とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第268話 第二期期末試験⑭~ガウェンの魔道具~

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「ちっ、何だよオービンじゃねぇのかよ」
「そんなにオービンと戦いたいのか、ガイル?」
「一番強い奴と何でもあり状態で、公式で戦えるんだからやりたいに決まってるだろが! お前は違うのかよ、ガウェン」
「俺はお前みたいに戦闘狂じゃないからな」
「おいお前ら、無駄話ししてないでさっさとやるぞ。1秒たりとも無駄に出来ないからな」

 とニックが言った直後、ガウェンは持参して来た魔道具の剣を手に取り、ガイルは戦闘態勢をとる。
 するとニックが片手を突きだし、そこに小さい2つの魔力球体を創りだした。
 その球体は赤色と緑色をしており、突きだしたニックの手の周囲を時計回りに回り始める。
 その動きは徐々に速くなっていき直ぐに目で追えなくなる速さになると、ニックが小さく呟く様に口を動かし始めた。
 私はそれを見て咄嗟に詠唱魔法を使って来ると思い、攻撃を仕掛けてくると分かり目の前に地面の壁を魔力分類の創造で創り、更に魔法の『メタル』で強度を上げた。
 直後、創り上げた壁が一瞬で木っ端微塵に砕かれてしまい、私は目を疑った。
 嘘!? あれをいとも簡単に壊すなんて、どんな威力してるのよ!
 視線の先には、ニックが先程の2つの球体をこちらに放った状態で立っており、両隣にいたガウェンとガイルが私たちの方に追撃する様に距離を詰めてき始める。

「俺が一発でダウンさせてやるよ!」

 ガイルはそう息巻き、ガウェンよりも早く私たちに近づいて来る。
 私は直ぐに魔法で対応しようとするが、立ち塞がる様にベックスが私の前に立った。

「俺に任せろ」

 それだけ呟くとベックスは、全身から魔力を発し薄い鎧の様に身に纏った。
 その姿は大運動会の時に見せた姿と同じであった。
 ベックスは、あれ以来ダンデ共にダイモン寮長の下で特訓をし姿勢の猫背も治り、体調も良くなるほど変わっていた。
 そして彼の力はダイモンと類似した力を持っており、過去に『超人』と呼ばれる程の人物であったと改めて私は思い出していた。
 今の彼が身に纏っている魔力も、大運動会の時とは違いまだ余裕を感じる。
 あの頃はそれが全力と言う感じで、それ以上のものはないと感じ取っていたが特訓の成果なのか、あれから成長しているのだと理解した。
 その変化に私以外のニックたちも直ぐに気付いていた。
 するとガウェンが一度足と止めるが、ガイルは分かっていながらもそのままベックスへと突っ込んだ。

「勝負だ『超人』ベックス!」

 ガイルはそう叫ぶと、ベックスの目の前から姿を消した。
 直後、真横から右ストレートを叩き込むが、ベックスはガイルを見失っておらず右腕で防いでおり、その腕の魔力が増幅しており強固な鎧の様にもなっていた。
 ベックスはそのまま押し返すとガイルは宙で一回転し『フレイム』の魔法を放つ。
 だが、それもベックスは身に纏っていた魔力を更に増幅させ完全に防ぐが、防いだ後の先の視界にはガイルはいなかった。
 するとガイルはまたしても瞬間移動した様に、ベックスの真横から懐に現れてアッパーを繰り出す。
 その拳は完全に避ける事が出来ない距離であった。
 しかし、ガイルの拳はベックスには直接当たらず身に纏っていた魔力に直撃するのだった。

「何!?」
「脚が早いんだなガイル」

 そう呟きベックスは魔力を増幅しガントレットを装備した様な左拳をガイルの腹部に叩き込み殴り飛ばした。
 ガイルはニックを超え、奥の壁へと打ち付けられる。

「ガイル、大丈夫か?」

 ニックは驚く事もなく、振り返り普通にガイルに声を掛けるとガイルは少しふらつきながらニックの方へと歩き始める。

「あぁ、問題ねぇ。まだ始まったばかりだしな」
「本当かよ。もうフラフラじゃねぇかよ。少し座ってろ」
「大丈夫だって言ってんだろうっ!?」

 ガイルがニックにそう言い返すと同時に、その場に倒れ込んでしまう。
 急な目まいに襲われて、倒れてしまったのだった。

「くっそ! こんなの!」
「いいから、少し休んでろ。今行ったらガウェンの邪魔だ」

 ニックはそう言ってガイルの脳天を軽くチョップして動きを止めた。
 その頃、私の前ではベックスとガウェンが動かずに相手の出方を伺い睨み合っていた。
 ガウェンは長方形の形をした刃の剣を握っていたが、その刃先は丸くなっており相手を打撃する様な武器になっていた。
 今回の試験では、魔道具の持ち込みは自由となっているが殺傷性の高いものは禁止となっており、事前に試験官に認められた物しか持ち込めない様になっているのである。
 その為、ガウェンが手にしている剣も切れ味が全くなくなった剣の形をしているこん棒の様な物であった。
 しかしそれはただ相手を殴る為の物ではなく、あくまで魔道具として持ち込んで来ている物の為何かしらの力が使えるので、ベックスも警戒してうかつに近づけずにいたのだった。

