とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第247話 再びの金猫探し?

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「今日はありがとうございました、エリス先輩。服のレンタルから、その、相談まで乗ってもらって」
「何言ってるの。今日は私に付き合って貰ったんだし、それくらい当然よ。それに、あの内容じゃ他の誰かに相談したくても、相談出来なかったんじゃないの?」

 エリスの言葉が図星過ぎて、私は苦笑いをした。
 そして私とエリスは、レンタルしていた服屋を出た。

「う~ん、今日は久しぶりに誰かと休日を過ごせて楽しかった。ありがとね」
「いえ、わた――じゃなくて、俺の方こそ誘っていただいてありがとうございます。どうするべきか、少しだけ分かった様な気がします」

 するとエリスは「そう」と一言だけ答えた。
 そして学院がある方へと体を向けた。

「それじゃ、帰ろうか」
「はい」

 私たちはそのまま学院へと向けて、歩き始めた。

「あの服、今度買えば? 似合ってたし」
「いやいや、高いですし買ったとしても保管場所もないですし」
「場所なら私が預かってあげるわよ」
「と言うか、何でそんなに買わせたいんですか?」
「う~ん、何となく持ってる服少なそうだな~って思って」
「持ってますよ! ここにはないだけで」
「へぇ~ちなみにどう言うの持っているのよ」
「え、え~とたしか……」

 そんなたわいもない会話をエリスとしながら、私は学院への帰路についた。
 するとそんな私たちの後ろ姿に目を止めた人物がいた。

「ん? クリスか? その隣にいるのは、エリス先輩?」
「どうしたの、急に止まって」
「あ~ごめん。いや、同じクラスの人ぽい人を見かけてね」
「ふ~ん。でも、この辺って女子向けのお店ばっかりだから、その人もデートなんじゃないのアルジュ君?」

 そこに居たのは、普段の姿より少し変装しているアルジュであった。
 アルジュの隣には、同じ学院の女子生徒が同じ様に変装して立っていた。

「(デートか。まぁ、確かに男子1人で来るような所じゃないし、そもそも後ろ姿が似てるってだけだったし。仮に本人だとしても、エリス先輩と付き合ってる訳ないか)」

 そんな事を考えていると、アルジュの腕を隣にいた女子生徒が引っ張る。

「それより早く行かないと、時間になっちゃう」
「あぁ、そうだったね。門限前にもう1件お店行くんだったね」

 アルジュは、女子生徒とそのまま腕を組んで引っ張れるようにその場を後にするのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 エリスとの休日外出から3日、私はモヤモヤしていた感情が少し晴れた様になり、数日を過ごしていた。
 と言っても、第二期期末試験までもう2週間もないので勉強をしているが、以前よりは少し息抜きをしながら進めていた。
 そんな授業終わりの日、担当教員からの連絡事項も終了し解散となったので、私は大図書館で勉強して帰ろうと思い大図書館へ向かっている時だった。
 後方から、誰かが走って近づいて来るのに気付き、私は足を止めた。
 誰か、こっちに来る?
 私はその場で目を細めて、近付いている方を見た。
 すると視界に入って来たのは、スバンであった。

「ん? スバン? ……と、何だろ。もう1人誰かいる様な気が……」
「あっ! 見つけましたよ」

 スバンはそう言って私の方へとやって来ると、右手にどう言う訳かトウマが後ろ襟を掴まれて引っ張られて来ていた。

「え!? トウマ!? 何で? どう言う事?」
「俺が訊きてぇ! てか、離せ。首がさっきから締まってるし、半後ろ向きの状態で走らせるな! 危ないだろうが!」

 と、トウマはスバンに言うが、スバンは全然右手をトウマから離そうとはせず私の方を見ていた。

「おい、訊いてんのかよスバン!」
「探しましたわよ、クリス」

 そうスバンに言われて、特に何をした訳でもなくそう言われる理由が思い付かず、私は首を傾げた。
 トウマは悲しい事にスバンに無視されてたままであった。

「この後、私に付き合ってもらえます?」
「何に?」
「掲示板依頼書にですわよ」
「えっ、掲示板依頼書?」
「は? 掲示板依頼書だって?」

 スバンの言葉に、トウマも初耳だったらしく私同様に驚いた顔をしていた。

「何で貴方まで驚いてますのよ?」
「いやいや、俺も初めて聞いたっつうの。てか、いいから手を離せよ」

 そこでようやくスバンはトウマから右手を離した。

「で、色々と訊きたいんだけど……とりあえず、掲示板依頼書ってどう言う事なんだ?」

 私の問いかけに、スバンはポケットから掲示板依頼書を取り出して私とトウマに見せて来た。
 そこに書いてあった内容は、以前何処かで見たような内容だったが私は直ぐに思い出せずにいると、トウマは覚えていたのか直ぐに口にだした。

「おい、これって猫のチャロちゃん、通称金猫探しの掲示板依頼書じゃねぇか。何でお前が持ってるんだ? もうそれは昔に解決したやつだろ」

 あ~思い出した、私が初めて掲示板依頼書をやった内容のやつだ。
 懐かしいな~モランとかレオンとかとまだ知り合ったくらいでやったものだ。
 それから数件掲示板依頼書をやったけど、最近はやってないな~
 私はそんな事を思い出していると、スバンがトウマの問いかけに答える。

「これは昔の物じゃないわよ。そもそも、達成した依頼書は回収されるでしょ」
「だから、盗んで来たのかと」
「そんな訳ないでしょ!」

 スバンの怒った態度に、トウマは「悪い悪い」と謝る。

「いい、これは私が発注した依頼書よ」
「……え? どう言う事?」

 トウマと同じ様に私は首を傾げた。
 掲示板依頼書はポイントを払えば自分でも発注できるのは知っているが、どうしてスバンが過去に達成している依頼を発注したのか理由が分からなかったのだ。

「最近街の人からチャロちゃんの姿を見ないと聞いたから、私が発注したのよ。あ~チャロちゃん今どこにいるのかしら? 心配だわ」

 スバンは遠くを見ながらそんな事を言い始めたので、私は小声でトウマに話し掛けた。

「これって、今どう言う状況?」
「俺も分からねぇよ」
「と言う訳で、以前チャロちゃん探しをした貴方たち2人も指名発注したから、今からチャロちゃん探しに行くよ」
「「……はぁー!?」」

 私とトウマは一度顔を見合わせてから、同じ驚きの言葉を口にしたのだった。
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