とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第264話 第二期期末試験⑩~チームリーダー~

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 ――遡る事数十分前。

「いや~マジで迷路過ぎでしょ、ここ」
「おいライラック、愚痴ってないでお前もどうすれば脱出できるか考えろよ」
「そうだぞライラック」
「いや、お前もだよリーガ」

 トウマは足を止めて振り返り、後ろにしたライラックとリーガに突っ込んだ。
 ライラックは、両手を後頭部に当てながらそっぽを向いており、リーガは自身の腕の筋肉を見ていた。
 その態度にトウマは呆れてため息をついた。

「あのな~お前らやる気あるのかよ?」
「そりゃ試験だからな、やる気満々だぞ。今もこうやってどうしようかと考えてた所だ」
「だからこうやって筋肉をだな」
「いやいや、リーガはやる事がちげぇし! ライラックはそうやってさっきからボーっとしてるだけだろうが!」

 そうトウマに図星を付かれて2人は、トウマから目線を逸らした。
 その後2人は心を入れ替えトウマと共に目印を探し始めた。

「お~いトウマ。あったぞ! こっちだ!」

 リーガが声を上げると別方向で探していたトウマとライラックがやって来た。

「お~本当だ」
「凄いなリーガ!」
「いや~たまたまだよ」

 少し照れながらリーガは頬をかいた。
 そして3人は目印の元へと近付き、トウマが地図を出してどの位置かを確認した。

「うわっ、マジか……スタート地点から滅茶苦茶離れてるじゃねぇか」

 トウマの言葉にリーガとライラックが地図を覗き込んだ。

「本当だ」
「他のチームのスタート地点は分からねぇけど、別のチームと近いって事じゃねぇのか?」
「それはかなりヤバいね」
「だよな」
「そうしたら、早くこの場から逃げた方がいいんじゃないのか?」
「確かに。ナイスライラック!」
「え? 何急に?」
「はぁ? 今俺に話し掛けたのライラックじゃねぇの? じゃ、リーガ?」
「いや、俺でもないぞ」
「えぇ? じゃ誰なんだよ」
「俺だよ俺」

 その発言が真後ろから聞こえて来て、3人が一斉に振り返るとそこには笑顔で軽く手を上げたオービンが立っていた。

「「……え」」
「やぁ、偶然だねトウマ君。リーガ君。ライラック君」

 3人はまさかの人物との遭遇に驚きその場で暫く固まってしまう。
 そして少し震えながらトウマがオービンを指さして呟いた。

「オ、オービン先輩?」
「あぁ。そうだよ」
「あはははは……はぁ~……え~と、何でここに?」
「それは邪魔者として、君たちを邪魔する為に探していたんだよ」
「ですよね~」

 その直後、オービンとトウマたちは同時に笑い、笑い終えるとオービンが真面目な顔をして口を開いた。

「それじゃ、準備はいいかな?」
「見逃してくれたり……」
「ないね」
「もうちょっと離れてくれる事も」
「ないね」
「筋肉を見せてもらう事も」
「ない……え、筋肉?」

 と、リーガの突拍子もない質問に一瞬戸惑ったオービンを見て、トウマたちは一斉に来た道を全力疾走で走り出した。
 その後、トウマたちは声を上げながら迷路を逃げ続けるが、行く先行く先で毎回オービンが先回りしている為、トウマたちは逃げ続ける事になっていたのだった。
 ――そして時間は戻り、現在。

「本当、何でまた居るんですかオービン先輩」
「ん? それは俺がこのダンジョンを知り尽くしているから」
「それだけじゃないですよね? 不正とかしてるんじゃないんですか?」
「そんな訳ないだろ。そもそも、不正ってどんな不正だよ?」

 その問いかけにトウマは、暫く考えた後答えた。

「た、例えば邪魔者しか知らない道があるとか」
「それは君たちがまだ道を知らないだけだ。よく知れば、近道もあるだろうな」
「ぐぅっ……やっぱりあるんじゃないですか!」
「でもそれは不正じゃないぞ。知っているか、知らないかの差だ。よく言っている人がいるだろ、世の中不平等だって」

 ルークはオービンの返事に言葉を返す事が出来なかった。

「(くっそ! また逃げてもどうせ追い付かれる。と言うか、もう走り疲れて俺もあいつ等も足が限界だ。かと言って、ここでオービン先輩と戦っても勝てる気がしない。てか、無理だろオービン先輩相手とか!)」

