミュルテの3人と遅れてエリスがやって来ていた。
 その時、トウマ・シルマの2人とウィルでは違う所で驚いていた。

「へ? お姉ちゃん? 誰が?」
「ん? ミュルテのお姉ちゃん!?」
「え? エリス先輩!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...