とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第185話 おしゃべり騎士野郎と操手坊ちゃん

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 シニアランク男子第1試合は、王都メルト魔法学院対特別枠選手であり、既に会場には両者が入場していた。
 王都メルト魔法学院の代表選手は、ダイモンであり既にやる気満々状態であるが、相手の特別枠選手は未だに素顔を見せずローブをしたままの状態であった。
 そして試合開始直後、ダイモンは自らの奥の手である『金輪奈落』を発動させ、特別枠選手へと得意な武術で攻め入る。
 さすがにダイモンの体術は、今まで対戦して来た相手とは違い正に極め抜いた技であった為特別枠選手も苦戦し、防戦一方状態であった。

「(おいおい、マジかよ。この状態で俺の攻撃を防ぐとか、マジで何者だよコイツ……)」

 ダイモンは一旦特別枠選手との距離を取り、息を整えると特別枠選手が今まで身に付けていたローブを初めて脱ぐ。
 ローブの下にはローブと同じ色で統一された戦闘用の服装だと思われるが、礼装の様に少し気品もある様な服装でありまた、顔については仮面で顔元を完全に隠しており素顔は未だ見せない状態であった。

「(ほ~これはやっと本気を出すってことか? それは何よりだが、今までの感じで相手は完全にオービンではないと分かったな)」

 ダイモンは事前に特別枠選手が誰なのかをある程度予想をしており、今までの2戦の戦いを見てオービンではないかと予想していたが、先程直接戦った事で確実にオービンではないと実感していた。
 今までの戦いの中でもオービンではないと思いつつも、他に該当する様な相手が思い付かなかった為そう予想していたのである。

「(まぁ、なんにしろこんなやりがいのある相手はそうはいない。このまま全力をぶつけさせてもらうぞ!)」

 そのままダイモンは再び特別枠選手へと突撃して行き、連続攻撃を仕掛けるがほとんどの攻撃は防がれてしまい、一瞬の隙を付かれ風魔法で吹き飛ばされ強制的に距離を取らされる。
 その後ダイモンは距離を詰め自分の得意な接近戦を仕掛けるも、段々と相手かの体術を受け始め、しまいには魔法ではなく殴り飛ばされてしまう。

「(はぁ……はぁ……まさか俺様が殴り飛ばされるとは……くそ、これ以上『金輪奈落』を保つのは無理か……)」

 ダイモンは這いつくばった状態で、今まで維持していた『金輪奈落』が解除され特別枠選手を見上げるように視線を向けるも、特別枠選手は少し息を切らしているだけで特に大きなダメージを受けている様子はなかった。
 その様子を見たダイモンは力を振り絞って立ち上がる。

「まだだ! 俺様はまだやれる! たとえ魔法が使えずとも何かを極めれば強くなれる事を、俺様が証明するんだ! だから、こんな所で負けれるわけはいかない!」

 するとダイモンは大きく息を吸って吐くを繰り返し、呼吸を整え『六武衝』の構えをとる。
 そのまま一気に特別枠選手との距離を詰め、『六武衝・六衝』を叩き込む為に右腕を振り抜こうとした瞬間だった。
 ダイモンが距離を詰めたのと同時に、特別枠選手も少し前へと進みダイモンへと近付いており、懐へと入り込んでいたのだ。
 そして特別枠選手はそこで両手それぞれで凸ピン状態を作り、ダイモンの腹部へと押し付けて小さく口を開いた。

「バン!」
「っ!」

 直後、ダイモンの体中を物凄い衝撃が駆け巡り、一気に会場の壁へと吹き飛ばされ少しめり込む様に叩きつけられる。
 ダイモンはその時点で既に意識を失っており、全く動かず暫くしてから試合終了の合図が鳴り響くのであった。
 そうして第1試合は、特別枠選手の勝利で終了し暫くしてから、第2試合のクレイス魔法学院対ネアルガ魔法学院の試合が始まった。
 第2試合も第1試合の様に第3学年生とした実力を繰り広げ、激しい戦いになったが最後はクレイス魔法学院の代表選手の勝利で終了するのであった。
 そして男子の最終戦、第3試合であるバーベル魔法学院対シリウス魔法学院の試合が始まろうとしていた。
 男子の最終試合と言う事もあり、大きく会場が盛り上がる。
 バーベル魔法学院の代表選手はゼオン・アンベルトに対し、シリウス魔法学院の代表選手はリーベスト・ドラルドと顔見知り同士の戦いとなった。

「よぉ、坊ちゃん! やっと俺たちの番だな。どの戦いも凄くて、こっちもうずうずしてたんだよな~。お前はどうだったよ坊ちゃん? 俺は特にな、ダイモンとの戦いがグッと来たな。いや待てよ、後輩たちの戦いも良かった。うん、甲乙付け難いものばかりだな」
「リーベスト。僕前にも言いましたよね? もうその呼び方止めてくれって」
「? 坊ちゃんの事か? そう言われてもな、坊ちゃんは坊ちゃんだし、今じゃその方がしっくりきてるんだよな。それよりも、気付いてるか? 俺たちの試合はある意味トリだぞ、トリ。いや~最高の舞台じゃないか、坊ちゃん」
「はぁ~もういいよ。あんたは何が何でも、その呼び方は変える気はないって事がよく分かった。そう来るなら、俺が今日あんたに勝ったら、あんたの事をおしゃべり野郎って呼ぶからな」
「あはははは! そりゃ面白そうだ。いいぜ坊ちゃん、俺が負けたら坊ちゃん呼びを辞めてやるよ。でも勝ったら、呼び名はこのままな」
「言ったな! 約束だぞリーベスト!」
「無論だ! さぁ、始めようか俺たちの戦いを!」

