とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第212話 旧知の仲

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 ティアは20年振りの本物のリリエルを見て、軽く震えてしまい黙ってしまう。
 リーリアは、幸いにもリリエルが後ろ向きで座ってくれた事に安堵していた。

「ライト」
「……」
「ライト、聞いているの?」
「あっ、ごめんリア……昔のフラッシュバックが」

 ティアは軽く首を振ってからリーリアの方をしっかりと見る。

「いい、リア。まだあの魔女には私たちの存在はバレてない。だから、このまま魔力を押し殺しつつ気付かれない様に出て行くよ」
「分かったわ。リリエル先生なら、魔力で相手を判断する事も可能だからね」

 そしてリーリアはティアに目配せしてから、同時に気配を消しつつ席から立ち上がろうとした時だった。
 突然体がしびれる様な感覚に陥り、中腰の状態で止まってしまう。

「(な、何!? 何で急に)」
「(っ! これはまさか……)」

 リーリアはその感覚に覚えがあり、直ぐに視線をリリエルの方へと向けた。
 するとリリエルは席から立ち上がっており、こちらの方へと近付いて来てリーリアとティアの両肩に腕を掛けて引き寄せた。

「何やら面白い話をしている様だな」
「っ……」
「そんなに顔を強張らせるなよ、リーリア。急に魔力を押さえたのが不自然過ぎだ。やるなら徐々にやれと、昔男子寮に忍び込む時に一度言ったろ?」

 リリエルの言葉にリーリアとティアは黙ったまま軽く俯く。
 するとそこへマイナが話し掛けて来て、教室でのやり取りへと続くのであった。
 そして時は戻って、学院内の校舎裏。

「何を考えているんだ、リーリア?」
「どうしてこうなったのかを考えていたんですよ、リリエル先生」
「お前は本当に、私の事が嫌いなんだな」
「臨時担当教員の時から、好きじゃないですよ」
「ちょっとリーリア、そんなにストレートに言わなくても」

 ティアがリーリアの態度に口を出すが、リリエルはそれを両腕を組んで見ていた。

「ティア、その言い方だど貴方も私に対して似たような感情を持っているという事よね?」
「……そ、そんな事……ないです」
「はぁ~貴方ね。それでもこの国の王女なの? 私から見たら、あの頃のままだけど」
「ティアはアンタの事が特に苦手なんだよ。昔あんなスパルタ指導されるは、アンタと関わるだけで周囲から余計に目立つから、ボッチだったティアにはそれが恥ずかしくて耐えられなかったんだよ」
「そう言う事か、それは申し訳ない事をしたわね」
「後半は違うわよ! 何適当な事を言っているのよリーリア! リリエル先生も、直ぐにリーリアの言葉を信じないでください」

 リーリアはその言葉にそっぽを向き、リリエルは少し驚いた顔をしていた。

「何だ、普通に話せるじゃないか」
「ティアはアンタに対してだけやけに苦手意識あるだけで、キッカケがあれば今じゃ誰とでも普通に話せるんだよ」
「リーリア、貴方……」

 ティアはリーリアの方を睨む様に見つめていたが、リーリアはティアの方は向かずにリリエルの方へと視線を向けた。

「それで、何か私たちに話が合って連れ出したんじゃないのか?」
「……いいや、ちょっと懐かしい2人と話したくなったから連れ出しただけよ」
「はぁ?」
「え?」
「だから言ったわよね、懐かしい奴に会えるとは思ってなかったから、つい強引に連れ出してしまったって」

 リリエルからの返答に、暫くリーリアとティアの動きが止まる。

「勝手に深読みしたのはお前だぞリーリア」
「うっ……はぁ~それじゃ、本当にただここで立ち話したかっただけなんですか?」
「そうよ。歳は取ったようだけど、大きく変わっていない様でなによりだわ」
「こっちは最悪な気分ですよ。それじゃ、もう行きますよ私たち」

