とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第287話 もちろん、嫌だね

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「……ふ~、考え始めるときりがないな」

 ルークは腕を組みながら、兄であるオービンの話を思い出しながら寮の廊下を歩き、自室へと向かっていた。
 突然の見合い話が、何者かに仕組まれた可能性があり、王城内に侵入もしくは内通者がいるのではとルークなりに推測をしていたのだった。
 だが、結局の所分からない事も多く両親たちが調査をしているとオービンから聞いていた為、一度その件を考えるのを止める。

「ひとまず、帰省の書類提出だけしないとな」

 そう呟いたルークの右手には、人差し指と中指で挟む様に帰省提出用紙を持っていた。
 オービンと別れてから担当教員に会いに行き貰った物である。
 そしてルークは自室の前に辿り着き、扉を開けると中では何故かトウマが神妙な面持ちで椅子に座りこちらの方を向ていた。

「(何してるんだ、あいつ?)」

 ルークは一瞬入るのをためらってしまうが、部屋に足を踏み入れ扉を閉める。
 するとトウマが話し掛けて来る。

「来たか、ルーク」
「……何か用か?」
「あぁ。とても大切な用だ。だから、こっちに来てくれ」
「っ……」
「おい、うわっ……て顔をするな。うわっ……て、傷つくだろ」

 ルークはそう言うトウマに小さくため息をついてから「分かったよ」と返事をし、少し気怠そうに自席に向かう。
 手に持っていた用紙を机に置いてから振り返り、机に寄りかかる様な体勢をとる。

「で、用ってのは?」
「お、おっほん……あ~え、え~とだな。その~」

 急に何故か慌て始めるトウマに、ルークはジト目で見つめる。

「俺もやる事があるから、遊びなら付き合わないぞ」
「ちょちょちょ! ちょっと待てて。遊びとかからかいじゃねぇんだよ。本当に、本当に大切な話」
「それじゃ、挙動不審にならないで早く言えよ」
「うっ……わ、分かってるよ」

 するとルークは両手を広げて大きく息を吸って、ゆっくりと息をはいた。
 それを更にもう一度行ってから「うしっ」と自分に気合を入れて、ルークに視線を向ける。

「その、だな。期末試験の時の話なんだが」
「期末試験?」
「おう……実力試験があったじゃんよ。でさ、あの時終わった後、治療室に運ばれたろ」
「そうだな。お前は確か、タツミの治療で気絶してたな」
「そう! それ! ……で、でよ……ぶっちゃけ言うと、あの時俺途中で意識が戻ってて」
「あ~話を聞いてたって事か。てか、その事かよ。全然大切な用でも何でもねぇな。つうか、分かってたし」
「すまん! あん時つい盗み聞きを――って、今何つった?」

 ルークは軽く首を傾げると、トウマも同じ様に首を傾げる真似をする。

「ん? じゃねぇよ! お前今、分かってたって言ったか? いやそれ以前に、反応が軽すぎだろが! 俺がこの事でどんだけ悩んだが……」
「いや、俺から見たらあれバレバレだったから。すげぇモゾモゾしてし」
「だったら言えや! いや、あの時言われても困るな……」

 トウマがそこで腕を組み考え始めたのを見て、ルークは「それで終わりならいいか?」と言って、帰省提出用紙を記載しようと振り返ろうとするが、トウマが止める。

「待て待て! まだ終わってねぇから」
「えっ、まだあんの?」
「あるよ。それじゃ、何で俺が起きていると分かっていて、あんな話をしたんだよ? 普通しないだろうが」
「あんな話? ……あ~告白の事か?」

 ルークは別に言い躊躇う事無く口にだすと、トウマは一瞬だけ普通に口にされた事に驚くが直ぐに「そう」と指を出して返事をする。

「別に意味はねぇよ。あっいや~、やっぱりあったわ。お前にわざと聞こえるように話した。俺とアリスの関係を改めて知ってもらうため」
「ア、アリ……っ、何でそんな事を?」
「何でって、お前もアリスの事が好きなんだろ? それに、前に色々と言ってくれたしな。そのお礼みたいなもんだ」

 その時トウマは、以前学院祭が終了してから2人の様子がおかしくルークに問い詰めた時の事を思い出した。
 一応それの事かと確認すると、ルークは頷いて返事をした。
 トウマは直後片手で軽く頭をわしゃわしゃとする。

「何がお礼だ。まともに取り合ってくれないし、言い淀んだり、勢いで告白しちまったんだ~とか今と真逆の態度だった奴がよ」
「っ、あの時は、試験もあったし頭の中で整理が出来てなかっただけだ」
「どうだか? あ~あ、全くよ俺が頭を悩ましてたのが馬鹿みたいじゃねぇかよ~」

