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第211話 後方の2人組
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案の定、私がモーガンがいるテーブルへ行くと、一番早く私の姿に気付いたリリエルが笑いを耐え切れず声を出して笑い始めた。
マイナは状況がどんどんとカオスになっていく事に、少し戸惑っていた。
「クリス」
「あー……何となく笑われている理由は分かったけど、もういいや」
私の言葉にモーガンは少し首を傾げていたが、特に説明する事無くリリエルとマイナの方を向いた。
「その格好似合っているね、クリス」
少し笑いながらリリエルが言って来たので、私は「どうもありがとうございます」と特に感情なく答えた。
「それで、どうしたのかなクリスさん? 何か私たちに用でもあるのなか?」
「あっ、何と言うか、この店の混雑も落ち着いたしモーガンがさっき言っていた、リリエルさんに研究発表でも見せてくればと言おうと思いまして」
「なるほど」
「クリス、そんな気を遣ってくれなくてもいいんですよ」
「いやでもよ、久しぶりに師匠と会ったんだから話したい事もあるだろ? こっちの事はもう大丈夫だし、アルジュにも俺から言っておくからよ」
「……ありがとうございます」
モーガンは暫く考えてからそう答えた。
そして、それを見ていたマイナがリリエルの方を向いて話そうとした時だった。
何故か目の前にリリエルはおらず、席を立ち上がって後方の席に座っていた2人組の女子の所へと乱入していた。
「ちょ、ちょっとリリエル先生!? 何してるんですか?」
するとリリエルはこちらに顔を向けて来ると、どうしてかその顔は笑顔であった。
「リリエル先生?」
「師匠?」
「あ~すまんすまん。ものすご~~く、興味のある話をしていたもんだから会話に入りたくてね」
リリエルは後方に座っていた2人組の女子の肩に手を回して、自分に引き寄せる様にしていた。
「リリエル先生、それにしてもその態度は良くないんじゃないんですか? そちらのお客さんにも迷惑ですよ。直ぐに離れて下さい。すいません、大丈夫ですか?」
「そんな気にする事ないぞマイナ。この2人も嫌がってないし、むしろ私と話したいらしいしな」
私たちはリリエルの言葉を聞いて「そんな事ある?」と3人で首を傾げた。
そしてマイナがリリエルの方へと近付こうとした時だった。
リリエルに抱き寄せられる様にされていた1人が「気にしないで下さい」と少し慌てる様に言って来た。
「いや、そう言われましても見るからに、うちの1人が迷惑を掛けている様にしか見えないんですが」
「本当に大丈夫ですから」
まさかの返事にマイナはどうしていいか分からずに、戸惑っているとリリエルがその2人と一緒に教室の出口へと向かい始めた。
「えっ、師匠!? どこに行くんですか?」
「ちょっとこの2人と深い話をしてくる」
「いや、リリエル先生!? ちょっと待っ――」
「マイナもモーガンもここに居て。直ぐに戻ってくるからさ」
それだけ言うと、リリエルはその2人組の女子と一緒にどこかへと行ってしまった。
「……リリエルさんって、あんなに自由なんですか?」
私はそう呟くと、マイナは椅子に座りため息をつく。
「そうね。リリエル先生は、昔から周りの目を気にしない人で自由に気ままに動く人だったわ。それでいて、あの人の技術や知識は凄いから侮れないのよね」
「そんなに凄い人なんですか、リリエルさんは?」
マイナの言葉に私はリリエルに少し興味が湧いてしまい、訊ね返していた。
「えぇ、私なんかよりも凄いわ。たぶんこの国、世界中で見たとしてもあの人に敵う人はいないわ」
「そんなになんですか!?」
「そうよ。なんせあの人は、正真正銘の魔女なのだからね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よ~し、この辺なら大丈夫だろ」
そう言ってリリエルは、先程教室で捕まえた2人の女子から手を離した。
そこは、学院内の校舎裏であり、2階からも少し人目につかない様に木々がある場所であった。
リリエルから解放された2人の女子は、直ぐにリリエルから離れて視線を逸らしながら口を開いた。
「な、何であんたがいるんだよ魔女リリエル」
「リリエル先生……また嫌な記憶がフラッシュバックするわ……」
「いやまさか、あんな所で懐かしい奴に会えるとは思わず、つい強引に連れ出してしまった」
「何がついにだ」
「おいおい、お前らだってあの場にいたマイナたちに正体がバレたくなかったから、ここまで付いて来たんだろリーリア。それにティア」