 私とガードルも同じ考えであり、ベックスが前線で戦っている所に入り込み戦況を不利になってしまうのではないかとも考えてしまい、手が出せずにいた。
 するとその均衡状態を先に破ったのは、ガウェンであった。
 ガウェンは剣を下に向けながらベックスへと踏み込み、勢いのまま剣を振り抜く。
 が、ベックスはガイルの時と同様に両腕で防ぐ体勢をとり、魔力を増幅させ厚い鎧を身に纏う。
 そのままガイルの時と同様にガウェンの剣も防ぐと私とガードルはそう思っていたが、予想とは違いガウェンが振り抜いた剣はベックスの魔力の鎧に食い込むと、そのままベックスの両腕へと届き鈍い音が響く。

「ぐぅっ!?」

 ベックスは思いもしない出来事に、少しよろめき後退するがガウェンはそのまま追撃をする為更にベックスの方へと踏み込み、振り抜いた剣を真下から斜め上へと振り上げる。
 私は魔力分類の創造、技量、質量でゴーレムを創り出し、ベックスとガウェンの間に割り込ませた。
 するとガウェンの剣は私のゴーレムに直撃するも、破壊はされず一部が砕き壊されるだけで、一旦ガウェンは距離をとるのだった。

「大丈夫かベックス」

 後退して来たベックスにいち早く近付いたのはガードルであり、剣が直撃した両腕の状態を直ぐに見始めた。

「すまん、ガードル」
「これは僕にしか出来ない役割だ。うん、攻撃を受けた所の腫れが大きい。動かせるかい?」
「あぁ、なんとか……だけど、動かすと少し痛みがある」
「少しだが、腫れの箇所が青紫色の皮膚が変わっている。これは打撲だね。ひとまず内出血や腫れを防止するために、包帯で適度に圧迫するよ」
「頼む……打撲か。クリス気を付けろ、ガウェンの剣は俺の魔力の膜に食い込んで来た様に見えた」
「食い込む?」

 私は2人より前に出てガウェンの方に視線を向け、持っている剣を見つめた。
 どう言う事? 剣といよりこん棒に近いイメージよね。
 にしても、ベックスのあの魔力を突き破る威力があるって事? ガウェンは物凄く力が強いって訳じゃないから、あの剣の能力と見るのが妥当よね。
 私はそんな事を考えつつ、小型のゴーレムを3体創り出しこちらから攻め込ませ、ガウェンの剣の能力を見定めようとした。
 が、後方にしたニックがそんな事はさせないと言わんばかりに、私が送り出したゴーレム3体を『エレメント』で攻撃して来て破壊されてしまう。
 その結果、周囲が少し煙に覆われ視界が悪くなった所を、ガウェンが一気に私との距離を詰め剣を振り抜いて来たのだった。

「(悪いなクリス。お前もベックスと同様に退いてもらうぞ)」

 しかし勢いよく振り抜いたガウェンの剣は、硬い岩の様な物に弾かれるのだった。

「何!?」

 視界を遮っていた煙が晴れ、その理由が露わになる。
 それは私がゴーレム生成と同時に両腕にゴーレム武装をしていた為、ガウェンの剣を咄嗟にそれで防いだのだ。

「っ! それは、対抗戦の時のか」
「これは突き破れないんだな」

 私はそのまま瞬時に『バースト』を使うと、ガウェンは剣で防ぐ体勢をとると剣の周りだけ魔法が消えるのだった。
 それを目撃し、私はガウェンが使っていた剣の能力を理解した。
 ガウェンは再び後退すると、ニックとガイルがいる所まで後退するのだった。

「ガウェン。その剣、いやその魔道具は魔法や魔力を無効化にするんじゃないのか? 俺のこの装備も魔力分類で作っているが、表面はゴーレムと同じく岩みたいなもんだから、それじゃ無効化出来なかったんだろ?」

 私は後ろの2人も伝える為にも、あえて大声でガウェンに話し掛けた。
 するとガウェンは隠す事無く「その通りだ」と言って、手に持っている魔道具の剣の能力を話し出した。
 その剣は、ガウェンが創り出した物であり、能力は剣の周りのみ魔力や魔法を一定時間無効化する物であった。
 だが、その影響で剣を握っている間は魔法や魔力は使えないと言うデメリットが存在する事まで明かした。

「おいおい、そんな事まで話す必要ないんじゃないのか?」
「いずれ分かる事だし、知られたからと言って何も変わる事はないからいいんだよガイル。この場で勝つのは俺らなんだから。そうだよな、ニック?」
「あぁ。ベックスが負傷した今、優勢なのは俺らだ。このまま一気に退ける」

 ガイルも復帰し、ニックたちは再び戦闘態勢をとる一方で、私たちは劣勢に追い込まれるのだった。
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