 トウマはチラッとリーガとライラックの方を見る。
 リーガは未だに壁にもたれ掛かり、ライラックは何とか立ち上がってはいたが、完全に息が上がっていた。

「さて、もう追いかけっこはやめようじゃないか。俺もずっと同じ魔法を使うのが疲れてね」
「……ん? 魔法?」
「おや? トウマ君なら、俺が全力で逃げる君たちに追いつける訳ないと分かっているんじゃないのか?」

 その発言でトウマはオービンの体の状態を思い出した。

「(そうだ……そうだよ。あり得ないじゃないか。オービン先輩が追って来れる様じゃ体じゃない。てことは)」

 と、そこでトウマは行く先行く先で何故オービンが居るのかにようやく気付く。

「その顔は、気付いたようだねトウマ君」
「そう言う事だったんですね」

 トウマの発言に、2人は首を傾げ「どう言う事だよ」と訊ねた。
 するとトウマはオービンの奥にある物を指さした。
 2人はトウマが指さした方を目を凝らして見ると、そこにはリーガが最初に見つけた目印があったのだ。

「はぁ!? また戻って来たのか?」
「あぁそうだ。俺たちはずっとオービン先輩から逃げていたと思っていたが、そうじゃなく戻ってくるように魔法を使われていたんだよ」
「へぇ? どう言う事だよ」
「それはね、俺が君たちの来た道に細工をしたのさ」

 トウマが口を開く前に、オービンが自身で答え始めた。
 オービンは今いる場所でトウマたちに出会った様に見せていたが、本当はリーガが一度この場所を見つけた時にオービンがリーガの後を付けてトウマたちを見つけていたのだった。
 その時に道を魔力分類の創造で行き止まりにして、どう走り回っても同じ場所に帰ってくるようにしていたと告白した。

「嘘だろ……」
「俺の役目は邪魔者。だから、君たちの足止めをしただけさ。ただそれだけの事さ」
「(うっ……最悪だ。逃げ道はない、目の前には学院最強のオービン先輩。こんなのどうしようもな――)」

 とトウマは勝手に諦めそうになった時だった、先程オービンに言われた言葉を思い出した。

「(全力で逃げる俺たちに追いつける訳ない……そうだ。今のオービン先輩は俺が知っている最強無敵超人じゃない。なら、さっきのリーガの唐突な質問みたいに、一瞬の隙を作ればこの場から逃げられるかもしれない)」

 その思い、オービンの奥に目を向けるとそこには2本の道が分かれる様に続いている事に気付く。
 そしてそのままリーガとライラックを見るが、2人も先程のトウマの様に諦めた様な表情になっていた。
 するとトウマは、オービンを前にしてそのオービンに背を向けて2人に声を掛けた。
 オービンはそのトウマの行動に少し驚いていた。

「諦めんなお前ら!」
「「っ!?」」
「まだ試験は終わってねぇ! ただオービン先輩が目の前に居るだけだ! 俯くな! 顔を上げて俺を見ろ!」
「んなこと言ってもよ、あのオービン先輩だぞ」
「そうだよ。無理だよ。逃げ道もないし、どうしようもねぇって」
「進む道なら奥に2本もある! お前らはこの実力試験で学科試験のつけを払うんだろうが! それとも、このまま諦めてまたドベ争いでもするつもりかよ!」

 さすがにその言葉には耐え切れず2人も言い返した。
 だが、最終的には後ろ向きな発言へと戻ってしまった。
 その理由が「オービン先輩が相手じゃ仕方ない」「相手が悪い」「運がなかった」などと、現状を変えようと試みずただ立ち止まり、そうなるんだとただ受けている奴らの言葉であった。
 それを聞いたトウマは問い返した。

「じゃ、その要因がなければいいんだな」
「要因?」
「そうだよ。お前らは結局、オービン先輩が立ち塞がってるから、こんな所で会ってしまったからとか、そんな事を言ってるんだろ? 違うか?」

 2人はトウマの問いかけに黙って答えた。
 トウマはそれをイエスと受け取ると、小さく深呼吸し。

「なら、俺について来いお前ら」
「っ!?」

 そう言ってトウマは振り返りオービンの方を向いた。

「俺が、オービン先輩を退けてやるよ」

 そう言った直後、トウマの両目は碧く輝いた。
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