とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第250話 伝わらない思いと壊れゆく自分

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「う~ん、この辺にもいないね」
「そうだな。ここで、4か所目か」

 私はスバンから貰った地図のポイントにチェックをいれた。
 まだ時間は20分程しかたっていなかった。
 ほかのポイントで、ここから近いのは……
 私は地図とにらめっこして、次の場所を探すとその方向はレオンとジュリルペアが探しに行った方であった。
 う~ん、それ以外だと遠いな。

「クリス君、他のポイントは遠いみたいだし一度戻る?」
「そうだな。時間的に今戻れば集合時間前には着くし、戻ろうか」

 そして私とモランは、最初に指定された集合時間へ向けて歩き始めた。
 その道中、私はモランとたわいもない話をしながら歩いた。

「へ~シルマがそんな事をしたのか」
「そうなの。おかしいでしょ」
「確かに」
「……」
「ん? どうしたんだ、急にだまって」

 モランが急に黙り込んで立ち止まったので、私も足を止めてモランの方を向くと、モランは何かを覚悟した様な表情で口を開いた。

「あ、あのクリス君……その、急にこんな事を訊くのは失礼かもしれないんだけど……」
「しれないけど?」
「ク、クリス君は誰か好きな人はいる?」
「……ふぇ?」

 私はモランからの突然の問いかけに、気の抜けた声で返してしまう。
 モランは私の顔を直視出来ずに目線を逸らしていたが、耳が赤くなっていた。

「す、好きな人?」
「うん。そう……好きな人」
「何で急にそんな事を?」
「私が、気になる、から……」

 そこで私もモランも黙ってしまう。
 どうしてモランがそんな事を訊いて来たのか、私はその意図に何となく気が付いていた。
 どうしてこうも、似たような事が私に来るの? 今の時期が決断や判断する時期だから?
 そこで私はリリエルに言われた言葉を思い出した。
 そして私は一度深呼吸をその場で行った。
 ふ~……少し前の私なら、この状況からとりあえず逃げる事や避ける事を考えて、答えなんてうやむやにしたかもしれない。
 いや、今もそれを考えていない訳じゃない。
 でも私は、今ここで一歩を踏み出さなければいけないと思い、ゆっくりとモランに近付いた。
 考えなんてまとまってないし、心臓が今にも飛び出そうなくらい緊張している。
 あ~逃げ出したい、直ぐにでも背を向けて走り出して、こんな状況から解放されたい……でも、モランはその一歩を踏み出した。
 だから、私もその気持ちを受け止めて、私も一歩を踏み出す! それが、私の為にもなるはずだから。
 そして私はモランの目の前に立って、少し震える唇を動かした。

「今はいない……それに、俺にこれから先そんな人はできないよ」
「えっ?」
「だから、モランの気持ちには答えられない」
「……私……別に何も言ってないけど……」
「ごめん……でも、俺は居てはいけない存在だから、そんな相手に君の大切な時間を使って欲しくないんだ」
「……何で……何でそれをクリス君が決めるの!?」

 モランは顔を上げて俺の目を真っすぐに見つめて、訴えて来たがその目は少し涙ぐんでいた。
 私はその表情を見て、物凄く胸が痛くなった。
 モランが抱く私への好意はあってはいけない……今の私は存在しない人間、存在しない異性なのだから。
 私は今までモランに対して、自分が接して来た態度を振り返って、自分が取った行動が招いた結果だと後悔をした。
 自分が男子として見られているのを、軽率に思っていた。
 私は同性と話せて気が休まるから、無意識に同性同士のつもりで接していたんだ。

「どうして、そんな風に言うの? それじゃ、ただの拒絶だよ……」

 拒絶? 違う! これは、私なりの答えで、モランの事を気遣ってだした今の私なりの精一杯の答え! どうして……どうしてそれを、拒絶なんて言うのよ。
 私はモランの言葉に動揺してしまい、口には出せずどうして分かってくれないのかと思っていた。
 それが表情に出ていたのか、モランには私が歪んだ表情で苦しんでいる様に映っていた。

「っ! ……私、今日はもう帰るわ……ごめんなさい……」

 そう言ってモランは、私の隣を通り過ぎて行った。
 私はどうしていいのか、感情がぐちゃぐちゃになりその場から暫く動く事が出来なかった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その後私は、あの場で立ち止まっていたが、とりあえず集合時間へ向かわないと思い、うなだれたまま歩いて向かった。
 そんな私は傍から見たら、俯いたまま心ここにあらずの状態で歩いている変な人に映っていた。
 どうして伝わらなかったの? 言葉足らずだった? モランの気持ちを分かった気になって、答えたから? 変にモランからの問いかけを、私のきっかけにしてしまったから?
 ……やっぱり、答えるべきではなかったの? 踏み出すべきではなかったの? こんな事になるなら、向き合うんじゃなくて今まで通り適当に言い訳して逃げるんだった……

 あ~もう~! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない! 分からない!
 相手からの好意に、告白に答えないと見えない何かが自分を押し潰しに来そうになる……それに答えたら答えたで、伝わらないし、関係が、日常が壊れる……どうすれば……どうすればいいのよ! 誰か教えてよ! 私は何を選択すればいいの? 何を言えばいいの? ……誰か教えてよ……答えてよ……
 私は心の中で同じ様な事を考え続け、集合場所の噴水の時計台に到着した。

「……誰も居ない、か……」

 集合場所に誰も居なかったので、私はそこで他の人の戻りを待とうと、近くのベンチに座った。
 あ~私何してるんだろ……人の気持ちを勝手に理解した気になって、相手の為とか言って結局は自分満足の返事をして、逃げていた事に向き合えたつもりになって、結果相手も傷つけ自分も分からなくなった。
 何これ? 笑える……私て、自分で思っていた以上に弱くて、脆くて、何にも決められない奴だったんだ。
 私はベンチに座って俯いたまま、哀れな自分に呆れてかすれて声で小さく笑っていると、隣に座っていた人が声を掛けて来た。

「さっきから、辛気臭い雰囲気を出している迷惑な人は誰かと思っていましたら、貴方でしたの。クリス」

 その声に私は顔を上げると、隣には本を読んでいる人物がいた。
 私は覇気のない声で「……誰?」と訊ねると、隣の人物は読んでいた本を閉じて私の方を見て来た。

「まさか、誰? と訊かれるとは思いませんでしたわ。たった数時間で私の声と顔を忘れたのですか、クリス?」
「……っ! アルジュ……」
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