とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
267 / 564

第266話 第二期期末試験⑫~意見の対立から解散~

しおりを挟む
 ヴァンがマルロスに答えた瞬間、その場が一瞬静寂に包まれた。

「(置いて来た? どう言う事だ? チームは3人1組って聞いていたが、喧嘩でもしたのか?)」

 マルロスはただじっとヴァンとシンリの方を見ていた。
 するとヴァンが、そっぽを向きながら大きくため息をついた。

「あ~もうあいつの事を思い出すだけで、気分が最悪になるよ」
「ヴァン、そこまで言わなくても」
「シンリはそう思わないのか?」
「いや、僕はそんなに……と言うか、ヴァンとヒビキ先輩の相性が最悪なだけの様な」

 シンリは最後に小さく愚痴を吐いた。

「て言うか! あいつの話はもういいんだよ! 今はあんただよ、あんた」

 ヴァンはそう言ってマルロスを指さし、宣戦布告をし始めた。

「あんた邪魔者だろ? 僕たちを邪魔しに来たってことなら、受けて立つ! ちょうどイラついていた所だったし」
「えっ!? い、いやヴァン何言ってるんだよ! 無理に決まってるだろ。て言うか、勝手に突っ走らないでくれよ!」
「弱腰になるなよシンリ。いずれはぶつかる運命なんだから、いいだろ」
「全然良くないよ!」

 2人はマルロスを前にして言い合いを始めてしまう。
 それを目の前にマルロスは少し困惑していた。

「(これはどうしたのもか? 止めるべきか? いや、既に宣戦布告されているから、攻撃をしてもいいのか? ……何だか調子が狂うな)」

 とマルロスが一瞬ヴァンたちから目を離した直後だった。
 シンリがマルロス目掛けて手を突きだし『アイス』を放つと、瞬時にヴァンが氷の塊を魔力技量で形を変え、鋭い数本の刃へと変えた。
 不意を突かれたマルロスは、反応が遅れたが『ストーム』を盾の様にして放ち、氷の刃を弾いた。
 そのまま一旦距離を取るためにマルロスは後退した。

「(いや、驚いた。さっきの演技だったのか? いや、そんな風には見えなかったが、急に阿吽の呼吸の様に連携するとはね)」

 マルロスは2人の行動に驚き、少し関心していたが、その2人は何故かまた言い合いをしていた。

「おいシンリ、もっと早く出せなかったのかよ!」
「あれでも十分早かったろうが。文句言うなよ。咄嗟に合わせてやったんだから」
「嫌々な感じで言っているが、おまえも賛成した事だろうが」
「(またか……だが、もう構いはしない。邪魔者として彼らの足止めを始める)」

 するとマルロスは、力強く地面を蹴ってヴァンたちとの距離を一瞬で詰める。
 そしてヴァン目掛けて左足蹴りを繰り出す。

「っ!? うっぅはぁ!」

 何とか咄嗟に両手で防ぐヴァンであったが、そのまま振り抜かれてしまい吹き飛ばされてしまう。
 そのままマルロスは流れる様に隣にいたシンリの腹部目掛けて、右肘打ちを繰り出した。
 シンリはそれを防ぐことが出来ずに、もろにうけてしまいその場に膝から崩れ落ちる。
 すると先程蹴り飛ばしたヴァンが『ガスト』を放って来たが、マルロスはすぐさま後退し避けると、そのままマルロスとの距離を再び詰めると両襟を掴み壁へと押し付けた。
 その時ヴァンは少し地面から浮いた状態であった。

「くそ! 離せ!」
「えぇ、もちろん。直ぐにでも離しますよ」

 そう言ってマルロスは両手を離すと、少し落下してくるヴァンの腹部目掛けて左腕を勢いよく食い込ませた。
 ヴァンは防ぐことが出来ずに、そのまま崩れ倒れうめき声を出していた。

