とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第251話 手を取る

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「どうしてここに?」
「そんなの、集合時間があるからに決まっているでしょ?」
「じゃ、レオンも近くに――」

 私は周囲に同じペアだったレオンも居るのかと、探そうとするとジュリルがそれを止めた。

「レオンはもうここには居ないわ」
「え?」
「私たちが帰ってきたら、あの自称親友が居て人手が欲しいとか言ったから、レオンを行かせたのよ。私はその帰りをここで待っていると言うわけ」
「……そう、なんだ」

 私はそれを聞いて、再び両手を顔の前で組んで俯いた。

「で、貴方は何をそんなに暗い雰囲気を出しているの? それにモランはどうしたのよ? 一緒だったはずでしょ?」

 ジュリルからのモランと言う名前を聞いた、私は一瞬びっくと体が反応する。
 そして私はジュリルの方を見上げて、めいいっぱい作り出した笑顔で答えた。

「モランは何か用事が出来たとかで、途中で帰ったんだ」
「ふ~ん……嘘ね」
「えっ……いや、嘘じゃない」

 私は咄嗟に嘘を見破られた事に動揺してしまい、そのまま嘘を突き通す様な言葉を返してしまう。
 何でバレたの? 顔に出てた?

「そもそも、モランはそう言う事をする子じゃないもの。しかも、基本的に滅多な事がない限り、人から頼まれた事を頼まれた本人に何も言わずに放りだす事はしないわ」
「っ……」

 私はジュリルからの言葉に、何も返せずただただ視線を逸らす事しか出来なかった。

「その反応からして、何かあったのね。しかも、それはクリス、貴方が何かを言った、もしくは行動した結果なんじゃないの?」
「!?」
「もしかして、図星?」

 そう言われて私はジュリルの方は向けず、ただ俯いていた。

「ねぇ、黙ってないで何か言ったら?」
「……俺は、ただ……モランの事を思って答えただけだ……」
「何、告白でもされたの?」
「っ……」
「え、また当たりましたの? はぁ~……なるほど、何となく状況が分かってきましたわ」

 するとジュリルは持っていた本をベンチに置いた。

「それで、モランからの告白を断って、何か言われて貴方は落ち込んでいると言う訳?」

 私はその問いかけに首を横に振った。

「それじゃ、断った事を後悔しているの?」

 その問いかけにも、私は首を横に振った。

「はぁ~それじゃ何ですの? ずっとそんな状態だと、私にも他の人にも迷惑ですわ。それとも、ずっと黙って自分だけ辛いと塞ぎ込んでいるつもり?」
「……分からないんだよ……俺は、モランの為に好意に答えられないと伝えただけなのに。どうして、それがそのまま伝わらないんだ」
「それは、クリスの言葉足らずだったんじゃないの?」
「っ! 俺は! ……いや、そうだったかもしれない。でも、俺なりにモランの事を思って答えたんだ。逃げずに向き合って一歩踏み出して伝えたんだ。俺なりの返事を……」
「ふ~ん、そうですの。でも、それはモランも同じはずですわ。貴方に好きと言う思いを伝えたのだから、貴方以上の意思で言ったはずですわ。だから、貴方だけが頑張った様に言わないでくださる?」

 ジュリルからの言葉に、私は暫く黙った後に重い口を開けた。

「違うんだ……モランはただ俺に好きな人がいるかって訊いただけなんだ。それに俺は、モランからの好意には答えられない事を早く伝えようと答えたんだ」
「はぁ? ……はぁ~それじゃ貴方は、モランの気持ちを勝手に解釈して答えたと?」

 私はゆっくりと首を縦に振った。

「もし、私もルーク様に同じ様な事をされたら、モランと同じ様に逃げるわね」
「えっ……どうして? 相手の事を思って、辛い思いをさせない様にと思って伝えた事なのに?」
「だってそれは、私の思いを伝える前に相手からそんな思いを言うな、伝えるな、抱くなと今まで相手の事を思っていた時間を、一方的に否定される事と同じでしょ?」
「いや! そんな事思って――」
「貴方が思ってなくても、そんな事をしたら相手はそう思ってしまうのよ」
「そう、なのか……俺はただ、モランの事を思って伝えただけなのに、否定していただなんて……」
「本当の所はどうかは分からないわ。でも、私だったらそう思ってしまうわよって事」

 すると、ジュリルはそこで一度背伸びをした。

「それにしても、モランも貴方に思いを伝えきれていなかったのも問題かもね? 貴方と会う時のモランが、好意を寄せていたのは何となく分かったけど、貴方今日まで気付かなかったんじゃないの?」

 気付かなかった訳じゃない……でも、それを確信したのは今日だ。
 そもそも、ジュリルの言う通り第一期の事は全然意識もしてなかった。
 ルークからの告白で、そう言う事を考えている内に気付く事が出来たものである。
 だから、ジュリルの言う事は間違っていはいない。

