とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第263話 第二期期末試験⑨~チームとして~

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「邪魔者って1人で来るんじゃないんですか?」
「ケビン、それも君の勝手な思い込みだ。ルールでそう決められている訳じゃないだろ」
「た、確かに……」

 ケビンは簡単にミカロスに言い返されてしまい、納得してしまう。

「さて、俺たちの役目としてはお前たちをこのままずっと足止めしていればいい訳だ。仮に反撃しようとしたとしても、背後のエリスが一撃でお前たちを叩く。まぁ要するに、お前たちは詰みだ」

 ミカロスから現実を叩きつけられて、ルークたちはこれで終わりじゃないと思いつつも、突破口が見つからずその現実を受け入れ始めていた。

「(邪魔者が先輩たちって時点で厳しいのに、協力して邪魔してくるとか無理でしょ……)」
「(これは本当にミカロス先輩が言う通り、詰みかもしれないな。前にはミカロス先輩、後ろにはエリス先輩か。何か策はあったりするのかね、うちの王子様は)」
「(どちらかを相手しても、もう一方にやられる。仮に連携してチーム内で同時に動いたとしても、背後を取ってるエリス先輩がいち早く気付き、必ず潰して来る。しかも、俺とフェルトは完全にマークされてる)」

 ルーク以外の2人は既にどうしようもないと、諦め始めていたがルークだけはまだ諦めてはいなかった。
 それはそれぞれの顔に表情として出ており、ミカロスは各自の微妙な表情を見て3人の考えを予測していた。

「(ケビンは折れ、フェルトはルーク次第って所か。それで、チームの中心のルークだけはまだ諦めてないって言う顔だな。本当にこの数カ月で、オービンの弟のイメージが書き変わるな)」

 ミカロスはルークの存在については以前から知っていたが、あまりいいイメージを持っていなかった。
 兄への異常な執着、プライドが高く自己中心的な相手だと噂から勝手に思っていたのだった。
 しかし、大運動会付近からそのイメージが変わり始め、オービンとの関係修復後からは完全にそのイメージはなくなり始めていた。

「(オービンの弟だからと言って、オービンと同じわけではない。さぁ、お前はどうやってこの窮地を抜ける?)」

 ミカロスはルークの行動を見守っていると、ルークは暫くして深いため息をついた。
 そして少しうなだれる様な体勢になり俯いた。

「……ダメだ。この状況を突破できる策が思い付かない」
「(そうか。結局、諦めるか)」

 ルークはそんな事を呟くと、ミカロスの方を見上げた。

「ミカロス先輩、降参です」

 そう告げた後、ルークはゆっくりと両手を開かずに頭の所まで上げた。
 そして両手を顔の高さで止めると、エリスが何かに気付き突然声を出した。

「っ! ミカ! 手を――」
「!?」
「もう遅い」

 ルークはそう呟いて閉じていた手を勢いよくミカロスに向けて開くと、両手から閃光が発さられて全員の視界が一瞬にして奪われる。

「(魔法か? いや、魔道具か!)」

 ミカロスは両腕で顔を覆いながら一瞬で何が起こったのかを分析してると、ルークが声を発した。

「フェルト!」

 突然名前を呼ばれたフェルトは、その意味を瞬時に理解し地面に向けて魔力分類の創造を使い、一瞬でエリスとの間に壁を創りだした。
 その後ルークが発した閃光で奪われた視界であったが、それは直ぐに戻り始めていた。

「何!? 何が起こってるんだ!?」
「ルーク。君が魔道具とはね」
「それこそ、思い込みってやつですよ先輩」
「ルーク、そんな悠長におしゃべりしてられないぞ! こんな遮断した壁なんて、あのエリス先輩なら――」

 と、フェルトがルークに話し掛けた直後、フェルトが咄嗟に出来る限り何重にもして創り上げた壁の一部から、巨人の様な拳が突き出て来た。
 そしてその拳が引っ込むと、その穴の奥にはエリスが立っていた。

「私ならこんな壁、風の魔人で突き破れるわよ」

 エリスの背後には風で創り出された巨人が見えており、巨人はその直後壁に向かって再び拳を叩きつけた。
 エリスを隔てた壁が壊され始め、ケビンは慌てフェルトも苦い顔をするも、ルークは冷静であった。

「それは分かってますよ。俺の考えた策は、貴方を隔てる事じゃない!」

 するとルークは、目の前にいたミカロスとの間にフェルトが創り出したのと同様の壁を創り出した。
 それはエリスが壁を完全に破壊するのと入れ替わる様に完成し、その光景を見たエリスは意外な行動に少し驚いていた。