「うぅぐぅ……戦闘が……苦手なんじゃ……」
「苦手ですよ。だって、弱いからね」
「どこが……」
「イルダと比べたら、自分なんて下の下だからね」

 するとマルロスは地面にうずくまる様になっているヴァンの両手首を掴むと、そのまま壁に押し当て魔力技量で手枷を作り、壁と繋いだ。

「暫くすれば外れる様にしているか、ここで暫く休んでいてね」

 そうヴァンに伝えると立ち上がり、うずくまっているシンリの方を向く。

「(さて、あと彼も同じ様に繋いでおしまいだな)」

 マルロスはそんな事を思いつつ一歩踏み出すと、そこへある人物がやって来た。

「おいおい、何だよもうやられているのかよ。ダセェな」
「ぐぅ……な……何しに来た……んだよ、あんた」
「何って、ただ歩いていたらここに着いただけだ」

 そう呆れた様に話すのは、ヴァンとシンリの助っ人としてチームの1人であるヒビキであった。

「ヒビキ」
「ん? マルロスか」

 マルロスがそこへ現れたヒビキの名を呼ぶと、ヒビキはマルロスの顔を見て片手をポケットに突っ込み、倒れているヴァンの方へと視線を向けた。

「だから言ったろ、オービンを支持してる奴は大した事ないって」
「ふざける……な! オービン先輩を馬鹿にするんじゃない! あの人は凄いんだ!」
「はっ、どこが凄いんだが。ただのお節介野郎に過ぎねぇよ。勝手にオービンに自分の理想を乗せるな。あいつは凄くねぇんだよ」
「まだ言うのかよ! 同じ寮で同じ学年の癖に、目が曇ってるんじゃないのか、先輩!」
「そんな訳ねぇだろ。あ~あ、まさかオービンに陶酔している奴がメンバーとか、マジで無理だわ」
「それはこっちのセリフだ! 僕こそ、オービン先輩を貶すあんたとチームとか願い下げだね!」

 マルロスは、またしても言い合いを見せられて呆れていた。
 そしてマルロスは一応念の為、ヒビキに問いかけた。

「ヒビキ。一応訊くが、お前はこの2人のチームでいいのか?」
「違う。と、言いたいが試験上はそうなってる。俺がこいつら2人の助っ人として入ってるんだよ。まぁ、こいつとはオービンとの事で意見も考えも会わねぇから、解散状態だ」

 それを聞きマルロスは片手を仮面に付けて、軽く首を振った。

「(何なんだこのチームは……協調性と言うのがないのか? チームとして崩壊してないか、これ?)」

 すると突然ヒビキがマルロスに話し掛けた。

「そうだマルロス。俺お前と一緒に行動してもいいか? こんな奴らと居ても嫌だし、1人もつまらないしよ」
「いや、ダメだろ。お前はそのチームのメンバーとしての役割があるんだからよ」
「おいおい、ケチ言うなよ~いいだろ?」
「ダメだ」
「ちょっとくらいいいじゃねぇかよ」
「しつこいぞ、ヒビキ。それ以上言うと、お前も同じ様に張り付けるぞ」
「へぇ~やれるもんなら、やってみろよ。お前ごときに出来るならだけどよ」

 ヒビキの挑発的な言葉に、マルロスは仮面越しにヒビキの事を睨みつける。
 それに対しヒビキはマルロスを挑発する様に、少し見下す様に見つめ続けた。
 直後、マルロスはヒビキの懐に入り込み顎下目掛けて掌底打ちを放つが、ヒビキに当たる直前に真横から片手で突き飛ばされる。
 そして、ヒビキは懐にいるマルロス目掛けて左足を振り抜いた。
 だが、マルロスはそれを右足で受け止めると、直ぐに振り払って距離をとった。

「おいおいマルロス。あんなもんでやれるのは、そこでへばってる奴くらいだぞ。俺をこいつらと同じに見るのは、傷つくな~」
「自分の記憶が間違ってなければ、ヒビキは体術は苦手だったはずだが?」
「いや~最近落としたい女子が、体術出来る人が好きみたいだからさ。ちゃちゃっとマスターしたのよ」
「そんな気軽に取得した動きには見えなかったがな」
「気のせい……いや、お前の質が落ちたんじゃないのか、マルロス?」

 ヒビキは更にマルロスを挑発する様に言葉を掛けるが、姿勢はだらっと立ているだけであった。
 一方でマルロスは、戦闘態勢をとっており、ヒビキとマルロスの同学年同士の戦いが始まったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

悪役令嬢はやめて、侯爵子息になります

立風花
恋愛
第八回 アイリス恋愛ファンタジー大賞 一次選考通過作品に入りました!  完結しました。ありがとうございます  シナリオが進む事のなくなった世界。誰も知らないゲーム後の世界が動き出す。  大崩落、王城陥落。聖女と祈り。シナリオ分岐の真実。 激動する王国で、想い合うノエルとアレックス王子。  大切な人の迷いと大きな決断を迫られる最終章! ーあらすじー  8歳のお誕生日を前に、秘密の場所で小さな出逢いを迎えたキャロル。秘密を約束して別れた直後、頭部に怪我をしてしまう。  巡る記憶は遠い遠い過去。生まれる前の自分。  そして、知る自分がゲームの悪役令嬢であること。  戸惑いの中、最悪の結末を回避するために、今度こそ後悔なく幸せになる道を探しはじめる。  子息になった悪役令嬢の成長と繋がる絆、戸惑う恋。 侯爵子息になって、ゲームのシナリオ通りにはさせません!<序章 侯爵子息になります!編> 子息になったキャロルの前に現れる攻略対象。育つ友情、恋に揺れる気持<二章 大切な人!社交デビュー編> 学園入学でゲームの世界へ。ヒロイン登場。シナリオの変化。絆は波乱を迎える「転」章<三章 恋する学園編> ※複数投稿サイト、またはブログに同じ作品を掲載しております

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

処理中です...