とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
206 / 564

第205話 卒業生研究発表資料室

しおりを挟む
「どうしてここに居るんですか、エメル寮長?」
「たまたま通りかかっただけさ。そしたら、鼻息を荒くしてぶつぶつと独り言を言うお前を見つけたって訳」

 私はとてつもなく恥ずかしくなり、咄嗟にエメルから視線を外し反対方向を向いた。
 は、恥ずかしー! そんな所を見られた上に、自分でも無意識で周りが見えてなかったのが辛い……

「それで、研究発表に興味があるのか?」
「は、はい。先輩たちがどう言う研究してるのかって基本的に知る機会がないですし、こんな機会に色々と視野を広げたいと言いますか、ただ単に興味があると言いますか」
「ははは! お前思っていたより面白い奴だな。中々研究発表に興味がある奴なんていないぞ。相当なもの好きな奴くらいだ」
「そ、そうなんですか?」

 私が少し首を傾げていると、エメルは笑い続けた。
 そんなに笑う事言ったかな? でも、前にも話した時からエメル寮長って思っていたより話しやすい人かも。
 エメルとは最初に話したのが、大運動会での大戦時と言う事もありそこから、凄い先輩だけど少し変な所がある印象から大きく変わっていた。

「あ~悪い悪い。馬鹿にしてる訳じゃないんだ。下の世代にはあんまり研究発表に興味を持つ奴がいなくて、嬉しかったんだよ」
「そうなんですか? まぁ、自分の研究をしている人もいますし、先輩のを見たりすると影響されるとか思うからじゃないですかね?」
「そう言う考え方もあるが、単純につまらないんだよ。ただ先輩の話を聞くだけだし、興味がないものだったら時間の無駄だろ? 学院生の時間だって無限にある訳じゃないし、出来れば楽しい事をしたいだろ」

 確かに、私も今興味がある研究発表のものしか見てなかったしな。
 私はエメルの言葉に頷いて反応した。

「でも、お前みたいに研究自体に興味を持ってくれることは普通に嬉しいし、大人たちよりも近い世代に聞いてもらった方が僕はやりがいもあるし、やる気も出るからいいけどな」
「あ、あのエメル寮長。1つ訊きたいんですけどいいですか?」
「ん? まぁ、答えられるものなら答えるぞ」
「え~っと、この研究発表の時って資料みたいのってもらえたりするんですか?」

 私のその問いかけにエメルは一瞬固まると、直ぐに堪えていた笑いを小さく噴き出した。
 私は何か変な事をまた訊いてしまったのかと思い、動揺してしまう。

「あははは! お前は研究熱心だな~研究者にでもなりたいのか?」
「いや、研究者にはなりたいわけじゃないですよ。ただ、色んな知識に触れて目標へ手が届く様に、可能性を広げたいんです!」
「へぇ~なるほどね。ちなみに目標ってのは何か教えてくれたりしてくれるか?」
「あっ……え~と、そのですね……あの~……」
「急に歯切れが悪くなったな。まぁ別に無理にとは言わないからいいよ、わざわざ人に言う様な事でもないしな」
「いや、言えない訳じゃなくてですね……その、月の魔女を目標としていて……」

 するとエメルは、急に黙ってしまう。
 私は、子供っぽい目標だと思われてしまったと思い、つい勢いで言ってしまった事を後悔した。

「月の魔女か。かなり大きい目標だな」
「えっ……子供っぽいとか、変な目標とか思わなかったんですか?」
「はぁ? 何、今嘘言ったのか?」

 私は勢いよく首を横に振って答えた。

「あのな、僕は人が決めた目標とかを馬鹿にする趣味はねぇんだよ。てか、お前自身がそう思ってるからそんな風に思っちまうんだよ。後ろめたいものじゃねぇんだから、もう少し堂々と言え」
「は、はい!」
「言いふらす物でもないけども、もしお前の目標を訊いて来て馬鹿にする奴がいたら、そんな奴放っておけ。人の目標を馬鹿にする奴なんてろくな奴じゃねぇからな」

