とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
207 / 564

第206話 学院祭1日目

しおりを挟む
 王都メルト魔法学院の学院祭当日、学院の正門では盛大に装飾されており正門から学院への通路には両方に出店準備をしている店がずらっと並んでいた。
 学院祭1日目の午前中は、研究発表がメインの為まだ飲食などの出店するクラスは準備をしている状態なのである。
 しかし、午前中から街の人々や他の街から来た人なども続々と学院へと入って来ていた。

 街の人々からしても、学院に入れる珍しい日と言う事もありお祭りをより楽しもうと学院祭へと足を運んでいるのであった。
 また、卒業生たちも街の外からこの日の為だけに王都へとやって来て、懐かしい人と会ったり学院を懐かしんだりするのに来ているのである。
 その為、1日目のまだ午前中にも関わらずかなりの人で学院は賑わい始めていた。
 だが、学院側も学院生以外をそう簡単に通す訳にも行かない為、正門付近で教員数名が目を光らせているのと同時に魔道具を見えない位置に配置し、不審物を持ち込もうとしている者を監視しているのであった。
 以前不審者に入られたという事もあり、警戒はより強まっており学院中を見えない結界で覆ってもいたりと、警戒は怠る事無く準備は万全にした状態で一般の人たちを迎え入れているのであった。

「やはり学院祭の日は、例年人の数が多いですね」
「そうだろ。だからこそ、俺たちがしっかりと目を光らせる必要があるんだから、気を抜くなよ」
「分かっていますよ。でも、今年から魔道具導入してますけど、アレ本当に大丈夫なんですか?」
「性能については、事前に見たろ。でも、あれに完全に頼る訳にも行かないから、こうやって例年通り俺たちが交代で感知とかしてるんだろ」
「そうでした」

 正門付近で学院へと入って行く人々を見ている教員たちがそんな事を話していると、そこへ1人の女性が近付いて行く。
 その女性は黒髪のロングヘアーで、服装は紺色の長めで足元まであるワンピース姿であった。

「もし、そちらのお方」
「ん? 俺ですか?」

 呼び掛けられた教員の1人が振り返ると、その近くにいたもう1人の教員もその方向を向く。

「はい、貴方です。貴方、この学院の教員ですよね?」
「そうですけど、何か御用ですか?」
「えぇ、私この学院の学院長と知り合いなのだけど、取り次いでもらえないかしら?」
「学院長とですか?」

 教員が訊き返すと、その女性は頷いて返事をした。
 そして教員は近くにいたもう1人の教員へと近付いて話し掛けた。

「え~と、これはどうすればいいんですかね?」
「とりあえず、このまま追い返す訳には行かないから、まずは名前だけ聞いて副学院長に報告だな」
「分かりました」

 するとその女性に話し掛けれた教員が、女性の方へと戻って行き名前を訊ねた。

「名前ですか……そうですね、こう伝えて下さい。魔女が舞い戻って来たと」
「へぇ?」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「よーし! 皆、今日から学院祭だ! 楽しんでいこー!」
「「おぉー!!」」

 私のクラスでは、トウマの掛け声と共に皆で盛り上がっていた。
 そこに続いて、アルジュからの注意点の話が始まった。

「とは言っても、午前中は研究発表がメインだから、俺たちはそれまで自由時間だ。後、さっき配った通りのシフトで出し物をやって行くから、時間は守る様に」
「「はーい」」
「一応午後から、うちのクラスの出し物も始めるから最初のシフトの奴は、開店前には帰って来てくれ。後は、それまで自由時間だから解散」

 アルジュのその言葉の後、皆が各々で散らばりだし教室から出て行く人も居れば、教室にとどまって最終確認をする者など様々であった。
 私はと言うと、このまま研究発表を聞きに行こうと教室を出ようとすると、トウマに呼び止められた。

「クリス、どっか行くのか?」
「うん。先輩たちの研究発表を聞きに行こうかと思って」
「そうなのか。だったから、俺も一緒に行っていいか?」
「いいけど……あっ、そうだった。一緒に回るって話だったけ?」

 私は以前トウマと約束した事を思い出し、その事を口に出すとトウマは軽く片手で頬を人差し指でかきながら口を開いた。

「あ~それは、今日の午後からでいいんだけど。午前中も一緒に行っていいなら、行きたいなって思ってさ」
「なるほど。俺はいいけど、トウマも興味ある研究発表かどうかは分からないけど、それでもいいの?」

 私は一緒に回るのはいいが、わざわざ興味のない事に連れまわすのはトウマに悪いと思ってそう問いかけた。
 するとトウマは「大丈夫! クリスと一緒に行けるなら問題なし!」と親指を上げたジェスチャーを私に向けて来た。
 う~ん、何か質問の意図が上手く伝わってないかもしれないけど、そこまで言うなら大丈夫かな? たぶんだけど……