 そして試合開始の合図が会場に鳴り響く。
 先に動き出したのはリーベストであった。
 リーベストは両手で魔法を発動すると、そのままその魔法を武器へと形状を変化させ、盾と片手剣へとしゼオンへと突っ走って行く。
 しかしゼオンは焦ることなく、その場から動かずに両腕を真横に広げた。
 直後、ゼオンの正面と両隣そして背後に狼型ゴーレム、人型ゴーレム、鰐型ゴーレム、鷹型ゴーレムが一気に出現した。
 その数は全部で20体を超えていた。

「(さすがは、坊ちゃん。だてに『操手』なんて呼ばれてないな!)」

 リーベストはそのゴーレムの数に怯むことなく突撃すると、最初に狼型ゴーレムとの対峙が始まる。
 ゼオン・アンベルトは『操手』と呼ばれるほど、ゴーレムや魔法の使い手であり、同時や時には並列的に何体ものゴーレムを創り出し、相手を攻め魔法も操る姿からその呼び名が付いている。
 それを可能にしているが、魔力技量・質量・創造・治療・制御を平均以上に使用出来る為である。
 しかし、始めからゼオンはそうではなかった。
 昔は全てを完璧に出来るように目指していたが、唯一ゼオンは魔法の威力に関しては全く威力が上がらず平均より少し低かった。
 唯一の弱みを無くそうと日々頑張っていたが、そんな中で恩師と出会い「完璧でいようとはせず、使える力秀でている力を全開まで活かすべきだ」と教えてもらい変わり始め今にいたるのである。
 その為、強力な一撃と言うよりも、数や質で相手を攻めると言う戦い方が基本スタイルである。

 一方でリーベスト・ドラルドは『騎士』と呼ばれている。
 その由縁は、戦う姿からである。
 リーベストは盾と片手剣で戦うのが基本スタイルであるが、その武器は両方とも魔法から生成し魔力技量・制御で形を維持しているのである。
 自在に武器の形状を換え、特性も魔法である為変えられ臨機応変に戦えるのが彼の長所である。
 しかし、常に魔力制御を使っている状態である為、戦闘中に相手以外にも集中しなければいけないし、魔力の消耗面でも負担は大きいのが短所でもある。
 リーベスト自身はも短所は理解しており、一応カバーできるようなものは用意しているが、基本的にはあまりそちらに時間は掛けずに長所を伸ばせるだけ伸ばす事に今は専念している。
 進める道を進むことで、新しい可能性も見えて来る事もあると言う自身の考えがあり、立ち止まり振り返る事はこの先やろうと思えば出来る事なので、今は進める所まで進んでやると言う気持ちなのでそう言う考え方を貫いている。
 リーベストは狼型ゴーレムと対峙する中で、次から次へと攻めて来るゴーレムたちに次々と武器の形状を換えて戦う。
 盾から剣へと換え二刀流で戦い、弓と矢へと換えたり、人型ゴーレムの重い一撃は大きな盾へと両手で持ち防いだりと、瞬時に状況を判断し戦い続けた。

「(あの判断力に加えて、身体能力も以前より向上している。リーベストめ、まだ強くなるのか。だが僕も、ただ無駄に時を過ごしていた訳じゃない!)」

 するとゼオンは、リーベストに倒されたゴーレムを補給し、現在創り出しているゴーレムたちを全て武装させた。
 更には自身の真横に砲台を2つ創り出した。
 そして、魔力質力で砲台に魔力を込め、ゴーレムたちを制御しつつリーベストの真上へと魔法を撃ち放った。
 放った魔法は宙で散弾する様に弾け、地面へと降り注がれるが、ゴーレムたちは武装している為大きな損害はなくそのままリーベストへと突き進む。
 リーベストはゴーレムたちから一旦距離をとり、上空からの攻撃を防ぐ。

「(そんな事が出来るようになってるとはね。正しく城主って感じだな。やっぱり、坊ちゃんって名前がピッタリじゃねぇかよ)」

 するとリーベストはニッと笑い、両手に持っていた魔法を一度解除すると『メタル』魔法でただの鉄の盾と剣を創り出した。
 そのままリーベストは武装されたゴーレムへと突撃し、一撃でゴーレムたちを次々と斬り倒していく。
 更には、ゼオンからの砲台による魔法も一振りで斬ってしまう。
 まさかの出来事にゼオンは驚きの表情が隠しきれずにいたが、攻撃の手を緩める事無く次々とゴーレムを創り出しては、魔法で支援をしリーベストを攻めるが、その全てをリーベストはただの鉄の剣で斬り、鉄の盾で防ぎつつ弾き飛ばしたりするのであった。
 そして遂にはゼオンの補給スピードよりも速くリーベストがゴーレムを倒し、ゼオンの喉元に鉄の剣を突きつけてたのだった。

「勝負ありだな」
「っ……くそ」

 直後、試合終了の合図が鳴り響くのであった。
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