とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第210話 現場は戦場

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「いつ以来だろうな。対抗戦の代表者決定試合以来か?」
「いや、何か普通に話してるけど何でここにいるのさレオン」
「何でって、治療も終わって今日が久しぶりの登校初日だからさ」

 レオンは、私が意図した質問とは違った答えを言って来たが、その答えにも私は驚いてしまう。
 タツミ先生から治療の話は聞いてたけど、その治療が終わったのか。
 一週間の入院とは聞いてたけど、少しその入院が伸びたとタツミ先生から訊いた時は心配だったけど、見た感じ何事もなく無事に治ってるようで良かった。
 私はレオンが無事に帰って来た事にほっとしていたが、直ぐに意識を戻しどうしてレオンがうちの出し物を手伝っているかに戻した。

「無事に帰って来れた事は良かったけど、今俺が訊いたのはどうしてその格好でうちの出し物手伝っているかだよ!」
「あ~それね。僕がふらっとこの店に立ち寄った時に、トウマに泣きつかれてね。僕も今日登校して来たばかりで、クラスの出し物の手伝いもないし手伝っているわけさ」
「そうなの? それで、そのトウマはどこに?」

 私が周囲を見ているとレオンが私の後方の方を指さした。
 その先には、キッチンとして布で仕切られた場所があったので、私はその方向へと向かって行き布を開けて中へと入る。
 するとそこでは、コック姿でデザート作りをしているニックたちがいた。
 ニック・ヴァン・シン・ガウェンがフルメンバーでコックとして働いており、皿への盛り付けはピースが直々に行っていた。
 そんな中、キッチンの隅の方でトウマの姿を目にし声を掛けた。

「トウマ?」
「! ク、クリス~」

 トウマは私の姿を見るなり、泣きながら私の方へと向かって来たがそれをニックが寸前の所で首元を掴み止めた。

「何持ち場を離れてんだ、トウマ。お前は下処理係ってアルジュに言われたろ」
「1人であの量はもう辛いって……」
「そうなってるのは自業自得だろうが。お前が注文量間違えなければ、まだましだったがこの人気で忙しんだからしょうがねぇだろうが」
「うぅ~クリス~助けてくれ~」

 するとそこに王女風のコスプレをしたアルジュが入って来た。

「新しい注文だよ。あっクリス、戻って来たのか」
「あぁ、レオンの件でトウマを見に来たんだが」
「その件な。レオンには急なお願いをしたが、こうして手伝ってくれているだけでありがたい。本当にありがとう」
「そんなのいいって。困った時は助け合いだし、僕は元々こういう店の手伝いをしてたから慣れっこさ」
「本当に感謝してるよレオン。それで、トウマは何でそんな泣きじゃくってるの?」

 その理由をニックから聞いたアルジュは、小さくため息をついた。

「しょうがないだろ。この客数で、キッチンの方の人手が足りないんだから。トウマにはその手伝いをしてもらうって言ったろ」
「でもでも、俺も表でそのカッコいい執事服着てちやほやされたいんだよ~」
「はぁ~現状レオンの働きがあって持っているんだから、お前がその代わりになれるわけないだろ」
「や、やってて見なきゃ分からないだろうが」
「こんな調理の下準備で音を上げている奴がか?」
「うっ……それは……」

 アルジュからの言葉にトウマは目を逸らしながら答えた。
 直後トウマは、私の方を見て来て助けてと言うのを視線で訴えて来たが、私はどうする事も出来ないと思いそっと目を逸らした。
 そんな私の態度を見たトウマは、がっくりと肩を落とす。
 するとそこへピースが近付いて来た。

「いつまでだべってるんだ? 早く持ち場に戻って! 今ここは戦場なんだよ! のんきに話してる暇はない!」

 ピースの見た事ない態度に私は驚いてしまい、背筋を正して「はいっ!」と答えてしまう。
 私以外にも、アルジュやトウマも同じ様な反応をしていた。
 ニックは、こうなると分かっていたのか少し呆れた顔をした後、直ぐに自分の持ち場へと戻って行った。
 私たちも、直ぐにキッチンから出て行った。
 こ、こわ……ピースて、怒るのあんなに怖いの? と言うか、ピースて怒る事あるんだ。
 ピースのあんな姿初めて見た……いつも温厚そうな人が怒る所って怖いとは聞くけど、本当に怖かったわ……
 私はピースの怒った姿に少し怯えていると、アルジュが話し掛けて来た。