 そう言ってエメルは何かを思い出したのか、小さくため息をついた。

「で、何だったけ? まぁ話がズレたが、目標に向かって頑張ってるならとことんやりきれ。さっきも言ったが、時間は有限じゃない。後悔がない様に全てやり切る事を、俺はおすすめするよクリス」
「はい! ありがとうございます、エメル寮長。俺、必ず目標を達成して見せます!」
「あ、それとさっきの質問だけど。人によって資料はあるなしがあるから、必ずとは言えないな。ちなみに、僕のは簡易的なメモの様な物だけだ」
「そうなんですね。わざわざ答えて頂きありがとうございます」

 すると、遠くの方からエメルの名を呼ぶ声が聞こえてくる。

「げぇ、あいつまた僕の事を探してるのか」
「この声って確か、スニーク副寮長ですよね?」
「そう。たぶん出し物の件で僕を探してるんだよ」
「へぇ~エメル寮長のクラスで出し物するんですね。何するんですか?」

 私が興味本位で訊くと、エメルは物凄い嫌な顔をしながら答えて来た。

「演劇……だとよ」
「な、何でそんな嫌な顔で答えるんですか? 多数決とかで決まったんじゃないんですか?」
「あぁそうだよ。俺以外全員賛成でな」
「なるほど~……」

 何の演劇をやる事になったんだろう? 凄く気にはなるけど、それを今口にしても不機嫌なエメル寮長は絶対に答えてくれないだろうな……
 するとエメルは大きくため息をついた。

「スニークに捕まると面倒だから、僕はもう行くよ」

 そう言って、その場から立ち去ろうと歩き始めたエメルだったが、途中で足を止めて私の方を再び向いて来た。

「そうだ、そんなに研究発表に興味があるなら、学院祭の日だけ特別に解放される卒業生研究発表資料室へ行く事を進めるよ」
「卒業生研究発表資料室ですか?」
「詳しくは、オービンにでも訊くといい。詳しく教えてくれるだろう。それじゃな、クリス」

 エメルはそれだけを言いうと、その場から少し急ぎ足で立ち去って行った。
 それか数分後に、スニークが私の元にやって来てエメルの行方を訊いて来たので、私は見てないと答えてその場から離れた。
 その後も学院内をうろちょろとしてから寮へと戻った。
 そして次の日、オービンを学院内で捕まえてエメルから訊いた、卒業生研究発表資料室について質問した。

 卒業生研究発表資料室と言うのは、学院祭の時のみ解放される部屋であり、基本的にはこれまでの学院の卒業生たちが行って来た研究発表の資料な物などが保管されている部屋であると言う。
 大図書館にも、冊子として資料は一部あるが、細かい事に関してまでは載っておらず、資料室の方に全てが保管されているらしい。
 学院生徒とは言え、大切な研究資料なので盗難や悪用などされては困る為、基本的は解放もされいない部屋である。
 だが、学院祭には卒業生も来たりするので学院祭の2日間のみは教員が立ち合いの下解放しており、その日は在学生も入れ資料などを閲覧する事が出来るのだとオービンは教えてくれた。

「確か卒業生研究発表資料室は、学院祭1日目の午後から解放だったと思うから、興味があるなら行ってみるといいよ。そんなに人もいないと思うし、実際に手に取って資料も見られるから面白いと思うよ」
「ありがとうございます、オービン先輩。急にこんな事訊いたのに、ここまで親切に教えてくれて本当にありがとうございます」
「いいよ。それじゃ、俺は行くね。また何かあれば訊いてくれていいから」

 そう言ってオービンは私に軽く手を振った後、歩いて行ってしまった。
 卒業生研究発表資料室か……もしかしたら、月の魔女もこの学院に居たって言うし、もしかしたらその時の資料とか月の魔女その人の研究発表もあるかもしれないな。
 うぉ~何かそう考えるだけで、胸が躍るな~早く学院祭にならないかな~
 私は少し浮かれながらその日は教室へと戻り、学院祭へ向けた最終確認をクラスで行った。
 そして週末、遂に待ちに待った学院祭当日を迎えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...