 そう言うとリーリアはティアに「行くよ」と声を掛けて、その場から立ち去ろうとすると、リリエルが声を掛けた。

「少し待ちなさい」

 2人は足を止めてリリエルの方を振り向くと、リリエルは2人に近付き両手を向けた。
 そして数秒間その状態を維持した後、両腕を下ろした。

「貴方たちの魔力を変化させておいたわ。これで、自分たちの子供や他の人に気付かれる事はないはずよ」
「リリエル先生、どうしてそんな事を」
「邪魔をしてしまったお詫びとしての、サービスよ」
「アンタ、そう言うちょっとしたお節介の所も変わってないんだな」

 リーリアはそれだけ言うと、先に歩き出してしまう。
 ティアはそんなリーリアを追いかけるが、途中でリリエルの方を見て「ありがとうございますリリエル先生」と言ってから立ち去っていた。
 そして残ったリリエルは、2人の後ろ姿を見て呟いた。

「私と言う存在が関わり過ぎると、何もかもが逆転しかねないからね……」

 そう呟いた後、リリエルはマイナを待たせている教室へと戻り始め、角を曲がった時に白衣を来た人物とぶつかってしまう。

「これはすいません。まさか、こんな所に人がいると――」
「お~これはまた懐かしい相手だな」
「? ……えっ!? リ、リリエル!?」
「久しいな、タツミ・カミール。20年前の戦争地帯以来か?」
「ちょっ! その話をここでするな!」

 タツミは周囲をきょろきょろを見回しながら、話を誰にも聞かれていないのを確認すると、そのままリリエルを校舎裏の方へと押し込んで行った。

「おいおい、お前の好意は嬉しいが、こんな真昼間からする様な事じゃないぞ」
「ちげぇよ! 俺はアンタに感謝はしてるが、好意はそんなにねぇよ! って、そうじゃなくて何でアンタがここに居るんだよ? 本当に容姿が全然変わってねぇな。てか生きてたのかよ」
「それはこっちのセリフだ。まさかあの時の戦争兵が今じゃ白衣を着て、この学院の教員とはね」

 リリエルは、胸に付いていた教員証を見てタツミがこの学院で医務室で医師兼教員をしているのを理解して口に出した。
 タツミは直ぐに胸の教員証を見て、そう言って来たのだと理解していた。

「俺にだって色々あるんだよ。それより、俺の質問に答えろよリリエル」
「私が死ぬわけないだろ。ここにはたまたま近くを通りかかったから、弟子を見に来たの。そしたら、懐かしい奴らに次々に会っただけよ」
「アンタ、弟子なんかしたのかよ。しかもこの学院に……ん、弟子ってまさか生徒か?」
「それ以外に誰が居るのよ。それより、タツミ貴方あの時相談して来た子とはどうなったのよ?」

 タツミはリリエルからの問いかけに、言葉を詰まらせる。
 そんなタツミをリリエルは、少しにやけた顔で見つめていた。

「そんな昔の話、どうでもいいじゃないかよ」
「ほ~う、つい最近その子と再開したか。関係性は良くないようね」
「なっ! リリエル、勝手に俺の魔力を読み取るな!」

 タツミはリリエルが片手を向けて来ていたのを、振り払い少しだけ距離を取った。

「お前が答えてくれないからでしょ。助言までしてやったんだから、どうなったかくらい知る権利が私にもあるんじゃないのか?」
「いいんだよ、俺の事は。後、もう魔力で人の記憶とか色々読み取るなよ」
「はいはい、分かりましたよ。……そうだ、その代り少しお願いしたい事があるのだけど」
「おい、何で言う事聞く代わりになってるんだよ」

 リリエルの発言にタツミは片手を腰に付いた態度で言い返す。
 するとリリエルは帽子を少し深く被りながら答えた。

「いいじゃないか、昔のよしみだろ。それに、悪い事じゃないし今後のお前の為にもなるかもしれない事なんだよ?」
「? それはどう言う事だよ?」
「それを聞くって事は、引き受けてくれるって事でいいんだな?」
「うっ……魔女め」
「何とでも言うといいさ。それに、間違ってなどいないしね」

 タツミは長考した後、深いため息をついた。
 その後タツミはリリエルのお願いを聞く事を承認し、先にお願い事とその訳を聞いた。
 すると、タツミはやけに納得した表情で改めてリリエルのお願い事を引き受けた。
 そのままタツミは、リリエルとはその場で別れリリエルはと言うと、マイナの居る教室へと戻って行くのだった。
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