とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第252話 気まぐれ猫と熱い抱擁

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「お~お前は可愛いな~」

 とある屋根の上で、しゃがんだ姿勢で金色の毛並みの猫を可愛がる青年の姿があった。
 猫は青年に気持ち良さそうに撫でられていた。

「お前は俺と一緒に居てくれるのか?」

 青年の問いかけに猫は鳴いて答えた。
 それ聞いた青年は少し嬉しそうな顔をして、猫を撫で続けた。
 すると、途中で猫を撫でる手が止まる。

「……こんな所まで来て、何の用ですかリリエル先生?」

 青年から離れた背後にいたのは、リリエルでありそれを聞いたリリエルは驚く事もなく言葉を返した。

「お前、猫が好きだったのか? バベッチ?」

 そう呼ばれた青年は立ち上がって、リリエルの方を向いた。

「いいえ。別に好きじゃないですよ。こいつが、1人寂しそうにしてたので声を掛けて話し相手になっていただけですよ」
「ほぉ~私には、お前の方が寂しそうに見えたがな」
「そうですか。それで、先生は懲りずに俺の尾行ですか? それとも、何かしない様に見張りでもしに来ましたか? まぁ、どっちにしろご苦労様ですね」
「まさかお前に労われるとはね。どうもありがとう、バベッチ」

 バベッチはリリエルの反応には、何も答えずじっと見つめた後口を開いた。

「そう言えば、貴方の基本方針は傍観者でしたよね?」
「えぇ。基本的には、ね」
「では何故、彼女らに深く入れ込んでいるんですか? それは貴方として、やってはいけないんじゃなかったんですか? それともあの時の俺には関心が湧かなくて、彼女たちに肩入れしたくなったという事ですか?」

 リリエルはその問いかけに黙り込んでしまうと、バベッチはため息をついた。

「黙るって事は認めるんですね。呆れましたよ、150年魔女としての務めをどんな状況でも貫いて来たと言うのに、ここに来て彼女たちに肩入れですか?」
「……」
「まぁでも、リリエル先生が肩入れするって事は、この先に待っているのは俺が想像する未来って事ですよね? 俺知ってるんですよ、魔女は一時代を見どける存在って事を」
「何の事を言っているのか、私にはさっぱりだ?」
「そうですよね、言えませんよね。でも、それでいいですよ。なんせ今日、俺の未来が確定している事が知れたんですから。もうそんな事、どうでもいいですからね」

 そう言うとバベッチは、不敵に笑いリリエルに見下す様な表情を向けた。
 すると、その時下の通路から誰かを探す様な声が聞こえてくる。

「チャロちゃん~、ここにいるんでしょ~。出てきな~」

 バベッチは、その声に反応し下を軽く除くと王都メルト魔法学院のスバンが声を出していたのだと分かる。
 直後、その声に反応したのかバベッチの足元近くにいた猫が反応し、鳴き声を上げる。
 そして猫が名前を呼ぶ方へと歩こうとすると、バベッチが進行方向を足で塞ぎそのまま猫を抱き上げて、顎の下を撫で始め猫はされるがまま動けなくなってしまう。

「おいおい、俺を置いて行かないでくれよ」
「やっぱり猫が好きなんじゃないか?」
「違いますよ。もうこいつは、俺と一緒に行くんですよ」

 そう口に出した後、突然猫がバベッチの手を噛んだ。
 そして、バベッチから離れて威嚇をした後、その場から逃げて行った。

「噛む事ないだろ……」

 バベッチはそう呟き、噛まれた所を軽く舐めた。
 すると下の方が少し騒がしくなっていた事に気付き、バベッチが視線を向けるとそこには、スバンの所にトウマとルークが合流し、同じ様に誰かを探し始めた。

「さっきの猫みたいに、お前の思い通りに行かない事もあるぞ。手に入れたと思ってもな」
「忠告ですか? でも残念、もう布石は打ったんで、後は時間の問題ですよ」

 バベッチが自信満々にそう答えた時だった、聞き覚えのある声が下から聞こえて来て再び視線を向けた。
 視線を向けた先には、スバンたちにアルジュとルークが合流している姿があった。
 その姿に何故かバベッチは少し驚いていた。

「どうしたバベッチ? もしかして、クリスがいる事に驚いたか?」

 リリエルの問いかけに、バベッチは視線をリリエルの方に戻して答えた。

「クリス? はて? 誰ですか、それ」
「とぼけるな。どうせ見ていたんだろ、クリスが壊れた所を」

 バベッチはそこでうっすらと笑った後、その場から一瞬で姿を消した。
 リリエルはそのままバベッチを追う事はせずに、屋根の上からスバンたちを見下ろした。

「お~い、捕まえたぞチャロちゃんだ!」
「チャロちゃん~!」
「さすがトウマ。猫探しのプロだな」
「いや、ちげぇから。変な異名を付けるなレオン」
「よくやったわ、自称親友」
「見つかって良かった」

 下では、トウマが目的の金猫ことチャロちゃんを見つけ抱きかかえており、そこにスバンが奪い取る様に抱きつき皆がその周囲に集まっている姿があった。

「ひとまず、あっちはひと段落ついたようね」

 リリエルはそう呟くと、覗くのをやめた。

「にしてもバベッチの奴、何故急に街に来たんだ? クリスを見ていたのは確実だが、何もしないで帰るとは。てっきり、声でも掛けるかと思って警戒していたが……やはり私のせいか?」

 そんな独り言を呟いた後、リリエルはその場からバベッチ同様一瞬で消え去るのだった。

「これで完了だな。今日で見つかって良かった~。何か安心したら腹減ったな。なぁ、何か食べて帰らないか? せっかく外出したんだしよ」
「私はチャロちゃんを送り届けるので、パス」
「あ~俺も今日はちょっと……」
「私も歩き疲れたので、帰りますわ」
「えっ、何だよノリ悪いな。外出して猫探して帰るだけとか、勿体なくねぇか? って、おい話聞けよ」

 そう話すトウマを後に、スバンたちは歩き始めていた。
 そして残っていたのはレオンだけであり、レオンはそんなトウマの肩を軽く叩いた。

「仕方ない。僕で良かったら、付き合ってあげるよ」
「レ、レオン……お前って奴は、何ていい奴なんだ~!」

 するとトウマは突然レオンに抱き着いた。

「ちょ、ちょっと!? こんな所で抱き着かないでくれる?」
「うぉ~お前だけが俺の支えだ~ありがとうレオン~」
「分かった、分かったから、離れてくれないかなトウマ? 他の人からの目線がちょっと……」

 その後トウマがレオンを暫く離す事無く、通りかかる街の人たちからちょっと変な目で見られるのであった。
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