「ピースは食に関係した事になると怖いんだよ……だから、絶対に食関係で怒らせちゃいけないんだ」
「そう言うのは早く言ってよアルジュ」
「ごめん。かなりこの状況にテンパってて、それに頭が回らなかったし、こんなになるとも思ってなかったから」

 そりゃそうだよね。
 私だって、こんなに大繁盛するなんて思ってなかったし。
 にしても、どうしてこんなに人気が出てるのよこの店。
 私は自分たちが運営しているにも関わらず、どうしてこんな状況になっているのかが分からずにいるとレオンは心を読み取ったかの様に話し始めた。

「にしても、この店は女子にターゲットを絞って企画したのかい? それだとしたら、大成功だね。盛り付けも味も良いスイーツに、店員の格好も噂になりやすいし待っていても楽しめる様にしている所もいいね」
「確かにある程度の方向性は決めてたけど、それだけでこんなになるもんなのか?」
「それはお客さんにハマればなるでしょ。そしてその口コミが広まれば、こんな状況にだってなりかねないよ。それか、誰か物凄い宣伝上手がいるかだね」
「宣伝上手か」

 その言葉に私は直ぐにフェルトの顔を思い浮かべた。
 フェルトの人脈を使っての宣伝ならあり得るし、そう言えばさっきそんな様な事を言っていた気がするな。
 私はフェルトの言葉を思い出して、この状況を作り出した一要因はフェルトの宣伝効果のお陰だと理解した。
 後はレオンの言葉を聞いてから、私は改めてお客さんの層を見て本当に女子が多い事を実感する。
 スイーツに力を入れた事も良かったし、コスプレと言う新しい流行を取り入れたのもこの結果に繋がったのかもしれないね。
 見ていても楽しい、食べても楽しい、この空間自体に入れる事自体がその人を楽しませる事が出来ているんだ。
 そう思った私はよりやる気が出て来た。
 始まる前は、少しだけメイド服でやる事に後ろめたさがあったが、皆が楽しめているなら自分も全力で楽しまなきゃ損だと思ったからだ。

「よ~し! やってやるぞ~!」
「どうしたんだよクリス。急にやる気に満ち溢れて」
「アルジュ、色んな思われ方するかもしれないけど、俺も一緒だからな。だから、頑張ろう!」
「そっと目を逸らしていた事を、真っすぐに僕に言うんじゃないよクリス……」
「あっ、ごめん……でも、これもこの店の人気の一部だと思えば大丈夫! よっしゃ~やってやるぞ!」
「あははは。クリスはやる気満々だね。でも、あまり力みすぎると失敗するから、少しだけ肩の力を抜くといいと思うよ」
「僕は嫌な事を思い出して、少しテンション下がり気味だよ」

 その後私たちはどんどんと入店してくるお客さんと次々と対応して行き、キッチンもフル回転でデザートを作り続けた。
 最終的にはクラス全員で接客と料理をする事になり、ほとんど休みなくやり続けた結果2時間ほどでやっと落ち着くのであった。

「や、やっとひと休み出来る~……」

 私はアルジュと共にキッチンの方で座り込んだ。
 既にお客さんの波は落ち着き、元のシフトメンバー数で対応出来るようになって来たので休憩を交互に取り始めていた。
 キッチンもフル回転だったので、こちらも交互に交代しながら行っていた。

「お疲れ。これは、差し入れだ」

 すると私とアルジュに声を掛けて来たのは、ニックであった。
 手にはキッチンで作ったデザートが2つあった。

「ありがとうニック」

 私がお礼を言うとニックはそのままキッチンで働いていたガウェンの元に行き、交代するのだった。

「2人共お疲れさん」
「お~マックス」

 マックスは私とアルジュの元にやって来て声を掛けて来た。

「大変だったなマジで」
「本当だよ」
「もう僕は動けないよ」
「ケビンなんて、となりの教室でうつ伏せで倒れてるから」

 とマックスは笑いながら話す。
 するとマックスは「そうそう」と言い忘れかけてた様に、私に話し掛け来た。

「そう言えば今、マイナ学院長とあの時に一緒にいた魔女みたいな人が来てるぞ」
「へぇ、今?」
「そう今。モーガンが魔女風のコスプレして対応してるぞ」
「状況がカオス……」

 私はニックからデザートの差し入れをしっかりと味わって食べた後、ゆっくりと立ち上がりモーガンの所へと向かった。
 だがその時私は、自分の状況をすっかりと忘れていたのだ。
 自分の格好がメイドであり、その姿でモーガンの所に行く事で余計に状況がカオスになる事を私は分かっていなかったのだった。
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