とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第137話 私の恋人になってくれない?

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「あっ、レオン。こっち」

 私は校舎裏にてレオンを呼び出しており、レオンを見つけて手をこまねいて呼んだ。
 レオンは私に気付き、小走りで近付いて来た。

「どうしたクリス。急に呼び出して」
「……え~と……その~」
「?」

 私は少し言い出しずらい内容と言うか、本当にレオンに言っていいのか直前になり迷いが生じていた。
 レオンは、少し挙動不審な私の姿を見て首を傾げていた。
 あ~もう! どうしてこんな事に……いや、もう覚悟を決めろ私!
 そう私は自分に言い聞かせて、レオンを真っすぐ見て思い切って言いたかった事を伝えた。

「そ、その。私の恋人になってくれない?」
「……へぇ?」

 レオンは今までに出した事のない間抜けな声が出てしまう。
 そして口が開いたまま、きょとんとした顔で私の方を見ている状態になってしまう。
 私は背を向けて逃げ出したい位、顔が熱いがここまで言って逃げ出す訳には行かなかったのでグッと自分の太ももを手でつねって恥ずかしさを紛らわせていた。
 本当に、どうして私がこんな事をしなきゃいけないのさー!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それはある日の休日であった。
 私が久々に息抜きとして男装を辞め、ありのままの姿と言ってもアリスとバレない変装で1人で外出していた時に、王都内で偶然マリアに出会ったのだ。
 と言うより、あれは偶然と言うよりマリアが私を待ち伏せしていた様な感じであったが、マリアは私に早急に話したい事があると言って連れて行かれ2人きりになった時だ。

「アリスお嬢様、少し面倒な事が発生してしまったので、直接報告に来ました」
「ちょちょ、ちょっと待ってマリア。久しぶりに会って急に何なの?」

 私は急に連れて行かれ話が始まってしまう事に動揺していると、マリアが一度謝罪し一度深呼吸してから再度話し始めた。

「アリスお嬢様には、早急に恋人を作って欲しいのです」
「ここここ、ここ、恋人!?」
「はい。面倒事と言うのは、私がアリスお嬢様として学院で何事もなく普通に過ごしていたのですが、そこでとある事件が発生しまして……」

 そう言ってマリアは、何があって私に恋人を作って欲しいと言ったのかの理由を話し始めた。
 1か月前程に、マリア扮する私に同じ学院の同級生である男子生徒が告白して来たらしい。
 マリアはその男子生徒の気持ちを無下にしない様に、丁重にお断りをしたと話す。
 だが、その男子生徒は再度告白して来たのだとマリアは言い、その時も同じ様にお断りをしたのだと言う。
 その後暫くは今まで通りの日々が続いたのだが、またその男子生徒が「どうしても諦めきれない」と言う事で、3度目の告白をして来たのだ。

 マリアはまさか3度も告白してくるとは思わず驚いたが、答えは変わらず断ったのだが、どうしてそこまで好きになったのかを聞いたらしい。
 するとその男子は「僕にもいつ好きになったかは分からない。でも、いつからか君の事を目で追うようになっていた。それからは毎日君の事が頭から離れないんだ」と答えたらしい。
 その男子は3度も告白するのは迷惑だと思いつつも、告白を断られるだけじゃ割り切る事が出来ないと伝えて来たとマリアが語る。

「いや、それは危なそうな男子なのでは?」

 私がすかさず思った事を口に出すと、マリアもその時は同じ事を思ったらしく同意して来た。
 だがマリアは3度も告白して来た男子の素性を全く知らなかったので、一度調べて完全に諦めてもらう方法を探す事にしたらしい。

「それで、その男子はどうだったの?」
「いやそれが、成績もまぁ良くて、素行も良く普通に問題ない男子でした。ただ、恋をしたのは初めてらしく、少し暴走気味になっているんじゃないかと周囲の人は話していましたね」
「……それでマリアはどうしたの?」