「よし! それじゃ、早速研究発表へと向かおうじゃないか!」
「どうしてトウマがそんなに張り切ってるんだよ」
「いいだろ、別に」

 そうして、私とトウマが教室を出て行こうとした時だった。
 背後からアルジュが気配もなく一瞬で近付いて来て、トウマの後ろ襟を勢いよく掴んだ。
 するとトウマは、その場で後ろへと引っ張られてる。

「うげぇっ! ……って、いきなり何すんだよアルジュ!」
「どうしたんだよ?」
「トウマ、お前に頼んでいた調理用の食品どうしたんだ?」
「え? どうしたって、そこに置いてあるだろ?」

 と、トウマは教室に置いてある食品の方を指さす。
 私はその場でただ状況を聞いていると、アルジュが俯きながら呟いた。

「……ないんだよ」
「何? 何つったんだアルジュ?」
「だから、頼んでおいた食品の量と違って足りないんだよ!」
「えー!? 嘘だろ!?」
「これはこっちのセリフだよ、トウマ! と言う訳で、お前に自由時間はない。このまま俺と一緒に足りない分の食品を買いに行くぞ」

 そう言うとアルジュは、トウマの後ろ襟を掴んだまま教室を出て行く。
 トウマは後ろ向きのままアルジュに連行されて行ってしまう。

「ちょ、ちょっと待ってくれよアルジュ。何かの間違いなんじゃ」
「間違いじゃない。ピースたちと確認したが、数が足りてない」
「嘘だ~」
「トウマ、僕が頼んだ時何か浮かれた感じだったよな? だから、聞き間違えをするんだよ。注文用紙の注文数が間違ってたぞ」

 トウマはアルジュから渡された注文用紙を見て青ざめる。
 その後、トウマは黙ったままアルジュに引っ張られて行くのであった。
 あははは……それはトウマは悪いわ。
 トウマは連行されてっちゃったし、私はこのまま好きに研究発表を見に行かせてもらうよっと。
 私は、連れて行かれるトウマを見送った後振り返り研究発表へと向かおうとすると、そこで偶然教室から出て来るルークと出くわす。

「おっ、ルーク」
「クリスか。お前も、もしかして研究発表にでも行くのか?」
「え、あぁそうだけど。ルークも」

 私の問いかけにルークは頷いて答えた。

「へぇ~もしかしてオービン先輩の所か?」
「ちげぇよ、俺はミカロス先輩の所だよ。お前はどこに行くんだ?」
「俺はエメル寮長の所からかな。その後にオービン先輩とミカロス先輩の所にも行くかな」
「ふ~ん。そっか」
「おいルーク、先に行くぞ」

 と、その時遠くからガウェンがルークを呼ぶ声が聞こえて来た。
 ルークは「今行く」とその場で答えると、私に背を向けた。

「それじゃ、研究発表の所でまた会えるかもな」

 それだけ言うと、ルークはそのままガウェンの方へと向かって行ってしまう。
 何だよ、話の流れから一緒に行くのかと思ったよ……って、何で私そんな事思ってるんだ? ないない、ルークと回るとか絶対に喧嘩になるから無理だろ。
 どうせ、変な所にいちゃもんとか付けたりするんだから。
 って、何でまたルークの事を言ってるんだ私は! あ~もう、やめやめ! 今は楽しみにしてる研究発表の事だけを考えればいいの!
 私はそう自分に言い聞かせて、軽く両頬を叩いてルークの方向とは違う道から研究発表へと向かった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 場所は変わり、学院長室。
 学院長室の扉がノックされる音が聞こえると、学院長であるマイナが声を出して入室を許可する。
 すると、学院長室へと入って来たのは副学院長であるデイビッドであった。

「デイビッド副学院長、どうしたんですか?」
「マイナ学院長、先程正門付近にいる教員から貴方のご友人が来ていると報告を受けまして」
「私の友人?」

 その時マイナは、直ぐにリーリアやティアの事が頭に思い浮かんだが、その2人がわざわざこんな事してくるとは思えなかったので、直ぐに違う人だと思った。
 それに、もしその2人が来るならば自分に直接連絡してくるだろうと思っていた為、該当から外していた。
 その為マイナは、誰が訪ねて来ているのか見当がつかずにいた。

「その方は、マイナ学院長に取り次いで欲しいと言っていまして、一応名前も伺ったらしいのですが……」
「ですが? どうしたのですか?」
「いえ、何といますか。そのお方は、名前と言うより言葉を伝えて来たと言いますか」

 デイビッドは少し自分でも困惑した様に話していたので、マイナはそれでもいいから話すように伝える。

「はい。その方はただ、『魔女が舞い戻って来た』と伝えれば分かるとおっしゃっているのです」
「っ!?」

 その言葉を聞いた直後、マイナから急に血の気が引いていくのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...