「さっきの話から、クリスがモランからの好意に気付いていたなら、もっと早くこうなっていたはずですわ。でも、そうなってないという事はあながち間違えでもないって事ですわよね? それに、貴方自身にも何か心境の変化があったのでは? 今まで通りのクリスでしたら、こんな事になっていないはずですもの」
「……確かにそうだな。俺が変わらなきゃと思った結果だ。でも、こんな事になるなら、変わらなきゃよかった……そしたら、関係も、日常も壊れずに済んだのに」

 私はジュリルから言われた言葉に頷き、ぼそぼそと独り言を呟いた。
 するとそれが聞こえたのか、ジュリルが話し出す。

「確かにそうよね。告白とか相手に好意を伝える行動って、伝える人の代償と言うか求められる物が多くて不公平ですわよね?」

 突然そんな事を話し出した事に、私は軽く首を傾げた。

「そりゃ理想は、好きな人から言ってもらえるのが一番ですわよね。それなのに、こちらが意を決して伝えても、向こうから帰って来るのはYESかNOのどちら。どうしてですの? 辛くて苦しくてどうしようもなくなって、そこまでしてようやく伝える覚悟を決めてるのに、向こうは対してそんな事もなく平然と答えるかもしれないのですわよ?」
「……まぁ、そうだし、言われる方も急に言われるからそうなるのは、仕方ないんじゃない?」
「そうね。確かにそうよ。所詮、理想を掴むためには何かを犠牲にするしかないのよね」

 そうさ、告白なんて相手との関係、これまでの日常を失ってしまうかもしれないと思ってする事。
 思いを伝えるだけで、どうしてそんな大きな物を失わなければならないの? どうして、そこまでして相手に好意を伝えるの? そこまでする事なの? ……私は、モランにそうさせない様にして、失敗した。
 そんな風に、私がまた塞ぎ込み始めた時だった。

「でも、相手にそう言う気持ちを伝えるって大切なことよね?」
「……どうして? 何かを失うかもしれないのに、気持ちを伝える事が大切なの? 今まで築き上げた物を代償にしてまで、する事なの?」

 私が少し食い気味にジュリルに言い返すと、ジュリルは私の方を向いて目を真っすぐに見て来た。

「クリスは、告白を何かを失う事だと思っているのね?」
「そうだろ? する側も、される側も、その決断で全て変わってしまうじゃないか! 失いたくないと思うのは当然じゃないのか? そう簡単に戻る物じゃないだろ!」
「そうですわね。付き合っても長続きしないかもしれない、断ったら関係性が変わるかもしれない。確かにクリスの言う通り、いい事なんてない様に思えますわね」
「……そうだろ」
「でも、気持ちを相手に伝えたと言う大きな一歩は踏み出せますわ。それに、関係や日常と言った事は失われるんじゃ、壊れるわけじゃですわ。新しく生まれ変わるのですわよ」
「っ……生まれ、変わる?」

 私は想像もしなかった考え方に驚いてしまった。

「確かに、関係が終わる事もあるかもしれませんわ。でも、気持ちを伝えただけで終わる様な関係は、所詮その程度の相手だったと割り切ればいいのでわ。そうではない相手とは、関係が失われていないから、関係性が変わったという事ですわ。まぁ、これに関しては親友の言葉だったり、本などの影響もありますけど、そう思うと悪い事ばかりじゃない様に思えません?」
「……」
「何故黙るのですの? 私が何か変な事を言ったみたいではありませんか」
「あっ、いや、その何て言うか、思いもしない所から殴られた的な感じで」
「別に殴ってなどいませんわよ?」
「分かってるよ。驚いたって言うか、そう言う風に考えられなかったし、考えようともしなかったから……」

 私がキョトンとした顔でジュリルを見ていると、ジュリルは前の方へと視線を移動させた。

「所詮は、自分がどう思うかなんですから、悪い方じゃなくていい方になるべく考えた方がいいに決まっているじゃない。夢とか目標と同じですわ」
「夢と同じ?」
「そう、こうなりたいこれをやりたい、だからこうしようああしよと行動をとろうとするじゃない? もしなくても、いい方向に進もうと決めて進めば必ず自分にとって良い未来に辿り着くと、私は思っているわ」
「それは、何でもいいから自分の為になる事をすればいいって事?」
「何でもと言うより、絞った方がいいと思うわ。だから、そう言う時は立ち止まって、進む方を悩めばいいと思うわ。だって、進んでしまったら時間はもう戻りはしないのだから、進む方を選ぶのに時間を使った方がいいと私は思うわ。あれ? 何か話が変わってしまったわね」

 進むんじゃなくて、立ち止まって進む道を考えるか。
 すると、ジュリルが急に立ち上がって私の方に指を差して来た。

「ともかく、クリス貴方はなるべく早くモランと会って、もう一度話し合うべきだわ。いいこと? 後、その落ち込んでますオーラ出すの、もうやめて下さる?」
「あ、あぁ。分かった」
「ん」

 そう言って、ジュリルが私に向けていた手を開いて差し出して来た。

「ほら、座っていたらその暗い感じから完全に抜けだせませんわよ。それに私も待っているのも飽きましたわ。だから、立ち上がってレオンたちの方へ行きますわよクリス」
「あぁ。そうだね、ジュリル。……ありがとう」

 私はそう言って、ジュリルの手を取って立ち上がって前へと歩き出した。
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