「なるほどね。ミカよりも私を選ぶのね。普通逆じゃない?」
「確かに貴方よりミカロス先輩と戦った方が、勝ち目はありますけど、貴方とこの状況で分断するのは難しい。俺たちがどうな事をしても、貴方1人を閉じ込める事は出来ないと分かってます」
「だからと言って、3人で私に勝つつもり?」
「1人よりも勝率は高いと思いますよ」

 ルークはそう言うと、ケビンとフェルトより少し前に立ち戦闘をするかまえをとる。
 そんなルークの背中を見ていた2人は、直後ルークからのメッセージを受け取り小さく頷いた。
 一方でエリスは、一度呼吸を整えていた。

「(男子とこうやって真正面かやり合うのは初めてね。しかもオービンの弟もいるなんて、ちょっと燃えるわね)」
「エリス先輩、覚悟はいいですか?」

 ルークはそう訊ね、片手を銃の様に構えそれをもう片方の手で支えるポーズをとった。
 そのまま指先に魔力の球体を創り始めた。

「手加減なしで叩き潰してあげるわ!」

 エリスの言葉を聞いたルークは小さく呟く様に「ありがとうございます」と言い魔力球体をエリスの頭上の壁に向かって放った。
 直後、エリスの頭上の壁が一気に崩落し始め思いもしていなかった事に一瞬対処が遅れるエリス。
 そんな中、フェルトとケビンはルークが魔力球体を放ったのと同時に塞がれた来た道の方に近付き、『バースト』『ブリザード』と言った魔法を全力で放っていた。
 そこにルークも直ぐに合流し『ガスト』を放ち、塞がれていた檻を3人で破壊する。

「よし! 壊れた!」
「さっさとおさらばするぞ」
「行くぞ!」

 と、3人がその場から逃げ出そうとするが、エリスが動きを抑えられていた瓦礫を粉々にし、ルークたちの方を見るのだった。

「あ~やれた。最初から戦う気はなかったて事? あんなにやる気満々そうだったのに」
「こんな状況じゃなければやりましたよ。でも今は試験なんで、チームとしてこの状況からいち早く離脱する事を選んだだけです」

 そうルークが答えると、一気に3人で来た道を戻り始めた。

「ちょ、ちょっと待ちな――って、もうあんな遠くに……はぁ~やっちゃった」

 ルークたちは走り出してから、直ぐにルークの風魔法で背中を押すように加速させて一気にこの場から離脱するのだった。
 エリスはもう見えなくなったルークたちの方を見て、ため息をつき肩を落とした。
 そしてルークが創り出した壁を風の魔人で破壊しミカロスと合流した。

「ごめんミカ。逃げられちゃった」

 少し落ち込むエリスに、ミカは優しく声を掛ける。

「気にするなエリス。お前だけの責任じゃない」
「……そうね。あんなに真正面にいてルークの指輪の魔道具に気付かないミカも、ミカよね」
「うっ……痛い所を突くな」
「まぁ、それは置いといて。どうするミカ? 追う? やろうと思えばまだ追いつくけど」

 するとミカロスは首を横に振った。

「追撃はしない。俺たちは邪魔者だ。そこまでする必要はない」
「了解。で、これからどうする?」
「一度場所を変えよう。さっき会ったイルダの方に行く。少し気になるしな」
「あ~あのイルダね」

 その後ミカロスエリスは共にその場を後にするのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【トウマ班】

「いやいやいやいやいやいや! 無理無理無理無理!」
「やばいって! これはやばいって!」
「叫んでねぇで、足を動かせお前ら!」

 トウマ、リーガ、ライラックは何故が物凄く叫びながら全力疾走で何かから逃げていた。
 そのままダンジョン内の入り組んだ道を走り、偶然にも再び開けた場所に着き足を止めた。

「ここまで来れば、大丈夫だろ」
「もう無理……走るの辛い……」

 リーガは壁にもたれ掛かり、ライラックはその場で座り込み、荒れた息を整えていた。
 トウマも両手を膝について息を整えていた。

「くそ……マジで疲れた。てか今どこなんだここ?」
「ここはね、トウマ君たちがスタートした場所から左斜めに進んだ方にある目印付近辺りだよ」
「あ~これはご丁寧にありがとうございま――えぇ!? な、何でまたいるんですかオービン先輩!?」

 トウマの背後に立って話し掛けたのは、オービンであった。
 そう、トウマたちも邪魔者と遭遇していたが、その相手はオービンであったのだった。
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