 トウマは椅子にだら~っと寄りかかる。

「お前には本当に感謝してるんだぞ。あれがきっかけで、色々と考え直せてあぁなったんだから」
「敵に塩を送ったってか? かぁ~何してんだ俺は」

 するとトウマは何か思い立ったのか急に立ち上がり、ルークに指を差した。

「いい機会だし、はっきり言っておいてやる。そうだよ、お前が言った通り俺がクリスがアリスの事が好きだよ! 最初は本当に男だと思ってて悩んでたりもしたんだぞ」

 突然の宣言にルークは少し戸惑うが、トウマはお構いなく話し続ける。

「お前がいつからあいつを好きかは知らないけどな、一度告白して断られてるなら、潔く諦めろよな。何再告白してるんだよ! 戸惑ってるんじゃねぇかよ、クリスがよ!」
「告白してね奴に言われたくないな」
「ぐっ……」
「それに、好きになったのがいつなのかとかは関係ない。誰が一番にあいつを射止めるかだろ? お前も聞いてたなら知ってると思うが、俺は現状一番底辺で、最もあいつから遠い所にいる。でも、俺は最後まで諦めない。アリスの事が好きだから」
「真っすぐとそんな事を言いやがって……一度振られてる奴が言える言葉じゃねぇぞ」
「あははは。確かに、そうかもな。でも、俺とあいつの関係はちょっと特殊なんだよ。……昔からな」

 ルークは最後にボソッと呟くが、それはトウマには聞こえていなかった。

「これだと、何だか俺が負けてるみてぇじゃねかよ!」
「実際、負けてるんじゃないのか?」
「負けてねわ! お前より好感度上だし、ちょくちょくアタックしてるしよ。まぁ、上手く行ってる気がしねぇんだけど……」
「そのままじゃ、友達止まりで終わるんじゃないのか?」
「くぅ~! 想像して最悪な気持ちになった奴を言うんじゃねぇよ、ルーク! お前だって余裕ぶってるけど、本心焦ってるんじゃねぇのか? 一度振られて、好感度上げる為にどうアタックしようかな~? とかよ」

 ルークはトウマの言葉に一瞬言葉が出ずに、視線を逸らす。
 それをトウマは見逃さずに漬け込むとしたが、止めるのだった。

「はぁ~、もう相手をいじる止めな。これたぶん終わらねぇわ。とりあえずルーク、1つ言わせろ」

 そう言われてルークはトウマの方に顔を向ける。

「俺とも勝負だ。俺もお前と似た条件でやってやる。だから、恨みっこなしな」
「おい、どう言う事だ?」
「だから、俺も第2学年中にクリスに告白するって事だよ。そんで、ダメだったらスッパリ諦める。お前と似てるだろ」
「い、いや。別にお前がそこまでする事なんて」
「あるんだよ。たぶん俺は、このままだと告白しないと思うんだ。お前がライバルとしていなくなる可能性が少しでもあるし、それなら結果を見てからでもどう行動するか決めてもいいだろって言う甘えがよ。だけどよ、そうしてもたぶんいつまでも告白しないで終わると思うんだわ、俺」

 するとルークは何となくトウマが言っている意味を理解し「なるほど」と呟く。

「そう言う訳で、俺も覚悟決めたってわけよ。受けるだろ、この勝負?」

 トウマは片手を握り拳にして突きだして来ると、ルークは軽くため息をついてから口を開く。

「もちろん、嫌だね」
「そうだ……って、はぁーー!?」
「だって、俺が勝負受けなければお前はアリスに告白しないんだろ? 今の話的に」
「そ、そうかもしんねぇけど……うう、受けねぇって、そりゃないだろルーク」

 まさかの返答に肩を落とすトウマを見て、ルークは声を出して笑う。

「悪かったて。ほら、これでいいんだろ?」

 するとルークは、トウマが先程まで突きだしていた握り拳を掴み、自分の握り拳を軽く合わせる。

「っ! ルーク」
「やっぱなしは、もうダメだぜ」
「もちろんだ! でも、さっきの返事は傷ついたし、笑われたのも傷ついた」

 急にトウマは肩をまた落とし、そっぽを向いてしまい、ルークは慌てて口を開く。

「だから悪かったて、謝ったろ?」
「許さん……でも、告って断られた時の感想を話してくれたら、許す」
「なっ!?」
「ほら、ほらほら、教えてくれよ~どんな気持ちだったんだよ」
「ふ、ふざけんな! からかうなら、さっきのなしな」
「おい、自分でなしはダメって言ったろ」
「あ~何の事だか聞こえね~」

 ルークは両手で耳を抑えながら返事をしたり歩き回ったりし、トウマは反論したり問いかけ続ける。
 その後2人は、そんなたわいもない事を続けるのであった。
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