とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第206話 学院祭1日目

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 王都メルト魔法学院の学院祭当日、学院の正門では盛大に装飾されており正門から学院への通路には両方に出店準備をしている店がずらっと並んでいた。
 学院祭1日目の午前中は、研究発表がメインの為まだ飲食などの出店するクラスは準備をしている状態なのである。
 しかし、午前中から街の人々や他の街から来た人なども続々と学院へと入って来ていた。

 街の人々からしても、学院に入れる珍しい日と言う事もありお祭りをより楽しもうと学院祭へと足を運んでいるのであった。
 また、卒業生たちも街の外からこの日の為だけに王都へとやって来て、懐かしい人と会ったり学院を懐かしんだりするのに来ているのである。
 その為、1日目のまだ午前中にも関わらずかなりの人で学院は賑わい始めていた。
 だが、学院側も学院生以外をそう簡単に通す訳にも行かない為、正門付近で教員数名が目を光らせているのと同時に魔道具を見えない位置に配置し、不審物を持ち込もうとしている者を監視しているのであった。
 以前不審者に入られたという事もあり、警戒はより強まっており学院中を見えない結界で覆ってもいたりと、警戒は怠る事無く準備は万全にした状態で一般の人たちを迎え入れているのであった。

「やはり学院祭の日は、例年人の数が多いですね」
「そうだろ。だからこそ、俺たちがしっかりと目を光らせる必要があるんだから、気を抜くなよ」
「分かっていますよ。でも、今年から魔道具導入してますけど、アレ本当に大丈夫なんですか?」
「性能については、事前に見たろ。でも、あれに完全に頼る訳にも行かないから、こうやって例年通り俺たちが交代で感知とかしてるんだろ」
「そうでした」

 正門付近で学院へと入って行く人々を見ている教員たちがそんな事を話していると、そこへ1人の女性が近付いて行く。
 その女性は黒髪のロングヘアーで、服装は紺色の長めで足元まであるワンピース姿であった。

「もし、そちらのお方」
「ん? 俺ですか?」

 呼び掛けられた教員の1人が振り返ると、その近くにいたもう1人の教員もその方向を向く。

「はい、貴方です。貴方、この学院の教員ですよね?」
「そうですけど、何か御用ですか?」
「えぇ、私この学院の学院長と知り合いなのだけど、取り次いでもらえないかしら?」
「学院長とですか?」

 教員が訊き返すと、その女性は頷いて返事をした。
 そして教員は近くにいたもう1人の教員へと近付いて話し掛けた。

「え~と、これはどうすればいいんですかね?」
「とりあえず、このまま追い返す訳には行かないから、まずは名前だけ聞いて副学院長に報告だな」
「分かりました」

 するとその女性に話し掛けれた教員が、女性の方へと戻って行き名前を訊ねた。

「名前ですか……そうですね、こう伝えて下さい。魔女が舞い戻って来たと」
「へぇ?」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「よーし! 皆、今日から学院祭だ! 楽しんでいこー!」
「「おぉー!!」」

 私のクラスでは、トウマの掛け声と共に皆で盛り上がっていた。
 そこに続いて、アルジュからの注意点の話が始まった。

「とは言っても、午前中は研究発表がメインだから、俺たちはそれまで自由時間だ。後、さっき配った通りのシフトで出し物をやって行くから、時間は守る様に」
「「はーい」」
「一応午後から、うちのクラスの出し物も始めるから最初のシフトの奴は、開店前には帰って来てくれ。後は、それまで自由時間だから解散」

 アルジュのその言葉の後、皆が各々で散らばりだし教室から出て行く人も居れば、教室にとどまって最終確認をする者など様々であった。
 私はと言うと、このまま研究発表を聞きに行こうと教室を出ようとすると、トウマに呼び止められた。

「クリス、どっか行くのか?」
「うん。先輩たちの研究発表を聞きに行こうかと思って」
「そうなのか。だったから、俺も一緒に行っていいか?」
「いいけど……あっ、そうだった。一緒に回るって話だったけ?」

 私は以前トウマと約束した事を思い出し、その事を口に出すとトウマは軽く片手で頬を人差し指でかきながら口を開いた。

「あ~それは、今日の午後からでいいんだけど。午前中も一緒に行っていいなら、行きたいなって思ってさ」
「なるほど。俺はいいけど、トウマも興味ある研究発表かどうかは分からないけど、それでもいいの?」

 私は一緒に回るのはいいが、わざわざ興味のない事に連れまわすのはトウマに悪いと思ってそう問いかけた。
 するとトウマは「大丈夫! クリスと一緒に行けるなら問題なし!」と親指を上げたジェスチャーを私に向けて来た。
 う~ん、何か質問の意図が上手く伝わってないかもしれないけど、そこまで言うなら大丈夫かな? たぶんだけど……