 その時点は私は何となくマリアがどうしたのか想像がついたが、一応確認の為マリアに訊ねると案の定思っていた通りの回答が帰って来た。
「はい。私は彼に恋人がいるので、諦めて欲しいと伝える事にしました。彼の性格上、既に誰かと交際していれば諦めが付くと考えたので。……ですが」

「その恋人を見せて欲しいとか?」
「流石です、アリスお嬢様」
「流石ですじゃないよ! どうすんのさ?」

 私が焦っていると、マリアは冷静になる様に私に言って来たので何か案でもあるのかとマリアに訊ねた。

「いえ。今の所案はありませんが、猶予はしっかりと貰って来ました。そして、恋人にあったらきっぱりと諦めると言う彼の言質も取りましたので、ご安心ください」
「いやいや、解決している様に見せて、解決してないじゃん! マリア~」
「ですので、直接お話に来たのですよ。よくアリスお嬢様の現状を考えて見て下さい。周りには男子だらけ、適当に事情を知っている相手に、恋人になって欲しいと伝えればいいだけです。なかなか、いいアイディアではありませんか?」
「マリア、何か少し楽しんでない?」

 私がジト目でマリアを見ると、マリアは満面の笑みで「いいえ、そんな事ありません」と答えた。
 あ~これは絶対にこの状況を楽しんでいるよ……
 私が肩を落とし落ち込んでいると、マリアは私に顔を上げるように言って来た。

「アリスお嬢様、これは将来の為の事前練習と考えて下さい。いいですか、アリスお嬢様もいつかは恋人を作られ、その方と結婚し、子を作り幸せに過ごして行くのです」
「マリア、私はまだ……」
「アリスお嬢様、貴方はフォークロス家のご令嬢なのです。早ければ学院卒業後にも、お見合いにて結婚相手が決まってしまうかもしれないのですよ」
「うっ……」

 そう、令嬢がいつまでも1人で好きな事をしていられる訳ではない。
 いつかは誰かと結婚しなければならない。
 これは令嬢に限った話であり、更には家の当主とならない人が該当する事である。

 このままいけば、家はお兄ちゃんが継ぎ、そこに私がいつまでも居座る訳には行かない。
 両親としても誰か良い人がいれば、そのまま婚約しても良いという考えであるが、令嬢が結婚もしないまま1人で居続ければその家の名に傷が付くことになる。
 私のわがままで家の名を傷つける訳にも行かないし、家にいつまでも居続けてお兄ちゃんが継いだ時に肩身が狭くなるのも嫌だ。
 なので私はお母様の様に、卒業後も少しだけやりたい事をやり悔いのない所までやってから恋人を作り結婚すればいいと考えていた。

「甘いですよ、アリスお嬢様。貴族内ではお見合いとは言うのはよくある事。今までは当主様より身分が低い相手からのお見合いだったので、アリスお嬢様の意思を尊重し断っていましたが、学院を卒業されてさらに身分が上の貴族からのお見合いとなれば断る事も出来ないのですよ」

 そこで私は初めて、自分にお見合いの話が来ているのを知った。
 今までは私が夢にただ進める様に、お母様とお父様が守ってくれていたのだと改めて知り感謝をした。

「ですので、この機会に恋人としての付き合い方を経験した方が、今後の役に立つを思いまして」
「……そんな事言っても、そんな事に真面目に協力してくれる奴なんて」

 その時私が思い浮かべた順は、ルーク、トウマ、タツミ先生、レオンの順であった。
 ルークは絶対に面白がって変な事になるに違いないから、無理。
 トウマは最近やたらと意識されているのか、挙動が少し変だからなし。
 タツミ先生は……うん、ないな。
 最後はレオンか……あれ3人に比べると性格も問題ないし、素直に協力してくれそう。
 そして私は、マリアからの少し強引な話を聞き、偽の恋人を作り今後の為と言う事でやる事を決める。

 だが、今思い返せば別に私がやらなくても良かったのだと思う。
 マリアが私に扮して誰からと恋人のふりをすれば良かったのだから。
 しかし私は、将来の話や自分の為だと話すマリアに感化されてしまい自分でやる流れに持っていかれてしまっていたのだった。
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