そうリリエルが教室から連れ出して来たのは、学院祭にお忍びで来ていたリーリアとティアであった。
「どうしてこうなったんだ……」
リーリアはそう小さく呟いて、ここまでの経緯を振り返り始めた。
――遡ること20分前。
リーリアとティアは、リアとライトと言う人物で呼び合って正体がバレない様に学院祭を楽しんでいた。
そんな中、ひときわ行列が出来ている出し物の所に目が止まり、ライトことティアが興味をそそられて並ぶ事になったのだった。
そのまま並び続けて、遂に店に入るとそこはコスプレ&デザート喫茶と言うお店であった。
2人は偶然にも自分たちの子供たちがやっている出し物の店に入っていたのだった。
「おいライト。あれ見て見ろ」
「ん? 何? 今メニュー見てるのだけど?」
そうリーリアがティアに小声で話し掛けて指を差した先には、ティアの息子であるルークが国王風のコスプレした姿があったのだ。
まさかの光景にティアは持っていたメニューを一度手放してしまう。
「ル、ルル、ルーク!?」
「私も目を疑ったが、あれは間違いなくお前の息子だぞ……って事は、アリスもどこかにいるってことよね」
リーリアはそう呟きながら周囲を見回していると、男子の中で女性物の服を着ている生徒に目が止まる。
そしてその顔を確認してリーリアは、不覚にも小さく笑ってしまう。
「どうしたのリア?」
「いやな、私の娘が女装と言うか、ややこしい事になっているのを見たら面白くなってしまって」
「どう言う事?」
その後2人は自分たちの子供たちに気付かれない様に、学院での様子を見ながら惜しいデザートを食べていた。
その時の2人の気分は、まるで授業参観に来た親であった。
「(本当に変わったわねルーク)」
「(思っていたよりも皆と仲良くやっている様で安心したわ、アリス)」
そのままゆっくりとしていると、混んでいた店も落ち着き始めたので2人はそろそろ教室を出ようとした時だった。
教室の入口からマイナが入って来るを見て、2人は顔を隠すようにその場に隠れた。
「マイナ!?」
「どうして学院長であるマイナが、こんな所に来るの?」
2人は小声で話していると、マイナの後に入って来た人物の顔を見て一気に血の気が引いた。
「っ!? う、嘘……」
「いやいや、あり得ないでしょ……」
始めは2人も疑って信じてはいなかったが、運悪く近くの席に座りマイナが連れの女性をリリエル先生と呼んで完全に確信するのだった。
「……どうしてここに、あの魔女がいるんだよ……」
マイナは状況がどんどんとカオスになっていく事に、少し戸惑っていた。
「クリス」
「あー……何となく笑われている理由は分かったけど、もういいや」
私の言葉にモーガンは少し首を傾げていたが、特に説明する事無くリリエルとマイナの方を向いた。
「その格好似合っているね、クリス」
少し笑いながらリリエルが言って来たので、私は「どうもありがとうございます」と特に感情なく答えた。
「それで、どうしたのかなクリスさん? 何か私たちに用でもあるのなか?」
「あっ、何と言うか、この店の混雑も落ち着いたしモーガンがさっき言っていた、リリエルさんに研究発表でも見せてくればと言おうと思いまして」
「なるほど」
「クリス、そんな気を遣ってくれなくてもいいんですよ」
「いやでもよ、久しぶりに師匠と会ったんだから話したい事もあるだろ? こっちの事はもう大丈夫だし、アルジュにも俺から言っておくからよ」
「……ありがとうございます」
モーガンは暫く考えてからそう答えた。
そして、それを見ていたマイナがリリエルの方を向いて話そうとした時だった。
何故か目の前にリリエルはおらず、席を立ち上がって後方の席に座っていた2人組の女子の所へと乱入していた。
「ちょ、ちょっとリリエル先生!? 何してるんですか?」
するとリリエルはこちらに顔を向けて来ると、どうしてかその顔は笑顔であった。
「リリエル先生?」
「師匠?」
「あ~すまんすまん。ものすご~~く、興味のある話をしていたもんだから会話に入りたくてね」
リリエルは後方に座っていた2人組の女子の肩に手を回して、自分に引き寄せる様にしていた。
「リリエル先生、それにしてもその態度は良くないんじゃないんですか? そちらのお客さんにも迷惑ですよ。直ぐに離れて下さい。すいません、大丈夫ですか?」
「そんな気にする事ないぞマイナ。この2人も嫌がってないし、むしろ私と話したいらしいしな」
私たちはリリエルの言葉を聞いて「そんな事ある?」と3人で首を傾げた。
そしてマイナがリリエルの方へと近付こうとした時だった。