「よし! それじゃ、早速研究発表へと向かおうじゃないか!」
「どうしてトウマがそんなに張り切ってるんだよ」
「いいだろ、別に」

 そうして、私とトウマが教室を出て行こうとした時だった。
 背後からアルジュが気配もなく一瞬で近付いて来て、トウマの後ろ襟を勢いよく掴んだ。
 するとトウマは、その場で後ろへと引っ張られてる。

「うげぇっ! ……って、いきなり何すんだよアルジュ!」
「どうしたんだよ?」
「トウマ、お前に頼んでいた調理用の食品どうしたんだ?」
「え? どうしたって、そこに置いてあるだろ?」

 と、トウマは教室に置いてある食品の方を指さす。
 私はその場でただ状況を聞いていると、アルジュが俯きながら呟いた。

「……ないんだよ」
「何? 何つったんだアルジュ?」
「だから、頼んでおいた食品の量と違って足りないんだよ!」
「えー!? 嘘だろ!?」
「これはこっちのセリフだよ、トウマ! と言う訳で、お前に自由時間はない。このまま俺と一緒に足りない分の食品を買いに行くぞ」

 そう言うとアルジュは、トウマの後ろ襟を掴んだまま教室を出て行く。
 トウマは後ろ向きのままアルジュに連行されて行ってしまう。

「ちょ、ちょっと待ってくれよアルジュ。何かの間違いなんじゃ」
「間違いじゃない。ピースたちと確認したが、数が足りてない」
「嘘だ~」
「トウマ、僕が頼んだ時何か浮かれた感じだったよな? だから、聞き間違えをするんだよ。注文用紙の注文数が間違ってたぞ」

 トウマはアルジュから渡された注文用紙を見て青ざめる。
 その後、トウマは黙ったままアルジュに引っ張られて行くのであった。
 あははは……それはトウマは悪いわ。
 トウマは連行されてっちゃったし、私はこのまま好きに研究発表を見に行かせてもらうよっと。
 私は、連れて行かれるトウマを見送った後振り返り研究発表へと向かおうとすると、そこで偶然教室から出て来るルークと出くわす。

「おっ、ルーク」
「クリスか。お前も、もしかして研究発表にでも行くのか?」
「え、あぁそうだけど。ルークも」

 私の問いかけにルークは頷いて答えた。

「へぇ~もしかしてオービン先輩の所か?」
「ちげぇよ、俺はミカロス先輩の所だよ。お前はどこに行くんだ?」
「俺はエメル寮長の所からかな。その後にオービン先輩とミカロス先輩の所にも行くかな」
「ふ~ん。そっか」
「おいルーク、先に行くぞ」

 と、その時遠くからガウェンがルークを呼ぶ声が聞こえて来た。
 ルークは「今行く」とその場で答えると、私に背を向けた。

「それじゃ、研究発表の所でまた会えるかもな」

 それだけ言うと、ルークはそのままガウェンの方へと向かって行ってしまう。
 何だよ、話の流れから一緒に行くのかと思ったよ……って、何で私そんな事思ってるんだ? ないない、ルークと回るとか絶対に喧嘩になるから無理だろ。
 どうせ、変な所にいちゃもんとか付けたりするんだから。
 って、何でまたルークの事を言ってるんだ私は! あ~もう、やめやめ! 今は楽しみにしてる研究発表の事だけを考えればいいの!
 私はそう自分に言い聞かせて、軽く両頬を叩いてルークの方向とは違う道から研究発表へと向かった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 場所は変わり、学院長室。
 学院長室の扉がノックされる音が聞こえると、学院長であるマイナが声を出して入室を許可する。
 すると、学院長室へと入って来たのは副学院長であるデイビッドであった。

「デイビッド副学院長、どうしたんですか?」
「マイナ学院長、先程正門付近にいる教員から貴方のご友人が来ていると報告を受けまして」
「私の友人?」

 その時マイナは、直ぐにリーリアやティアの事が頭に思い浮かんだが、その2人がわざわざこんな事してくるとは思えなかったので、直ぐに違う人だと思った。
 それに、もしその2人が来るならば自分に直接連絡してくるだろうと思っていた為、該当から外していた。
 その為マイナは、誰が訪ねて来ているのか見当がつかずにいた。

「その方は、マイナ学院長に取り次いで欲しいと言っていまして、一応名前も伺ったらしいのですが……」
「ですが? どうしたのですか?」
「いえ、何といますか。そのお方は、名前と言うより言葉を伝えて来たと言いますか」

 デイビッドは少し自分でも困惑した様に話していたので、マイナはそれでもいいから話すように伝える。

「はい。その方はただ、『魔女が舞い戻って来た』と伝えれば分かるとおっしゃっているのです」
「っ!?」

 その言葉を聞いた直後、マイナから急に血の気が引いていくのだった。
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