リリエルに抱き寄せられる様にされていた1人が「気にしないで下さい」と少し慌てる様に言って来た。
「いや、そう言われましても見るからに、うちの1人が迷惑を掛けている様にしか見えないんですが」
「本当に大丈夫ですから」
まさかの返事にマイナはどうしていいか分からずに、戸惑っているとリリエルがその2人と一緒に教室の出口へと向かい始めた。
「えっ、師匠!? どこに行くんですか?」
「ちょっとこの2人と深い話をしてくる」
「いや、リリエル先生!? ちょっと待っ――」
「マイナもモーガンもここに居て。直ぐに戻ってくるからさ」
それだけ言うと、リリエルはその2人組の女子と一緒にどこかへと行ってしまった。
「……リリエルさんって、あんなに自由なんですか?」
私はそう呟くと、マイナは椅子に座りため息をつく。
「そうね。リリエル先生は、昔から周りの目を気にしない人で自由に気ままに動く人だったわ。それでいて、あの人の技術や知識は凄いから侮れないのよね」
「そんなに凄い人なんですか、リリエルさんは?」
マイナの言葉に私はリリエルに少し興味が湧いてしまい、訊ね返していた。
「えぇ、私なんかよりも凄いわ。たぶんこの国、世界中で見たとしてもあの人に敵う人はいないわ」
「そんなになんですか!?」
「そうよ。なんせあの人は、正真正銘の魔女なのだからね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よ~し、この辺なら大丈夫だろ」
そう言ってリリエルは、先程教室で捕まえた2人の女子から手を離した。
そこは、学院内の校舎裏であり、2階からも少し人目につかない様に木々がある場所であった。
リリエルから解放された2人の女子は、直ぐにリリエルから離れて視線を逸らしながら口を開いた。
「な、何であんたがいるんだよ魔女リリエル」
「リリエル先生……また嫌な記憶がフラッシュバックするわ……」
「いやまさか、あんな所で懐かしい奴に会えるとは思わず、つい強引に連れ出してしまった」
「何がついにだ」
「おいおい、お前らだってあの場にいたマイナたちに正体がバレたくなかったから、ここまで付いて来たんだろリーリア。それにティア」
そうリリエルが教室から連れ出して来たのは、学院祭にお忍びで来ていたリーリアとティアであった。
「どうしてこうなったんだ……」
リーリアはそう小さく呟いて、ここまでの経緯を振り返り始めた。
――遡ること20分前。
リーリアとティアは、リアとライトと言う人物で呼び合って正体がバレない様に学院祭を楽しんでいた。
そんな中、ひときわ行列が出来ている出し物の所に目が止まり、ライトことティアが興味をそそられて並ぶ事になったのだった。
そのまま並び続けて、遂に店に入るとそこはコスプレ&デザート喫茶と言うお店であった。
2人は偶然にも自分たちの子供たちがやっている出し物の店に入っていたのだった。
「おいライト。あれ見て見ろ」
「ん? 何? 今メニュー見てるのだけど?」
そうリーリアがティアに小声で話し掛けて指を差した先には、ティアの息子であるルークが国王風のコスプレした姿があったのだ。
まさかの光景にティアは持っていたメニューを一度手放してしまう。
「ル、ルル、ルーク!?」
「私も目を疑ったが、あれは間違いなくお前の息子だぞ……って事は、アリスもどこかにいるってことよね」
リーリアはそう呟きながら周囲を見回していると、男子の中で女性物の服を着ている生徒に目が止まる。
そしてその顔を確認してリーリアは、不覚にも小さく笑ってしまう。
「どうしたのリア?」
「いやな、私の娘が女装と言うか、ややこしい事になっているのを見たら面白くなってしまって」
「どう言う事?」
その後2人は自分たちの子供たちに気付かれない様に、学院での様子を見ながら惜しいデザートを食べていた。
その時の2人の気分は、まるで授業参観に来た親であった。
「(本当に変わったわねルーク)」
「(思っていたよりも皆と仲良くやっている様で安心したわ、アリス)」
そのままゆっくりとしていると、混んでいた店も落ち着き始めたので2人はそろそろ教室を出ようとした時だった。
教室の入口からマイナが入って来るを見て、2人は顔を隠すようにその場に隠れた。
「マイナ!?」
「どうして学院長であるマイナが、こんな所に来るの?」
2人は小声で話していると、マイナの後に入って来た人物の顔を見て一気に血の気が引いた。
「っ!? う、嘘……」
「いやいや、あり得ないでしょ……」
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